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1章 猫耳を探しに行こう!
1話 旅立ちの前に
しおりを挟む207x年、太平洋上空に浮かぶ浮遊都市リュボフは、16島で構成され約10万㎢の大きさがある。約1カ月前、全世界を侵食していた侵略者「死の流動体」を追って来た、異星人の居住区である。
その異星人については、全て謎に包まれていた。彼らは、地球を管理している世界政府組織[KamiyoHachiyo]と結託し、死の流動体を討伐を行った。討伐には成功したが、彼らには帰る場所がなかった。
世界政府は、彼らの恩義に敬意を払い<お互いに干渉しない>と言う条件で、地球に滞在することを許可した。現在は地球統一国家の中で、唯一の独立都市国家「リュボフ国」として存在している。
但し、それは表向きに公式で発表された、虚偽の事実である。
……
浮遊都市リュボフにて…
「では、第一回国民会議を始める」
日が沈んだ夜、浮遊都市リュボフの管理島の一室で、俺は高々に宣言をした。会議の部屋は俺の自室だ、何故自室でやっているかと言うと・・・
「兼次ちゃん・・・国民が3人しかいないよ?」
「いい質問だ麻衣よ、その為の会議なのだよ」
ベッドの脇にある円形テーブル、そこに俺と出雲 麻衣、白井 夜巳が座っている。俺の右後ろには、(自称)天の川銀河最強のAI<ララ>の制御する俺専属メイドロボが立っている。そのメイド服は揺れる事もなく、完全に静止していた。
「ちなみに夜巳は、子供なので参政権は無い。実質は2人だな」
「ダーリン、私は転生してるので、人生経験は豊富です! なので子供じゃありません!」
確かに十数回転生している夜巳は、人生経験は豊富である。だが肉体は10歳の子供である、その見た目年齢に引っ張られるように、子供っぽい仕草で、頬を膨らませプンプンしている。
知らない人が見たら、転生とかは、子供の妄想だと思うだろう。
「それを言ったら、私も17歳で未成年だけど?」
麻衣の年齢は、光速移動による停止時間がある。よって、実際の誕生日から計算すると63歳になる。麻衣とは肉体関係もあるので、便宜上63歳にしておこう。地上からは、干渉されないので、未成年と関係をもっても問題はないのだが・・・倫理的にな?
しかも、麻衣は63歳で国民登録されている。本人は言ってないし、しばらく黙っておこう。
「では会議の内容だが・・・」
「っは、スルーしたよ!」
「ダーリン、一方的過ぎですよ!」
今はくだらない年齢争いを、する時ではない。どうせ女は、さばを読むので何歳でもいいだろうに。
「ララに調査させていた、猫耳人族が居る惑星が見つかった。そこで、買ったり拉致ったりして、ここに連れてこようと思う。ではララ、詳しいデータを頼む」
置物のように静止していたララは、口を開き語り始める。女子2人は『買ったり拉致ったり』と言う言葉を聞いて、夜巳は若干目をしかめたが、麻衣は何故か口元が笑っていた。
「それでは調査結果を報告します。対象の惑星は、一角獣座の方向に地球から約8万5千光年離れた、現在地球では発見されていない恒星の第2惑星です。住んで居る住人は、地球上では獣人と呼ばれている外見の種族です。解りやすく言うと、犬・猫・猿の3種族が住んで居ます」
犬、猫、猿か・・・犬猿の仲とも言うし、お互いの仲は悪そうだな。
あとは猿系の生命体の見た目だな、地球人に見た目が似ていればいいのだが・・・
「大気の主成分は、酸素、窒素、二酸化炭素で、地球人でも呼吸可能です。その他は成層圏に水素やヘリウムなどが存在しますが、地上での呼吸には影響しません。
但し、その惑星はオゾン層と惑星磁気が存在しません。よって地上では、恒星からの放射線と、紫外線の影響に晒されます」
放射線と紫外線なら、俺の本体で常時吸収可能だであるから、俺は問題ない。
問題は麻衣だな、普通の地球人だから、どちらも体に影響が出る。最悪死んでしまうな、と言う事は俺一人で旅に出るのか? 一人旅は、心細いのだが・・・
「その放射線とかは、住人には影響はないのか?」
