銀色の雲

火曜日の風

文字の大きさ
上 下
5 / 91
1章 猫耳を探しに行こう!

4話 晴れ時々曇り、所によって人間が降るでしょう

しおりを挟む
 ワームホールを潜り抜けると、霧に包まれた空間に出た。どうやら雲の中の様だ。
 下を見ると先行した麻衣が、スカートを抑えながら落下している。上を見上げると、メイド服のスカートが、全てまくれ上がったララが居た。ララは下着を着用しておらず、マネキンの様なツルツル表面の、ロボットボディを晒していた。

 つまらない物を見てしまったな・・・
 しかし、初めてスカートの中を見たが。なぜに、あの場所にUSB端子が付いているんだ?
 まぁ、俺には関係ないか…

「麻衣止まれ、地上を確認してから降りるぞ」
「おっけぃ」

 雲を抜けた辺りで停止した。麻衣もララも、まくれ上がって乱れたスカートを整えている。

「ご主人様、ドキドキしましたか?」
「何言ってるんだ、するわけねーだろ」
「それは・・・残念です」

 行く前は、生体融合型ロボットで行こうとしていたララ。生体型はある部分を除けば、人間の女子と変わらない、戦闘能力も防御能力も人間と同等である。一応何かあるかは分からないので、いつも俺の側に控えている、最高性能ロボットで来てもらう事にした。
 よって金属ボディの裸体である、そんな物を見ても興奮するはずがない。そして、なぜ下着を履かないのかが疑問である、まぁ聞きたくもないが・・・

 下を見ると大地が見える。所々に短い雑草が生い茂り、まばらに10mほどの木が点在している。その木を縫うように、2本の線が長く続いている。おそらく馬車の様な物が、通った後だろう。地面を圧縮されていて、そこだけ草が生えていない。上空から見た感じでは、木も草も地球の植物と、さほど変わらないようだ。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 下を見ていると、上空から女子の悲鳴が聞こえた。悲鳴の聞こえた方を見上げると、濃い紺色のヒダ付きスカート、白のシャツに紺の襟が付いている。襟には赤色のリボンが結ばれている。よく見かける、セーラ服を着た女子学生と言うやつだ。

 その服を着ていると言う事は、日本の中学生か高校生だろう。その女子が俺達の上から、落ちてきていた。最初は手と足を振り回していて、飛ぼうとしていたのだろうか? 雲を抜けた辺りで、下を見たのか気絶した様子で動かなくなり、そのまま頭から落下を始めた。

 黒髪ストレートの女子・・・どこかで見たような顔つきだ。
 あっ・・・

「城島瑠偉か? ・・・なぜ?」
「瑠偉ちゃんが、落ちてきたよー」

 頭から落下してくる女子。俺達の側を通り過ぎようとした時、ララが素早く抱き止めた。

「ご主人様、人間が降ってきました」
「そんな物拾うんじゃない! 捨てなさい」

「はい」
「ちょっと、まって! なんで捨てるの? 瑠偉ちゃんだよ?」
「冗談だよ、本気にするなよ。地上に人影はないようだし、このまま降りるぞ!」

 ここに瑠偉が居るってことは、ワームホールから落ちてきたことになる。すると、このタイミングで浮遊島にテレポートしてきたことになる、しかもワームホールの真上に。
 なんというタイミングで、テレポートしてくるのだろうか・・・ 
 そして、なんという不幸な女なのだろう、天性の巻き込まれ体質なのか?

 上を見ると、ワームホールはすでに消えているので、もう地球に戻すことはできない。
 しかし、これから瑠偉を連れて旅をするのは、面倒になるな。特に恋人候補でもないし。
 そんな事を考えながら、ララに抱えられている瑠偉を見ながら、地上に降り立つ。

「いきなり予定を、変更される事態になったわけだが! どうしてくれるんだ?」
「だからぁー、私は瑠偉ちゃん達に連絡した方がー・・・って言ったよね?」

 そうだが、わざわざ平日の昼間で、しかも彼女達は学校で過ごしている。そんな状態でテレポートしてくるとは思わないだろう?
 とりあえず瑠偉の体を改造しないといけないな、このままだと紫外線とか、恒星の放射線などで死ぬ危険性がある。

