精霊の加護

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精霊の加護180 新戦術への対抗策はまだまだ

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精霊の加護
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№180 新戦術への対抗策はまだまだ

 リシッチャ島ラクシーサを出航して、南部湾東岸ネヴェッツィ、南部湾西岸ヴァジェノを巡ったクロチュデルスゥデ号は、最後に南府湾で錨を降ろした。
 これで、南府湾主要4港をすべて回ったことになる。

 南府港で馬車と曳馬たちを降ろし、ラモの馬車を先頭に、リチャードの馬車、アクアビット号と3台が連なって、南部公爵のお屋敷に到着。
 そしてラスプ・デルスゥデ島の開発状況を、南部公爵様に報告したのだった。

 報告を聞き終えた南部公爵様は、
「ゲオルク、そなた、いつぞや南部湾に侵入して、南部湾を散々荒らしたリヴァイアサンを退治したそうだの。大儀であった。」
「公爵様、退治したのは精霊たちで、さらには、ラモとラモのクルーたちが、クロチュデルスゥデ号で、リヴァイアサンを追跡してくれたお陰です。」
「精霊たちが退治したのなら、精霊たちを指揮していたそなたが倒したようなものではないか。
 それからラモ、そなたもリヴァイアサンの追跡、大儀であった。」
「いやあ、マイハニーがいい船足で追跡してくれたお陰だよ。そのマイハニーも、ゲオルクが、精霊たちを使ってメンテしてくれたお陰で新造船並みに若返って、さらに船足が速くなったんだけれどもね。」

「左様であったか。
 ゲオルクよ、重ねて礼を申す。」
「南部公爵様、勿体ないお言葉です。
 それから、俺たちがリヴァイアサンの追跡に専念できたのは、リチャードが留守居としてフォンターナ港の守備を固めてくれていたお陰でもあります。」
「そうだねー、リチャードのお陰で、背後に憂いなく追跡に専念で来たよねー。」
「左様か。
 リチャード、そなたにも礼を申す。」
「いえ、南部公。私は実際のところ、フォンターナ港で待機していただけですよ。」
「そなたたちの武勇伝、夕餉の席で詳細に聞かせよ。」

 南部公爵様への公式の報告はこれで終わり、その後、順番に風呂を頂いて、夕餉の席となった。

 夕餉では、南部公爵様、公爵様の奥方様が同席して、ラモ、ペリーヌ様、リチャード、ナディア様、俺たちスピリタスで大いに盛り上がった。
 もちろんメインの話題は、リヴァイアサンの討伐である。それとラスプ・デルスゥデ島の開発状況の報告も。

「父上が、向こう3年間の納税を免除してくれたお陰で、移住者がどんどん来ていてね、どの集落も移住者で急速に発展しているよ。」
 玄関口で島の中心の東のラスプ港、北の浜の海水浴場と宿泊施設、山頂のグランピング場、南のフォンターナ港と遠洋漁業、南の浜のサーフィン場と宿泊施設、西のマングローブ林のエビの養殖場。どれも俺とラモの予想を超えて、順調に開発が進んでいる。
「それは重畳。しかし納税免除はそなたらの提案であったではないか。実によい思い付きであった。」

 南部公爵様は、帝国や教国との海上交易が非常に順調で、その面からも大いに感謝された。さらには、お調子もんのラモが、楽しく盛り上げてくれたお陰で、俺もリチャードもいつの間にか、南部公爵様と楽しく酒を酌み交わしていたのだった。

 ラスプ・デルスゥデ島の領主館での、拡大女子会のお陰で、すっかりわが妻たちと馴染んだナディア様とペリーヌ様は、わが妻たちを巻き込んで、南部公爵様の奥方様と盛り上がっていた。

 精霊たちはと言うと、いつものマイペースな調子で、
『お酒ー。』『呑むー。』『ひと口、ちょうだーい。』
と、俺から口移しで酒を呑んでいた。そしてその度に光るのだ。笑

 こうして南部公爵様のお屋敷での夜は楽しく更けて行った。

 もちろん呑みが終わって、あてがわれた部屋に行ってから、輪番のリーゼ、ジュヌ、カルメンとよろしくやったのは言うまでもなかろう。
 たとえ南部公嫡様のお屋敷とて、遠慮する俺ではないのだ。ま、王宮でも遠慮しないしな。笑

 翌朝起きると、わが妻たちから誕生日のお祝いを言われた。そうか、今日、誕生日だっけ。と言うことは、今宵は…。むふふ。
 あれ?でも今日は、王都に向けて出発しちゃう?え?それはないでしょ。せめてもう1泊。

 しかしなぁ…。 あー、もう1泊する理由が見付からない。

 流石に誕生日で嫁たちとむふふタイムを過ごしたいからもう1泊させてくれとは言いにくいよなぁ。
 でもこっそりラモに相談してみるのもありか?遊び人のラモならきっと、広い心で受け止めてくれるだろう。
 しかしリチャードは、新婚旅行を兼ねたリシッチャ島バカンスを終えた訳だから、一刻も早く北府に帰りたいだろうしなぁ。

 うーん…。

 ならば、今宵は野営ではなく、南府・王都間の宿場町に泊まればいいのでは?うん、そうしよう。

 ここで、わが妻たちにぱふぱふ狙いで交渉を始めた。
「ところでさ、今日、王都に向けて出発するから、今宵は禁欲じゃん。そのう…お誕生日プレゼントを今…。」
「ちょっとダーリン、いくらなんでも朝から南部公爵様のお屋敷で、エッチなことなんてできる訳ないじゃん。」おっといつもはノリノリのビーチェが…。
 あ、そうか!南部出身のビーチェにとっては、南部公爵様はご領主様だった訳だ。それで柄にもなく遠慮してるのか。

「そうですわよ。でも…ぱふぱふくらいなら、大目に見て差し上げても…。」おー、ジュヌ。ナイス!
「うむ、まあぱふぱふまでならよしとしようか。」一番お堅いベスも承知したので、その後、俺の目論見通り、わが妻たちの7連の生ぱふぱふとなった。

『ツリもー。』『クレもー。』『フィアもー。』『チルもー。』『ワラもー。』『ウィンもー。』『メタもー。』『ソルもー。』『ダクもー。』
 続いて精霊たちとの9連生ぱふぱふとなった。まあ、最後のふたり、第4形態のソルとダクは少々物足りなかったが。
『『ぶー。』』あ、やべ。心を読まれた。

『ゲオルクのせいだもん。ソルたちをあまり使わないから。』
『そうだもん。ダクたちをもっと使ってよね。』
「んー、でもソルとダクの精霊魔法は相手が要るしさー。」
『移動中、ダクの精霊魔法をエリアで掛ければいい。』
『そしたらすぐ、ソルの精霊魔法をエリアで掛けて回復すればいい。』
「なるほど。」エリアで掛ければ、その一帯にいる獣に精霊魔法が掛かるか。

 リチャード夫妻、ラモ夫妻とともに朝餉を頂いて、その席で王都への旅程を確認した。
「リチャード、今日、王都へ向けて出発でいいよな?」
「ああ。護衛の連中にもそのように伝えているしな。
 ラモもそれでいいよな?」
「もちろんだとも。」
「え?ラモも王都に行くのか?」
「もちろん行くさ。」ラモが、なんでそんな質問を?と言う顔をしている。
「ゲオルク、忘れたのか?王都の仕立屋に行くってことになってたろ。」リチャードが説明してくれた。そう言えば、ナディア様とペリーヌ様にワルキューレスタイルの水着を作るんだったっけ。
「あ、そうだったな。」

 その後、南部公爵様に出発のご挨拶に行ったのだが…。

 俺とリチャードが南部公爵様に、お世話になったお礼と出発の挨拶をし、ラモが王都まで見送りに行くと言うと、南部公爵様から待ったが掛かったのだ。
「ゲオルク、もう1日滞在せよ。」もう1日滞在と言うことは、今宵、わが妻たちと誕生日むふふができるではないかー!やりぃ。
「はい、それは構いませんが…。」と、内心のガッツポーズを隠しつつ、表面上は平静を装ってみた。

「おお。すまぬな。それでな、今日はわが手勢の者どもに、特訓をして欲しいのだ。」
「特訓と言いますと?」
「うむ。実はそなたが帝国の内乱で、当時帝太子だった新皇帝に加勢して、帝都の奪還戦に用いた新戦術なのだがな、あれは実に斬新であった。」
「はあ。」
「なんだ、気のない返事だな。しかしな、あの新戦術はその斬新さゆえに、対策が急務となってな。今、王都と四府の魔法学院は、総力を挙げて睡眠魔法とそれに対する耐性の開発を研究しておる。
 それでな、この度、南府魔法学院で睡眠耐性を付与したアイテムの試作品ができたのだ。」
 そう言えば、ダクの精霊魔法のひとつであるスリープを使って籠城兵を眠らせ、無血・無被害で帝都を陥落させたのは今までになかった新戦術だと、バース伯爵様に言われたっけな。あのときは半信半疑だったが…。

