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1章 猫耳を探しに行こう!
5話 オーク現る?
しおりを挟む俺は今、地球の中条に電話をして事の次第を説明している。一応は瑠偉の保護者となっているので、連絡をしておかないといけない。突然消えた学生がいるって、騒ぎになっているかもしれないからだ。
キプロスの最先端科学技術で、改造されたスマホで地球と電話ができる。量子通信により、通話エリアは宇宙全域で、時差無しで通話が可能である。こんな所で、それが役に立つとは、皮肉だな・・・
「よろこべ瑠偉! 10カ月の休学にしておいたぞ。しかし残念だった・・・なんと出席日数が足りずに、留年になったぞ! よかったな?」
俺の言葉を聞いて、瑠偉が無言でこちらを見ている。先程見せた、ハの字眉毛の微妙な表情をしている。俺も進級させてやりたかったが、中条が『世界政府のトップとしての、立場もある。一人だけ特別扱いは出来んな』と言ってきた。それでは仕方ないな、と俺が折れたわけだ。
「そう落ち込むなよ。俺のコネで来年は、美憂達と同じクラスにしてやったから。まぁ、元気出せ・・・」
「兼次ちゃん、顔が笑ってるよ?」
瑠偉に情けの言葉をかけている時に、麻衣が俺を覗きこんできた。どうやら、俺の本心が顔に出てしまったか。やっぱり、人の不幸って楽しいな。
「は…は…」と、力無き声が漏れてる瑠偉。俺に文句を言ってくると思いきや、何も言わずに再び地面と向かい合った。小さな声で「なぜ、私だけこんな目に・・・」と、言っているのが聞こえた。しかし、このまま永遠に落ち込んでる状態が、続くのも困る訳だが・・・
「麻衣、慰めてやれよ。親友だろ?」
「う、うん・・・」
麻衣は瑠偉に近づくと、瑠偉の前で地面に座り込み、足を崩した正座の姿勢をとった。手を握り顔の近くに上げ、二の腕で胸を挟み込んだ。それは、麻衣の大きな胸を、より強調させていた。胸の小さな瑠偉にとっては、嫌みでしかないだろう。
「城島センパイ! ドンマイ!」
先輩と言う言葉の時点で、瑠偉の右手だけが反応し素早く動いた。胸ポケットに、差し込まれているペンを握りしめる。その右手は鞭の様なしなりを見せ、麻衣の太ももに突き刺さった。
「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
痛みの悲鳴を発した麻衣は、太ももを手で押さえ飛び上がった。そのまま、空中で体を回転させたりして、縦横無尽に飛び回っている。
「太ももがぁー! モモがぁー! モモ肉がぁー!」
慰めろと言ったのに、なぜ煽るのだ? しかし、城島先輩か・・・来年は同級生から言われる事になるのだろうか。これは、ぜひとも見学しに行きたいな。来年は留学と言う形で、潜入するのもいいかもしれない。これは、楽しみが一つ増えたな。
「お前ら、遊んでないで行くぞ! ララ、近くの街までどれくらいだ?」
「比較的大きな街が、こちらの方向へ約120kmほどにあります」と、ララは地平線の彼方を指差し言った。
そこに「モモ肉が痛いんだってばー!」と、飛び回っていた麻衣が、俺の側までやってきた。その目は涙で少し潤っている。始めて突き刺さる瞬間を見たが、なかなかの破壊力の様だ。スカートから覗かせている太ももには、赤い斑点がくっきりと浮かび上がっていた。太ももに手を置き、回復させ・・・ついでに太ももの感触を、堪能しておこう。
「ほらよ、治してやったぞ」
「はぁー、ありがと」
「では、街の近くまで飛んでいくぞ。そこから歩きだな。ララ、瑠偉を頼む」
「かしこまりました」
俺の後ろで傍観していたララは、瑠偉の背後まで進んでいった。地面に座り込んでいる瑠偉を、腕ごと後ろから羽交い絞めにして、持ち上げる。突然浮かび上がった瑠偉は「えっ? なに?」と、振り返り少し口を開けながら、呆然とララを見つめていた。
「行くぞ!」
「いえーい! 街に行って、冒険者ギルドに登録だぁー!」
右手を突き上げて、瑠偉の存在すら忘れてそうな、ノリノリの麻衣。冒険者ギルドとか、存在しないと思うのだが。たとえあったとしても、そんな寄り道をする気は毛頭ない。この惑星で一生暮らす訳ではないしな。こんな低レベル文明の惑星で、快適生活は望めない、よって素早く行動して直ぐに帰還する。
俺は街に向けて飛びあがる、麻衣も俺に続いて飛びあがった。ララも瑠偉を抱きしめて、飛び上がっているはずだ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ! 高いから! 速いから! おろしてーー!」
飛び上がってからすぐに、後ろから女性特有の甲高い悲鳴が聞こえた。
ったく、足手まといだな・・・このまま連れて旅をするには、面倒な事態になりそうだ。なにより、抱けないしな。ララに警護をさせて、街に置いていくか?
