35 / 91
3章 まず行動、目的は後からやってくる
7話 そろそろ欲しいよね
しおりを挟むガラスの入っていない窓に、格子状になっている木。その隙間から日の光と、朝の風が部屋に入っている。そんな窓際のベットで、起きたばかりの麻衣とルディはベッドの上で座り、お互いに見つめ合っていた。その隣ベッドでは、兼次が仰向けてまま、まだ熟睡していた。
「へへへ… ルディちゃんの髪、フカフカだねー… 触り心地最高だよ!」
麻衣は緩んだ口元を晒しながら、左手でルディの犬耳を触り。そして右手で彼の髪を、手で撫でて整えている。ルディは、そんな麻衣を見上げながら、心配そうな表情をすると。麻衣の視線を避ける様に、下を向き弱々しく口を開いた。
「おねーちゃんを、助けないと…」
「大丈夫よ! 私達に任せてね、絶対助けてあげるから。でー… 村まで送ってあげるね! そして、その村で犬耳のイケメンさんと・・・ えへっへへ」
ルディは再び麻衣を見上げると、彼女は目を閉じていた。その頭は若干上を向いていた。彼は麻衣を見ながら、どうやって話しかけていいか分からずいた。彼は力の抜けていた手を動かすと、近くにあった麻衣の太ももに手を置いて、彼女に話しかけた。
「お腹… すいた…」
麻衣の耳に、ルディの弱々しい声が入って来た。彼女は『ハッ』と我に返ると、両手を彼の両肩に置いて、顔を彼の方に引き寄せた。
「昨日の夜、何か食べたの?」
「何も食べてない… その前も… その前も…」
「じゃぁー、食堂いこっか?」
麻衣はベットから降り、立ち上がる。ルディの方を振り向き、彼の方に向かって笑顔で手を差し伸べた。ルディは、一瞬迷っていたが、彼女の手を取り立ち上がろうとする。
「まて!」
隣のベッドで寝ていた兼次は、その掛け声と同時に麻衣のスカート部分を持ち下に引っ張る。ワンピース状になっている彼女の服は、背中部分が突っ張り下に下がると。首の部分が彼女の、喉でひっかかると「うっ」と言う声が自然に出ていた。
「だから、スカート引っ張んなって! てか、いつ起きたのよ」
麻衣はそう言いながら、つぱった服を直しながら、兼次の方に振り向いた。兼次は彼女が振り向くと、上半身を起こし彼女を見上げる。
「今だよ今… 昨日言っただろ、犬猿の仲だと、部屋から出すな」
「でも… ルディちゃん、お腹すいてるって。何か食べさせてあげないと…」
「部屋で食べるぞ、持ってこい。無論、俺の分もな」
麻衣は兼次の方に両手を出し、不満そうな表情を見せる。
「私の手は2本、3人分は運べないけど? 浮かせて運んじゃうからね!」
「わかったよ。俺も行けばいいんだろ」
兼次は立ち上がると、麻衣の腰に手を回す。そしてルディの方を見た。
「小僧、部屋から出るなよ?」
「ルディちゃん、大人しくしててねー、御飯持ってくるからね」
麻衣と兼次は、2人揃って部屋を後にした。麻衣はドアの前で振り返り、ルディに向かって笑顔で手を振る。そしてドアが閉まった。取り残されたルディは、立ち上がると窓の外に移動し外を見始めた。
「おねーちゃん…」
ルディは格子の隙間から、漂ってくる僅かな空気の流れを感じる。目を閉じ意識を集中させ、姉のかすかな臭いを感じ取ろうとした。数分その状態で窓際で、姉を思いながら立ち尽くしていた。
「ルディちゃん、おまたせー」
ドアが開くと麻衣と兼次が、手に食事の乗ったプレートを抱え戻って来た。
「小僧、食うぞ。マズい飯をな!」
兼次と麻衣は、テーブルに3人分のプレートを置くと座る。ルディは窓際から歩いてくると、麻衣と兼次の間に入り座る。そして彼は、勢いよく食べ始めた。
「相変わらずの、飯マズだな」
「そうね… 味薄いし、お肉が固いよね。ねぇ、ルディちゃん、おいしい?」
「う… うん。おいしい」
麻衣に声を掛けられたルディは、笑顔で彼女に答えた。麻衣は真面目て見るルディの笑顔に、嬉しくなり。にこやかに食事を再開した。
「そうそう、兼次ちゃん」
「なんだ?」
この惑星に来てから、不機嫌そうに毎回食事をしている兼次。そのまま不機嫌な顔つきで、麻衣を見た。
「昨日、スイーツでも食ってろ! って言ったけど、お店なかったど?」
「そうか… さすがローテク文明だな。砂糖すらないからな…」
兼次は食事を再開する。隣で麻衣が兼次の方を、黙って上目遣いで見ていた。彼は、その視線が徐々に嫌になったきた。
「わかったよ… ララ、聞いているな? スイーツの出前を頼む、昼頃持ってきてくれ」
「スマホで話さないの?」
「どうせ、聞いているだろ…」
「そうだね… 聞いてるね…」
そのまま麻衣と兼次は、食事を再開する。そんな2人の不思議な行動を、ルディは不思議な顔つきで、黙って見ていた。彼は質問してはいけない感じを、2人から感じ取っていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鋼月の軌跡
チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル!
未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる