116 / 134
4 王立べラム訓練学校 高等部2
4-23話 卒業試験8
しおりを挟む
薄曇りの空のなか、時おり射し込む光が木々を照らしていた。こぼれ落ちるその光が、街道をまだらに染めているなかを、アンゲルヴェルク王国軍は少しだけ強く吹く風になびかれて、騎馬隊が前後に歩兵隊を挟む形で進んでいた。
森を抜けてすぐに布陣できるように、と八個の隊に分かれて進軍している。火計に備えて隊の外側には水の魔法を使える兵士を、そのうしろには伏兵の襲撃に瞬時に入れ替われるように、と大盾を持った兵士が配置されていた。
ルーセントとティアの二人は、前線を担当する八号隊にいた。大盾が囲む内側を、ひときわ強く吹いた風にあおられたのか、手にする槍を握り直して歩いていた。
発電所から続く森を抜けるためには、およそ九キロメートルの道を進まなければならなかった。実戦未経験の訓練生たちには荷が重く、伏兵を警戒しながら歩くたび、一歩、また一歩と歩くたびにその精神力を大きく削っていった。
所々で訓練生が大きな深呼吸を繰り返して、その不安につぶされそうな気分を落ち着けていた。そんななか、ティアは余裕をにじませてアクビをしていた。
ルーセントは、常々思っていたことを聞いてみようとティアに振り向いた。
「いつも余裕だね。緊張とかはしないの?」
「ふっふっふ、背は小さいですが、器は大きいのです。これくらい大したことはありません。それに、ルーセントは忘れたのですか? 私には気配探知の魔法があるんですよ」
「ああ、それでか」ルーセントは、すっかり忘れていたティアの魔法を思い出してうなずいた。
「はい、安全が分かっているのに緊張する必要もありません。だからみんなも酸欠の金魚みたいな顔をしてないで、気楽にしてたらいいのですよ」
ティアがそう言うと、大きく息を吐いていた訓練生を見た。ティアと目のあった訓練生は、ぽっかりと口を開けたまま息を止めた。そして辺りを見回すと「早く言えよ」と、咳払いをして気まずそうに槍を持ち直した。
このやりとりにみんなの不安が薄れていく。そして無警戒になった訓練生を見て、隣を歩く兵士が注意する。
「お前はずいぶんと極端な性格をしてるな。たしかに緊張のしすぎは良くないが、気を抜くのは論外だ。安全だとしても、常に襲撃されても行動できるだけの緊張感は持っておけ」
「すみませんでした。気を付けます」
注意された訓練生は、申し訳なさそうに頭を下げた。次の瞬間には、厳しい訓練を続けてきただけあって、その顔は精悍なものに変わっていた。
進軍を開始して七キロメートルほど進んだとき、ティアの表情が険しいものへと変わった。
「ルーセント、気を付けてください。二時と十時方向に人の気配があります」
「人? 数は?」
ルーセントの問いかけに、ティアが眉根を寄せて気配を探り直す。
「魔法の範囲内に居るだけでも……、三百人といったところでしょうか。範囲外にもいると思います」
「分かった。ティアは将軍の所に報告に行って」
「分かりました」
ルーセントとティアの会話を聞いていた周りの兵士たちは、手にする槍を持ち直して森の奥へと視線を送る。
ティアが前方にいる騎馬隊と歩兵の間にいるウォルビスの横に付くと気配探知の魔法に敵がかかった、と報告をする。
「やっぱり伏兵を置いてやがったか。距離は分かるか?」
「一番近い場所で、八十メートル位でしょうか。木のうしろや地面に伏せているんじゃないかと思います」
「世の中には便利な魔法もあったもんだな。俺も欲しいぞ、それ」
ティアの報告に、ウォルビスがあきれた様子で顔を左右に振っていると、両隣にいる二人の兵士に
「どうしますか?」と答えを求められた。馬の速度を落として考え込むと、二人に指示を与えた。
