異世界召喚に巻き込まれ転移中に魔法陣から押し出され、ボッチで泣いてたらイケメン幼馴染が追いかけてきた件<改定版>

緒沢 利乃

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僕と幼馴染ともふもふと

プロポーズと親友宣言

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悠真の僕と比べてほんのちょっぴり逞しい体に抱き着いて、僕はぶわわわっと溢れる涙をそのままにえぐっえぐっと泣き出した。

あー、よかった! 僕、悠真に嫌われていたんじゃなかったんだー!
悠真は何でもできる凄い子どもだったけど、僕はのんびりした残念な子どもだったから、悠真もこんな僕の面倒みるのが嫌になったのかなー、て凹んでた。

でも違った! 僕と疎遠になったのは、悠真の家の事情から僕を守るためだったって。
また、一緒にいられるんだよね? として付き合ってくれるつもりだったんだー! わー、嬉しいなぁ。

その卒業の日に異世界に召喚されて、しかも僕は魔法陣から押し出されてボッチスタートだったのはとんだ不幸だったけど。

「よかった。また一緒にいられるなんて、嬉しいよ! 悠真……僕、迷惑かけちゃうと思うけど、これからもよろしくね」

改めて言うと照れるけど、どうしても僕の気持ちを伝えたくて、涙でぐちょぐちょの顔で悠真と目を合わせる。
悠真もほとんど表情筋が仕事放棄してるけど、眉をちょっと上げて驚いたあと、僅かに口元が綻んだようだった。

はっ! しまった。あとは、アレを確認しないと……。は、恥ずかしいけど……また、親友に戻れた僕たちなら、大丈夫だよね。

「そ、それでね、悠真。あのぅ、お城でのことなんだけど……」

どうして僕にキスしたの? いーやー、やっぱり聞けないよー、恥ずかしくて死んじゃう。
想像しただけで、僕の体温が急上昇して真っ赤になった顔が上げられないもん。
俯いた僕の旋風辺りに悠真の視線をめちゃくちゃ感じているけど。

「お城のこと?」

「………………うん」

ま、まさか、忘れているなんてないよね? そういえば……橘家はグローバル展開する世界的大企業の創業一族だ。
やっぱり、もしかして、キスなんて挨拶代わりなんだろうか? ひえええーっ。

「凛のこと好きだからだよ」

は? 今、なんて言った? もしかして僕の聞き間違い?
悠真が僕に「好き」って言ったように聞こえたけど? え!? ど、どどどどと、どういう意味で? 悠真の「好き」ってなに?
あああっ、僕ってば、耳がおかしくなっちゃったのかな?

「昔……約束したよね。ずっと一緒にいるって。そのときから凛への俺の気持ちは変わらない」

悠真は僕の両手をその大きな手で包んで、至近距離でふわっと花が綻ぶように微笑んだ。
わぁーっ、悠真は相変わらず顔面偏差値も高いね! 美人の微笑みに僕の頭はクラクラしちゃう……って現実逃避してる場合じゃなかった。

「えーっと、昔?」

「覚えてないかな? ほら幼稚園の卒園式で。桜の木の下」

幼稚園の卒園式……。そんなに前の話なの? まてよ、桜の木の下? …………あー、思い出した!

『りん。なかないで。おわかれじゃないよ。おなじがっこうだよ、ぼくたち』
『うぇっ。ぐす。ゆうまぁ。やだよぅ。いっしょにいるぅ。いっしょにおひるねして、ごはんたべるぅ。ずっといっしょだもん』
『うん。いっしょだよ。ずっといっしょだよ。おとなになっても、ぼくのとなりにいるのは、りんだけだよ』
『ゆうまぁ、だいしゅき』(友達として)
『ぼくも。りん、すきだよ』(生涯の伴侶として)

卒園式で友達と別れるのが悲しくてギャン泣きした僕を悠真が慰めてくれたっけ。ほのぼのとした思い出だ。

はっ! もしかしてそういうこと?
誤解だったけど、アデラさんという魔族に城に拉致された僕の恐怖心とかあれやこれやを慰めようと、幼稚園のときと同じく慰めてくれたのか!
あのとき、チュッて頬にキスしてくれたもんね、悠真。ずっと一緒にいるって約束だよって頬にキス……悠真も僕もかわいかったなぁ。
慰める方法がなんでキスなのかわからないけど、橘家では海外式なのかもしれない。さすがセレブな一族だ。
そっかあ、そういうことだったかぁ。

「うん、わかったよ、悠真、ありがとう。僕も悠真のこと好きだよ」

友達として、ううん親友として、悠真のことはずっと大好きだよ!

















俺の告白を笑顔で受け止めてくれた凛に、やっぱり改めてプロポーズしたのは正解だったと頷いた。
お互いに気持ちを確かめ合ったなら、次は物理的に繋がるべきだと思う。

それが正しい恋人同士だと思うのに……ちょっとローションとか用意している僅かな間に凛は熟睡していた。
しかも、あの毛玉を胸に抱きながら……。凛、こいつは汚いから放しなさい。

「ガルッ」

「うるさい。獣が。あっちにお前の寝床があるからそっちに行け」

ポーンとボールのように、毛玉を蹴り上げた。

「……っ。ううーん」

ヤバい。凛がゴロリと寝返りをうった。いや? 今ここで目を覚ましてもらえば愛の儀式に突入できるのでは?
しかし、俺の苦悩も知らずに、再びスヤスヤと眠る凛。

「……はあーっ」

俺は、すごすごと隣のベッドに潜り込む。
そうか、やっぱり初めてはこんな宿ではなく、もっと素敵な場所がいいよね!
あっちでは新しく建てられた都内のタワーマンションの最上階を用意しておいたけど、こっちの世界でも凛に相応しい屋敷を手に入れるよ!
そ、それまで……我慢するのか……。








翌朝、今までの憂いが無くなって気持ちよく目覚めた僕。

「おはよう、悠真」

「……ああ。おはよう」

気のせいかな? 悠真の目の下に隈ができているような?
ハハハ、まさかまさか。悠真の美貌は今日も最高です!

「ねえ、悠真。今日はをするの?」

僕の無邪気に問いかけに、朝食のスープを口に運んでいた悠真がブーッと噴き出した。

「え? ええーっ」

ゴホッゴホッと咳き込む悠真の背中を摩ってあげる。ヒョウガなんてもろに吐き出したスープを被って「キャウン」と泣いている。

「大丈夫?」

「な、なに。なにをスルって……なにって、……」

あれ? 悠真が壊れちゃった?
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