銀色の雲

火曜日の風

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4章 計画を考えているうちに、起こってしまうのが人生

7話 また誤解が生まれた

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 瑠偉の泊まっている宿屋の部屋で、彼女は呆然と立ち尽くしていた。時間にして数分、頭の中が真っ白になったように、立ち尽くしていた。

「っは、そうだ。電話があったんだ!」

 突然思い出した彼女は、服からスマホを取り出した。電源を入れ、手を忙しく動かしながら、アドレス帳から麻衣を探し出す。彼女は若干イラつきながら、スマホを耳に当てた。すると彼女の耳から聞こえる発信音は漏れ始め、静かな宿屋の部屋に響き渡っていった。

 プー・プー・プププ… プルルルル・・・

……


 目を閉じ腕を組み、レディは深く考えていた。兼次も彼女を見ながら、話し始めるのを待っていた。ララは立体映像を収め、両手を太ももに乗せ動かなくなっていた。
 ルディは、映像が無くなって見る物が無くなり、麻衣から離れ姉の隣に座ると。真剣な表情で悩んでいる姉を、心配そうな表情で見始めた。
 暫らくの間、沈黙が続いた。辺りの音は、風で揺らめく木の葉の擦れる音が、聞こえていた。

 麻衣は背中を丸めながら、イライラ表情でスマホを操作していた時。彼女のスマホに、大きな着信音が鳴り響いた。

 プルルルル… プルルルル… プルルルル… プルルルル… 

「うわあああぁ、ビックリしたー!」

 発信音に驚いた麻衣は、大声を張り上げる。慌ててスマホを操作し、耳に当てた。大きな音に、気がついたレディは目を開け麻衣を見た。ルディと兼次も、麻衣に注目した。

「もー、瑠偉ちゃん、ビックリさせないでよー」
『麻衣… ララさん、そっちに居ませんか?』

 麻衣はスマホを持ったまま、ララの方を向くと、そのまま会話を始めた。

「いるけど?」
『なんで、そっちに居るわけ?』
「そんな事より、聞いてよー。でっかい宇宙船が、下りて来たんだよ。感動したわー」
『宇宙船って… まさかっ!!! 私を置いて、地球に帰ってないでしょうね?』

 麻衣は少し間を置くと、口元だけの笑みを浮かべた。ガチャの嫌な気分を晴らそうとしたのか、イタズラを仕掛けようと思いついた。そして彼女は、意地悪な表情を見せるのであった。

「あっ、そう言えば瑠偉ちゃんが居たんだ・・・ てへっ、出発しちゃった」
『なにぃぃぃぃぃ! 引き返せー! 今すぐ引き返せー!』

 電話先の瑠偉は、気持ちが高ぶっている様で。麻衣のスマホから瑠偉の声が、次第に大きくなっていった。その声は、静かな森に、ハッキリと響き渡っていた。そんな麻衣を、兼次達は黙って見守っていた。

「瑠偉ちゃん… ”実録・私は異世界に置き去りにされました” これよ! いいネタになるわー、楽しそーだわー」
『楽しくないわー! とにかく引き返す! 今すぐ戻って、私を乗せなさい!』

「そんな事より聞いてよー、さっきガチャったんだけど、ノーマルしか出ないんだよ? もう、サイテーよ、もう気分は… うっ痛ぅぅぅ! って感じね」
わ た し の・ ・ ・ ・話をぉぉー! 聞けぇぇぇーーーー!』

「そんな事より、瑠偉ちゃん。ヨルグちゃんの、尻尾とか猫耳とか、スリスリした? どうだった? よかった?」
『話を逸らすなぁぁぁーー!!! 一生怨むぞぉぉぉ!!!』

「なーんてね、冗談だよぉー。まだ居るから安心して」
『本当でしょうね?』
「大丈夫だって、忘れてないって。ちゃんと瑠偉ちゃんと、一緒に帰るからね」
『なら大至急ララさんを、こっちに戻してください。一人だと、安心できません』

 麻衣はスマホを、耳にあてたまま兼次を見ると

「兼次ちゃん、瑠偉ちゃんが… ララちゃん戻せって、言ってるけど?」

 兼次は一度大きな息を吐くと、ララの方を見た。

「ララ、とりあえず戻れ」
「了解しました。それでは…」

 その言葉と同時に、ララは姿を消した。それを目撃していたリディは、驚きの表情と共に「消えたっ」と大声で叫ぶと、そのまま固まってしまった。そして…

『きゃぁぁぁぁぁぁ!!! ちょっと、なんで胸を触るんですかぁー!』

 と麻衣のスマホから、甲高い瑠偉の悲鳴が聞こえた。

「あっ、戻ったみたいね・・・ って、切れてるし」

……


 瑠璃の泊まっている宿屋に、戻ってきたララ。部屋の中央に居る瑠偉の後ろから、両手を伸ばして彼女の胸を触っていた。

「あの… 離してもらえませんか?」
「少々、お待ちください」

 その時、部屋のドアが勢いよく開いた。そして、ファルキアが現れた。

「ルイさーん! 大丈夫ですかー!! 大声が聞こえましたけど・・・ っえ?」 

 ファルキアの目には、部屋の中央でララが瑠偉の胸を、後ろから触っているの姿が、目に飛び込んできた。彼女は、両手で口を押えると、少しずつ後退を始めた。

「ルイさん… 女性同士で、それはちょっと… いけないと思うの」

 ゆっくりと後退しているファルキアを、瑠偉は呆然と眺めていた。ファルキアは、ゆっくりとドアを閉じる。そして大きな足音が、瑠偉の耳に飛び込んできた。さらに…

「ヨルグーー!! 聞いてくださいぃーーー!」

 とファルキアの大声が、部屋の壁を越えて瑠偉の耳に届いてきた。そんな彼女は、ドアを見ながら顔を、ピクピクと引きつらせていた。そして彼女は、力なくベットまで歩くと座り込んだ。

「っはは… また、変な誤解が生まれた・・・」
「これは、計算になかったですね。なかなか、興味深い展開です」

 落ち込んでいた瑠偉は、ララの言った言葉が、耳に届いていなかった。その日の彼女は、デートは断れない。麻衣の嫌がらせに、今の事件と散々な一日であった。
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