31 / 43
僕と幼馴染ともふもふと
不穏な情報
しおりを挟む
冒険者ギルドに再登録する前に、ご飯を食べることにします。
悠真がいろいろと屋台で買ってきてくれて、僕は大人しく広場に備えつけられたベンチで座って待っていました。
お肉の串焼きと野菜がゴロゴロ入ったミルクスープ、丸パンと果実水、わー美味しそう。
「いただきまーす」
ぎこちない悠真との関係を考えるとちょっと複雑だけど、お腹はペコペコだから遠慮なくいただきます。
あぐっと大きな肉串にかぶりつく。
モグモグと食事をしながら悠真の話を聞きます。
冒険者ギルドに再登録に行くけど、悠真は今のカードはなかったことにして新しく本名で登録したいって。悠真は、今まで偽名で登録していたらしい。
召喚された国で登録したから、念のため今までのギルドカードは破棄したいと。
僕も悠真同様に新しく登録したほうがいいのかな? でも、僕のことなんか召喚した人たちは知らないでしょ?
「あいつらは知っている。なるべく凛のことは隠したい」
悠真が険しい顔で言うけど、あいつらって、勇者になった尾花くんや悠真の友達のことでしょ? いやいや僕のことなんて眼中に入ってないと思うよー。ちょっと傷つくけど。
「でも、重複してギルトカードを作ったら必ずバレるって、説明されたような……」
確か、ギルドカードには魔力が登録されていて、魔力は同じ波動の人はほぼいないから、絶対に重複登録や犯罪を隠す人はバレるって説明を受けた気がする。
前の世界の指紋とか生体認証のイメージかな。
「俺は最初に作ったときに、魔力の質を誤魔化したから大丈夫。凛の分は……ギルドカードを貸して」
「はい」
悠真は、僕のギルドカードを右手に持ち左手で覆うように被せると、淡い光がポワッとして消えた。
え? 何したの?
口をポカーンと開けたまま、悠真を凝視してしまった。
「これで、大丈夫。このカードに登録してある凛の情報操作したから、ギルドで再登録できるよ」
ニッコリ笑って言う科白じゃないよね? それって偽造だよね? 詐欺だよね? 犯罪だよねーっ。
でも、僕は「ありがとう」と引き攣った顔でカードを受け取りました。
僕の幼馴染がチートで怖いよー。
凛との楽しい二人きりの食事のあと冒険者ギルドに行き、ギルト登録も無事に済ませることができた。
俺が操作したとおり凛の登録も問題なく済み、これで俺たちを召喚したクソベニドルム王国の追手も誤魔化すことができるだろう。
そして、逃亡先に選んだレウス王国。その王国の守護神ビルバオ辺境伯領。領主邸もある領都、ビルバオの町は人口も多く活気に満ちていた。
魔獣の出没も多いようで冒険者ギルドは今まで訪れたところで一番規模が大きく、冒険者もギルド職員もいっぱいいた。
なんとなく受付で俺の素性を疑われそうだったので、入国のときに顔見知りになった金ピカ頭の名前を出しておいた。
利用できるものは使わないと。そうしたら、あのとき倒したブラックウルフの取り分の金をもらった。
あいつ、律儀な奴だな。
ギルドで新婚夫婦にお勧めの宿屋を聞いて、大通りに戻った。
「よかったね。バレずに登録できて」
凛は新しい冒険者ギルドカードをニコニコとかわいい顔で眺めている。
俺はその姿をうっとりと見つめ、ギルドで仕入れた情報を頭の中で精査した。
まずベニドルム王国がやらかした異世界人の召喚についてはまだ知られていなかった。だが、ベニドルム王国が近く周辺国に戦を仕掛けるのでは? という噂は出回っている。
やっぱりあの国は評判がよくなかったようだ。王家の腐りぐあいと政治の腐敗、高位貴族の横暴と教会との癒着……なんだ、斃れる寸前じゃないか。
あいつら、そんな国に利用されてていいのか? ま、俺には関係ないけどな。
もう一つ、気がかりなのは魔獣の活発化だ。金ピカ頭も危惧していたが、どうやら魔獣たちがあちらこちらで目撃されいるらしい。しかも、人里には出てこない高ランク魔獣の目撃情報もある。
門番が心配していたスタンピードの可能性を冒険者ギルドも考えていた。
近いうちに調査として領軍の騎士たちと冒険者たちが森や山に派遣されるだろう。いや、俺には関係ないが……。
ただ……気になるキーワードがあった。
「……魔王」
「悠真、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
冒険者ギルドが考えていた可能性のもう一つが魔王復活だ。
俺が勇者として召喚されたが、あの国の戦力として召されただけで、いわゆる勇者に対しての魔王の存在があるなんて信じていなかった。
けれど、この世界には過去魔王は存在していたし、勇者や聖女が討伐した記録もあるらしい。
……偶然か? 俺たちがこの世界に召喚されたのと、魔獣の活発化は?
「そういえば、アデラさんたちも話してたなぁ、魔王様のこと」
「凛?」
「アデラさんたち魔族は魔王様の臣下で、魔王様が復活するまでは自由にしていいって言ってた」
魔族が魔王の臣下? じゃあ、魔獣や魔物も臣下なのか? そもそもあいつらに誰かを主に戴く知能なんてあるのか?