「このまま気付かない振りをして進むぞ。お前たち二人は、うしろの部隊に伝えろ。“魔法兵を下げて、大盾兵を前に出して囲め”とな。絶対に騒ぐなとも伝えておけ」
二人の兵士が無言でうなずくと、手綱を引いて後方へと移動していった。ウォルビスは「お前も持ち場に戻れ」とティアに伝える。
二人の兵士により伝えられた命令に、全部隊が静かに体形を変えていく。外側に大盾兵が二重で囲んで、そのうしろに槍を持つ兵士が位置についた。さらにその内側、そこには魔法兵が入って、すべて戦闘体勢が整った。
体形を変えて数分後「来ます!」と、ティアが大声で叫んだ。その声を合図にしたかのように、敵兵が叫び声をあげて森の中から次々と現れる。そして、ウォルビスたちに反撃の隙を与えることなく流れるように大盾に目掛けて魔法を放った。
迎撃のために味方の魔法が森を飛ぶ。
一部は盾に当たって爆発し、衝突した魔法同士はその場で爆煙をあげると、小枝や葉っぱを吹き飛ばして強い風がイッシュンデ森を吹き抜けていった。
敵味方が入り乱れて飛び交う怒号に、ウォルビスの「押し返せ!」と大声が響き渡った。
ついに始まったサラージ王国軍とウォルビス部隊の戦闘、敵兵の声を掻き消したウォルビスの声が後方の八号隊へと伝わると、その言葉を真似て八号隊の面々が同じように「押し返せ!」と叫んだ。声は風のごとく、波のように伝わっていつしか全部隊が叫でいた。
伏兵の指揮官らしき人物が魔法の発動と突撃を指示するとウォルビス部隊に押し寄せる。魔法により吹き飛ばされた大盾兵や負傷した兵士は後方へと下げられて、すぐさま別の兵と入れ替わる。
荒々しい魔法と突撃に耐えると、今度はウォルビス部隊が反撃のために槍兵が武器を構えた。大盾兵は壁のように構えた盾を動かして攻撃口を開ける。
槍兵は敵に向かって一斉に穂先を突き出すと、次々と敵を突き刺していった。攻撃が終わると、すぐに盾が壁のように構えた。森の中には怒号や悲鳴、痛みに苦しむ呻き声や剣戟音、さらには魔法による爆発音が幾度となく響き渡っていた。
戦闘が始まって二十分ほどが経過したとき、伏兵部隊に指示を出していた男がウォルビスに斬り込んで来た。
「お前がウォルビスだな! その首、ここでもらう!」
敵兵は叫びながら、二メートルほどの炎の槍を生成して投げ放った。
ウォルビスはまとわりつく敵兵を槍で始末すると、向かってくる魔法を見て、自分の槍に水をまとわせた。その水は、槍に絡み付く蛇のようにうごめいていた。
「お前ごときが俺の首を取れるか!」
ウォルビスがヒュッと音をならして振るう槍からは、蛇行しながら太い水流が炎の槍に向かって行った。
そのまま飲み込むように炎の槍を消滅させると、二つに別れた水流が蛇の顔に変わる。そして指揮官の首を切断した。なおも止まらない水蛇は、森の木々を掻い潜って多数の兵士を飲み込んでは貫き仕留めていった。
指揮官が倒されたのを見て、圧倒的劣性に立たされた伏兵部隊が撤退を開始する。敵兵がまばらに街道に出ると走って逃げていった。
ウォルビスが追撃を指示しようとした瞬間、副官がそれを引き留めた。
「お待ちください将軍、敵の逃げ方が不自然です。待ち伏せがあるかもしれません」
「……お前の言い分にも一理あるな。逃げるにも武器を持ったまま、きれいに一方向か。まるで誘い込まれてるようだな」
「はい、まずは周囲を警戒しつつ体勢を建て直すのが先かと」
「わかった。部隊はそのまま、それぞれの部隊から歩哨を出せ。残りは治療部隊と連携して動け」
「かしこまりました」
副官が頭を下げると、それぞれの部隊長に指示を出していった。
数十分後、再び進軍を開始するウォルビスの部隊、敵の伏兵部隊によって、およそ百名ほどの損害を受けてしまった。大部分が治療部隊のおかげで回復したが、三十人ほどの戦死者を出してしまった。
