銀色の雲

火曜日の風

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4章 計画を考えているうちに、起こってしまうのが人生

6話 移住計画を語ろう

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「正直に言おう」

 兼次は真剣な表情で、リディと向き合った。近くに居る麻衣は、スマホを忙しく操作している。その隣にいるルディは、彼女の手にあるスマホの画面を、珍しそうに覗きこんでいた。

「我が国では、現在移住して来る人材を募集中だ。この旅も、その人材を見つける為だ。今回は、なんと! 初回移住特権で、住居がもれなく付いてくるぞ。しかも、食事も永久保証しよう」
「アフォカー! いきなり10連ノーマルとか… なめてんの?」

 兼次は、麻衣の捨て台詞を聞きながら、リディの様子を伺った。リディは、兼次を黙って見たまま、考えている様だった。

「住居と食事の保証だと? 信じられんな…」
「現在だと、10万人まで受け入れ可能だ。リディの部族は、何人いる?」
「またノーマル10連だとーーーー!!! バカー、アフォー!!!!」

 リディは麻衣の独り言を聞き流しつつ、彼女の方を見た。そして隣の弟の姿を見始めた。ルディは相変わらず、麻衣のスマホ画面を真剣に覗きこんでいた。暫らく弟を見ていたリディは、兼次の方を向き始めると同時に話し始めた。

「我々の情報を渡す前に、確認したいことがある」
「なんだ? すべて答えてやろう」
「うぎぃぃぃぃぃぃ!! っまったっノーマルだし!!! バカバカバカァー!」  

「どこかの国と戦っているのか? まさか我々を、戦力として見ているのか?」
「戦争はしていない、むしろ攻められることもない。完全な平和の国だ」
「おおぉ! やっとレアだ… あっ… またノーマル… もう〇ねよ!」

「魅力的だが… そんな国があるとは思えんし」
「わかった・・・ いいだろう見せてやる。と、その前に・・・」
「うっきぃぃぃぃ! ノーマル地獄! なにこれ? バカなの?」

 兼次は麻衣を見た。ガチャに集中していて、防御シールドを張ってないな… と彼は思うと、再び空気弾を麻衣の額めがけて放った。

「いったぁぁーい!! 何すんのよー!」

 ノーマル連続ガチャで、機嫌が悪くなった麻衣。怒り気味で、兼次を見ながら抗議した。

「麻衣… 心の中で叫べ、さっきから会話の邪魔なっている」
「ちょっと、おかしんだって! さっきからノーマルしか出ないんだよ?」

 麻衣は頬を膨らませながら、スマホの画面を兼次に見せながら言った。

「さっきレア出ただろ?」
「だからー、レア1回だけだよ? あとは全部ノーマル、おかしくない?」
「おかしくないな・・・ 運が悪かっただけだろ? 黙って遊べ!」

 麻衣は隣のルディの方を振り向くと、彼に顔を近づけた。近づいた麻衣の顔に、驚いた彼は「ひぃ」と言う小さな叫び声を上げる。しかし麻衣は、そんな彼に構わず、さらに顔を寄せた。

「ルディちゃんも、おかしいと思うよね?」
「ぼ… 僕わかんない…」
「むぅーーー」

 麻衣は唸りながら、ルディと暫らく向かい合っていた。一方ルディは、麻衣の顔を見ながら、体を硬直させていた。

「まぁ、いいわ」

 麻衣はルディから離れると、スマホに向かい合い操作を始めた。兼次は彼女が、黙って操作をしているのを確認すると、右隣のララに話かけた。

「よし映像を出せ」
「了解しました」

 ララは両手を前に出し、手を広げた。その手は徐々に白く光だし、強くて全体が輝いていった。その光は前方に照射され、右手と左手の光が交差すると。皆が集まっている中央に、浮遊島の立体映像が浮かび上がった。

 不思議な現象を、目の当たりにしたリディ。彼女は手を伸ばして、立体映像に触れようとしたが、その手は空を切った。麻衣の隣に居たルディも、その光に気付き中央を見始めると。リディと同じように、手を出し触れようとしたが、同じく空を切った。

 一方麻衣は、ガチャに集中しすぎて、この立体映像に全く気付いていなかった。下を向いてスマホ画面を見ながら、忙しく右手を動かしていた。

 リディとルディは、何度も立体映像を触ろうとする。当然の様に何度も、その手は空振りをつづけた。そしてリディとルディは、お互いに見つめ合った。

「おねーちゃん、これ何?」
「絵が浮かんでいるな… なんだろう?」

「リディ、これが俺が治めている街の絵だ」
「これは・・・ 海に浮かぶ島なのか?」

「海に浮かんでいる様に見えるかもしれないが、実際は空に浮いている。天空の街と、言っておこう。ちなみに大きさは、お前がと捕らえられていた街より、大きいぞ」
「天空の街?」

「空に浮くことにより、地震、嵐、大雨、洪水などの天変地異から、街を守ることが可能だ。戦争もないし、天災も起きない。毎日平和に過ごせるぞ?」

 リディ姉弟は、その立体映像を釘居る様に見ていた。兼次はララに目線で、合図を送る。すると立体映像は徐々に拡大していくと、街の様子が上から見えるようになった。更に映像は拡大を続け、1軒の家を映し出した。

「そして、ココがお前たちが住む住居だ。1世帯に1軒与える」
「これ… 家なのか?」と映像を見ていたリディは、振り返り兼次に言った。

「断熱金属で出来ていて、中は一年中同じ温度を保っている。そして家具付きだ! 快適だぞ? しかも、100万年の使用に耐える。建て替えも不要だ!」

「信じていいのか? いや… これだけの物を、与えられると不安がある。なにか我々に要求があるんじゃないのか?」
「実は俺の国は… 色々事情があってな、移民できる人を探している。だから無償だ、いや一応要求もあるが…」

「要求とは?」
「簡単なことだ、2人ぐらい俺の側で、仕えてもらう」
「それだけでいいのか?」
「あとは王である、俺の命令をきちんと聞いてくれるだけでいい。大丈夫だ、無茶な命令はしない。なんたって平和だからな」

 リディは最初に座っていた場所まで戻ると、そこに座ると腕を組み考え始めた。

 ……
 …

 その頃、カキレイの街の宿屋に、瑠偉が帰って来た。彼女は部屋のドアを開けると…

「あぁぁ最悪… デートの約束、断り切れなかった・・・」

 と独り言を言いながら、入ってくる。そして部屋を見渡すと、先に帰ってきているはずのララが居なかった。

「いない・・・ え? ララさーーん?」

 瑠偉は部屋を歩き回って捜すが、狭い部屋に隠れる場所はない。彼女はベッドの下を、見ようと近づいた。

「ララさん、止めてくださいよー、そんな冗談は・・・」

 と言いながら彼女は、2つあるベッドの下を確認したが、そこにも居なかった。

「冗談でしょ?」

 彼女は部屋を見渡して、厨房の時の様な書置きが無いか、捜し回った。しかし何の痕跡も、見つからなかった。

「なに? 何が起きたの?」

 彼女は部屋の中央で、呆然と立ち尽くしていた。

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