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第八話 妹は知識が少ない。後編
しおりを挟む※七話の続きです。
「それは流石にまだはやいだろおおおおおおっ!」
俺は全速力で二人のところへ駆け込んだ。
「……はいっ!髪についてたガム取れたよ。」
「ありがとー!すごいね!全然痛くなかったよ」
ズザアアアァッ!
……やっぱりか!なんかそんな気はしてたよ!
手前で、俺は思いっきりずっこけた。
案の定というかなんと言うか、キスと思いきやただガムを取っていただけ
……っていうか中学生にもなって髪にガムをつけるなよ。
「あ、あれっ!?お兄!?どうしたの?」
「えっ!天王寺さんのお兄さん!?」
あー……やっちゃったっぽいな。
ちょっと気まずくなって黙り込む俺と、驚く翼くんアンド結希。
後ろから美香ちゃんも追い付いてきた。
「……ちょっとお兄さん!何で急に出ていっちゃうんですか!」
「……あはは」
何も返す言葉がない。
「本当に、妬きもちも大概にしてくださいよ……」
「妬きもちでなない!」
「えっ!お兄餅焼いてくれたの!?やったー」
「食べ物じゃない!」
「こ、この人が超シスコンという……!いいえ!僕は負けません!」
「うお!お前はお前ですげえ勘違いしてんな!」
「いえ!僕の愛が上回ると信じています!」
「ああもう!面倒くさい!」
突っ込みの量が異常で疲れる。
まあ、今回はお兄ちゃんが圧倒的に悪いから何も文句は言わないが……
******
後で聞いたところによると、付き合っているのではなく、翼くんの片想いで止まっているらしい。
何だ………よかっ
……いや!よくない!
くそ!妹を託し損ねた!
そう言いつつも何だか俺は、謎の安堵に包まれていた。
するとあの事件の次の日、結希がリビングでこんなことを聞いてきた。
「……ねえ、お兄。どうしてこの前あんなところにいたの?」
「ギクッ!……あ、あれだよ。み、美香ちゃんとデート……」
あ、何言っちゃってんの……俺。
完全に咄嗟にでた嘘だが、ちょっとだけリアリティーがあるせいで後々誤魔化し辛そうだな……
また今度美香ちゃんに謝ろう。
「ええええぇぇええっ!お兄って美香が好きなの!?」
「ま、まあ微妙なところだな!?」
妹は驚いた様子を見せる。
また処理に追われることになるだろうが、この場を凌げればよしだ。
俺は何とかこれで解決したと思っていた。
……そう、この後何が起こるかなんて想像もしてなかったのに。
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