妹の馬鹿さが既に恐怖の域に達している!?

筒猫

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第一話 この馬鹿すぎる妹に救済を!

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 「ねえねえお兄!この人たち私と服がお揃いだよ!凄い偶然!」

 「まあ、制服だからな」

 とある秋の朝、学校への登校中のことだった。
過ごしやすい気候で、気分もすっきりしそうな朝に、俺は妹と一緒に登校していた。

 ちなみに言っておくと妹はふざけているのではない。
本気で言っているのだ。

……俺、天王寺 光流てんのうじ みつるは感情を捨てたような悟りきった目でそんな妹の結希ゆきを眺めていた。

 これが、珍しいことなら「馬鹿だなぁ」と流してあげられるのだが、このくだりは2学期になってから数えても、少なくとも5回はしているのだ。
 こうなってきたら心情は「お前は馬鹿だ!本当の馬鹿だ!」に変化する。

 しかし、原因いもうとは全く気にする素振りもみせず、いつも通りの明るさで話しかけてくる。

 「あ!そうだお兄!そんなことよりね!私昨日褒められたの!」

 「話を聞け!」

 「隣のおばあちゃんにね!結希ちゃんにはパンケーキもないし素直でえらいのねって!」

 「反抗期な」

 「ハンコウキ?それって風でたりする?」

 「決して扇風機の仲間ではねぇよ」

 ……そう、俺の妹は馬鹿だ。もう、なにか特別な形容詞を使うまでもない。常人には理解できない程の馬鹿そのものなのだ。

 今は俺が隣にいるから何とかこいつの暴走を抑えているが、これから俺は高校に、結希は中学校に行くため、この超絶馬鹿いもうとを野放しにすることになってしまう。

……まあ、その点は心配なしなのだが。

 彼女がこの先の曲がり角で待っていてくれているはずだ。
 ……そう思った矢先、少し歩くと前に求めていた人影が現れる。

 「おはよう結希……お兄さんもおはようござます」

 「ああ、美香みかちゃん、今日もこの宇宙人いもうとをよろしく頼むよ」
 
 「はい、任せてください!……もう慣れてますので!」

 「……いつも悪いね」

「はは……何年この子の友達してると思ってるんですか?予想外のことをしても対応してみせます!」

  曲がり角で俺達を待ってくれていた女の子は異次元人いもうとを俺が見れない間の面倒を見てくれている子だ。
彼女は高見ノ里 美香たかみのさと みか、俺が妹を任せられる1000年に1人級の貴重な存在だ。
 明るい茶色がかった髪からは一見少し遊んでいるようなイメージを感じるが、中身は凄くまともで成績もいい優等生、結希とは幼稚園から遊んでくれている。
ちなみに髪色は地毛で、黒く染めようか悩んでるらしい。

 「じゃあそろそろガッコ行こっか、結希。」

 「美香!見てよ!この犬可愛い!」

 妹は紛うことなき猫を指差して嬉しそうに美香に言う。

 「ワー、カワイイネ。よし!そろそろ学校行こうか」

 「ん?……そうだね!」

 二人は学校に向かって歩き出す。

そんな二人を見て俺は驚愕した。

……なんて鮮やかなあしらいかただ!
また今度真似してみよう。
 
 と、まあ彼女のお陰で妹が学校にかろうじて通えているのだ。
彼女のありがたみを再確認する。
……よし、俺もさっさと学校へ向かおう。
 そう思い、彼女たちに背を向け歩き出したと同時くらいだろうか
 
 後ろから大きな声が聞こえる。

……案の定、結希と美香ちゃんだ。

 「結希?……結希!?何でそんなもの手に持ってるの!?何それムカデ!?近づけないで!私にそれを、近づけないでええぇぇっ!」

 「この虫超可愛い!見てみて!
……って痛い!何かチクチクするうぅうう!助けて、お兄いいいいっ!」

 ……今のは聞こえなかった。俺には何も聞こえない。

 俺はそのまま気にせず自分の高校に向かうことにする。

……ごめん!美香ちゃん!

 少しの罪悪感を抱きながらも、いつも通り俺は学校に向かった。
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