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精霊の加護176 エビの養殖場
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精霊の加護
Zu-Y
№176 エビの養殖場
翌朝、南の港の外洋漁業の網元宅…と言うか網元邸で朝餉を頂いていたところ、網元が遠慮なくぶっ込んで来た。
「それにしてもご領主様はやはり英雄でやしたね。」
「英雄?」リヴァイアサンを倒したからか?でもあれって精霊たちの仕事だけどな。
「そうですぜ。『英雄色を好む。』って言うじゃねぇですか。昨夜は随分お楽しみだったようで。」あ、そっちか?苦笑
「これだけ愛しい妻たちがいるからな。毎晩ひとりずつって訳には行かないさ。一応、ひと晩3人までって決めてるけどな。」
「おお、流石に英雄でやすね。シレっと言うなんざ、やっぱりご領主様は大物ですぜ。これが小者なら惚けるか、聞こえないふりをするところでやしょうね。」
「網元ー、分かってるじゃないか。何を隠そうゲオルクと来たら、王宮でもまったく遠慮しないで、気の向くままにやりたい放題だからね。」とラモが言うと。
「そうだな。王宮では宿泊者に監視が付くのだが、それを知ったゲオルクは、奥方たち全員と、とことん痴態を演じたと言うではないか。まったく開いた口が塞がらん。」とリチャードが応じた。
「酷い言われようだな。でもさ、あれは報告する痴女たち…じゃなかった侍女たちと、報告を聞く殿下が赤面したら面白いかな、と思ってな。」
「わっはっはっ。お見逸れ致しやした。流石、われらがご領主様で。」そう言って網元が頭を下げた。
「それにしても、網元よ。俺たちの声が聞こえるとは、壁が薄いんじゃないか?」
「そんなことはねぇですぜ。奥方様たちのお声が大きいんで。」
「仕方ないのじゃ。主様が攻めまくるゆえ、思わず出てしまうのじゃ。」
「声を、我慢すると、お頭様は、もっと、攻めて来る。」
「ちょっと、ドーラにトーラ、明け透け過ぎるわよ。」
「そう言う、リーゼが、昨夜は、一番、乱れてた。」
「そうじゃのう。」
「そうだったかしら。でも否定はしないでおくわ。」わが妻たちが爆笑した。
初物食いが好きで、散々いろんな男を食いまくって来たわが妻たちは、下ネタについては非常にあっけらかんとしている。ちなみに俺も、会ったその日のうちに、全員に食われたものな。笑
「でもさ、網元、やっぱ壁は薄いよ。両隣でラモとリチャードが頑張っていたのも聞こえたぜ。」
ナディア様とペリーヌ様が、シンクロして真っ赤になって縮こまった。流石、姉妹。
「ゲオルク、よく言うよ。そっちから先に聞こえて来たんじゃないか。」
「まったくだ。あんなに延々と聞かされては、こちらも頑張らねばならん。」
さらに赤くなって、縮こまるナディア様とペリーヌ様。
「姫たちは初々しいのう。見ておると身悶えしそうなのじゃ。」と言ってドーラが胸の前でクロスさせた両腕で自身の両肩を抱いて、くねくねし出した。笑
「ちょっと、ドーラ、姫様たちをあまり弄らないで下さいな。」すかさずジュヌが姫様たちを庇った。王都で育ったジュヌは、王家の姫様たち贔屓なのだ。
「でも姫様たちも、生娘って訳じゃないんだからさ、こう言う話にも慣れといた方がいいんじゃないかい?」
「そだよー、ベス。大人の会話じゃん。」
「いやいや、カルメン、ビーチェ、何を言う。王家出身の姫様たちであるぞ。王家の姫君や貴族の令嬢たちには慎みも必要なのだ。」
「えー、でもさ、伯爵家御令嬢のベスはそうじゃないじゃん。それから、ミュンヒェー辺境伯様とかもさ。」
「あのお方は特別なのだ。まあ、私もそう言う意味では特異な方ではあるがな。」
「わっはっはっ。いずれにせよ、すぐにお世継ぎができやすな。」最後に網元が上手くまとめた。
午前中に、南の港のフォンターナ港の漁師集落の網元邸を発って、島の周回道路を移動すること1時間。島の西のマングローブ林に付いた。