それがいいな、そうしよう。だがララが居ないと、雑用を任せられないのが痛いが、そこは麻衣に何とかやってもらうしかないな。
「ご主人様、城島様が気絶しました」
「止まれ!」
俺はララに抱えられている瑠偉に近寄り、よく観察する・・・あれ? 瑠偉ってこんなに可愛かったっけ? なんでだろう? 胸もお尻も小ぶりで、典型的な日本人体系の瑠偉だが、何故か前見た時よりも可愛く見える。
そうか! 制服か…セーラ服か! 制服は女子を更に可愛く見せる、と言う都市伝説は本当だったようだな。俺は更に瑠偉に近寄り、スカートをまくり上げて中身をチェックした。
今回は、縞パンか・・・制服JKの縞パン・・・なんかいいな。
「いけないんだぁー、無抵抗な女の子にイタズラとかぁー」と、麻衣が俺の背後から、耳元でささやいてきた。
「漏らしてないか、チェックしただけだ。俺は保護者だしな」
「たとえ保護者だとしても、チェックする必要性が無いと思うけど?」
「うっさい、気絶しているうちに行くぞ!」
俺達は近くの街に向けて、再び飛びたった。
……
…
俺達は街の近くで地上に降り立つ、瑠偉はまだ気絶してる。ララは前に抱えていた瑠偉を、背中に背負いなおした。街の近くと言っても結構遠めであり、ここから街は見えない。所々に木が生えているが、視界を遮る物が無い草原である。よって、あまり近づきすぎると目撃される危険性がある。
10カ月の期間を滞在しなくてはいけないので、原住民とはトラブルは極力避けたい。トラブルを起こした結果、人目を避けて野宿生活とか耐えられないからだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
またしても女性の悲鳴、今日は悲鳴日和だな・・・
「っは、これは? もしかして馬車襲撃イベントかも! きっと盗賊に襲われているんだわ! 今助けに行くよぉー!」と麻衣は言うと、前方から聞こえた悲鳴に向かって、すばやく飛び立とうとした。その瞬間すかさず俺は、麻衣の後ろの長いフィッシュテールスカートの先端をつかんだ。
「待てよ! 厄介ごとに首を突っ込むな。と言うか、飛んで行こうとするな」
「ひゃぁー! スカート引っ張んないでよ!」
地上2m付近でスカートの引っ掛かりに気づいたのか、そこで麻衣は停止した。しかし、引っ張ったスカートは、ショーツと主にずり落ち。俺の目の前で、生半ケツを晒している。そして麻衣は、素早く体を回転させ、地面に降り立つと同時に、下がったスカートを整い始める。
「早く! 早く! 間に合わないよ?」
「とりあえず落ち着け。もう一度言うが、飛んで行くな。まずは、近くの木陰で様子見だ」
しばらく歩いて進んで行くと、目先100mほど先に馬車の様な物の後姿が見えた。近くの木陰に隠れ、先方の様子をうかがうと、剣を持った4人が馬車を囲っているのが見えた。
「見て見て! 貴族のご令嬢と護衛のオークが、盗賊に襲われているわよ!」
「なにオークって? この惑星に豚系の獣人は居ないはずだが」
剣を持った連中の矛先を見ると、確かにオークがいる・・・え? マジで?
そのオークの後ろには、小柄な女子がいた。どうやらオークはその女子を守っているようだ。
「ご主人様、あれはオークではなく。極度に太った人間です」
うん、なんかそんな気がした。
さて、どうするかな? 麻衣は助けてフラグを立てたいみたいだが、俺は素通りしたいのだが。麻衣が俺の側で、早く行こ! みたいな目で訴えかけている。
う~ん・・・どちらを選択するべきか、なやましいな。
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