銀色の雲

火曜日の風

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3章 まず行動、目的は後からやってくる

13話 作戦会議

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「麻衣、まずは詳細を聞こうか」

 兼次は半分ほど残ったパンケーキを食べながら、麻衣を見て言った。彼女の隣にいるルディは、兼次の発言と共に、彼を見たが再びパンケーキを食べた始めた。ルディはパンケーキを食べるたびに小声で「美味しい」と何度も発言していた。
 隣に座っている麻衣は、そんな彼を見ながらほほえましい笑顔を見せていた。そして兼次を見て話し始めた。

「買い物の帰り道に、中央広場に昨日出会った兵士さんが居たの」
「・・・兵士か、大丈夫だろうな? 疑いを掛けられてないよな?」

「なんの疑い?」
「ルディの姉の事を、詳しく聞いたんじゃないだろうな?」

 兼次は麻衣が兵士に、ルディの姉の事を聞いた場合。兵士に、密偵の関係者じゃないかと? 疑われるんじゃないかと考えていた。

「大丈夫だよ… 言ってないから。それに、兵士さんは私の胸しか見てなかったから・・・ はははっ… 視線が露骨だったよ」

 麻衣は自分の、胸しか見ない兵士の事を考え、少し鬱になるが。横を見てルディの可愛さに、心を癒された。

「それで、昨日街中が騒がしかったから、何があったのか聞いたの。それによると、敵国の密偵を捕まえたって。その後の事は詳しく聞かなかったけど。最後に『今日の午後、ここで公開処刑を行う』と言ったわ」

 麻衣の言った、公開処刑と言う言葉を聞いてルディは、食べるのをやめ麻衣を見た。麻衣も彼の視線に気づいたのか、ルディの方を見る。そして右手を彼に頭に優しく乗せ、彼に笑顔で微笑む。彼女は、言葉にはしなかったが、ルディに対して『大丈夫だよ…』と言っている様だった。 

「で、何処に囚われているか聞いたか?」
「そこまでは聞いてないけど、普通に留置所じゃないの?」

「っち、使えねーな。で、その留置所は何処に?」
「聞いてないけど・・・ 兼次ちゃん… 普通の女子高生に、多くを求めすぎだよ」

 兼次の発言に、麻衣は不満気味に言い返し。頬を若干膨らませて、兼次を見た。

「今は高校生じゃないだろ。そして超能力が使える時点で、普通の地球人でもない」
「まぁ・・・普通じゃないけどね。それより、どうやって救出するの?」

「留置所に直接テレポートで、乗り込んで持ち帰りたいところだが。場所が解らないとなると、公開処刑に現れた時を狙うしかないな」
「じゃー、千里眼で留置所を探すってのは?」
「めんどくせーな・・・ この街って、結構大きいぞ? 探すのに時間が掛かる」

 兼次は、そう言うと最後に残ったパンケーキを口に含んだ。そして、口を動かしながら、麻衣を目線で何やら、訴え始めた。

「飲み物・・・ ほしーよな? なっ?」

 そんな兼次を、難しい表情で見ていた麻衣。溜息をつきながら、テーブルに両手を置き立ち上がった。

「私はメイドじゃないんだから・・・ たまには自分でやってよね!」

 麻衣は文句を言いながらも、何時も彼のちょっとしたお願いを聞いていた。そんな事を知らず知らずに、感じ取っていた彼。最近は麻衣をメイドのように、感じているのであった。

 しばらくして、戻ってきた麻衣は、湯気が立ち上っているコップを三つテーブルに置いた。

「はい、温かいお水・・・ ルディちゃんも、飲んでね!」
「・・・また水か」

 兼次は麻衣から受け取ったコップを水を、嫌々口に含んだ。そして長い息を吐くと、作戦について話し始めた。

「では公開処刑の時に、救出することにしよう。何か事を起こして、見物達の視線を逸らす。その隙に救出だ。早めに広場に行って、視察しておこう」
「そうね・・・ じゃあ、早速ルディちゃんの変装を、始めましょうね」

 麻衣はそう言うと、ベッドの方を見る。彼女は、その上にある買い物袋を確認すると、その買い物袋は浮き上がった。そして買い物袋は、ゆっくりとテーブルに向かって移動を始めた。

「おい、ルディが見ているのだが?」

 兼次は浮き上がった買い物袋を見ると、ルディの方を見る。ルディは、浮き上がった買い物袋を見て呆然としていた。彼の頭は、浮きながら移動する買い物袋を一緒に、頭を追尾させながら追っていた。