「ララ、瑠偉を寝かせろ、体の改造を行う。目覚めないうちにな!」

 俺は苦しそうな顔つきで、気絶している瑠偉の体の改造を行う。
 素早く、迅速に、気づかれない様にな。

 右手を瑠偉の体に向け、俺の本体を繰り出す。瑠偉の体を包み込み、体の内部まで俺の本値を染み渡らせ改造を開始した。一度麻衣の体で行っているので、要領はえている。それに麻衣の体より、体積が小さいし早く終わるだろう。

 感覚的に2分ぐらいかな? 麻衣の時は10分程かかったので、俺も成長したようだ。
 瑠偉の体に、浸透させている俺の本体を引き上げる。瑠偉の顔を見ると、苦しみの表情から普通の寝顔に戻っていた。

「終わった、さすが俺。で、これからの行動だが・・・」
「瑠偉ちゃんも連れてくの?」

 麻衣が心配そうな顔つきで、俺を見ている。帰すにしても無理だしな・・・
 10か月後に帰ってもらうかだな。だがその時に、俺の目標が達成されていなかったら、俺達が帰るのは、更に10カ月先になる事に・・・っち、手間かけさせやがって。

「面倒だな・・・このまま知らないふりして、置いていくのはどうだろう?」
「ちょっと、冷たいわよ!」
「それが抱ける女と、抱けない女の差だ!」
「あいかわらず最低っすね」
「麻衣、まず瑠偉を起こせ。現状を理解させ、絶望を与えてやろう」

 麻衣は瑠偉の両肩を持ち、上半身を起こし瑠偉の上半身を、激しく前後に揺すった。頭が取れるんじゃないか? と言う勢いで、麻衣は瑠偉の肩を揺すっている。

「瑠偉ちゃーん、起きて、起きて! 起きてってばぁ、オッキッローー!」

 麻衣の揺らす肩とは、逆方向に揺れる瑠偉の頭。その強い揺れで瑠偉は目覚める。

「ちょっと、起きたから! やめてって、首痛いから!」

 瑠偉は、肩に置かれている麻衣の両手を払いのけた「麻衣? 久しぶりで・・・」と言いかけると同時に、俺と目が合った。その時点で不安がよぎったのか、素早く頭を回し辺り状況を確認した。そして、再び麻衣の正面に向いた。眉毛をハの字にして、微妙な表情をしている、気づいたか?

「なんか、すごく嫌な予感がしますが・・・ねぇ麻衣、ここは何処ですか?」
「一角獣座の方向に8万5千光年離れた、名も無き惑星よ! 今から犬耳のイケメンさんを探しに行くんだよ!」

 瑠偉は麻衣の返答を聞いて、半口を開けた「あ‶あ‶ぁぁ・・・」と、その口から怪しげな声が漏れていた。そして目線を俺に向けた。

「帰れますよね?」
「当然だろ。確実に帰れるから、来ているんだよ!」

 瑠偉は俺の返事を聞いて、肩を落とし大きく息を吐いた「よかったー」と、小さな声でつぶやいた。まだ安心するのは、まだ早いけどな。

「ただし! 来るときに、力を使い切ったのでな。回復時間を考慮して、帰還は地球時間で10カ月後となる」

「なっ!」と、大きく目を見開く瑠偉。そのまま、両手を地面に着け力なく倒れこんだ「な、なぜこうなる・・・なぜ? なぜだ」と、瑠偉は地面と会話を始めた・・・
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

第一機動部隊

桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。 祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎町に住んでいたロボット好きの宮本荒人は、交通事故に巻き込まれたことにより異世界に転生する。 転生した先は、古代魔法文明の遺跡を探索する探索者の集団……クランに所属する夫婦の子供、アラン。 ただし、アランには武器や魔法の才能はほとんどなく、努力に努力を重ねてもどうにか平均に届くかどうかといった程度でしかなかった。 だがそんな中、古代魔法文明の遺跡に潜った時に強制的に転移させられた先にあったのは、心核。 使用者の根源とも言うべきものをその身に纏うマジックアイテム。 この世界においては稀少で、同時に極めて強力な武器の一つとして知られているそれを、アランは生き延びるために使う。……だが、何故か身に纏ったのはファンタジー世界なのにロボット!? 剣と魔法のファンタジー世界において、何故か全高十八メートルもある人型機動兵器を手に入れた主人公。 当然そのような特別な存在が放っておかれるはずもなく……? 小説家になろう、カクヨムでも公開しています。

処理中です...