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第十六話 ミツルの奇妙な妹(出でよ俺のスタンド【フーリッシュ・シスター】!)
しおりを挟む「光流くん、今度妹さんについていろいろ教えてよ」
「嫌だ」
冬休みが明け、ついに新学期が始まった。
流石に始業式はやる気のパラメーターがマイナスに突入したが、一度登校出来れば二回目からはスムーズに玄関から一歩踏み出せる。
そして始業式から数日が過ぎ、すっかり冬休み気分も抜けたその日、俺は浩樹に話しかけられた。
しかも、結希について話せと言う。
大体予想はしていたが……
浩樹は昔から探求心が強い奴で、気になればとことん調べる。
俺の妹はさぞ疑問点に溢れているだろう。
そして浩樹は、徹底的に調べた相手の弱味を握って自分のオモチャにするドS男でもある。
まあ変人の部類に入るが、基本的に俺達に害はないし、いいやつ(?)だ。
それでも流石の俺もあんな害悪でもオモチャにされるのは嫌だ。
普通に断らせてもらう。
でも、妹について教えろ……か。
……まあ俺も分かんねえけどな!?あいつの生態は!
熟知してたらこんなに苦労してないからな!?
浩樹はその俺の返答に不服と言った様相を見せると、すぐに表情は一変し、俺を何か面白いことを見つけたときの子供のような不敵な笑みで見つめる。
……こいつがこんな顔をするときは、大概俺が困ることになると俺の中の過去データが言っている。
「なーんだ。光流は教えてくれないんだ……じゃあいいよまた遊びに行くからさ」
「は!?……って、お前俺の家知らないだろ」
「……それはどうかな?じゃあ明日は休日だし遊びにいくね、それじゃ!」
「え!ちょ、待てよ!」
余裕を崩さずに一層怪しげに微笑む浩樹は、俺の呼び掛けに一切応じずに自分のクラスに戻る。
焦りすぎて俺は解散した某人気ユニットのキム〇クのような呼び止め方をしてしまう。
俺の不安は増すばかりだ。
……なんか、本当に来そうだな。
その日一日、俺の危険察知センサーは警告を止めなかった。
【次の日】
「来ちゃった」
「やっぱりな!?そこはお約束じゃなくていいんだぞ!?ってかどうやって!?」
「光流朝からテンション高いね~」
「誰のせいだろうな!」
案の定というかなんというか、浩樹は俺の家に来た。
……本当にどうやって?
「いやいや光流、この前一緒に遊んだでしょ?その時君たちを尾こu……じゃなくて帰り道で見かけてさ」
「お前の家は真逆だ!そしてそれはストーカーというんだ!」
「まあまあ。細かいことは気にせずに、ね」
「気にするわ!大問題だからな!?」
俺は悪びれもしない浩樹に怒りをあらわにする。
まあ言われてみれば、俺も確実に朝の6時のテンションではないが、俺はこいつに怒っていいと思う。
うん、そう思う!
そう考えると俺の内側から益々怒りが湧いてくる……
積年の恨みも込めて痛い目見せてやる
急に項垂れた俺は不意を突き、突如浩樹に殴りかかった!
ーーーーーーーー
「へええ、ここが光流の家か……結構綺麗なんだね」
「……大掃除したばかりだからな。ムスッ」
「アハハ、そんなに拗ねないでよ~ただ、光流のパンチをそのまま受け止めて関節技かけただけじゃないか」
「はあ……こいつには何をしても勝てない気がする」
あの後、結局痛い目を見たのは俺だった。
俺の雄叫びの「あああああぁ!」が激痛の「あああああっ!」に変えられてしまったお陰でテンションは下がり切っている。
悔しい!いつか絶対に仕返ししてやる!
……うん、いつか!絶対いつか!
俺は小さく決意を固める。
すると会話が聞こえてか、目を覚ました結希が俺達のいるリビングに降りてきた。
「お兄、おはよー……あれ?この前のお兄の友達?なんで?」
「おはよう結希ちゃん!遊びに来たよ!」
「確か名前は……周 浩然さん、だっけ?」
「うーん、惜しい!矢田 浩樹だよ………って、ん?」
惜しくないだろ!中国人か!
しかも、なんで結希は馬鹿なのに中国読みが出来てるんだ!?
どんな特技だ!
……と、突っ込もうと思ったが、きっとそれよりも先に突っ込まなければいけないことがあるので保留だ。
浩樹も同じく疑問に思ったようで、いつもの張り付けたような笑顔に少し汗を流しながら結希に問いかける。
「ねえ、結希ちゃん。君が持ってるそれ、何?」
「ん?朝ごはんだけど?」
「うん、それは分かるんだ。なんで鮭とご飯と卵焼きを素手で持ってるの?」
「なんで?……ってなんで?」
「……」
おお、珍しく浩樹が口を開けて固まってる。
俺は何度も目にしてるから驚きはしないが、こいつには相当な刺激だろう。
結希は何を疑問に思われているか分からないといった様子……そして尚も、思春期の女子とは思えない食べ方で手のひらの上のご飯を食べる。
いつも余裕たっぷりの浩樹もこれには余裕を失い唖然としている。
俺はパジャマが裏表逆の状態で逆さに着られてるのも気になるが……
……まあこれでこいつも懲りるだろう。
その後も浩樹は俺の馬鹿王女に翻弄され、いつもとは違った表情を見せまくった。
【次の日】
「なあ、光流。……またお前の家行っていい?お前の妹ほんと面白いわ!」
「貴様……正気か?」
俺は初めて浩樹を尊敬した。
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