13 / 24
第十三話 あの日見た妹の奇行を僕たちはまだ理解できない。~下~
しおりを挟む※第十二話の続きです
「なんだ……これは?」
「えっとそれはね!………何?」
「俺が聞いてるんだ!」
結希の部屋の大掃除が始まり、俺達は順調に結希の部屋のがらくたを片付けて行った……途中、カビの生えたおにぎりや、鉄と鉄を溶接する機械など、おかしなもののオンパレードだったが。
しかし、そんな俺達の前に本当に未知のものが突如立ちはだかった。
……部屋に無造作に置かれた、謎の変な形をしたそこそこ大きい割れた石だ。
正直に言おう……気持ち悪い。
苔が所々あったり、赤い字で何か文字が書かれている……この石、呪われている気しかしない。
ヤバイ臭いがプンプンする。
そんなすこし顔がひきつり出した俺を見て結希は、急に心外だ!と言わんばかりに俺にこう言った。
「私の部屋なんだから未知のものではないはず!」
「お前の部屋だから未知の可能性があるんだよ!」
「……なっ!で、でも!私はこの石見覚えある……もん?」
「疑問にするな!」
興奮のあまり立ち上がった結希の後ろに結希が経験したこと無いはずの、野球のキャッチャーマスクがあったが、気にしないことにしよう。
しかし、そこで俺はあることを思い出していた。
……当然、野球についてではない。
確か、小学三年生の時にこんな石をみた覚えがある……。
そういえば七年前、俺はこの石をもって結希の部屋にいたのだ。
……確か、小学校に入学したばかりの結希を心配していたからだった気がする。
あれ?何をしに結希の部屋に行ったんだっけ?
【七年前】
「よし!これでよし!」
ついこの前、妹の結希が小学校に入学した。
……ああ、心配だ。
俺の可愛い結希が変な男子にまとわりつかれてしまう!
そんなことになったら結希はきっと、困るだろう。
だから今日はこのお守りの石を結希の部屋に置きにきたのだ……ヤバイ、俺ってすげえいいお兄ちゃんじゃん!
俺はこの前映画でみた、神社とかに置かれている石を自分で作って、結希の部屋の物置に置こうとしていた。
神社って神様の場所って聞いたことがあるから縁起がいいに決まっているよな。
……っていうか、見よう見まねで作ったけど、この『呪』ってどんな意味なんだろう?
まあ、いいか!これで、結希の周りに男子が群れることはなくなるはずだ!
「あっ!お兄ちゃん!……なんで結希の家にいるの?」
「……えっ!って家にいるのは当たり前だろ!それをいうなら部屋にだ!………ああっ!」
俺は、急に入ってきた結希には動揺しなかったが、ツッコミを入れたときに手の力が抜けてしまった。
ガラアアアンっ!と音をたてて俺の手から落ちた石が割れる。
……まあ、割れても効果ある、よな?
「結希……この石を大事にするんだぞ」
「……え?なんで?なにこの石?怖い」
テンションが完全に下がりきった俺は、シャツをズボン代わりに着ている結希に「着替えとけよ」と一言付け足してから自分の部屋へ戻った。
*****
………黒歴史か。
完全に思い出して、俺が頭を押さえて過去の自分を後悔していたとき、結希は急にひらめいたような様子になる。
「……っていうかこの石!確かお兄が持ってき……」
「結希!もうすぐで片付け終わるから頑張ろう!」
「……いやでも、これお兄が」
「さあ!明日までに絶対に終わらせるぞおおお!」
有無を言わせない俺に結希は困惑するのだった。
余談だが、片付けは年越し直前まで続いた……。
まあ、俺にも結希が可愛くて仕方なかった時期があったらしい………だが、今を思うとやはり過去の話のようだ。
俺は一年を振り返り、遠い目をした。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
足を踏み出して
示彩 豊
青春
高校生活の終わりが見え始めた頃、円佳は進路を決められずにいた。友人の朱理は「卒業したい」と口にしながらも、自分を「人を傷つけるナイフ」と例え、操られることを望むような危うさを見せる。
一方で、カオルは地元での就職を決め、るんと舞は東京の大学を目指している。それぞれが未来に向かって進む中、円佳だけが立ち止まり、自分の進む道を見出せずにいた。
そんな中、文化祭の準備が始まる。るんは演劇に挑戦しようとしており、カオルも何かしらの役割を考えている。しかし、円佳はまだ決められずにいた。秋の陽射しが差し込む教室で、彼女は焦りと迷いを抱えながら、友人たちの言葉を受け止める。
それぞれの選択が、少しずつ未来を形作っていく。



断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
【完結】君への祈りが届くとき
remo
青春
私は秘密を抱えている。
深夜1時43分。震えるスマートフォンの相手は、ふいに姿を消した学校の有名人。
彼の声は私の心臓を鷲掴みにする。
ただ愛しい。あなたがそこにいてくれるだけで。
あなたの思う電話の相手が、私ではないとしても。
彼を想うと、胸の奥がヒリヒリする。
新井くんは給食嫌い。
タカクテヒロイ
青春
小学5年生の新井は偏食が激しくいつも給食に悩まされていた。ありとあらゆる手を使って嫌いなものを食べずに乗り切ろうとする。
学校給食を中心としたほのぼのコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる