妹の馬鹿さが既に恐怖の域に達している!?

筒猫

文字の大きさ
上 下
15 / 24

第十五話 超馬鹿妹 まじか☆マジダ

しおりを挟む

 「お兄……お正月ってどうしてこんなにやる気がでないのかな?」

 「まあ、寝正月という言葉がこの国にあるくらいだからこれがふつうだろ……」

 正月から二、三日が経った。
外は寒く出ていく気を著しく削ぐうえに、この時期のテレビは特番なんかで面白いものが多い。
そもそも行くところもすることもない。

 俺たちはそんな理由で、こたつの中に入りみかんを食べるという鉄板スタイルで正月を満喫していた。
俺も結希もこたつから一歩も出ずに朝から怠惰に過ごしている。

 ……まあ、これは仕方ない、不可抗力だ。
 正月って言ったらこんなもんだろ?

 完全に気の抜けた表情で俺はこたつにうずくまった。
結希も何もする気が起きないといった様子だ。
 
 あれ?物凄く平和だ……万歳!正月万歳!

 俺は過去にないくらいに幸せそうな笑みを浮かべる。 
 そして、俺はみかんを食べる結希に向き直ると、やはり気の抜けた声で話しかける。

 「結希……みかんは普通皮じゃなくて実をたべるんだぞ?」

 「あ、そっか~だからあんまり美味しくないのか~」

 結希は、みかんの皮を剥き、中の実は机に置き、その皮を食べていた。
それを見た俺はすかさず注意する。
しかし、心は瞑想した後のように落ち着いていた。

 ……いつもなら興奮して突っ込んでいたような結希の奇行も、今は突っ込む気力も起きない。

 突っ込む気も、気にする気すらもない俺は結希と同じようにみかんを食べ始める。
やはり、みかんは美味しいな……。

 ここ最近ではありえなかったリラックスできる時間に俺は存分に浸っていた。
すると、同じく気の抜けた表情の結希が話しかけてきた。

 「あ、そういえばお兄……今日誰かと結束があるって言ってなかったっけ~?」

 「おいおい、それを言うなら約束だろ?漢字が似てるせいで読者が気づかないかもしれないようなボケはやめとけよ……

 って約束!?はっ!完全に忘れてた!」

 俺は仏のような表情から一変、水泳で息継ぎをしないで泳ぎ、限界直前で水面に上がって息継ぎをしたときのような顔になる。

 ……完全に忘れていた。
今日は瞬(※忘れた人は第五話参照)と一緒にカラオケにいく予定だった。

 あいつだけなら別に遅れても大丈夫なのだが、今日来るもう一人のやつがいるので遅れると絶対にやばいことになる。

 確か約束の時間は12:00に現地集合。
ここからはだいたい15分ほどでつくところだ。

 今の時間は……

    11:45

 「……wow」

 「あれ?どうしたの?急にアフリカ人みたいになって」

 「アメリカだよチクショー!微妙に諦められない時間なのが尚更嫌だよ!……結希、留守番頼んだぞ!」

 俺は急いで外出用の服に着替えると、すぐに家を出た。
そして、自転車に乗ってカラオケまで全力でこいでいると

 ……後ろから走って地球外生命体いもうとが追いかけてきた。

 「ねぇ~お兄~!ルスバンって何~!」

 「はあああああああ!?」

 ーーーーーーーー

 「あれ?妹さんと一緒に来たんだ?」

 「ははっ!俺は別にいいけどな」

 約束の時間、カラオケ屋には俺と瞬と俺の友達の矢田 浩樹やた ひろき……そして、結希がいた。

 ……もう嫌だ!この妹!

 全く息を切らしていない結希を見て、俺は息を切らした状態で声にならない言葉を心の中で叫んだ。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

足を踏み出して

示彩 豊
青春
高校生活の終わりが見え始めた頃、円佳は進路を決められずにいた。友人の朱理は「卒業したい」と口にしながらも、自分を「人を傷つけるナイフ」と例え、操られることを望むような危うさを見せる。 一方で、カオルは地元での就職を決め、るんと舞は東京の大学を目指している。それぞれが未来に向かって進む中、円佳だけが立ち止まり、自分の進む道を見出せずにいた。 そんな中、文化祭の準備が始まる。るんは演劇に挑戦しようとしており、カオルも何かしらの役割を考えている。しかし、円佳はまだ決められずにいた。秋の陽射しが差し込む教室で、彼女は焦りと迷いを抱えながら、友人たちの言葉を受け止める。 それぞれの選択が、少しずつ未来を形作っていく。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】君への祈りが届くとき

remo
青春
私は秘密を抱えている。 深夜1時43分。震えるスマートフォンの相手は、ふいに姿を消した学校の有名人。 彼の声は私の心臓を鷲掴みにする。 ただ愛しい。あなたがそこにいてくれるだけで。 あなたの思う電話の相手が、私ではないとしても。 彼を想うと、胸の奥がヒリヒリする。

新井くんは給食嫌い。

タカクテヒロイ
青春
小学5年生の新井は偏食が激しくいつも給食に悩まされていた。ありとあらゆる手を使って嫌いなものを食べずに乗り切ろうとする。 学校給食を中心としたほのぼのコメディ。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...