遠浅の海で下が砂地の南国には、ヒルギかの植物がマングローブ林を形成する。ヒルギ科の植物は、根が砂地を掴むように生えるので、ネト砂地が作る空間に、エビや小魚が棲み付くのだ。
マングローブ林から落ちた枝葉は、南国の暖かい海水温で速やかに分解されて養分となり、プランクトンを育む。これがエビや小魚の格好の餌となるのである。
つまりマングローブ林は、そこに棲み付くエビや小魚に、外敵から身を守るための快適な住居と、豊富な餌を供給しているのだ。
俺は、マングローブ林の海に面する外縁をそのまま残し、マングローブ林の内部に格子状の水路を作るように指示していた。
樹々から落ちた枝葉が波の満ち引きでこの水路の窪みに溜まると、そこで分解され、その養分でプランクトンが発生する。するとエビや小魚は餌を食いに水路に出て来るが、海に面する外縁はマングローブ林で閉ざされているため、大きな魚は入って来ない。
エビや小魚たちは水路で飯を食い、マングローブ林で休むのである。筒状の網をカヌーで引いて、この水路を通れば、筒状の網の中はエビや小魚で一杯になると言う寸法だ。
生簀を使って高密度で育てる方が効率的かもしれないが、この方法だと養殖物ではなく天然物と言うことになる。活きがまるで違うし、天然物と言うだけで付加価値が付く。
「これはラモ様。いらっしゃいやし。」
「ゲオルク、西の網元だよ。エビ養殖場の世話役さ。
網元、こちらがご領主様のゲオルク・スピリタス卿だよ。」こっちのボスも網元か。南のボスも網元だし、なんかややこしい。苦笑
「これはこれはご領主様で。お初にお目に掛かりやす。」口調まで一緒かよ。漁師は皆こんな口調なのかな?
「網元、よろしくな。で、どうかな?エビ漁の状況は?」
「順調でやす。ただ、水路造りにはいささか骨が折れやして。まだマングローブ林全体の1/5程度しか、水路を引けていやせん。それとエビと一緒に獲れる小魚の処理が面倒なんで。」
「小魚か…うーん、そうだなあ…。何かいい利用法はないかな。」俺はわが妻たちにも聞いてみた。
「旦那様、干して粉末にして出汁にすれば、売れると思いますわ。」
「お、それいいね。」流石、美食の中部出身のジュヌだけのことはある。
「お前さん、甘辛く煮て酒の肴にするのもいいんじゃないかい?」
「なるほど、それもありだな。」流石、居酒屋大好きのカルメン。
「そいつあいい。煮干しや甘露煮だと日持ちもしそうだ。試してみやしょう。」
「じゃあさ、特産品の開発に掛かった費用は役場に請求してよ。」
「え?よろしいんでごぜぇやすか?」
「構わないよ。その代わりいい品を開発してくれよな。」
「ところでこれから猟師どもが、カヌーでエビ漁に出やすが、高台で食事をしながら御覧になりやせんか?」
「そりゃいいね。」
で、俺たちはマングローブ林が切れた高台にある西の網元宅…と言うか網元邸に来ている。南の網元のとこと同じように、集落の集会場も兼ねてるのな。
「エビしかねぇんでやすがね、エビならたんとあるんで。」
でーんとおかれた大皿には、茹でエビが山盛りに盛られていた。
「おお、これは凄いな。では頂くよ。」皮を剝いてぱくりと行こうとしたら網元に止められた。
「ご領主様、こうして背ワタを取ってくだせぇ。この手間をサボると、じゃりじゃりして塩梅がよくねぇんで。」網元は親指の爪ですーっと背ワタを取ってぱくりと行った。
俺もそのまねをして背ワタを取ってぱくりと行く。
「うお!これは旨い。」
「でやしょう?お上品に味付けするより、塩茹でが一番旨えんでさ。それがほんまもんのエビの味なんで。」
わが妻たちも、ナディア様もペリーヌ様も、リチャードもラモも大絶賛だった。
その後、塩焼きやバター焼きも出て来た。エビ尽くしである。
「くー、旨え、堪らん。」ビールや白ワインがよく合う。
俺、リーゼ、カルメン、ベス、リチャードはビール。
ジュヌ、ビーチェ、ラモ、ナディア様、ペリーヌ様、網元は白ワイン。
ドーラとトーラは蒸留酒のグラッパだった。
精霊たちはもちろんアードベクである。エビは食ってないけどな。
「網元、出航しやす。」若衆が港のカヌーを指さしながら告げると、水路に向かってカヌーが漕ぎ出して行った。
「あのカヌーは円筒状の網を引いてやす。水路に出ているエビたちを網で掬うんでさ。」
しばらくカヌーで網を引いた漁師たちは、網を引き揚げてカヌーに水揚げした後、帰路の間に結構な量をリリースした。
「あれは小せえのをリリースしてるんでさ。小せえのは碌な値が付きやせんが、リリースすりゃあ、じきに大きく育ちやすんで。それと小魚は大きめのエビが食いやすんで。」
「なるほどな。」
エビ尽くしの昼餉を終え、水揚げされたエビを見に、船着き場に行った。大ぶりのエビが冷凍魔法で凍らせられている。
チルが、ずいっと踏み出して来た。言いたいことは分かる。笑
「網元、手伝わせてもらっていいかな?」
「何をお手伝い頂けるんで?」
「冷凍だよ。」
「じゃあ、お願えしやす。」
「チル。」
『はーい。』喜々として精霊魔法を放ったチルは、エビと小魚を一気に冷凍させた。
「こいつは凄え。」網元をはじめ、漁師たちが絶句した。笑
ところで、小魚と言うには結構でかくなったのもいる。
「網元、小魚はリリースするんじゃなかったのか?」
「いえ、ご領主様。ここまで育つと厄介なんでさ。小せぇエビを食っちまいやすからリリースはできねぇんで。この辺の大きさだと煮干しや甘露煮に使えそうでやすが、こっちのサイズまで育つと煮干しや甘露煮にするには、ちょいとでか過ぎるんで始末に負えねぇでさ。ブツ切りにして海に帰すぐらいでやすかね。」
「なるほどねぇ。」
「そうだ、網元。水路造りに難航してるって言ってたよな。」
「へい。そうなんで。」
「精霊たちに水路を造ってもらおう。」
それから網元と一緒にカヌーでマングローブ林に出て、網元の希望に沿って、手付かずのままだったマングローブ林の4/5に格子状の水路を造った。クレがモゴモゴやるだけだったけどな。
それから、マングローブ林をツリが活性化させ、作業中に満潮を過ぎて引き出した潮をワラが引き戻し、水路を造るために倒した樹々は、フィアが燃やすか、ウィンがスパスパとぶった切るか、メタが雷を落とすか、ダクが枯らすかして処分した。
最後にソルがマングローブ林に棲むエビに回復の精霊魔法を掛けた。
チルは水揚げのときにエビの冷凍で活躍したので、今回はすべての精霊たちに出番があった。このため精霊たちは頗るご機嫌であった。
西の養殖集落でも大層感謝された俺たちは、北の白浜経由でおよそ2時間掛けて島を半周し、東の港の領主公邸に戻った。
リチャード夫妻とラモ夫妻に、先に風呂に入ってもらった後、皆で夕餉。公邸の料理人たちの料理に舌鼓を打った。
夕餉の後は、俺たちの入浴タイムである。
まずは、今日頑張った精霊たちにご褒美である。隅々まで洗ってやってキャッキャ言わせつつ、7連虹色生ぱふぱふと、2連白黒もみもみを堪能した。それからわが妻たちとの7連生ぱふぱふ。
マイドラゴンが『出番ー。』と、俺の頭の中に悲痛な叫び声を届けて来たが、むふふタイムまで我慢しろってのと、思いっ切りスルーしてたら、ぶんむくれて拗ねやがった。笑
発情期のドーラと、輪番のジュヌとカルメンを連れてベッドルームに行くと、眼が血走ったドーラに押し倒されて、そのまま馬乗りになられて、マイドラゴンがドーラの蜜壺に捕食されてしまった。
風呂場以降、ぶんむくれて拗ねていたマイドラゴンは、元気にホワイトブレスを吐き出したとさ。いや、搾り取られたと言うべきか。
その後、ジュヌとカルメンにも、マイドラゴンは交互に搾り取られたのだった。お口でね。笑
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
毎週土曜22時に投稿します。
以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「母娘丼W」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/265755073
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№176 エビの養殖場
翌朝、南の港の外洋漁業の網元宅…と言うか網元邸で朝餉を頂いていたところ、網元が遠慮なくぶっ込んで来た。
「それにしてもご領主様はやはり英雄でやしたね。」
「英雄?」リヴァイアサンを倒したからか?でもあれって精霊たちの仕事だけどな。
「そうですぜ。『英雄色を好む。』って言うじゃねぇですか。昨夜は随分お楽しみだったようで。」あ、そっちか?苦笑
「これだけ愛しい妻たちがいるからな。毎晩ひとりずつって訳には行かないさ。一応、ひと晩3人までって決めてるけどな。」
「おお、流石に英雄でやすね。シレっと言うなんざ、やっぱりご領主様は大物ですぜ。これが小者なら惚けるか、聞こえないふりをするところでやしょうね。」
「網元ー、分かってるじゃないか。何を隠そうゲオルクと来たら、王宮でもまったく遠慮しないで、気の向くままにやりたい放題だからね。」とラモが言うと。
「そうだな。王宮では宿泊者に監視が付くのだが、それを知ったゲオルクは、奥方たち全員と、とことん痴態を演じたと言うではないか。まったく開いた口が塞がらん。」とリチャードが応じた。
「酷い言われようだな。でもさ、あれは報告する痴女たち…じゃなかった侍女たちと、報告を聞く殿下が赤面したら面白いかな、と思ってな。」
「わっはっはっ。お見逸れ致しやした。流石、われらがご領主様で。」そう言って網元が頭を下げた。
「それにしても、網元よ。俺たちの声が聞こえるとは、壁が薄いんじゃないか?」
「そんなことはねぇですぜ。奥方様たちのお声が大きいんで。」
「仕方ないのじゃ。主様が攻めまくるゆえ、思わず出てしまうのじゃ。」
「声を、我慢すると、お頭様は、もっと、攻めて来る。」
「ちょっと、ドーラにトーラ、明け透け過ぎるわよ。」
「そう言う、リーゼが、昨夜は、一番、乱れてた。」
「そうじゃのう。」
「そうだったかしら。でも否定はしないでおくわ。」わが妻たちが爆笑した。
初物食いが好きで、散々いろんな男を食いまくって来たわが妻たちは、下ネタについては非常にあっけらかんとしている。ちなみに俺も、会ったその日のうちに、全員に食われたものな。笑
「でもさ、網元、やっぱ壁は薄いよ。両隣でラモとリチャードが頑張っていたのも聞こえたぜ。」
ナディア様とペリーヌ様が、シンクロして真っ赤になって縮こまった。流石、姉妹。
「ゲオルク、よく言うよ。そっちから先に聞こえて来たんじゃないか。」
「まったくだ。あんなに延々と聞かされては、こちらも頑張らねばならん。」
さらに赤くなって、縮こまるナディア様とペリーヌ様。
「姫たちは初々しいのう。見ておると身悶えしそうなのじゃ。」と言ってドーラが胸の前でクロスさせた両腕で自身の両肩を抱いて、くねくねし出した。笑
「ちょっと、ドーラ、姫様たちをあまり弄らないで下さいな。」すかさずジュヌが姫様たちを庇った。王都で育ったジュヌは、王家の姫様たち贔屓なのだ。
「でも姫様たちも、生娘って訳じゃないんだからさ、こう言う話にも慣れといた方がいいんじゃないかい?」
「そだよー、ベス。大人の会話じゃん。」
「いやいや、カルメン、ビーチェ、何を言う。王家出身の姫様たちであるぞ。王家の姫君や貴族の令嬢たちには慎みも必要なのだ。」
「えー、でもさ、伯爵家御令嬢のベスはそうじゃないじゃん。それから、ミュンヒェー辺境伯様とかもさ。」
「あのお方は特別なのだ。まあ、私もそう言う意味では特異な方ではあるがな。」
「わっはっはっ。いずれにせよ、すぐにお世継ぎができやすな。」最後に網元が上手くまとめた。
午前中に、南の港のフォンターナ港の漁師集落の網元邸を発って、島の周回道路を移動すること1時間。島の西のマングローブ林に付いた。
遠浅の海で下が砂地の南国には、ヒルギかの植物がマングローブ林を形成する。ヒルギ科の植物は、根が砂地を掴むように生えるので、ネト砂地が作る空間に、エビや小魚が棲み付くのだ。
マングローブ林から落ちた枝葉は、南国の暖かい海水温で速やかに分解されて養分となり、プランクトンを育む。これがエビや小魚の格好の餌となるのである。
つまりマングローブ林は、そこに棲み付くエビや小魚に、外敵から身を守るための快適な住居と、豊富な餌を供給しているのだ。
俺は、マングローブ林の海に面する外縁をそのまま残し、マングローブ林の内部に格子状の水路を作るように指示していた。
樹々から落ちた枝葉が波の満ち引きでこの水路の窪みに溜まると、そこで分解され、その養分でプランクトンが発生する。するとエビや小魚は餌を食いに水路に出て来るが、海に面する外縁はマングローブ林で閉ざされているため、大きな魚は入って来ない。
エビや小魚たちは水路で飯を食い、マングローブ林で休むのである。筒状の網をカヌーで引いて、この水路を通れば、筒状の網の中はエビや小魚で一杯になると言う寸法だ。
生簀を使って高密度で育てる方が効率的かもしれないが、この方法だと養殖物ではなく天然物と言うことになる。活きがまるで違うし、天然物と言うだけで付加価値が付く。
「これはラモ様。いらっしゃいやし。」
「ゲオルク、西の網元だよ。エビ養殖場の世話役さ。
網元、こちらがご領主様のゲオルク・スピリタス卿だよ。」こっちのボスも網元か。南のボスも網元だし、なんかややこしい。苦笑
「これはこれはご領主様で。お初にお目に掛かりやす。」口調まで一緒かよ。漁師は皆こんな口調なのかな?
「網元、よろしくな。で、どうかな?エビ漁の状況は?」
「順調でやす。ただ、水路造りにはいささか骨が折れやして。まだマングローブ林全体の1/5程度しか、水路を引けていやせん。それとエビと一緒に獲れる小魚の処理が面倒なんで。」
「小魚か…うーん、そうだなあ…。何かいい利用法はないかな。」俺はわが妻たちにも聞いてみた。
「旦那様、干して粉末にして出汁にすれば、売れると思いますわ。」
「お、それいいね。」流石、美食の中部出身のジュヌだけのことはある。
「お前さん、甘辛く煮て酒の肴にするのもいいんじゃないかい?」
「なるほど、それもありだな。」流石、居酒屋大好きのカルメン。
「そいつあいい。煮干しや甘露煮だと日持ちもしそうだ。試してみやしょう。」
「じゃあさ、特産品の開発に掛かった費用は役場に請求してよ。」
「え?よろしいんでごぜぇやすか?」
「構わないよ。その代わりいい品を開発してくれよな。」
「ところでこれから猟師どもが、カヌーでエビ漁に出やすが、高台で食事をしながら御覧になりやせんか?」
「そりゃいいね。」
で、俺たちはマングローブ林が切れた高台にある西の網元宅…と言うか網元邸に来ている。南の網元のとこと同じように、集落の集会場も兼ねてるのな。
「エビしかねぇんでやすがね、エビならたんとあるんで。」
でーんとおかれた大皿には、茹でエビが山盛りに盛られていた。
「おお、これは凄いな。では頂くよ。」皮を剝いてぱくりと行こうとしたら網元に止められた。
「ご領主様、こうして背ワタを取ってくだせぇ。この手間をサボると、じゃりじゃりして塩梅がよくねぇんで。」網元は親指の爪ですーっと背ワタを取ってぱくりと行った。
俺もそのまねをして背ワタを取ってぱくりと行く。
「うお!これは旨い。」
「でやしょう?お上品に味付けするより、塩茹でが一番旨えんでさ。それがほんまもんのエビの味なんで。」
わが妻たちも、ナディア様もペリーヌ様も、リチャードもラモも大絶賛だった。
その後、塩焼きやバター焼きも出て来た。エビ尽くしである。
「くー、旨え、堪らん。」ビールや白ワインがよく合う。
俺、リーゼ、カルメン、ベス、リチャードはビール。
ジュヌ、ビーチェ、ラモ、ナディア様、ペリーヌ様、網元は白ワイン。
ドーラとトーラは蒸留酒のグラッパだった。
精霊たちはもちろんアードベクである。エビは食ってないけどな。
「網元、出航しやす。」若衆が港のカヌーを指さしながら告げると、水路に向かってカヌーが漕ぎ出して行った。
「あのカヌーは円筒状の網を引いてやす。水路に出ているエビたちを網で掬うんでさ。」
