銀色の雲

火曜日の風

文字の大きさ
上 下
45 / 91
3章 まず行動、目的は後からやってくる

17話 まず行動、目的は後からやってくる ②

しおりを挟む

 ルディと麻衣、兼次と姉が横並びで木々の生い茂る森林を、歩きながら街から遠ざかっている。麻衣はルディと手を繋ぎ、兼次は姉の腰に手を回して、恋人の様に歩いていた。

「お… おい。くっつくな、歩きにくい」

 ルディの姉は、兼次の腕を振り払い、彼から距離を取って歩き始めた。前を歩くルディと麻衣を見て、隣の兼次に視線を向けた。

「ところで、何処に向かっている?」
「これと言った目的も無く、街から離れる様に歩いてるな」

 姉と問いに答えた兼次は、再び姉の方に体を寄せ始めた。

「そう言えば、名前を聞いてなかったな」

 名前と聞いて、前を歩いていた麻衣は「そう、それ!」と言い振り返る。そして歩く速度を落として、姉の横に並んだ。麻衣と兼次に、挟まれた姉は、窮屈に体を少しよじらせていた。

「リディ・・・ と言う」

 リディは両側を挟まれ、両方からの視線を感じ。恥ずかしそうに答えた。

「俺は、兼次と言う」
「麻衣よー、おねーちゃんと呼んでね」

「おねーちゃん… だと?」とリディは、隣の麻衣を見ると、頭から足まで全身を見渡すと「歳は私と、変わらない気がするが?」

「リディ… 麻衣の見た目は若いが、実際は63歳だぞ」
「本当か?」

 兼次の言葉にリディは、驚きの表情で兼次を見上げた。

「そんな分けないでしょー! 何言ってんの! 17歳です!」
「17なら、私と同じだが…」

 リディは麻衣の言葉に反応して、また麻衣の方を向いた。改めて麻衣の全身を確認すると、その大きな胸を見つめ始めた。リディは …たしか子供が出来ると、大きくなると聞いたことが… と思った。

「お前… 子供いるのか?」
「いません!」
「そうか… すまん」

「リディ。早速だが、何故人の街に居た? 敵情視察か?」

 兼次は年齢の話に飽きたか、話題を切り替え本題に入る。リディは、そんな兼次をしばらく見て考え込んだ。そして彼に、睨むように話しかけた。

「お前達は、信用できるのか?」
「命を助けてやっただろ、それで十分信用できる気がするが?」
「それもそうだが・・・ しかし」

「安心して、私達は味方だから」

 と麻衣が、兼次とリディの会話に割り込んできた。リディは麻衣の方を向くと、その先に居るルディを見つめ始めた。ルディは、その視線に気づきリディに向かって笑顔で答えた。リディは再び兼次の方を向くと、彼に尋ねた。

「その前に、どうやってここまで来た? 一瞬で景色が変わったぞ」

「空間転移魔法よ!」と麻衣が
「テレポーテーションだな」と兼次が、麻衣と同時に答えた。

「どっちだ?」

 とリディは両脇から聞こえた声に反応して、兼次と麻衣を交互に見比べた。

「麻衣… 話が進まないから、少し黙ってろ」
「もうー、しかたないわねー」

 麻衣はそう言うと、リディを引きつれ兼次達から、少し距離を取った。兼次は麻衣が大人しくなったのを確認すると、リディに向かって話し始めた。

「テレポーテーション、我が国の技術だ」
「我が国だと?」

 リディはテレポートで連れて来られたことより、我が国と言った単語に異常な食い下がりを見せた。それを見た兼次は、少しだけ本当の事混ぜて言おうと思った。

「俺の国だ。そこで俺は、王として国を治めている」
「その国は何処にある?」

「ああ、東の山脈を超えた先だが… かなり遠い場所だ」
「そうか・・・ あるのか、あの山の先に・・・」

「ルディから聞いたが、住む場所を探しているんだって? 詳しく聞こうか、力になれるかもしれん」
「その前に、お前は本当に王なのか? なんと言うか・・・」

 リディは兼次を見ながら、考え込んだ。

「ずばり、風格が無い! でしょ? なんたって、丸投げ王だからね」

 離れていた麻衣が、ニヤケ顔で兼次を見て言った。兼次はそんな麻衣を、無言で睨むと「はいはい、黙りまーす」と麻衣は前を向いて黙り込んだ。

 リディは黙り込み、遠くを見ながら歩き考え始めた。兼次も彼女が話し始めるのを待ちならが、彼女の横を歩いていた。しばらく4人は、黙りながら森の中を歩いていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

龍神と私

龍神369
SF
この物語は 蚕の幼虫が繭を作り龍神へ変わっていく工程に置き換え続いていきます。 蚕の一生と少女と龍神の出会い。 その後 少女に様々な超能力やテレポーテーションが現れてきます。 最後まで読んでいただきありがとうございます。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

シーフードミックス

黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。 以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。 ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。 内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

処理中です...