「その惑星の動物や植物は、放射線や紫外線を特殊なタンパク質で、エネルギーに変換して体内に蓄積します。そのエネルギーを使用することによって、地球人の3~6倍程度の運動能力を発揮します。さらに、なにやら不思議な能力も使えるようです。解りやすく言うと、気の様な物です」
「それって魔法だよね? 魔法だよね?」
不思議な能力と聞いた時点で、即座に麻衣が満面の笑みで反応する。
魔法は存在しないと、何度も言っているのだが・・・ここは無視して話を進めよう。
「それでララよ、ナノマシンでの先行調査は完了しているよな?」
「はい、特殊なタンパク質の配列データは取得済みです。ご主人様がそのデータを元に、体の改造を行えば、麻衣様や夜巳様でも、現地で活動が可能になります」
この為に俺の力と、ララの持っている最先端科学技術で作り上げた、ワームホール式天体望遠鏡。極小のワームホールを利用し、時差ゼロで天体観測が可能だ。しかも極小ワームホールから、ナノマシンを飛ばして対象の調査もできる優れものだ。未知の惑星に行く場合は、事前の準備が大事だからな。
「あとは、猿系の外見は俺達と似ているか? あとは彼らの文明どうだ」
「猿系の外見は地球人とほぼ同一です。紛れ込んでも怪しまれないでしょう。文明については・・・そうですね、日本で言えば平安時代に類似します。国境付近では、小競り合いがありますが、情勢は安定しています。科学文明は、純度の低い鉄器の作成が、ようやく可能になったレベルです。住居は種族によって異なりますが、石作りがメインです。食料は狩猟がまだ現役で、穀物栽培が始まったばかりとなります」
言葉だけでは若干分かりにくいな、その辺は行ってからのお楽しみでいいだろう。あまり前もって情報を仕入れておくと、つまらない旅になるだろうからな。問題は食事と風呂だな、文明レベルから行って、期待できそうにないな・・・それも、お楽しみの一つに取っておこう。
俺とララの会話の途中で、右手を顔のあたりまで上げ、麻衣が会話に割り込んできた。
「あの~兼次ちゃん?」
「麻衣よ、魔法は存在しないぞ?」
「それはいいとして、体の改造が軽く飛ばされたけど・・・ついでに~、とか言って、変な改造しないよね?」
「放射線や紫外線で、ガンになって死にたくないだろ? むしろ変な改造ってなんだ?」
麻衣の体は、前に改造済みだ。胸部とお尻の筋線維を強化している、垂れない様にな。
あとは、永久脱毛を施したな。不老で細胞の劣化もしない。
では、どこを改造するかだな・・・
「考え込んでいるところ悪いけど、これ以上の改造はダメだからね! 本当に異星人になちゃうから」
「脂肪細胞を減らして、太らない体質とかを、考えていたのだが・・・」
視線を麻衣のお腹辺りを見て、軽く鼻で笑ってみると、その視線に釣られるように、麻衣は自分のお腹を見た。
苦笑いをしながら「それは、ちょっと心惹かれる・・・」と首を横に向け、俺から線をずらす。
しばらく麻衣を見ていたが、改造するかしないかで悩んでいるのか、「ん~、ん~」と右手でアゴを抑えながら、横を向いたまま固まっている。
まぁ、こっそりやっておこう・・・どうせ気づかないだろうしな。
「ダーリン、私も行くんだよね? お留守番じゃないよね?」
「ああ当然だ。夜巳は明日は買い出しを頼む、行く準備を整えたいのでな」
夜巳の頭に手を載せながら諭すと、俺を見上げながら緩んだ口元から「へへへへ」と、可笑しな声が漏れていた。
「じゃあ夜巳、転生したと言っても体は子供だ、明日に備えて今日は早く休め」
「はーい」
夜巳は頭に乗っかっている、俺の手を両手でつかみ口元の寄せた。そして目を閉じ、俺の手の甲に口づけをした。「おやすみ~」と言いながら夜巳は去っていった。
手の甲を見る、唾液で濡れてるな…
隣の麻衣を見る、まだ考え中の様だ…
よし、麻衣のスカートで唾液を拭っておくか・・・
「ちょっとー! 見てたわよ!」
「寝てろ、起きたら全て終わってるから」
オデコに手を当て眠らせベッドに寝かせる。
では、体の改造を始めようか…
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