「ふふふ。悠真が勇者だから、魔王様もどこかで復活していたりしてね」
無邪気に笑う凛に呆れたため息を漏らす。
「あ、でも冒険者パーティーがアレじゃ、苦戦しちゃうよ。悠真一人じゃたいへんだよね?」
「一人でも平気さ。凛が一緒なら」
そう、凛を守るためなら、俺は魔王だろうが神だろうが倒してみせる。
それが、昔の、俺たちの約束だから……。
悠真がいろいろと屋台で買ってきてくれて、僕は大人しく広場に備えつけられたベンチで座って待っていました。
お肉の串焼きと野菜がゴロゴロ入ったミルクスープ、丸パンと果実水、わー美味しそう。
「いただきまーす」
ぎこちない悠真との関係を考えるとちょっと複雑だけど、お腹はペコペコだから遠慮なくいただきます。
あぐっと大きな肉串にかぶりつく。
モグモグと食事をしながら悠真の話を聞きます。
冒険者ギルドに再登録に行くけど、悠真は今のカードはなかったことにして新しく本名で登録したいって。悠真は、今まで偽名で登録していたらしい。
召喚された国で登録したから、念のため今までのギルドカードは破棄したいと。
僕も悠真同様に新しく登録したほうがいいのかな? でも、僕のことなんか召喚した人たちは知らないでしょ?
「あいつらは知っている。なるべく凛のことは隠したい」
悠真が険しい顔で言うけど、あいつらって、勇者になった尾花くんや悠真の友達のことでしょ? いやいや僕のことなんて眼中に入ってないと思うよー。ちょっと傷つくけど。
「でも、重複してギルトカードを作ったら必ずバレるって、説明されたような……」
確か、ギルドカードには魔力が登録されていて、魔力は同じ波動の人はほぼいないから、絶対に重複登録や犯罪を隠す人はバレるって説明を受けた気がする。
前の世界の指紋とか生体認証のイメージかな。
「俺は最初に作ったときに、魔力の質を誤魔化したから大丈夫。凛の分は……ギルドカードを貸して」
「はい」
悠真は、僕のギルドカードを右手に持ち左手で覆うように被せると、淡い光がポワッとして消えた。
え? 何したの?
口をポカーンと開けたまま、悠真を凝視してしまった。
「これで、大丈夫。このカードに登録してある凛の情報操作したから、ギルドで再登録できるよ」
ニッコリ笑って言う科白じゃないよね? それって偽造だよね? 詐欺だよね? 犯罪だよねーっ。
でも、僕は「ありがとう」と引き攣った顔でカードを受け取りました。
僕の幼馴染がチートで怖いよー。
凛との楽しい二人きりの食事のあと冒険者ギルドに行き、ギルト登録も無事に済ませることができた。
俺が操作したとおり凛の登録も問題なく済み、これで俺たちを召喚したクソベニドルム王国の追手も誤魔化すことができるだろう。
そして、逃亡先に選んだレウス王国。その王国の守護神ビルバオ辺境伯領。領主邸もある領都、ビルバオの町は人口も多く活気に満ちていた。
魔獣の出没も多いようで冒険者ギルドは今まで訪れたところで一番規模が大きく、冒険者もギルド職員もいっぱいいた。
なんとなく受付で俺の素性を疑われそうだったので、入国のときに顔見知りになった金ピカ頭の名前を出しておいた。
利用できるものは使わないと。そうしたら、あのとき倒したブラックウルフの取り分の金をもらった。
あいつ、律儀な奴だな。
ギルドで新婚夫婦にお勧めの宿屋を聞いて、大通りに戻った。
「よかったね。バレずに登録できて」
凛は新しい冒険者ギルドカードをニコニコとかわいい顔で眺めている。
俺はその姿をうっとりと見つめ、ギルドで仕入れた情報を頭の中で精査した。
まずベニドルム王国がやらかした異世界人の召喚についてはまだ知られていなかった。だが、ベニドルム王国が近く周辺国に戦を仕掛けるのでは? という噂は出回っている。
やっぱりあの国は評判がよくなかったようだ。王家の腐りぐあいと政治の腐敗、高位貴族の横暴と教会との癒着……なんだ、斃れる寸前じゃないか。
あいつら、そんな国に利用されてていいのか? ま、俺には関係ないけどな。
もう一つ、気がかりなのは魔獣の活発化だ。金ピカ頭も危惧していたが、どうやら魔獣たちがあちらこちらで目撃されいるらしい。しかも、人里には出てこない高ランク魔獣の目撃情報もある。
門番が心配していたスタンピードの可能性を冒険者ギルドも考えていた。
近いうちに調査として領軍の騎士たちと冒険者たちが森や山に派遣されるだろう。いや、俺には関係ないが……。
ただ……気になるキーワードがあった。
「……魔王」
「悠真、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
冒険者ギルドが考えていた可能性のもう一つが魔王復活だ。
俺が勇者として召喚されたが、あの国の戦力として召されただけで、いわゆる勇者に対しての魔王の存在があるなんて信じていなかった。
けれど、この世界には過去魔王は存在していたし、勇者や聖女が討伐した記録もあるらしい。
……偶然か? 俺たちがこの世界に召喚されたのと、魔獣の活発化は?
「そういえば、アデラさんたちも話してたなぁ、魔王様のこと」
「凛?」
「アデラさんたち魔族は魔王様の臣下で、魔王様が復活するまでは自由にしていいって言ってた」
魔族が魔王の臣下? じゃあ、魔獣や魔物も臣下なのか? そもそもあいつらに誰かを主に戴く知能なんてあるのか?
「ふふふ。悠真が勇者だから、魔王様もどこかで復活していたりしてね」
無邪気に笑う凛に呆れたため息を漏らす。
「あ、でも冒険者パーティーがアレじゃ、苦戦しちゃうよ。悠真一人じゃたいへんだよね?」
「一人でも平気さ。凛が一緒なら」
そう、凛を守るためなら、俺は魔王だろうが神だろうが倒してみせる。
それが、昔の、俺たちの約束だから……。
745
お気に入りに追加
1,496
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる