10 / 14
百合の匂いに誘われて
ユリウス殿下は苦労性
しおりを挟む
Ωの俺は、αの存在に敏感だと思う。
なんとなくこいつはαだってわかる……気がする。
まあ、育った生家がα系の家系で兄ちゃん二人ともバリバリのαだったしな。
で、何が言いたいかというと……こいつは生粋のα! 究極のα! αの中のα! と判断した。
この世界にαとかの概念はないらしいけど……。そういう性別もないけど……。
いつまでも跪いていたら、こちらの居心地が悪いので、とっととソファに座ってもらおう。
随行してきたお付きの人は二名。
王子より年配の男たちは、ユリウス王子の後ろにピタッと立つ。
ツバキさんたちが楚々とお茶とお菓子をサーブして、こちらは俺の後ろに控える。
シーン……。
沈黙。
え? 何か言えよ?
俺はユリウス王子を見たまま、お茶をひと口飲む。
これは普通の紅茶だけど、美味しい。
「……神子様。先日は我が弟の暴挙、無礼……申し訳ありませんでした」
とまたもや、俺に頭を下げる。
「ああ……。それは……ね」
アンタが頭を下げたから許せるってもんでもないしな……。
俺に謝るんじゃなくて、あの馬鹿王子の教育をなんとかして欲しいよ。
サハラーン国に行ったら、また会っちゃうし。
「その話をすると先に進まないから、とりあえず後回しにしてもらって。俺はルイ・タテワキ。ルイって名前で呼んでくれ」
そろそろと頭を上げて、困惑気味に眉を寄せててもイケメンだな、こいつ。
金髪は金髪でも明るい金髪でキッラキラしてやがるし、どこぞのハリウッドスターのような容貌。
男っぽい容姿たげど、綺麗でもある……。
特に紫色の眼は宝石のようで、ついつい見てしまう。
体つきもデカイな……。
手足も長いって腹立つな。
モデル体型……アスリート体型? 鍛えてるのがちゃんとわかる筋肉ですね!
「名前で呼ぶのは……不敬では?」
「俺が異世界から召喚されたのは知っているでしょ? 俺の国では身分制度がなく、身分に寛容というか、頓着無いところだったので。そもそも神子様て呼ばれるのは好きじゃない」
自分が神子だなんて思ってもないのに、勝手に担ぎ上げられて敬われてもねぇ、気分が悪いよ。
「では、ルイ様とお呼びします」
うん、声も低くてイケボだね。
それで一国の王子で、神に選ばれた聖痕者で……俺が不敬で捕まりそう。
「私のことはユリウスとお呼び下さい。それで……ルイ様、この世界のことは、どこまでお聞きになりましたか?」
「……一部かな。俺が神子でいるだけでまあまあこの世界には恩恵があるつーことと、俺は稀に起きる異世界からの召喚てとこ。つまり召喚に応じた時点でお仕事終了ってね」
俺はわざと露悪的な感じで軽く言い放つ。
特にユリウス殿下の後ろの付き人に向かって。
さっと顔色が変わったね。
そして、許しも得ずに、俺に対して御託を並べ始めやがった。
「馬鹿な! 神子は聖痕者とともに、聖痕者の国に住み、その国に尽くすのがお役目だ! こんな場所で遊んでいていいわけないっ。神子様は今すぐにでもサハラーン国に向けて出立すべきだ!」
「ここの神官共に何を吹き込まれたか知らんが、神子の価値は聖痕者の国を潤してこそだ! ただでさえハズレの男だったというのに、そのうえ我が国に恩恵を与えぬつもりか、汚らわしき異世界人め!」
ナリヒサさんたち神兵が動き出すより早く、室内に肉がぶつかる痛い音が響く。
ユリウス殿下が、付き人二人を殴り倒し足蹴にしている。
「……うう……、殿下……なぜ……」
呻きながらも、手をユリウス殿下へと伸ばすが、パシンと叩かれ落とされる。
「申し訳ございません。度々の非礼、も、申し訳ありません」
ユリウス殿下、今度は土下座です。
ええーっ。やめてよ。貴方、王子様でしょ?
俺の胃が痛くなるんですけど。
なんとなくこいつはαだってわかる……気がする。
まあ、育った生家がα系の家系で兄ちゃん二人ともバリバリのαだったしな。
で、何が言いたいかというと……こいつは生粋のα! 究極のα! αの中のα! と判断した。
この世界にαとかの概念はないらしいけど……。そういう性別もないけど……。
いつまでも跪いていたら、こちらの居心地が悪いので、とっととソファに座ってもらおう。
随行してきたお付きの人は二名。
王子より年配の男たちは、ユリウス王子の後ろにピタッと立つ。
ツバキさんたちが楚々とお茶とお菓子をサーブして、こちらは俺の後ろに控える。
シーン……。
沈黙。
え? 何か言えよ?
俺はユリウス王子を見たまま、お茶をひと口飲む。
これは普通の紅茶だけど、美味しい。
「……神子様。先日は我が弟の暴挙、無礼……申し訳ありませんでした」
とまたもや、俺に頭を下げる。
「ああ……。それは……ね」
アンタが頭を下げたから許せるってもんでもないしな……。
俺に謝るんじゃなくて、あの馬鹿王子の教育をなんとかして欲しいよ。
サハラーン国に行ったら、また会っちゃうし。
「その話をすると先に進まないから、とりあえず後回しにしてもらって。俺はルイ・タテワキ。ルイって名前で呼んでくれ」
そろそろと頭を上げて、困惑気味に眉を寄せててもイケメンだな、こいつ。
金髪は金髪でも明るい金髪でキッラキラしてやがるし、どこぞのハリウッドスターのような容貌。
男っぽい容姿たげど、綺麗でもある……。
特に紫色の眼は宝石のようで、ついつい見てしまう。
体つきもデカイな……。
手足も長いって腹立つな。
モデル体型……アスリート体型? 鍛えてるのがちゃんとわかる筋肉ですね!
「名前で呼ぶのは……不敬では?」
「俺が異世界から召喚されたのは知っているでしょ? 俺の国では身分制度がなく、身分に寛容というか、頓着無いところだったので。そもそも神子様て呼ばれるのは好きじゃない」
自分が神子だなんて思ってもないのに、勝手に担ぎ上げられて敬われてもねぇ、気分が悪いよ。
「では、ルイ様とお呼びします」
うん、声も低くてイケボだね。
それで一国の王子で、神に選ばれた聖痕者で……俺が不敬で捕まりそう。
「私のことはユリウスとお呼び下さい。それで……ルイ様、この世界のことは、どこまでお聞きになりましたか?」
「……一部かな。俺が神子でいるだけでまあまあこの世界には恩恵があるつーことと、俺は稀に起きる異世界からの召喚てとこ。つまり召喚に応じた時点でお仕事終了ってね」
俺はわざと露悪的な感じで軽く言い放つ。
特にユリウス殿下の後ろの付き人に向かって。
さっと顔色が変わったね。
そして、許しも得ずに、俺に対して御託を並べ始めやがった。
「馬鹿な! 神子は聖痕者とともに、聖痕者の国に住み、その国に尽くすのがお役目だ! こんな場所で遊んでいていいわけないっ。神子様は今すぐにでもサハラーン国に向けて出立すべきだ!」
「ここの神官共に何を吹き込まれたか知らんが、神子の価値は聖痕者の国を潤してこそだ! ただでさえハズレの男だったというのに、そのうえ我が国に恩恵を与えぬつもりか、汚らわしき異世界人め!」
ナリヒサさんたち神兵が動き出すより早く、室内に肉がぶつかる痛い音が響く。
ユリウス殿下が、付き人二人を殴り倒し足蹴にしている。
「……うう……、殿下……なぜ……」
呻きながらも、手をユリウス殿下へと伸ばすが、パシンと叩かれ落とされる。
「申し訳ございません。度々の非礼、も、申し訳ありません」
ユリウス殿下、今度は土下座です。
ええーっ。やめてよ。貴方、王子様でしょ?
俺の胃が痛くなるんですけど。
50
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説

邪悪な魔術師の成れの果て
きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。
すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。
それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる