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2章 伝説の聖女様現る
6話 休息の時に事件は起る
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2時間の道のりを歩き続けた瑠偉達は、小さな川の畔で休息をしていた。
瑠偉は畔にある倒れた丸太の上で座って休憩している、その後ろにララが音もなく立っていた。彼女は放心状態の様な感じで、腕を力なくぶら下げ地平線を見つめている。そして、何気なくその視線を上に向けた。
瑠偉が見上げた先は雲一つない場所で、銀色の物体が浮かんでいた。その物体は、彼女から見ればバケット程度の大きさと形があり、高度や距離を考えるとかなり大きい物である事が推測された。彼女は目を凝らして確認するが、距離が遠いせいか形状が細長い、と言う事ぐらいしか分からなかった。
「ララさん、アレは何でしょう?」と瑠偉は、垂れていた右腕を上げ銀色の物体を指さした。
「水銀の雲です。珍しいですね、初めて見ますか?」とララは、瑠偉の指した方向を見ることもなく即答した。
「水銀の雲ですか。始めて見ました・・・なっー…訳ないでしょ! 明らかに人工物ですよ! 宇宙船じゃないですか?」と瑠偉は、上げていた手を引っ込めると、勢いよくララが立っている方を振り返り彼女を見上げた。そして、振り返った瑠偉を、ララはしばらく無言で見返していた。
「わかりました…実は、あれは衛星です。この惑星を不定期な速度で公転しています」
「そうですか、変わった形の衛星ですね・・・・だっ…から冗談は、やめでください。衛星にしては高度が低すぎます。それに、ロッシュ限界を超えてます。むしろ静止軌道より低いでしょ!」
「なるほど、ロッシュ限界・・・お嬢様は博識ですね」
「一応、自由選択科目に天文学を専攻したので・・・」
「天文学ですか・・・異世界から帰る前準備ですか?」
「麻衣と一緒にしないでください! 実際にこの目で見てきたので、興味が湧いただけです。と言うか、話を逸らさないでください。アレですよアレ!」
少し激しい口調で言った瑠偉は、姿勢を元に戻すと再び浮かんでいる物体を指した。そして、頬を膨らまし怒り気味の表情で、頭だけで振り返りララを見上げた。
ララは腰を折り曲げると、右手で瑠偉の右腕を持ち下げる。そして彼女の耳元でささやいた。
「あまり騒がないでください、そして指さないないでください。関わりたくない相手です。詳しくは語りませんが、大人しくしていれば出会う事もないでしょう。くれぐれも、アレを刺激をしないでください。万が一が起きた場合、お嬢様を守り切れる自信がありません」
ララの言葉を聞いて、黙り込んでいた瑠偉。彼女はしばらくララの顔を見ていると、ララの額に<真剣な表情で>という日本語が、額に浮かんでいることに気づいた。
「あの、その額の文字は?」
「感情を文字で表現してみました。無表情の会話なので、説得力に欠けると思いまして」とララが言うと同時に、ララの額の文字は消え通常の肌色の額に戻った。
「そ、それ人前でやらないでくださいね。とりあえず、アレは私も関わりたくないです。これ以上の面倒は嫌ですからね」
「それがいいです。安心しました」
瑠偉は、そのまま前を向き、肩の力を抜いた。彼女の体は、背もたれのない丸太に座っているせいもあってか、背中が丸まっていた。彼女は背筋を伸ばし、両手で腰のあたりのマッサージを始める。それでも座り心地が悪いこともあって、今度は地面に直接座り丸太を背もたれにして休憩を始めた。
「お嬢様、足のマッサージでもしましょうか?」
「お願いします」
「わかりました。ただし、手の固さは我慢してください」
そう言ってララは瑠偉の前に来ると、丸太の前で体操座りをしている瑠偉の前で座る。そして、瑠偉の両膝を持つと勢いよく広げた。すると「きゃぁ」と言う可愛い声が、瑠偉の口から洩れる。瑠偉はすかさずワンピース状になっている、スカート部分を両腕で素早く抑え、ショーツが見えない様にブロックした。
「お嬢様、女同士です。そんなに強張らなくても」
「お、女同士と言うか…人ですらないでしょう・・・まさか録画してないですよね?」
「安心してください、録画はしません。中継をするだけです」
「いや、それもダメだから」
瑠偉は警戒しながら、服を太ももに巻き付け慎重に足を延ばす。ララに足を預けると、彼女は目を閉じマッサージの気持ちよさに浸っていた。
瑠偉は、背中を丸太に預け頭を載せる。ちょうど体全体が、丸太に沿って伸ばされる、気持ちよくなった彼女は、さらに両腕を上げて伸ばし全身の筋肉をほぐしていった。
「おーーーい! おーーーい!」
遠くから男性が叫ぶ声が聞こえる。その声に気づいた瑠偉は、目を開け足のマッサージをしているララに話しかけた。
「男性の呼ぶ声が、聞こえましたが?」
「声紋から判断すると、ザコさんです」
「ガフさんですよ! ザコさんって言ったら、本当に喧嘩になりますよ!」
「負けませんけどね」
ララはマッサージをやめると、立ち上がり再び瑠偉の後ろに回り待機状態になった。瑠偉も立ち上がり、お尻の砂埃を払うと丸太に腰かけた。
瑠偉達はしばらく待つと、例の馬の様な生き物に乗ったガフが、彼女達の前に現れた。さらにガフの後ろには、トッキア族の女性が乗った馬も居た。
「なんでしょうか・・・あの生き物は?」と、瑠偉は小さく馬の様な物を指す。
「アルパと言って、地球で言うところの馬の様な生き物です」
「そ、そうですか・・・あれが馬…ですか」
ガフはララ達の手前で、手綱を引きアルパを止める。その横にトッキア族の女性も、止まった。
「やっと見つけた。お前ら、領主様が合いたいそうだ。すぐ来てくれるか?」
ガフがそう言うと、ララは歩き出し彼の前に繰り出した。瑠偉は、そんなララが彼に<雑魚>と言わないか、心配そうに見ていた。
「ザコさん。領主様の要件は? 急ぎですか? 今私達は、仕事の途中です」
「ガフだ、ガフ! ザコじゃない、次言ったらマジで殴るからな!」
そう言ってガフは、右拳に力を入れる、さらに腕の筋肉をこわばらせララに誇示している。
「ガフ、落ち着け! 私から話す」
そう言ってガフの隣に居るトッキア族の女性が、アルパから降りララに近づいて来た。彼女の身長はララより低く、170cm位だろう。街の人間の女性と違い、動物の茶色い毛皮をワンピース状にして体を覆っている。その服の腰紐には、2つの短剣が刺さっている。髪は茶色で長く、手入れをしていないのか横に無造作に広がっている。そして、その頭には三角の耳がのっていた。全体的に彼女の肌色は、日焼けをしているのか若干浅黒かった。
そんな彼女は、ララの前に来ると腕を組むと。後ろに見える、お尻から生えた茶色の尻尾が、空中をフワフワと漂わせていた。
「クレハだ、よろしくな! 領主様がどうしても、と言うのでな。私達が追って来たのは、仕事を受けても帰って来ないない奴がいるからだ。特に外から来た奴とかは、帰ってこない場合がある。だから私達が探しに来た、と言う訳だ。あと、仕事は返せばいい。特に罰則もない、だから気にする必要はない」
「なるほど、そう言う訳ですか。それで領主様はどういう理由で、私達に会いたいわけですか?」
「まぁ、それは・・・行けば分かる。送っていくから、乗ってくれ。特にそっちで座っているお嬢さんに、会いたいそうだ。ちなみに多少強引になってでも、連れて来いって言われてるから、逃げない様に! あんな肉ダルマに抱き着かれるのは、嫌だろ?」
そう言ってクレハは、右親指を後ろ向きに出しガフを指した。指をさされたガフは不満そうな表情をしている。
「さっさと乗れ、街に帰るぞ!」
ガフは肉ダルマと言われ、機嫌が悪くなったようで。大声で張り上げた。
ララは乗れと言われて、乗る事が出来ない。何故なら体同士が密着して、固いロボットの体を、知られるわけにはいかないからだ。そこでララは、ある方法を考えついた。
「私達は女性なので、ガフさんと一緒に乗るのはちょっと・・・」
「と言われてもなー、少しの間だし、我慢できないのか?」
「解りました、ガフさん。降りてこちらまで来ていただけませんか?」
「あ‶あぁ、なぜだ?」
「来い! と言っているのです。雑魚の耳は、ついに腐ってしまいましたか?」
「お、お前…俺に恨みでもあるのか? 口悪すぎだぞ…ったく」
ガフはアルパから降りると、ララらに向かって歩いてきた。その時、ララは超高速でガフの正面に移動する。そして左手で彼の肩をつかむと、右拳でガフの腹に強力なボディフローをお見舞いした。ガフは「はぶぅ」と胃の空気が、全て抜けるような音を口から出す。そして膝が折れ、それを地面についた。
「お、お…ま…え、ふざ…っけんな、なにしやがる・・・」とガフは小声で言い残すと、両手で腹を押さえながら、前のめりで倒れ動かなくなった。
「あ、あんた・・・なにしたの?」とクレハは、一瞬の出来事で、目で追う事も止める事も出来きなかった。もちろん、ララの後ろにいた瑠偉も同様で、何が起こったのか見えなかった。しかし、ガフが腹を抱えて倒れていくのが見えた。そこで何かを察したようで、目をしかめ顔を引きつかせながら、この状況を静観していた。
「ガフさんは、突然お腹が痛くなったそうです。休憩するそうなので置いていきましょう」
ララはそう言うと、彼が乗っていたアルパにまたがり手綱を取る。そしてアルパの向きを変え、振り返った。
「お嬢様、私のアルパに乗って下さい。クレハさん、行きましょうか?」
クレハは、まだガフとララを交互に見て困惑しているようであった。「クレハさん?」とララに、また声を掛けられると。「まぁ…いいか・・・ガフ、あとでな」と言い、クレハもアルパの向きを変え始めた。
「お嬢様、行きましょうか!」
「あの…私の意見は? 話が勝手に進んでいくのだけど?」
「なら一人で行動しますか? 私は、マスターの元に戻りたいのですが?」
「えー・・・わかりましたよ! 行けばいいんでしょ、行けば!」
瑠偉はララの方まで進んでいく。ララは瑠偉の体を左手で持ち上げ、自身の前に乗せた。そして瑠偉は足を上げ、アルパに股がり手綱を握った。
「あ、あの・・・後ろじゃ駄目なの? 固い突起が二つ、私の背中に当たって痛いです」
「後ろだと、お嬢様が落ちた時に対応しきれません。我慢してください」
「私が先導する、ついてきてくれ」
クレハはそう言うと、アルパを動かし先に走り始めた。それに続いて、ララたちも街に向かって走り始めた。
瑠偉は畔にある倒れた丸太の上で座って休憩している、その後ろにララが音もなく立っていた。彼女は放心状態の様な感じで、腕を力なくぶら下げ地平線を見つめている。そして、何気なくその視線を上に向けた。
瑠偉が見上げた先は雲一つない場所で、銀色の物体が浮かんでいた。その物体は、彼女から見ればバケット程度の大きさと形があり、高度や距離を考えるとかなり大きい物である事が推測された。彼女は目を凝らして確認するが、距離が遠いせいか形状が細長い、と言う事ぐらいしか分からなかった。
「ララさん、アレは何でしょう?」と瑠偉は、垂れていた右腕を上げ銀色の物体を指さした。
「水銀の雲です。珍しいですね、初めて見ますか?」とララは、瑠偉の指した方向を見ることもなく即答した。
「水銀の雲ですか。始めて見ました・・・なっー…訳ないでしょ! 明らかに人工物ですよ! 宇宙船じゃないですか?」と瑠偉は、上げていた手を引っ込めると、勢いよくララが立っている方を振り返り彼女を見上げた。そして、振り返った瑠偉を、ララはしばらく無言で見返していた。
「わかりました…実は、あれは衛星です。この惑星を不定期な速度で公転しています」
「そうですか、変わった形の衛星ですね・・・・だっ…から冗談は、やめでください。衛星にしては高度が低すぎます。それに、ロッシュ限界を超えてます。むしろ静止軌道より低いでしょ!」
「なるほど、ロッシュ限界・・・お嬢様は博識ですね」
「一応、自由選択科目に天文学を専攻したので・・・」
「天文学ですか・・・異世界から帰る前準備ですか?」
「麻衣と一緒にしないでください! 実際にこの目で見てきたので、興味が湧いただけです。と言うか、話を逸らさないでください。アレですよアレ!」
少し激しい口調で言った瑠偉は、姿勢を元に戻すと再び浮かんでいる物体を指した。そして、頬を膨らまし怒り気味の表情で、頭だけで振り返りララを見上げた。
ララは腰を折り曲げると、右手で瑠偉の右腕を持ち下げる。そして彼女の耳元でささやいた。
「あまり騒がないでください、そして指さないないでください。関わりたくない相手です。詳しくは語りませんが、大人しくしていれば出会う事もないでしょう。くれぐれも、アレを刺激をしないでください。万が一が起きた場合、お嬢様を守り切れる自信がありません」
ララの言葉を聞いて、黙り込んでいた瑠偉。彼女はしばらくララの顔を見ていると、ララの額に<真剣な表情で>という日本語が、額に浮かんでいることに気づいた。
「あの、その額の文字は?」
「感情を文字で表現してみました。無表情の会話なので、説得力に欠けると思いまして」とララが言うと同時に、ララの額の文字は消え通常の肌色の額に戻った。
「そ、それ人前でやらないでくださいね。とりあえず、アレは私も関わりたくないです。これ以上の面倒は嫌ですからね」
「それがいいです。安心しました」
瑠偉は、そのまま前を向き、肩の力を抜いた。彼女の体は、背もたれのない丸太に座っているせいもあってか、背中が丸まっていた。彼女は背筋を伸ばし、両手で腰のあたりのマッサージを始める。それでも座り心地が悪いこともあって、今度は地面に直接座り丸太を背もたれにして休憩を始めた。
「お嬢様、足のマッサージでもしましょうか?」
「お願いします」
「わかりました。ただし、手の固さは我慢してください」
そう言ってララは瑠偉の前に来ると、丸太の前で体操座りをしている瑠偉の前で座る。そして、瑠偉の両膝を持つと勢いよく広げた。すると「きゃぁ」と言う可愛い声が、瑠偉の口から洩れる。瑠偉はすかさずワンピース状になっている、スカート部分を両腕で素早く抑え、ショーツが見えない様にブロックした。
「お嬢様、女同士です。そんなに強張らなくても」
「お、女同士と言うか…人ですらないでしょう・・・まさか録画してないですよね?」
「安心してください、録画はしません。中継をするだけです」
「いや、それもダメだから」
瑠偉は警戒しながら、服を太ももに巻き付け慎重に足を延ばす。ララに足を預けると、彼女は目を閉じマッサージの気持ちよさに浸っていた。
瑠偉は、背中を丸太に預け頭を載せる。ちょうど体全体が、丸太に沿って伸ばされる、気持ちよくなった彼女は、さらに両腕を上げて伸ばし全身の筋肉をほぐしていった。
「おーーーい! おーーーい!」
遠くから男性が叫ぶ声が聞こえる。その声に気づいた瑠偉は、目を開け足のマッサージをしているララに話しかけた。
「男性の呼ぶ声が、聞こえましたが?」
「声紋から判断すると、ザコさんです」
「ガフさんですよ! ザコさんって言ったら、本当に喧嘩になりますよ!」
「負けませんけどね」
ララはマッサージをやめると、立ち上がり再び瑠偉の後ろに回り待機状態になった。瑠偉も立ち上がり、お尻の砂埃を払うと丸太に腰かけた。
瑠偉達はしばらく待つと、例の馬の様な生き物に乗ったガフが、彼女達の前に現れた。さらにガフの後ろには、トッキア族の女性が乗った馬も居た。
「なんでしょうか・・・あの生き物は?」と、瑠偉は小さく馬の様な物を指す。
「アルパと言って、地球で言うところの馬の様な生き物です」
「そ、そうですか・・・あれが馬…ですか」
ガフはララ達の手前で、手綱を引きアルパを止める。その横にトッキア族の女性も、止まった。
「やっと見つけた。お前ら、領主様が合いたいそうだ。すぐ来てくれるか?」
ガフがそう言うと、ララは歩き出し彼の前に繰り出した。瑠偉は、そんなララが彼に<雑魚>と言わないか、心配そうに見ていた。
「ザコさん。領主様の要件は? 急ぎですか? 今私達は、仕事の途中です」
「ガフだ、ガフ! ザコじゃない、次言ったらマジで殴るからな!」
そう言ってガフは、右拳に力を入れる、さらに腕の筋肉をこわばらせララに誇示している。
「ガフ、落ち着け! 私から話す」
そう言ってガフの隣に居るトッキア族の女性が、アルパから降りララに近づいて来た。彼女の身長はララより低く、170cm位だろう。街の人間の女性と違い、動物の茶色い毛皮をワンピース状にして体を覆っている。その服の腰紐には、2つの短剣が刺さっている。髪は茶色で長く、手入れをしていないのか横に無造作に広がっている。そして、その頭には三角の耳がのっていた。全体的に彼女の肌色は、日焼けをしているのか若干浅黒かった。
そんな彼女は、ララの前に来ると腕を組むと。後ろに見える、お尻から生えた茶色の尻尾が、空中をフワフワと漂わせていた。
「クレハだ、よろしくな! 領主様がどうしても、と言うのでな。私達が追って来たのは、仕事を受けても帰って来ないない奴がいるからだ。特に外から来た奴とかは、帰ってこない場合がある。だから私達が探しに来た、と言う訳だ。あと、仕事は返せばいい。特に罰則もない、だから気にする必要はない」
「なるほど、そう言う訳ですか。それで領主様はどういう理由で、私達に会いたいわけですか?」
「まぁ、それは・・・行けば分かる。送っていくから、乗ってくれ。特にそっちで座っているお嬢さんに、会いたいそうだ。ちなみに多少強引になってでも、連れて来いって言われてるから、逃げない様に! あんな肉ダルマに抱き着かれるのは、嫌だろ?」
そう言ってクレハは、右親指を後ろ向きに出しガフを指した。指をさされたガフは不満そうな表情をしている。
「さっさと乗れ、街に帰るぞ!」
ガフは肉ダルマと言われ、機嫌が悪くなったようで。大声で張り上げた。
ララは乗れと言われて、乗る事が出来ない。何故なら体同士が密着して、固いロボットの体を、知られるわけにはいかないからだ。そこでララは、ある方法を考えついた。
「私達は女性なので、ガフさんと一緒に乗るのはちょっと・・・」
「と言われてもなー、少しの間だし、我慢できないのか?」
「解りました、ガフさん。降りてこちらまで来ていただけませんか?」
「あ‶あぁ、なぜだ?」
「来い! と言っているのです。雑魚の耳は、ついに腐ってしまいましたか?」
「お、お前…俺に恨みでもあるのか? 口悪すぎだぞ…ったく」
ガフはアルパから降りると、ララらに向かって歩いてきた。その時、ララは超高速でガフの正面に移動する。そして左手で彼の肩をつかむと、右拳でガフの腹に強力なボディフローをお見舞いした。ガフは「はぶぅ」と胃の空気が、全て抜けるような音を口から出す。そして膝が折れ、それを地面についた。
「お、お…ま…え、ふざ…っけんな、なにしやがる・・・」とガフは小声で言い残すと、両手で腹を押さえながら、前のめりで倒れ動かなくなった。
「あ、あんた・・・なにしたの?」とクレハは、一瞬の出来事で、目で追う事も止める事も出来きなかった。もちろん、ララの後ろにいた瑠偉も同様で、何が起こったのか見えなかった。しかし、ガフが腹を抱えて倒れていくのが見えた。そこで何かを察したようで、目をしかめ顔を引きつかせながら、この状況を静観していた。
「ガフさんは、突然お腹が痛くなったそうです。休憩するそうなので置いていきましょう」
ララはそう言うと、彼が乗っていたアルパにまたがり手綱を取る。そしてアルパの向きを変え、振り返った。
「お嬢様、私のアルパに乗って下さい。クレハさん、行きましょうか?」
クレハは、まだガフとララを交互に見て困惑しているようであった。「クレハさん?」とララに、また声を掛けられると。「まぁ…いいか・・・ガフ、あとでな」と言い、クレハもアルパの向きを変え始めた。
「お嬢様、行きましょうか!」
「あの…私の意見は? 話が勝手に進んでいくのだけど?」
「なら一人で行動しますか? 私は、マスターの元に戻りたいのですが?」
「えー・・・わかりましたよ! 行けばいいんでしょ、行けば!」
瑠偉はララの方まで進んでいく。ララは瑠偉の体を左手で持ち上げ、自身の前に乗せた。そして瑠偉は足を上げ、アルパに股がり手綱を握った。
「あ、あの・・・後ろじゃ駄目なの? 固い突起が二つ、私の背中に当たって痛いです」
「後ろだと、お嬢様が落ちた時に対応しきれません。我慢してください」
「私が先導する、ついてきてくれ」
クレハはそう言うと、アルパを動かし先に走り始めた。それに続いて、ララたちも街に向かって走り始めた。
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