「ははっ、ごめんごめん・・・ つい」
「ったく・・・ まぁ、今さらだからいいけど。ルディ、分かってるな?」

 ルディは目蓋を何度も開閉させ、兼次を見た。彼は麻衣が帰って来る前の、出来事を思い出した。彼は少し考えると、兼次の言った意味を察した。

「うん… 何も見ていない」
「よろしい、いい子だ」
「ちょっと、私のルディちゃんを脅迫しないでよね!」

 麻衣は浮き上がった買い物袋を手に取ると、ルディの頭を優しく撫で始めた。

「お前のじゃないだろ・・・」

 そう言って兼次は、テーブルに載っている皿を片付け始める。それと同時に麻衣は、買い物袋をテーブルに置いた。兼次は、3枚の皿を重ねると「ララ、皿の回収を頼む」と独り言のように言った。

 兼次の右後方にララが、テレポートで現れる。突然現れたララを見て、ルディは2回目だが「はぅ」と声を出し、驚きながらララを見上げた。ルディの頭をなでている麻衣は「大丈夫、大丈夫、味方だから」と優しく彼を諭す。

「マスター、こちらを」

 重なった皿を下げ、ララはテーブルに布の袋を置いた。テーブルに置かれると、袋は開け口が広がり中身が見えた。中には乾燥された、深い緑色の葉っぱが入ってた。

「これは、緑茶か?」
「はい、昨日偶然見つけました。地球のお茶の木と、成分がほぼ一致しております」

「気が利くな、大変よろしい」
「もったいないお言葉です。では、私はこれにて」

「待て」と兼次は、ララを呼び止めた。そして右手で、徐に袋から茶葉を掴むと、コップの中に入れた。

「なんでしょう?」
「民衆の注意を引くには?」

「爆弾を使って、空で爆発させ、その音で注意を引く案があります」
「なるほど・・・ 爆弾の構造データをくれ」

 兼次は茶葉の入った緑茶を飲みながら、スマホを取り出し画面を見た。その画面にはTNT爆弾と書かれている、複雑な分子モデルの形が表示されていた。それを見た彼は、難しい表情で振り返りララを見上げる。

「これだと作成に時間が掛かる、もっと簡単な構造ものは無いのか?」
「それでは、窒素爆弾があります」
「詳しく」

「十数種類ある中で、一窒化三銀が手ごろです。地球では雷銀とも呼ばれています。マスターなら豆銀と、空気中の窒素で簡単に合成が可能です。酸素が無くても爆発しますので、水中や宇宙空間でも使えます。但し衝撃に弱いため、少しの衝撃でも爆発しまが、浮かせて運べば問題ありません。そのまま、地面や壁に当てて爆発させてください」

 兼次はララの言葉を聞きながら、コップに浮かぶ茶葉を器用に避けながら飲み干す。一息つき、スマホをポケットにしまった。

「よし、決まったな。ご苦労であった」
「では、私はこれにて・・・」とララは言うと、テレポートでその場から消えた。

「緑茶だ、ルディも飲め。色が出たら、葉っぱを避けながら飲むんだぞ」

 兼次は布袋から、茶葉をひと掴みすると、ルディのコップに入れた。麻衣も「私も貰うねー」と言いながら、布袋に手を入れ自身のコップ入れた。

「最近、お湯しか飲んでなかったから。すごく美味しく感じるわー、ルディちゃんも、美味しいよね?」と麻衣は、ルディの方を向きほ微笑みながら聞く。
「なんか… 少しにがい…」

「まだ子供には早かったか・・・」

 兼次は、空になったコップを見つつ、視線を麻衣に移した。そして、何も言わず麻衣の顔を見ていた。その視線に気づいた麻衣は、コップを置き兼次を見返した。

「おかわりは、自分でどうぞ!」
「まだ何も言ってないのだが? まぁいい、早速ルディの変装を初めてくれ」

「それじゃ、ルディちゃん。お着換えしましょうねー、えへへへぇ」
「よし、俺はお湯を貰って来るか・・・」

 兼次はコップを持って、部屋から出て行く。麻衣は、買い物袋から服や糸の様な物、カラフルな紐をテーブルに並べた。

「さあルディちゃん、はじめるよー」
「うん・・・」
「へへへへっへぇ・・・」

 ルディは、不気味な笑顔の麻衣を、恐る恐る見上げていた。
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