しばらくカヌーで網を引いた漁師たちは、網を引き揚げてカヌーに水揚げした後、帰路の間に結構な量をリリースした。
「あれは小せえのをリリースしてるんでさ。小せえのは碌な値が付きやせんが、リリースすりゃあ、じきに大きく育ちやすんで。それと小魚は大きめのエビが食いやすんで。」
「なるほどな。」
エビ尽くしの昼餉を終え、水揚げされたエビを見に、船着き場に行った。大ぶりのエビが冷凍魔法で凍らせられている。
チルが、ずいっと踏み出して来た。言いたいことは分かる。笑
「網元、手伝わせてもらっていいかな?」
「何をお手伝い頂けるんで?」
「冷凍だよ。」
「じゃあ、お願えしやす。」
「チル。」
『はーい。』喜々として精霊魔法を放ったチルは、エビと小魚を一気に冷凍させた。
「こいつは凄え。」網元をはじめ、漁師たちが絶句した。笑
ところで、小魚と言うには結構でかくなったのもいる。
「網元、小魚はリリースするんじゃなかったのか?」
「いえ、ご領主様。ここまで育つと厄介なんでさ。小せぇエビを食っちまいやすからリリースはできねぇんで。この辺の大きさだと煮干しや甘露煮に使えそうでやすが、こっちのサイズまで育つと煮干しや甘露煮にするには、ちょいとでか過ぎるんで始末に負えねぇでさ。ブツ切りにして海に帰すぐらいでやすかね。」
「なるほどねぇ。」
「そうだ、網元。水路造りに難航してるって言ってたよな。」
「へい。そうなんで。」
「精霊たちに水路を造ってもらおう。」
それから網元と一緒にカヌーでマングローブ林に出て、網元の希望に沿って、手付かずのままだったマングローブ林の4/5に格子状の水路を造った。クレがモゴモゴやるだけだったけどな。
それから、マングローブ林をツリが活性化させ、作業中に満潮を過ぎて引き出した潮をワラが引き戻し、水路を造るために倒した樹々は、フィアが燃やすか、ウィンがスパスパとぶった切るか、メタが雷を落とすか、ダクが枯らすかして処分した。
最後にソルがマングローブ林に棲むエビに回復の精霊魔法を掛けた。
チルは水揚げのときにエビの冷凍で活躍したので、今回はすべての精霊たちに出番があった。このため精霊たちは頗るご機嫌であった。
西の養殖集落でも大層感謝された俺たちは、北の白浜経由でおよそ2時間掛けて島を半周し、東の港の領主公邸に戻った。
リチャード夫妻とラモ夫妻に、先に風呂に入ってもらった後、皆で夕餉。公邸の料理人たちの料理に舌鼓を打った。
夕餉の後は、俺たちの入浴タイムである。
まずは、今日頑張った精霊たちにご褒美である。隅々まで洗ってやってキャッキャ言わせつつ、7連虹色生ぱふぱふと、2連白黒もみもみを堪能した。それからわが妻たちとの7連生ぱふぱふ。
マイドラゴンが『出番ー。』と、俺の頭の中に悲痛な叫び声を届けて来たが、むふふタイムまで我慢しろってのと、思いっ切りスルーしてたら、ぶんむくれて拗ねやがった。笑
発情期のドーラと、輪番のジュヌとカルメンを連れてベッドルームに行くと、眼が血走ったドーラに押し倒されて、そのまま馬乗りになられて、マイドラゴンがドーラの蜜壺に捕食されてしまった。
風呂場以降、ぶんむくれて拗ねていたマイドラゴンは、元気にホワイトブレスを吐き出したとさ。いや、搾り取られたと言うべきか。
その後、ジュヌとカルメンにも、マイドラゴンは交互に搾り取られたのだった。お口でね。笑
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毎週土曜22時に投稿します。
以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「母娘丼W」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/265755073
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
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