3 / 14
百合の匂いに誘われて
観光気分と無礼な男
しおりを挟む
ふむふむ。どうやらここは、俺が十八年生きてきた世界と全っっく違う世界だな。今まで培ってきた常識が全部覆るわ!
まあ、毎日祈りを捧げるとか、巡礼の旅に出るとか厳しいことは、なさそうだけど……。
おいっ、ないんだよな? 俺の義務は? なんで、顔を反らすんだよっ! ニコライ君!
「そのう……。今代の聖痕者様は西王国・サハラーンの王太子ユリウス様ですので……。ご結婚されますと……ルイ様は……王妃様になられるので……、王妃教育とかですね、そのお勉強が……あります、です」
「はあああぁぁぁっ? やだよ、そんなの」
居るだけでいいんじゃないの? 神子様って。第一、結婚するとは言ってないし、神子だって俺は認めていない。いいじゃん、男なんだし、別の女性と結婚すれば、その……ユリウス様だっけ?
「そう、ですね。ユリウス様は神子様とのご結婚を望まれてましたが……、ルイ様ですと……お世継ぎの問題が……ありますし……」
「……じゃあ、ダメじゃん」
いや、実は子供、産めるけど俺。
言わないっ。絶っっっっっ対に、言わない! 俺がΩで、俺の世界では妊娠可能な性だって言うもんかっ。墓場まで持っていくこの秘密!!
「あの、でも……サハラーン王国には来て頂けますよね? 殿下との、そのぅ、ご結婚はなくなったとしても、ユリウス様との相性は良いわけですし、お友達とか、そういう方向で縁を深く結んでもらって……」
「なんで、そんなに必死なの? 俺がそのサハラーンとかに行かないと、なんかマズイのかな?」
ズイッと顔をニコライ君に近づけて眇めた目で睨めば、ニコライは首を竦めて縮こまる。
「そんな……別にマズイことなんて……。ただ、神子様がここに留まってしまったら、神様の恩恵をサハラーンは受けられなくなってしまうので……」
小さい声でボソボソ喋んな! 俺が虐めてるみたいじゃないか。
それでもニコライが言うには、神子が聖痕者の住む国に居ないと神様の恩恵、俺の場合は豊穣だな、それが満足に受けられないらしい。
神子が望めば、ここ「神子の庭」に居住することができる。まさしくここは神子のために作られた居住区なのだから。
この世界は大きく四つの国が東西南北にある。その四つの国の中心に「神子の庭」があり、中立国で不可侵な聖域とされているため、どの王国の王族、貴族でも勝手に訪れることはできない。
大抵は神子召喚の儀式のときに、聖痕者の国の者たちが来訪を許されるのみ、と。
俺のためにある居住区なら、ここに住むのもアリだな……。
しかし……せっかく異世界とやらに来たんだし……いろいろな国を見てみたい気もする。
「まあまあ、結婚とかはともかく、一度はそのサハラーンには行ってやるから」
「本当ですか! ありがとうございます! ありがとうございます!」
泣くなよ……ニコライ君。土下座もするなよ……ニコライ君。サハラーン国に行くけど、住むとは言ってない。滞在が短くても許してくれよ。
俺は優雅にティーカップを持ち、やや冷めた紅茶を口に運んだ。
ん?
なんか、扉の向こうがガヤガヤとうるさいんだが? ユリウスとかが来たのかな?
バンッと乱暴に開けられる扉、ドガドガッと無遠慮に踏み入ってくる男とその後ろの従者たち。
「お前かっ! 兄上の邪魔する男娼はーっ!」
えっと、とりあえず、こいつ殴っていいかな?
まあ、毎日祈りを捧げるとか、巡礼の旅に出るとか厳しいことは、なさそうだけど……。
おいっ、ないんだよな? 俺の義務は? なんで、顔を反らすんだよっ! ニコライ君!
「そのう……。今代の聖痕者様は西王国・サハラーンの王太子ユリウス様ですので……。ご結婚されますと……ルイ様は……王妃様になられるので……、王妃教育とかですね、そのお勉強が……あります、です」
「はあああぁぁぁっ? やだよ、そんなの」
居るだけでいいんじゃないの? 神子様って。第一、結婚するとは言ってないし、神子だって俺は認めていない。いいじゃん、男なんだし、別の女性と結婚すれば、その……ユリウス様だっけ?
「そう、ですね。ユリウス様は神子様とのご結婚を望まれてましたが……、ルイ様ですと……お世継ぎの問題が……ありますし……」
「……じゃあ、ダメじゃん」
いや、実は子供、産めるけど俺。
言わないっ。絶っっっっっ対に、言わない! 俺がΩで、俺の世界では妊娠可能な性だって言うもんかっ。墓場まで持っていくこの秘密!!
「あの、でも……サハラーン王国には来て頂けますよね? 殿下との、そのぅ、ご結婚はなくなったとしても、ユリウス様との相性は良いわけですし、お友達とか、そういう方向で縁を深く結んでもらって……」
「なんで、そんなに必死なの? 俺がそのサハラーンとかに行かないと、なんかマズイのかな?」
ズイッと顔をニコライ君に近づけて眇めた目で睨めば、ニコライは首を竦めて縮こまる。
「そんな……別にマズイことなんて……。ただ、神子様がここに留まってしまったら、神様の恩恵をサハラーンは受けられなくなってしまうので……」
小さい声でボソボソ喋んな! 俺が虐めてるみたいじゃないか。
それでもニコライが言うには、神子が聖痕者の住む国に居ないと神様の恩恵、俺の場合は豊穣だな、それが満足に受けられないらしい。
神子が望めば、ここ「神子の庭」に居住することができる。まさしくここは神子のために作られた居住区なのだから。
この世界は大きく四つの国が東西南北にある。その四つの国の中心に「神子の庭」があり、中立国で不可侵な聖域とされているため、どの王国の王族、貴族でも勝手に訪れることはできない。
大抵は神子召喚の儀式のときに、聖痕者の国の者たちが来訪を許されるのみ、と。
俺のためにある居住区なら、ここに住むのもアリだな……。
しかし……せっかく異世界とやらに来たんだし……いろいろな国を見てみたい気もする。
「まあまあ、結婚とかはともかく、一度はそのサハラーンには行ってやるから」
「本当ですか! ありがとうございます! ありがとうございます!」
泣くなよ……ニコライ君。土下座もするなよ……ニコライ君。サハラーン国に行くけど、住むとは言ってない。滞在が短くても許してくれよ。
俺は優雅にティーカップを持ち、やや冷めた紅茶を口に運んだ。
ん?
なんか、扉の向こうがガヤガヤとうるさいんだが? ユリウスとかが来たのかな?
バンッと乱暴に開けられる扉、ドガドガッと無遠慮に踏み入ってくる男とその後ろの従者たち。
「お前かっ! 兄上の邪魔する男娼はーっ!」
えっと、とりあえず、こいつ殴っていいかな?
62
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説

邪悪な魔術師の成れの果て
きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。
すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。
それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる