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1章 猫耳を探しに行こう!
8話 第三勢力の痕跡
しおりを挟むオーグが俺達を見まわしている、特にララに興味を持ったらしく全身をくまなく見ている。
「そちらの灰色髪の方は、始めてみる服ですが・・・・シャーマンの方ですか?」
シャーマンとは文明が発達したての頃、神の言葉を聞き国の方針も決める呪術師。日本で言えば、卑弥呼みたいな存在だろう。そのシャーマンと言う言葉をここで聞けるとは、おそらく宗教も未発達であろうな。宗教が無いなら超能力を行使しても、異端者扱いとか、魔女とか悪魔とか、言われなくても済みそうだ。
「こいつは俺の家の使用人だ。それで、シャーマンとはなんだ? 」
「神の言葉を聞ける呪術師です。これから向かう街にもいますよ、とても偉大な方です」
神か・・・居ないのに、声を聞けるのか? 是非とも、そこを追及してみたいものだ。
その時「ご主人様、報告が」と、ララが手を口に当てて、俺に近寄ってきた。「あとで聞く」と、俺も小声で返す。
「神か・・・俺の国には居なかったが、本当に居るのか? 見たいものだな?」
どうせ呪術師とやらの作り話であろう。神と言う名を語り、信仰と言う名目で、人々を容易に支配できる。これでは、昔の地球と変わらない。この惑星でも、同じ歴史を歩むみたいだ。
「私も一度見たことがあります。光を発する銀色の乗り物で、空高くから舞い降りてきました。とても綺麗でしたよ」
光を発する? 銀の乗り物? それって、異星人じゃ? UFOだろ? 神じゃねーから!
古代文明は、異星人を神として崇め交流していた。と言うオカルト業界じゃ有名な話が、まさか事実だったとは。これを聞いたら、オカルト業界は、お祭り騒ぎになるだろうな。
「ご主人様、重要な案件が」と、ララが再び俺に耳打ちしてくる。もしかして、オーグの言っているUFOのことか? 「ちょっと、まて」と、麻衣の方を見る。
「麻衣、適当に会話していろ。俺はララと重要な話がある」
「もー、こんな変な状態でふらないでよー・・・おほん! 私達は・・・」と、麻衣はオーグ達に話し始めた。
「で、なんだ?」とララの方を向き、小声で話をつづける。
「怪しい通信を発見しました。この惑星の文明では、不可能な通信方式です」
なるほど、毒電波が降ってきた! というやつだな、壊れたのか?
「壊れてません!」
「まだ、何も言ってないだろ! で、通信の内容は?」
「傍受すると、感づかれます。発信源にナノマシンを寄生出来れば、可能ですが。発見されるリスクが高いです。それに、この通信方式に心当たりがあります」
「知り合いか?」
「知り合いではないですが、かなり危険な団体です」
「わかった。詳しくはオーグたちと別れてから聞く。警戒だけはしておいてくれ」
「あと、強力な力の使用はお控えください。奴らに感づかれてしまいます」
「わかった。なるべく控えるよ」
危険な団体か・・・まさか、宇宙海賊とかあるのか? いや、俺の本体にもそんな記録は無い。まぁ、あとで詳しく聞くとして、問題は俺の超能力の使用に制限が付いたことだ。あまり派手な行動をすると、その危険な団体の奴らに見つかってしまうと言う事か。ララでも警戒するとは、相当高度な科学文明を有するとみた、会ってみたい気もするが・・・
「・・・・で、こちらが妻の『ファルキア・ロート』です」
「妻だとぉーーー!!!」
オーグの妻と言う言葉に、鋭く反応し大声が出てしまった。張り上げた大声に反応して、ファルキアとオーグは、俺に注目した。
しかし妻、ありえない妻、豚顔でも結婚出来るとはおかしい。もしかして、この世界の男子は、全員豚顔なのか? いや、ファルキアの顔が地球人とほぼ同じだし、オーグだけの問題かもしれない。オーグは商人らしいし、裕福な体形もしているから、相当持っているだろう。
つまり、お金目当ての結婚か! あんな可愛い見た目で悪女なのか!