予想していたこととはいえ、ウォルビスは苛立ちを隠せないでいた。その後は何事もなく無事に森を抜けると、すぐさま陣形を組み立てていった。基本陣形を築き上げると、サラージ王国軍が待ち構える五キロメートル先で停止した。
偵察兵を放って状況を確認する。
一時間後、偵察兵がウォルビスに膝をつく。
「報告します。サラージ王国軍は、ここより五キロほど先の丘の上に布陣しており、雁行陣を引いております。取り逃がした伏兵を合わせても、兵数は三千七百人ほどだと思われます」
「三千七百か。もう少し多くなるかと思っていたが、多少は有利に進めるか。まぁ、あいつらなら気にするほどじゃねぇな」
楽観視をするウォルビスが合図を鳴らさせて各指揮官を呼び寄せる。命令を伝えて散らせると、将台にいる哨官が陣形の指示を出すために楽器を鳴らした。
サラージ王国軍が引く雁行陣は左右に四隊ずつがV字に展開して、その中央に二隊が縦に展開する。さらには、最前線の左右と中央の部隊の間に騎馬隊が一隊ずつがにらみを利かせていた。雁行陣はそれだけではなく、殿後としてV字のうしろに半円状に広がる騎馬隊と、そのうしろに左右に三隊ずつの騎馬が展開していた。この陣は丘陵地帯には強く、敵の部隊を取り巻く形になる陣形である。
対してウォルビスは、縦に長く、大部分が縦列によって組み立てられている虎陣を展開させていた。前衛、中衛、後衛と三層からなる陣形だが、ウォルビスはその中衛の真ん中に六華陣を引いた本陣を置いて、本来の使い方とは違う運用をしていた。
虎陣は四角に展開した前線の四隊を左右から二隊が縦に挟むように展開する。四角の四隊のうしろには二隊が横に並ぶ。さらにそのうしろ、中央には三隊が縦に二本展開して左右から挟む形で縦に三隊が布陣する。後方は前線を反転させた形になる。さらに遊兵部隊の騎馬隊が虎陣を囲むように布陣していた。
虎陣は縦に長く、互いが助け合ったり、戦い、休むことができるため、雁行陣には有利に働く。ウォルビスは陣形が整うと進軍を命じて、丘陵地帯の高所に布陣するサラージ王国軍と対峙した。
森を抜けてすぐに布陣できるように、と八個の隊に分かれて進軍している。火計に備えて隊の外側には水の魔法を使える兵士を、そのうしろには伏兵の襲撃に瞬時に入れ替われるように、と大盾を持った兵士が配置されていた。
ルーセントとティアの二人は、前線を担当する八号隊にいた。大盾が囲む内側を、ひときわ強く吹いた風にあおられたのか、手にする槍を握り直して歩いていた。
発電所から続く森を抜けるためには、およそ九キロメートルの道を進まなければならなかった。実戦未経験の訓練生たちには荷が重く、伏兵を警戒しながら歩くたび、一歩、また一歩と歩くたびにその精神力を大きく削っていった。
所々で訓練生が大きな深呼吸を繰り返して、その不安につぶされそうな気分を落ち着けていた。そんななか、ティアは余裕をにじませてアクビをしていた。
ルーセントは、常々思っていたことを聞いてみようとティアに振り向いた。
「いつも余裕だね。緊張とかはしないの?」
「ふっふっふ、背は小さいですが、器は大きいのです。これくらい大したことはありません。それに、ルーセントは忘れたのですか? 私には気配探知の魔法があるんですよ」
「ああ、それでか」ルーセントは、すっかり忘れていたティアの魔法を思い出してうなずいた。
「はい、安全が分かっているのに緊張する必要もありません。だからみんなも酸欠の金魚みたいな顔をしてないで、気楽にしてたらいいのですよ」
ティアがそう言うと、大きく息を吐いていた訓練生を見た。ティアと目のあった訓練生は、ぽっかりと口を開けたまま息を止めた。そして辺りを見回すと「早く言えよ」と、咳払いをして気まずそうに槍を持ち直した。
このやりとりにみんなの不安が薄れていく。そして無警戒になった訓練生を見て、隣を歩く兵士が注意する。
