銀色の雲

火曜日の風

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3章 まず行動、目的は後からやってくる

6話 犬あるある

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 周辺の人々が寝静まり、日付を越えようとする時間帯。麻衣達が帰って来た宿屋の部屋の扉が勢いよく開き。その扉に、兼次が現れた。

「余は、満足である! 今宵の俺は、猫臭いぞ!」
「おかえりー、遅かったね」

 麻衣の返事を聞きながら兼次は、少し振り返り入って来たドアを閉め鍵をかける。そのまま振り返り、部屋を見渡すと。奥のベッドに座る2つの人影が視界に入る。そこには居ないはずの人物が、麻衣の横に座っていた。彼はルディを半口を開けながら見つめると、ルディも黙って彼を見上げていた。

 兼次の両肩の力が抜ける、長い溜息をしながら力なく進み膝を折ると、手前のベッドに上半身だげで飛び込んだ。

「お前、何してくれてんの? いくら可愛いからって、誘拐はダメだろう…」
「ちょっと、まって! 違うのー、違うってば! 聞いて、聞いて・・・」

 麻衣は両手を交差して、交互に何度も繰り返し。違うと言う事を強調し、事の次第を説明しようとした。

「わかった!」

 兼次は起き上がると、右手開き麻衣の前に差し出すと。彼女の言葉を遮り、これ以上話すなの仕草をすると。その手をドアの方に向けた。

「拾ってきたんだな? 麻衣よ、捨ててあった場所に置いて来い! さぁ、行け!」
「待ってよー! 私が責任もって、面倒見るから! いいでしょ飼って、いいよね?」

「お約束のセリフ、言ってんじゃねーよ」
「そう言う兼次ちゃんも、昔パパが言った言葉と、全く同じ」

 兼次はベッドを回り込み、麻衣達の対面に移動すると、そのままベットに腰かけた。手と足を組み、麻衣の隣にいるルディを、じっと見つめ始めた。

「で… 真面目な話だが。その犬っ子は?」
「ルディちゃんよ」

「名前を聞いてんじゃねーよ、何処で拾ってきたんだ?」
「だから、拾ってきたんじゃなくて、連れてきたの!」

「お前なーそれを、誘拐と言うんだぞ?」
「だから、そーじゃないんだって」

 兼次は足と手を崩し、両膝を足に置くと指を組む、そして頭をその上に置く。麻衣はその姿を確認すると、彼との出来事を話し始めた。兼次は、その話を同じ姿勢のまま、黙って聞いていた。

「・・・なるほど。おそらく敵国のスパイとして捕らえられたんだろう。今ごろは… 口を割らないなら、下の口に聞いてやる! と立ち代わり入れ替わり、攻められているだろうな。ふふふっ、ちょっと興奮してきた」
「兼次ちゃん、エロ漫画見すぎだよ・・・」

「よし麻衣… その犬娘の詳細スペックを言え。それから考える」

 兼次は目を閉じ、これから始まる麻衣から語られる、詳細データから姿の想像を始めた。

「ます身長は私より少し高いかな? 髪色は暗くて分かりにくかったけど、たぶん茶色いかな? ルディちゃんも茶色だし。で、前髪はバラバラしている感じ、後ろは肩甲骨のあたりまであって、首辺りで束ねていたわ。当然頭には犬耳があったわね。顔つきは、若干太めの眉だったね。鼻は低めで、口は小さかったね。口に犬歯が生えてたわ。可愛いと言うより、美形寄りの感じね。服装は街の人達と同じような服装だったわ、装飾のないワンピース状の服ね。腰のあたりで、紐で縛ってあったわ。こんな感じよ」

 兼次は、麻衣の言葉を聞生き終えると。上半身を起こし、組んで居た指を麻衣の方に出す。そして指を広げて膨らみを持たせる。そして指を、バラバラに動かした。 

「重要な部分が抜けているぞ? 胸と尻だ!」
「そのエロ手、やめってって… えー・・・胸はBかな? いやCに近いかな? お尻はいい形だったね、美憂ちゃんのを一回り大きくした感じ。足が長くて、モデル体型って感じかな」

 兼次はルディの方を見る、ルディは兼次と目が合うとすぐさま下を向く。隣の麻衣はそんな彼を優しく引き寄せる。

「なるほど、抱き心地は良さそうだな」
「あいかわらず、抱く前提なのね・・・ 当然… 助ける… よね?」

 麻衣は兼次を見ると、その目で『助けよう、助けよう』と無言で訴える。

「助けるのは簡単だろう。しかし、我々がお尋ね者になるぞ? 今後の行動に支障が出る」
「大丈夫でしょ? テレポートでサクッと連れて来ればね!」
「まぁ、いい… その辺は、明日考えよう。問題は、その後だが…」
「当然一緒に行動だよね? ルディちゃんと… 毎日… えへへへ…」

 兼次はそんな麻衣を見ると、立ち上がって声を張り上げた。

「一緒に行動だとー!」
「いいでしょ?」

「いいのか? 犬だぞ? 耐えられるのか?」
「え? 何を耐えるの?」

「その行動だ! 春先になると、お前に抱き着いて、腰をカクカクさせるんだぞ!」

 兼次はそう言いながら、立ち上がり腕をクロスする。そして「こんな風にだ!」と前後に素早く腰を振り始めた。

「そして、こう言う! おねーちゃーん、お股がおかしいよー… と腰のカクカクが、さらにスピードアーップ! さらに、あぅ… あぅ… あぅ… って言いながら、気持ちよさそうな顔をするんだぞ!」

「言わないし! カクカクもしないって! こんな可愛い子が、するわけないでしょ! ルディちゃんは、いい子です!」と麻衣はルディを横から抱きしめた「ねー? そんな事しないよねー?」と麻衣は頬をルディの頬を合わる。嫌がるルディをよそに麻衣は、彼の頬をスリスリし始めた。兼次はそんな姿の二人を見て、不機嫌な表情となった。そして右腕をその二人に差し出し、麻衣を指さす。

「さらーに! お前が、外出先から部屋に帰ってくるとしよう。すると、おかえりー… と言いながらー」と兼次は、座っている麻衣のスカートめがけて突進すると。彼女のスカートのまくり上げ、その中に頭を突っ込んだ。

「わっーーー、ちょっと、ちょっと」
「そして、クンクン… クンクン… と股の臭いを嗅ぐんだ」

 兼次は麻衣のスカートの中で、頭を左右に振る。そして鼻で荒く呼吸をはじめ、彼女の股の臭いを嗅いだ。麻衣は「こらー」と言いながら、その頭を押しのけた。

「そして、こう言う… おねーたん、くちゃい!」と兼次は、眉間にしわを寄せ鼻を摘まんで首を振った。
「くさくないわー!」

 麻衣は乱れたスカートを整えると、横のルディの腰に手を回し引き寄せた。そして上半身を曲げて、その顔を彼の腹部辺りまで下げると。そのまま彼を見上げる。

「ルディちゃん。おねーちゃんはいい匂いだよねー? ね?」
「う… うん。いい匂い?」

「お前… 言わせているだろう? まぁいい… 問題はそこじゃない」と兼次は、深い溜息と共に麻衣から離れる。そして対面のベッドに飛び込み、二人を見ると、横になり腕で頭を支えた。

「この惑星で犬族と人族は、文字通り犬猿の仲だ。連れて歩けないぞ?」
「っふ、大丈夫よ! 私に作戦があるわ」と麻衣は、アゴに手を当てて得意げな表情で言った。

「どうせ、変装させるんだろ?」
「なぜ、解った!」
「定番だな… 今日は遅いし、もう寝る。明日だ、明日!」
「はいはい、おやすみー。じゃぁ、寝よっか?」

 兼次はベッドに飛び込むと、仰向けになり目を閉じ眠り始めた。
 麻衣もルディを抱きしめながら、ベッドに横になった。

「おねーちゃん…」
「えへへへ… なにも、ないもしないからー、ねっ? ねよっか」

 麻衣は困惑の表情のルディを見ながら、彼の肩を引き寄せる。そして右手で頭の耳を、左手で尻尾を触り出した「はぁー」と幸せの笑みを浮かべ、彼女はルディと共に眠りについた。
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