精霊の加護

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精霊の加護175 ウォッチングシップ

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精霊の加護
Zu-Y

№175 ウォッチングシップ

 昨日は南の漁港のフォンターナ港から出港して、外洋へホエールウォッチングとドルフィンウォッチングをしに行くはずだったのだが、リヴァイアサン騒ぎでダメになってしまった。

 そこで、今日は外洋でのホエールウォッチングとドルフィンウォッチングの仕切り直しと言うことになった。
 領主公邸での朝餉の後、昨日に引き続き、フォンターナ港に馬車を連ねて小1時間掛けて行った。

 フォンターナ港では、外洋漁業を仕切る網元と漁師たちから大層感謝された。
「御領主様、本当にありがとうごぜぇやした。」
「ありがとうごぜぇやした。」×多。
「昨日も御礼を言われたし、もういいよ。」

「ああ、それからね、漁船の修理代はすべてこちらで持つからね。すぐに修理してね。それとさ、必要な資材はゲオルク、あ、いや御領主様がいくらでも調達してくれるからね。遠慮なく言ってよ。」ラモがさらっと俺に仕事を押し付け、美味しいところを持って行きやがった。苦笑

 すると、網元も含めて漁師たち全員が、
「えーっ!」×多、
と、唱和して、一斉に感謝の眼差しを向けて来たので、断るに断れなくなってしまった。苦笑
 もっとも、精霊たちの力を借りての船材の調達は、最初からやって上げる気だったけどな。

 それからは精霊たちの出番である。クレが南の港周辺の南国樹林の土壌をもごもごやって樹々を倒し、そこにツリ船材に適した樹々を育て、またクレが土壌をもごもごやって…、の繰り返しで、十分な樹々を確保した。
 その樹々をフィアが熱して乾燥させ、船材を確保。そしてメタが金具類に必要な金属を出した。

 活躍した精霊たちにべろちゅーで魔力補給をすると、出番のなかったチル、ワラ、ウィン、ソル、ダクが一斉にぶー垂れた。いつものことだ。笑
 もちろん出番のなかった精霊たちにも丁寧に魔力補給をしてご機嫌を取ったけどな。

 網元と漁師たちが、
「御領主様、本当にありがとうごぜぇやした。」
「ありがとうごぜぇやした。」×多。
「ああ、早く船を修理して、漁を再開してくれよな。」
「そりゃもちろんでさ。なあ、皆の衆。」
「おう。」×多。

「修理費用も役場に請求してな。」
「本当にそれもよろしいんで?」
「いいよ。実はさ、昨日のリヴァイアサンの素材にいい値が付いたんだよ。それを全額ラスプ・デルスゥデ島の開発資金口座に入れたからさ、そこから出してもらえばいいよ。」
「御領主様、本当にありがとうごぜぇやす。」
「ありがとうごぜぇやす。」×多。
「いや、だからもういいって。」苦笑

「漁が再開できやしたら、一等最初に水揚げしたマグロを領主様のお邸までお届けしやす。」
「お、そいつは嬉しいねぇ。楽しみにしてるよ。」
「へい。お任せくだせぇ。」
「お任せくだせぇ。」×多。

 船材確保に午前中いっぱいを掛け、昼餉は網元の家でご馳走になり、漁師に舌鼓を打った。

 それからクジラとイルカのウォッチングに外洋に出たのだが、その出港直前のことである。
「僕は港でお留守番してるよ。」船酔いするビーチェが尻込みしているところを、
「何を言っておる。皆で行くのじゃ。」
「イケイケの、ビーチェ、らしく、ない。」
 ドーラとトーラが両横からビーチェをがっちりとホールドした。必死に抵抗してジタバタするビーチェを、左右から抱えたまま、ウォッチングシップに乗り込んでしまった。このふたりがタッグを組んだら、竜虎相食む、じゃなくて、竜虎相組む、だな。こりゃ無敵だ。笑

 30分後、外洋上にて。
「うー、だから僕が言ったじゃないかー。」
「うっぷ、すまなかったのじゃ。わらわは甘く見ておった。ビーチェよ、許してたも。」
「うげー、ビーチェ、ごめんなさい。こんなに、ひどいとは、思わな、かった。」
 ビーチェとドーラとトーラが船酔いに苦しんでいた。もちろんジュヌとソルが回復魔法を掛けているから症状は比較的軽い。

 それから、リチャードも。
「リチャード、大丈夫かい。」
「ラモ、すまない。私はもうだめだ。この揺れで全然平気だなんて、君は尊敬に値するよ。」
「何を気弱なことを言ってるんだい。いつものリチャードらしくないじゃないか。」
「リチャード様、大丈夫ですか?」
「ナディア、すまない。君を守ると言っておいて、この様だ。」
「そんなこと、お気になさらないで下さいまし。」

 ちなみに、ナディア様とペリーヌ様と残りのわが妻たちは平気だった。
 その代わり、リチャード夫妻とラモ夫妻の護衛たちも半数は船酔いで使い物にならなかった。笑

「お、クジラがいたぞ。取舵一杯。」船長の合図で、ギギギギと船が軋んで、左に進路を転じた。
 この回頭でビーチェ、ドーラ、トーラ、リチャード、そして護衛の半数がさらに呻き声を上げた。すぐさま、ジュヌとソルが再び回復魔法を掛けたのだった。

 間近でクジラの潮吹きを観察した。むっちゃでかくて迫力がある。
 さらにクジラは機嫌がよかったようで、テイルスラップ=尾びれで海面を叩く、ブリーチ=海面ジャンプ、スパイホイップ=海面から頭を出しまわりを見る、などの様々な行動を見せてくれた。
 きっとリヴァイアサンがいなくなって、安心しているのだろう。俺、グッジョブ♪

 ホエールウォッチングが終わったところで、やっと帰れると安堵の吐息を漏らしたリチャードたちに、船長が追い討ちを掛けた。
「次はイルカを見に行きやす。」
「なんだって?」「勘弁してよー。」「まだ続くのかえ?」「港に、いつ、帰る?」
 がっくり項垂れるリチャード、ビーチェ、ドーラ、トーラの4名。船酔いカルテットと命名しよう。笑

 程なくイルカの群れと遭遇すると、好奇心の強いイルカは、ウォッチングシップに並走したり、海面をジャンプしたりして、こちらも楽しませてくれた。

 クジラとイルカのウォッチングを終え、ウォッチングシップがフォンターナ港へ帰港すると、陸に上がった船酔いカルテットは、元気を取り戻した。
「外洋があんなに揺れるとはな。南部湾とは全然違うのだな。」
「僕も普段の南部湾なら平気なんだけどねー。でもさ、ダーリンとワラを救出に行ったときの南部湾はもっと揺れが凄かったんだよ。」
「なんと!それは真かや?」「トーラ、あれ以上、無理。」ドーラとトーラがビーチェのひと言に引きつっている。笑

「そうだな。船もマルコさんの漁船だったから、この船よりもずっと小さかったしな。」
「確かにあのときの南部湾の荒れ具合は酷かったよ。あの波には僕たち南部湾警備隊も出港を見合わせたくらいからね。ゲオルクはあの大波の中に小舟で乗り出して、平気だったのかい?」
「ああ、俺は大丈夫だったな。」
「それは凄いな。ゲオルク、君も海の男にならないかい?」
「いやいや、それは遠慮しとくよ。俺は一介の冒険者で十分。」
「勿体ないなぁ。」

 そろそろ夕方になるし、領主公邸に帰ろうかと思ったのだが、網元に引き留められた。
「御領主様、ぜひ今夜はお泊り頂いて、俺たちのもてなしを受けて下せぇ。」
 南の港の漁業集落の住民総出で、俺たちを歓待する準備をしていると言う。網元宅に宿泊の準備も完了しているとか。こりゃ断れないな。苦笑

 俺はナイトに乗ってひとっ飛び、領主公邸に戻って、今夜は南の港の漁業集落に泊まると伝えた。
 領主公邸では、俺たちの夕餉の下拵えに入っていたが、翌日にまわせると言うので、料理人たちの努力を無駄にしないで済んだ。

 それからフォンターナ港に戻ると、漁師集落の住民総出で、祭りのような騒ぎになっていた。
 俺たちは、住民たちから、昨日のリヴァイアサン退治のお礼に始まって、3年間の租税免除などについても、大いにお礼を言われたのだった。そして呑めや歌えのどんちゃん騒ぎである。
 リチャード夫妻もラモ夫妻も大いに楽しんでいたが、護衛の連中は気が気ではなかったようだった。笑

 その夜は満月である。
 網元宅に泊めてもらって、発情期のドーラとはもちろん生で、輪番のリーゼとトーラとはお口でのむふふ。マイドラゴンは大いに頑張ったのだった。

 ちなみに両隣でも、リチャードとラモがそれぞれ大いに頑張っていたようで、ナディア様とペリーヌ様のあんあん声が聞こえて来ていた。

 網元ー、壁がちょっと薄いんじゃないの?苦笑

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 毎週土曜22時に投稿します。

 以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「母娘丼W」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/265755073

 カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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