「お前はずいぶんと極端な性格をしてるな。たしかに緊張のしすぎは良くないが、気を抜くのは論外だ。安全だとしても、常に襲撃されても行動できるだけの緊張感は持っておけ」
「すみませんでした。気を付けます」
注意された訓練生は、申し訳なさそうに頭を下げた。次の瞬間には、厳しい訓練を続けてきただけあって、その顔は精悍なものに変わっていた。
進軍を開始して七キロメートルほど進んだとき、ティアの表情が険しいものへと変わった。
「ルーセント、気を付けてください。二時と十時方向に人の気配があります」
「人? 数は?」
ルーセントの問いかけに、ティアが眉根を寄せて気配を探り直す。
「魔法の範囲内に居るだけでも……、三百人といったところでしょうか。範囲外にもいると思います」
「分かった。ティアは将軍の所に報告に行って」
「分かりました」
ルーセントとティアの会話を聞いていた周りの兵士たちは、手にする槍を持ち直して森の奥へと視線を送る。
ティアが前方にいる騎馬隊と歩兵の間にいるウォルビスの横に付くと気配探知の魔法に敵がかかった、と報告をする。
「やっぱり伏兵を置いてやがったか。距離は分かるか?」
「一番近い場所で、八十メートル位でしょうか。木のうしろや地面に伏せているんじゃないかと思います」
「世の中には便利な魔法もあったもんだな。俺も欲しいぞ、それ」
ティアの報告に、ウォルビスがあきれた様子で顔を左右に振っていると、両隣にいる二人の兵士に
「どうしますか?」と答えを求められた。馬の速度を落として考え込むと、二人に指示を与えた。
「このまま気付かない振りをして進むぞ。お前たち二人は、うしろの部隊に伝えろ。“魔法兵を下げて、大盾兵を前に出して囲め”とな。絶対に騒ぐなとも伝えておけ」
二人の兵士が無言でうなずくと、手綱を引いて後方へと移動していった。ウォルビスは「お前も持ち場に戻れ」とティアに伝える。
二人の兵士により伝えられた命令に、全部隊が静かに体形を変えていく。外側に大盾兵が二重で囲んで、そのうしろに槍を持つ兵士が位置についた。さらにその内側、そこには魔法兵が入って、すべて戦闘体勢が整った。
体形を変えて数分後「来ます!」と、ティアが大声で叫んだ。その声を合図にしたかのように、敵兵が叫び声をあげて森の中から次々と現れる。そして、ウォルビスたちに反撃の隙を与えることなく流れるように大盾に目掛けて魔法を放った。
迎撃のために味方の魔法が森を飛ぶ。
一部は盾に当たって爆発し、衝突した魔法同士はその場で爆煙をあげると、小枝や葉っぱを吹き飛ばして強い風がイッシュンデ森を吹き抜けていった。
敵味方が入り乱れて飛び交う怒号に、ウォルビスの「押し返せ!」と大声が響き渡った。
ついに始まったサラージ王国軍とウォルビス部隊の戦闘、敵兵の声を掻き消したウォルビスの声が後方の八号隊へと伝わると、その言葉を真似て八号隊の面々が同じように「押し返せ!」と叫んだ。声は風のごとく、波のように伝わっていつしか全部隊が叫でいた。
伏兵の指揮官らしき人物が魔法の発動と突撃を指示するとウォルビス部隊に押し寄せる。魔法により吹き飛ばされた大盾兵や負傷した兵士は後方へと下げられて、すぐさま別の兵と入れ替わる。
荒々しい魔法と突撃に耐えると、今度はウォルビス部隊が反撃のために槍兵が武器を構えた。大盾兵は壁のように構えた盾を動かして攻撃口を開ける。
槍兵は敵に向かって一斉に穂先を突き出すと、次々と敵を突き刺していった。攻撃が終わると、すぐに盾が壁のように構えた。森の中には怒号や悲鳴、痛みに苦しむ呻き声や剣戟音、さらには魔法による爆発音が幾度となく響き渡っていた。
戦闘が始まって二十分ほどが経過したとき、伏兵部隊に指示を出していた男がウォルビスに斬り込んで来た。
「お前がウォルビスだな! その首、ここでもらう!」