「ファルキアさん・・・それが目的か? 意外とやるな」
「えっ、何の話ですか?」
「悪い、こっちの話だ。気にしないでくれ」
「ところで、この寝ている方は大丈夫ですか? 先程から動いていないのですが、体調が悪いのですか?」
隣で壁に寄りかかり寝ている瑠偉を、ファルキアは心配そうな表情で見ている。
人妻属性を得た女に、この表情。さらに可愛く見える、略奪したいくらいだ。
「ああ、ちょっと病弱でな、今は薬で眠らせている。今は何をしても起きないから、気にしないでくれ」
「眠らせる事の出来る薬ですか・・・ 織田様、詳しくお聞かせ願えませんか?」
薬の話でオーグが反応をした。この惑星の文明レベルでは、睡眠薬などと言う物を作るのは、困難だろう。もし仕入れられる事が出来れば、高い金で売る事が出来るはずだ。
豚顔でも商人だったと言う事か・・・
「すまんが、我々の国でも秘匿の秘薬だ。教えるわけにはいかないな」
「そうですか、残念です。なら、購入はできませんか? お金は言い値で払います」
「すまんが、それも出来ない」
「・・・そうですか」
俺とオーグが会話をしいる最中、ファルキアは瑠偉のセーラ服に興味を持ったらしく。念入りに見ているし、触って感触も確かめている。ファルキアは特にスカートが気に入ったらしく、手に取って何度も感触を確かめている。
「あの、この生地は何と言う物でしょう? とても滑らかな触り心地です。そしてこの色は、どんな染料を使っているのですか?」
まずかったな、こいつらと接触する前に着替えた方がよかったかな? 俺達の服はナノマシンの服なので、簡単に変更できる。しかし瑠偉は突然来たので、ナノマシンの服は用意できていない。
引ん剝いて、全裸で持ち歩くわけもいかないだろう。むしろ、学生服を着ている時より目立つはずだ。後でクレームもくるしな・・・
どうするかな? 秘匿で済ませるか? 教えて、情報料を頂くか?
「ご主人様。黒の染料は、この惑星の文明レベルで作成は不可能です」と、ララが顔を寄せて小声で話しかけてきた。あいかわらずの、ナイスフォローだ。と言う事は、秘匿にするしかないのか。
「すまんが、俺は専門家じゃないので分からないな。だが欲しいのなら、売ることもできる。しかし、そいつの着替えは持ってきてないのでな・・・」と言いながら、ファルキアの様子をうかがう。興味を持ったのなら欲しいと思うだろう、オーグは商人だし金銭的に余裕があるはずだ。高値で売り付けて、滞在資金を手に入れるのも悪くはない。
「気に入ったのなら、ファルキアの着ている服と交換してはどうだ? 同額とはいかないが、差額の金銭は頂くぞ・・・」
ファルキアはオーグの方を振り向き、彼の様子を伺った。オーグは彼女に対して、少し頷いてから語り始めた。
「それなら、先程のお礼も兼ねて豆金1個でいかがでしょう?」
「豆金? すまないが、その価値が解らない。なにしろ始めてこの地に来たのでな」
「そうでしたね。豆金1個で豆銀100個の価値があります。その下に豆銅と言う物がありまして、豆銅100個で豆銀1個の価値になります。その豆銅3個で1食分の食事がとれます。街にある宿屋は、一泊2食付き2人部屋で豆銅20個程度で宿泊できます。さらに3分銅と言うのがありまして、これは30個で豆銅1個の価値です」
なるほど、1食1000円で換算すると・・・豆銅1個で333円ぐらいかな? いやまてよ、1食って言ってもピンキリだぞ。仮に333円とすると、333万円になる。相場がいまいち解らん。もしその金額だとすると、随分気前のいい値段である。
「ララ、JK汁の着いたセーラ服の取引価格は? もちろん日本価格だぞ」と手で口を隠して、ララに聞いてみる。ララは俺の方を向くと「使用者の顔レベルによりますが、高ランク使用者の顔写真と未洗濯臭い付きで、20万円前後で闇取引されています。正規ショップですと古着扱いになり、上下セットで1万円前後が相場です」
顔写真と臭い付きか・・・闇が深いな。
聞いといてなんだが、全く参考にならなかった。ここの経済に関しては街に着いてから調査が必要だろう。
「わかった、それで手を打とう」
「ありがとうございます」
「では、着替えてもよろしいですか?」
「今着替えるのか?」
「はい」
今すぐか・・・ファルキアはセーラ服が、とても気にった様だな。まぁ、この女のセーラ服姿も見れるし、断る理由がない。
「オーグ、馬車を止めろ。俺達は外に出て、着替え終えるのを待つとしよう」
「そうですね。わかりました」
オーグは壁を叩き、馬車の運転手に合図を送ると馬車は止まった。
「さて、男性陣は出るとしようか。ララ、頼んだぞ」
「お任せください、心得ております」
扉から出ようとした時、麻衣が俺の腕を引っ張った。
まさか気づいたのか?
「録画しちゃうんだぁ~? ダメだと思うんだぁ~? 瑠偉ちゃん怒るよ?」
「っち、察しがいいな。ララ、お前も出ろ。じゃあ麻衣、瑠偉の着せ替えは任せるぞ」
俺とオーグ、そしてララ。馬車の外に出て、両者の着替えを待つことにした。
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