【再掲】オメガバースの世界のΩが異世界召喚でオメガバースではない世界へ行って溺愛されてます

緒沢 利乃

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百合の匂いに誘われて

ユリウス殿下は苦労性

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Ωの俺は、αの存在に敏感だと思う。
なんとなくこいつはαだってわかる……気がする。
まあ、育った生家がα系の家系で兄ちゃん二人ともバリバリのαだったしな。

で、何が言いたいかというと……こいつは生粋のα! 究極のα! αの中のα! と判断した。
この世界にαとかの概念はないらしいけど……。そういう性別もないけど……。

いつまでも跪いていたら、こちらの居心地が悪いので、とっととソファに座ってもらおう。
随行してきたお付きの人は二名。
王子より年配の男たちは、ユリウス王子の後ろにピタッと立つ。

ツバキさんたちが楚々とお茶とお菓子をサーブして、こちらは俺の後ろに控える。

シーン……。

沈黙。
え? 何か言えよ?
俺はユリウス王子を見たまま、お茶をひと口飲む。
これは普通の紅茶だけど、美味しい。

「……神子様。先日は我が弟の暴挙、無礼……申し訳ありませんでした」

とまたもや、俺に頭を下げる。

「ああ……。それは……ね」

アンタが頭を下げたから許せるってもんでもないしな……。
俺に謝るんじゃなくて、あの馬鹿王子の教育をなんとかして欲しいよ。
サハラーン国に行ったら、また会っちゃうし。

「その話をすると先に進まないから、とりあえず後回しにしてもらって。俺はルイ・タテワキ。ルイって名前で呼んでくれ」

そろそろと頭を上げて、困惑気味に眉を寄せててもイケメンだな、こいつ。
金髪は金髪でも明るい金髪でキッラキラしてやがるし、どこぞのハリウッドスターのような容貌。
男っぽい容姿たげど、綺麗でもある……。
特に紫色の眼は宝石のようで、ついつい見てしまう。
体つきもデカイな……。
手足も長いって腹立つな。
モデル体型……アスリート体型? 鍛えてるのがちゃんとわかる筋肉ですね!

「名前で呼ぶのは……不敬では?」
「俺が異世界から召喚されたのは知っているでしょ? 俺の国では身分制度がなく、身分に寛容というか、頓着無いところだったので。そもそも神子様て呼ばれるのは好きじゃない」

自分が神子だなんて思ってもないのに、勝手に担ぎ上げられて敬われてもねぇ、気分が悪いよ。

「では、ルイ様とお呼びします」

うん、声も低くてイケボだね。
それで一国の王子で、神に選ばれた聖痕者で……俺が不敬で捕まりそう。

「私のことはユリウスとお呼び下さい。それで……ルイ様、この世界のことは、どこまでお聞きになりましたか?」
「……一部かな。俺が神子でいるだけでまあまあこの世界には恩恵があるつーことと、俺は稀に起きる異世界からの召喚てとこ。つまり召喚に応じた時点でお仕事終了ってね」

俺はわざと露悪的な感じで軽く言い放つ。
特にユリウス殿下の後ろの付き人に向かって。
さっと顔色が変わったね。
そして、許しも得ずに、俺に対して御託を並べ始めやがった。

「馬鹿な! 神子は聖痕者とともに、聖痕者の国に住み、その国に尽くすのがお役目だ! こんな場所で遊んでいていいわけないっ。神子様は今すぐにでもサハラーン国に向けて出立すべきだ!」
「ここの神官共に何を吹き込まれたか知らんが、神子の価値は聖痕者の国を潤してこそだ! ただでさえハズレの男だったというのに、そのうえ我が国に恩恵を与えぬつもりか、汚らわしき異世界人め!」

ナリヒサさんたち神兵が動き出すより早く、室内に肉がぶつかる痛い音が響く。
ユリウス殿下が、付き人二人を殴り倒し足蹴にしている。

「……うう……、殿下……なぜ……」

呻きながらも、手をユリウス殿下へと伸ばすが、パシンと叩かれ落とされる。

「申し訳ございません。度々の非礼、も、申し訳ありません」

ユリウス殿下、今度は土下座です。

ええーっ。やめてよ。貴方、王子様でしょ?
俺の胃が痛くなるんですけど。



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