敵兵は叫びながら、二メートルほどの炎の槍を生成して投げ放った。
ウォルビスはまとわりつく敵兵を槍で始末すると、向かってくる魔法を見て、自分の槍に水をまとわせた。その水は、槍に絡み付く蛇のようにうごめいていた。
「お前ごときが俺の首を取れるか!」
ウォルビスがヒュッと音をならして振るう槍からは、蛇行しながら太い水流が炎の槍に向かって行った。
そのまま飲み込むように炎の槍を消滅させると、二つに別れた水流が蛇の顔に変わる。そして指揮官の首を切断した。なおも止まらない水蛇は、森の木々を掻い潜って多数の兵士を飲み込んでは貫き仕留めていった。
指揮官が倒されたのを見て、圧倒的劣性に立たされた伏兵部隊が撤退を開始する。敵兵がまばらに街道に出ると走って逃げていった。
ウォルビスが追撃を指示しようとした瞬間、副官がそれを引き留めた。
「お待ちください将軍、敵の逃げ方が不自然です。待ち伏せがあるかもしれません」
「……お前の言い分にも一理あるな。逃げるにも武器を持ったまま、きれいに一方向か。まるで誘い込まれてるようだな」
「はい、まずは周囲を警戒しつつ体勢を建て直すのが先かと」
「わかった。部隊はそのまま、それぞれの部隊から歩哨を出せ。残りは治療部隊と連携して動け」
「かしこまりました」
副官が頭を下げると、それぞれの部隊長に指示を出していった。
数十分後、再び進軍を開始するウォルビスの部隊、敵の伏兵部隊によって、およそ百名ほどの損害を受けてしまった。大部分が治療部隊のおかげで回復したが、三十人ほどの戦死者を出してしまった。
予想していたこととはいえ、ウォルビスは苛立ちを隠せないでいた。その後は何事もなく無事に森を抜けると、すぐさま陣形を組み立てていった。基本陣形を築き上げると、サラージ王国軍が待ち構える五キロメートル先で停止した。
偵察兵を放って状況を確認する。
一時間後、偵察兵がウォルビスに膝をつく。
「報告します。サラージ王国軍は、ここより五キロほど先の丘の上に布陣しており、雁行陣を引いております。取り逃がした伏兵を合わせても、兵数は三千七百人ほどだと思われます」
「三千七百か。もう少し多くなるかと思っていたが、多少は有利に進めるか。まぁ、あいつらなら気にするほどじゃねぇな」
楽観視をするウォルビスが合図を鳴らさせて各指揮官を呼び寄せる。命令を伝えて散らせると、将台にいる哨官が陣形の指示を出すために楽器を鳴らした。
サラージ王国軍が引く雁行陣は左右に四隊ずつがV字に展開して、その中央に二隊が縦に展開する。さらには、最前線の左右と中央の部隊の間に騎馬隊が一隊ずつがにらみを利かせていた。雁行陣はそれだけではなく、殿後としてV字のうしろに半円状に広がる騎馬隊と、そのうしろに左右に三隊ずつの騎馬が展開していた。この陣は丘陵地帯には強く、敵の部隊を取り巻く形になる陣形である。
対してウォルビスは、縦に長く、大部分が縦列によって組み立てられている虎陣を展開させていた。前衛、中衛、後衛と三層からなる陣形だが、ウォルビスはその中衛の真ん中に六華陣を引いた本陣を置いて、本来の使い方とは違う運用をしていた。
虎陣は四角に展開した前線の四隊を左右から二隊が縦に挟むように展開する。四角の四隊のうしろには二隊が横に並ぶ。さらにそのうしろ、中央には三隊が縦に二本展開して左右から挟む形で縦に三隊が布陣する。後方は前線を反転させた形になる。さらに遊兵部隊の騎馬隊が虎陣を囲むように布陣していた。
虎陣は縦に長く、互いが助け合ったり、戦い、休むことができるため、雁行陣には有利に働く。ウォルビスは陣形が整うと進軍を命じて、丘陵地帯の高所に布陣するサラージ王国軍と対峙した。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる