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僕と幼馴染ともふもふと
不穏な情報
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冒険者ギルドに再登録する前に、ご飯を食べることにします。
悠真がいろいろと屋台で買ってきてくれて、僕は大人しく広場に備えつけられたベンチで座って待っていました。
お肉の串焼きと野菜がゴロゴロ入ったミルクスープ、丸パンと果実水、わー美味しそう。
「いただきまーす」
ぎこちない悠真との関係を考えるとちょっと複雑だけど、お腹はペコペコだから遠慮なくいただきます。
あぐっと大きな肉串にかぶりつく。
モグモグと食事をしながら悠真の話を聞きます。
冒険者ギルドに再登録に行くけど、悠真は今のカードはなかったことにして新しく本名で登録したいって。悠真は、今まで偽名で登録していたらしい。
召喚された国で登録したから、念のため今までのギルドカードは破棄したいと。
僕も悠真同様に新しく登録したほうがいいのかな? でも、僕のことなんか召喚した人たちは知らないでしょ?
「あいつらは知っている。なるべく凛のことは隠したい」
悠真が険しい顔で言うけど、あいつらって、勇者になった尾花くんや悠真の友達のことでしょ? いやいや僕のことなんて眼中に入ってないと思うよー。ちょっと傷つくけど。
「でも、重複してギルトカードを作ったら必ずバレるって、説明されたような……」
確か、ギルドカードには魔力が登録されていて、魔力は同じ波動の人はほぼいないから、絶対に重複登録や犯罪を隠す人はバレるって説明を受けた気がする。
前の世界の指紋とか生体認証のイメージかな。
「俺は最初に作ったときに、魔力の質を誤魔化したから大丈夫。凛の分は……ギルドカードを貸して」
「はい」
悠真は、僕のギルドカードを右手に持ち左手で覆うように被せると、淡い光がポワッとして消えた。
え? 何したの?
口をポカーンと開けたまま、悠真を凝視してしまった。
「これで、大丈夫。このカードに登録してある凛の情報操作したから、ギルドで再登録できるよ」
ニッコリ笑って言う科白じゃないよね? それって偽造だよね? 詐欺だよね? 犯罪だよねーっ。
でも、僕は「ありがとう」と引き攣った顔でカードを受け取りました。
僕の幼馴染がチートで怖いよー。
凛との楽しい二人きりの食事のあと冒険者ギルドに行き、ギルト登録も無事に済ませることができた。
俺が操作したとおり凛の登録も問題なく済み、これで俺たちを召喚したクソベニドルム王国の追手も誤魔化すことができるだろう。
そして、逃亡先に選んだレウス王国。その王国の守護神ビルバオ辺境伯領。領主邸もある領都、ビルバオの町は人口も多く活気に満ちていた。
魔獣の出没も多いようで冒険者ギルドは今まで訪れたところで一番規模が大きく、冒険者もギルド職員もいっぱいいた。
なんとなく受付で俺の素性を疑われそうだったので、入国のときに顔見知りになった金ピカ頭の名前を出しておいた。
利用できるものは使わないと。そうしたら、あのとき倒したブラックウルフの取り分の金をもらった。
あいつ、律儀な奴だな。
ギルドで新婚夫婦にお勧めの宿屋を聞いて、大通りに戻った。
「よかったね。バレずに登録できて」
凛は新しい冒険者ギルドカードをニコニコとかわいい顔で眺めている。
俺はその姿をうっとりと見つめ、ギルドで仕入れた情報を頭の中で精査した。
まずベニドルム王国がやらかした異世界人の召喚についてはまだ知られていなかった。だが、ベニドルム王国が近く周辺国に戦を仕掛けるのでは? という噂は出回っている。
やっぱりあの国は評判がよくなかったようだ。王家の腐りぐあいと政治の腐敗、高位貴族の横暴と教会との癒着……なんだ、斃れる寸前じゃないか。
あいつら、そんな国に利用されてていいのか? ま、俺には関係ないけどな。
もう一つ、気がかりなのは魔獣の活発化だ。金ピカ頭も危惧していたが、どうやら魔獣たちがあちらこちらで目撃されいるらしい。しかも、人里には出てこない高ランク魔獣の目撃情報もある。
門番が心配していたスタンピードの可能性を冒険者ギルドも考えていた。
近いうちに調査として領軍の騎士たちと冒険者たちが森や山に派遣されるだろう。いや、俺には関係ないが……。
ただ……気になるキーワードがあった。
「……魔王」
「悠真、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
冒険者ギルドが考えていた可能性のもう一つが魔王復活だ。
俺が勇者として召喚されたが、あの国の戦力として召されただけで、いわゆる勇者に対しての魔王の存在があるなんて信じていなかった。
けれど、この世界には過去魔王は存在していたし、勇者や聖女が討伐した記録もあるらしい。
……偶然か? 俺たちがこの世界に召喚されたのと、魔獣の活発化は?
「そういえば、アデラさんたちも話してたなぁ、魔王様のこと」
「凛?」
「アデラさんたち魔族は魔王様の臣下で、魔王様が復活するまでは自由にしていいって言ってた」
魔族が魔王の臣下? じゃあ、魔獣や魔物も臣下なのか? そもそもあいつらに誰かを主に戴く知能なんてあるのか?
「ふふふ。悠真が勇者だから、魔王様もどこかで復活していたりしてね」
無邪気に笑う凛に呆れたため息を漏らす。
「あ、でも冒険者パーティーがアレじゃ、苦戦しちゃうよ。悠真一人じゃたいへんだよね?」
「一人でも平気さ。凛が一緒なら」
そう、凛を守るためなら、俺は魔王だろうが神だろうが倒してみせる。
それが、昔の、俺たちの約束だから……。
悠真がいろいろと屋台で買ってきてくれて、僕は大人しく広場に備えつけられたベンチで座って待っていました。
お肉の串焼きと野菜がゴロゴロ入ったミルクスープ、丸パンと果実水、わー美味しそう。
「いただきまーす」
ぎこちない悠真との関係を考えるとちょっと複雑だけど、お腹はペコペコだから遠慮なくいただきます。
あぐっと大きな肉串にかぶりつく。
モグモグと食事をしながら悠真の話を聞きます。
冒険者ギルドに再登録に行くけど、悠真は今のカードはなかったことにして新しく本名で登録したいって。悠真は、今まで偽名で登録していたらしい。
召喚された国で登録したから、念のため今までのギルドカードは破棄したいと。
僕も悠真同様に新しく登録したほうがいいのかな? でも、僕のことなんか召喚した人たちは知らないでしょ?
「あいつらは知っている。なるべく凛のことは隠したい」
悠真が険しい顔で言うけど、あいつらって、勇者になった尾花くんや悠真の友達のことでしょ? いやいや僕のことなんて眼中に入ってないと思うよー。ちょっと傷つくけど。
「でも、重複してギルトカードを作ったら必ずバレるって、説明されたような……」
確か、ギルドカードには魔力が登録されていて、魔力は同じ波動の人はほぼいないから、絶対に重複登録や犯罪を隠す人はバレるって説明を受けた気がする。
前の世界の指紋とか生体認証のイメージかな。
「俺は最初に作ったときに、魔力の質を誤魔化したから大丈夫。凛の分は……ギルドカードを貸して」
「はい」
悠真は、僕のギルドカードを右手に持ち左手で覆うように被せると、淡い光がポワッとして消えた。
え? 何したの?
口をポカーンと開けたまま、悠真を凝視してしまった。
「これで、大丈夫。このカードに登録してある凛の情報操作したから、ギルドで再登録できるよ」
ニッコリ笑って言う科白じゃないよね? それって偽造だよね? 詐欺だよね? 犯罪だよねーっ。
でも、僕は「ありがとう」と引き攣った顔でカードを受け取りました。
僕の幼馴染がチートで怖いよー。
凛との楽しい二人きりの食事のあと冒険者ギルドに行き、ギルト登録も無事に済ませることができた。
俺が操作したとおり凛の登録も問題なく済み、これで俺たちを召喚したクソベニドルム王国の追手も誤魔化すことができるだろう。
そして、逃亡先に選んだレウス王国。その王国の守護神ビルバオ辺境伯領。領主邸もある領都、ビルバオの町は人口も多く活気に満ちていた。
魔獣の出没も多いようで冒険者ギルドは今まで訪れたところで一番規模が大きく、冒険者もギルド職員もいっぱいいた。
なんとなく受付で俺の素性を疑われそうだったので、入国のときに顔見知りになった金ピカ頭の名前を出しておいた。
利用できるものは使わないと。そうしたら、あのとき倒したブラックウルフの取り分の金をもらった。
あいつ、律儀な奴だな。
ギルドで新婚夫婦にお勧めの宿屋を聞いて、大通りに戻った。
「よかったね。バレずに登録できて」
凛は新しい冒険者ギルドカードをニコニコとかわいい顔で眺めている。
俺はその姿をうっとりと見つめ、ギルドで仕入れた情報を頭の中で精査した。
まずベニドルム王国がやらかした異世界人の召喚についてはまだ知られていなかった。だが、ベニドルム王国が近く周辺国に戦を仕掛けるのでは? という噂は出回っている。
やっぱりあの国は評判がよくなかったようだ。王家の腐りぐあいと政治の腐敗、高位貴族の横暴と教会との癒着……なんだ、斃れる寸前じゃないか。
あいつら、そんな国に利用されてていいのか? ま、俺には関係ないけどな。
もう一つ、気がかりなのは魔獣の活発化だ。金ピカ頭も危惧していたが、どうやら魔獣たちがあちらこちらで目撃されいるらしい。しかも、人里には出てこない高ランク魔獣の目撃情報もある。
門番が心配していたスタンピードの可能性を冒険者ギルドも考えていた。
近いうちに調査として領軍の騎士たちと冒険者たちが森や山に派遣されるだろう。いや、俺には関係ないが……。
ただ……気になるキーワードがあった。
「……魔王」
「悠真、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
冒険者ギルドが考えていた可能性のもう一つが魔王復活だ。
俺が勇者として召喚されたが、あの国の戦力として召されただけで、いわゆる勇者に対しての魔王の存在があるなんて信じていなかった。
けれど、この世界には過去魔王は存在していたし、勇者や聖女が討伐した記録もあるらしい。
……偶然か? 俺たちがこの世界に召喚されたのと、魔獣の活発化は?
「そういえば、アデラさんたちも話してたなぁ、魔王様のこと」
「凛?」
「アデラさんたち魔族は魔王様の臣下で、魔王様が復活するまでは自由にしていいって言ってた」
魔族が魔王の臣下? じゃあ、魔獣や魔物も臣下なのか? そもそもあいつらに誰かを主に戴く知能なんてあるのか?
「ふふふ。悠真が勇者だから、魔王様もどこかで復活していたりしてね」
無邪気に笑う凛に呆れたため息を漏らす。
「あ、でも冒険者パーティーがアレじゃ、苦戦しちゃうよ。悠真一人じゃたいへんだよね?」
「一人でも平気さ。凛が一緒なら」
そう、凛を守るためなら、俺は魔王だろうが神だろうが倒してみせる。
それが、昔の、俺たちの約束だから……。
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