「そう言うことでしたら構いませんよ。」
「わが騎士団にな、その新アイテムを装備させるゆえ、騎士団詰所まで、余とともに出向いて、睡眠魔法を掛けて欲しいのだ。」
「承知しました。」
「そう言うことならわれらも検分したいな。
 なあ、ラモ。」
「そうだね、リチャード。
 それにしてもゲオルクったら、そんなに凄い精霊魔法なら教えてくれてもいいじゃないか。」
「いや、なんと言うか…。実は俺もそんなに凄いとは思ってなかったんだよ。」

 で、南府騎士団詰所に来ている。
 この実験には、南部公爵様以下、南府魔法からも、睡眠耐性を付与した新アイテムの開発に携わったスタッフが数名来ていた。
 それと俺たちスピリタスに、リチャードとラモが同道した。
 ちなみにナディア様とペリーヌ様は、南府公爵様の奥方様とお茶しつつおしゃべりに嵩じるそうだ。

 睡眠耐性を付与した新アイテムの試作品は20個のメダルだったので、20名の騎士団員がメダルを懐に入れて、騎士団内の馬場に展開した。
「準備はよいか。
 ではゲオルク、頼む。」俺は南部公爵様からの合図に頷いた。

「ダク。」
『うー、だあー!』ダクは、一旦タメを作った後、エリアスリープを放出。
 馬場に展開していた20名の騎士団員のうち、2名が昏倒して爆睡したが、18名は眠らずに堪えた。
「眠らされたのは1割か。まあこんなもんであろうかの。」南部公嫡様は満足気であったのだが…。

『むう。生意気。うーーー、だあーーー!』残った18名全員がバタバタと倒れ、最初に倒れた2名とともに、新アイテムを装備していた騎士団員20名全員が、爆睡してしまった。
「ダク、何やった?」俺が慌てて聞くと、
『ふふん。エリアハイスリープ。』と、ドヤりつつ、澄まして答えるダク。やばい、起こさないと!
『ソルが起こす。うーーー、だあーーー!』ソルのエリアハイウエイクで、眠って20名全員が起きた。

「なんと…。」唖然としている南部公嫡様に、
「…」×数名。絶句している南府魔法学院の新アイテム開発スタッフたち。

「南部公爵様、そのう…申し訳ありません。」
「いや、ゲオルク、よいのだ。睡眠魔法の上位版か?魔法学院が開発した睡眠耐性では、まだまだスペックが足りぬのだな。それに覚醒魔法で睡眠状態を解除できる訳か。
 魔法学院のスタッフたちよ。これが現実だ。耐性アイテムのさらなる開発に勤しめ。」
「ははっ。」×数名。
「それから覚醒魔法の開発もな。いや、待てよ。覚醒魔法は睡眠からの回復ゆえ、回復系の魔法になるのか?それならば教会の領分だな。教会にも指示を出さねばいかんな。」

 言えない!ハイクラスの上にエキストラクラスがあるなんて、絶対言えない。

 それに睡眠のスリープの耐性アイテムが開発されても、その他に麻痺のスタンや、毒のポイズンや、魅了のチャームもあるなんて、もっと言えない。
『ゲオルクー、お腹すいたー。』『すいたー。』と、ソルとダクがやって来て、べろちゅーを貪って行った。白く輝くソルと黒光りするダク。

「ゲオルク、凄いではないか。」「ほんとだよ。驚いたなあ。」リチャードとラモは、俺の冷や冷やな心境を他所よそに、すっかり感心していたのだった。
 ふたりとも、空気読んでくれっ!

「旦那様、他の状態異常については、バレるまで内緒にしておいた方がよいぞ。」とベスが耳元で囁く。
「え?もちろんこの空気で言えないけど…。」
「そう言う意味ではない。手の内は隠しておけと言っておるのだ。」なるほど。流石、俺の軍師。

 結局その晩、南部公爵様のお邸にもう1泊した俺は、夜遅くまでわが妻たちひとりひとりから、誕生日プレゼントを頂いたのだった。

 え?誕生日プレゼントに何を貰ったのかって?そんな野暮なこと聞くんじゃねぇよ。笑

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 リアルが忙しくなり、執筆の時間を十分に取れませんので、今回の投稿でしばらく休載します。落ち着いたら必ず再開します。

 以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「母娘丼W」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/265755073

 カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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