精霊の加護

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精霊の加護173 外洋のリヴァイアサン退治

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精霊の加護
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№173 外洋のリヴァイアサン退治

 昨夜は、コテージの庭の半露天の簡易ベッドルームで、満天の星空を眺めつつ、眠りに就いた。
 そして今朝は朝日とともに目覚めたのだ。

 牧草地を見渡すと、うちの馬たちが…、純白のスノウ、漆黒のナイト、月毛のカスタード、栗毛のモンブラン、佐目毛のサクラモチ、薄墨毛のゴマアンコ。これで全部のはずだが、さらに、鹿毛、葦毛、黒鹿毛がいる。
 どこぞの馬が紛れ込んで来たのだろうか?
 まあ、うちの馬たちと喧嘩せず、仲良く草を食んでいるのなら構わないか。と思っていたら、その3頭はおもむろに翼を延ばし、羽ばたいて、朝日の空に舞い上がった。ああ、ペガサスだったのか。
 そう言えば、ナイトの仲間が来てたんだっけ。
「ナイト、お仲間たちはどうしたんだ?」
『もう朝になったから、リシッチャ島の双子山に帰るってさ。』

 ペガサスたちは、3回程上空を旋回してから、東の空へと飛んで行った。
 ペガサスの旋回に呼応して、あちこちのコテージから歓声が上がっていたのだった。
 これで評判になるかもな。案の定、この話はあっという間に広がり、この山頂のグランピング場は、ペガサスの来るグランピング場として評判を呼んで、なかなか予約が取れない宿となるのだが、それはもう少し後のこと。

 朝餉はいつもの野営飯の鍋料理。サクッとツリに育ててもらった野菜と、冷凍していたブロック肉をブツ切りにしてぶち込み、野営飯の初日だから味付けはカレーだ。一緒に食事をしに来た、リチャード夫妻とラモ夫妻にも振舞った。

「これが俺たちスピリタスの野営飯だ。初日はいつもカレーなんだよ。」
「「旨いな。」」「「美味しいですわ。」」
「マリーたちからも大人気でしたよ。」
「このグレードでしたら、そうでしょうね。」
「野営中のお食事って、もっと簡単なものかと思っておりましたわ。」
「普通はそうですね。干し肉をかじるとか、そんな程度です。でも、俺たちは精霊たちのお陰で簡易宿泊所をすぐ造れますし、生の野菜もすぐに確保できますので。」

「わが近衛隊の野営食は、これに比べたら悲惨なものだよ。食事ではなくて単なる栄養補給だ。」
「クロチュデルスゥデ号では、南部湾内ならすぐに補給できるからまともな食事だよ。でも、外洋に出て何日も航海するときは、食事は質素なものになってしまうんだ。」
「その点、俺たちスピリタスは食材には困らないな。肉は狩ればいいし、野菜はツリが育ててくれる。実はこれが大きいんだけどね。」
『えへへー。』ツリがドヤってる。笑

「ところで、昨夜の星空はどうだった?」
「素晴らしいのひと言に尽きる。なあ、ナディア。」
「はい。リチャード様。眼を奪われましたわ。」
「手が届くようだったよ。ねぇ、ペリーヌ。」
「はい。ラモ様。とてもロマンチックな夜でしたわ。」
「ゲオルク、ラモ。ここは評判になると思うぞ。ここの開発は実にいい仕事だ。」
「リチャード、ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ。ゲオルクと開発計画を頑張った甲斐があったと言うものさ。」

「ゲオルク、この調子で北部の開発も頼むぞ。」
「ああ、もちろんだ。成り行き上とは言え。北部が後回しになってしまって申し訳ない。」
「いや、それは構わぬ。」

「さて、今日は下山して領主公邸でゆっくりした後、明日はマイハニーで、外洋に出てみようじゃないか。」
「そうだな。ぜひクジラを間近で見てみたいものだ。」
「リチャード様、わたくしはちょっと怖いですわ。」
「大丈夫だよ、ナディア。私が付いてる。」こらこら、またかよ。ふたりの世界に入るなっちゅーの。笑

 昼過ぎに下山して領主公邸に入り、キャッキャむふふの混浴タイムの後、リチャード夫妻とラモ夫妻とともに夕餉を摂りつつ、皆でグランピングの話に花を咲かせたのだった。

 そしてその夜は、リーゼ、ジュヌ、カルメンとお楽しみだった。マイドラゴンは、何度もホワイトブレスを吐いて大奮戦したのだった。笑

 翌日、ラモはクロチュデルスゥデ号の指揮を副長に任せ、東のラスプ港から南のフォンターナ港への回航を命じた。
 ラモは新婚旅行中なので、俺たちと一緒に馬車で周回道路を移動するのだ。アクアビット号、リチャード夫妻の馬車、ラモ夫妻の馬車の順に隊列を組んで、周回道路を小1時間掛けて、東のラスプ港から南のフォンターナ港へと向かった。

 海側を見ると、クロチュデルスゥデ号が、半帆だと言うのに、優雅に波をかき分けながらしばらく並走していたので、見張台から手を振った。クルーの何人かが気付いて、手を振り返してくれた。
 その後、クロチュデルスゥデ号は、帆を満帆にして船足を上げ、すーっと先行して行った。

 小一時間で南の港、フォンターナ港へ着いた。クロチュデルスゥデ号はすでに着岸している。
 それにしても港が騒がしい。一体どうしたと言うのだ?

 港のピリピリした雰囲気に、リチャード夫妻とラモ夫妻の護衛たちも警戒を強めた。
「やあ網元。随分騒がしいけど、どうしたのさ?」
「あ、これはラモ様。」
「ゲオルク、網元だよ。外洋漁業の世話役さ。
 網元、こちらがゲオルク・スピリタス卿。ご領主様だよ。」
「これはご領主様で。お初にお目に掛かりやす。」
「ああ、よろしく。で、何があったの?」

「外洋でリヴァイアサンに、漁師船が襲われやした。」
「何だって!」ラモがいち早く反応した。流石海の男。
「不幸中の幸いと言いやすか、大型船だったんで沈没はしやせんでした。でもマストがへし折られて危ないところでやした。」
「クルーは無事かい?」まずそこを心配するのな。流石だぜ、ラモ。
「ケガ人は何人か出やしたが、死人は出ておりやせん。」
「そうか、それはよかった。それでケガ人の具合は?」
「骨折がふたりでやすが、後は皆、打撲程度でして。」
「網元、ケガ人をすぐに全員連れて来い。」

 俺の指示を受けた網元が、まわりに言ってケガ人を全員呼んで来させた。
 ジュヌとソルが、回復全般のヒールと、ケガの回復に特化したリペアを掛けて、ケガ人たちを完全に治した。
 感謝されることしきり。

「ワラ。リヴァイアサンと言うと、ワラが吸魔の衣の奇襲を受けて弱ってたときに南部湾に侵入して来て南部湾を荒らした奴じゃないか?」
『そう。あいつの気配。』『懲りずにまた来た。』『弱いくせに生意気。』『シバく。』『ボコる。』『やっつける。』
 おお、精霊たちのスイッチが入ったっぽい。

「ラモ、精霊たちがリヴァイアサンの気配を感じ取った。クロチュデルスゥデ号で出られるか。」
「もちろんさ。すぐに出よう。」
「ラモ様、ご武運を。」ラモはペリーヌ様を抱き締めた。
「リチャード、ペリーヌを頼む。」
「ああ。私は船の上じゃ役に立たないからな。ここで皆を守る。」

「副長、緊急出港。操船の指揮は僕が取る。ゲオルクは精霊たちと乗ってくれ。」
「承知。
 皆は、ワルキューレとして、リチャードに協力し、南の港の守備を頼む。
 ナイト、一緒に来てくれ。」
「「「「「「「はい。」」」」」」」。『いいよー。』
 ワルキューレは、俺を除いたスピリタスの分隊名である。俺以外のスピリタスメンバーは、全員女性だから戦乙女=ワルキューレなのだ。
 ナイトがいれば、空中からの攻撃が行える。

 ベスがスノウに跨り、馬上の人となって、ワルキューレの指揮を執った。的確に防衛体制を敷いて行く。
 リチャードは、北部の護衛に加え、南部の護衛も臨時の指揮下において、てきぱきと港防衛のための指示を出して行く。

 俺と精霊たちとナイトを乗せたクロチュデルスゥデ号は、ラモの指揮下、フォンターナ港を緊急出港し、帆を満帆に張って、外洋に滑り出した。
 精霊たちの索敵をもとに、クロチュデルスゥデ号は、外洋の荒波をかき分け、自慢の船速を最大限に発揮して、リヴァイアサンに向けて一目散に進んで行った。

『リヴァイアサン、こっちに来る。』こちらの追撃に気付いたリヴァイアサンは、こちらに向かって反転した。俺たちを迎え撃つ気のようだ。しかしこの判断ミスが、奴の命取りになった。

「よし、まずは海水に雷を落として感電させてやろう。メタ、バンバンぶち込んでやれ。」
『はーい。』
 メタが雷を10連発で海に落とした。海水は電気をよく通す。この落雷10連発は、潜行しているリヴァイアサンに、確実にダメージを与えていることだろう。
「うっはぁ。これは…、物凄いじゃないか!」横でラモが感嘆の声を上げている。

『焦ってるよー。』『テンパってるよー。』『パニクってるよー。』ニマァーと、精霊たちが悪い笑みを浮かべた。
『ゲオルク、お腹すいたー。』アードベクをひと口含んで、メタにべろちゅーで魔力補給。

 再びメタが落雷10連発。
『あ、反転したー。』『逃げる気だー。』『逃がさないよー。』
「追撃するぞ。」
 俺はナイトに跨り、クロチュデルスゥデ号の甲板から飛び立った。精霊たちが逃げるリヴァイアサンを追って、その後についてナイトが飛んで行く。
 たとえ、リヴァイアサンが泳ぐのが速くても、飛行のスピードには敵わない。

「メタ、リヴァイアサンの進行方向の目と鼻の先に落雷。」
『はーい。』
 バリバリバリ。
『悲鳴を上げてるよー。』『また、反転したよー。』『焦ってるよー。』『テンパってるよー。』『パニクってるよー。』精霊たちの、妙に楽し気な報告が続く。

『うっひゃひゃひゃひゃー。』メタが完全に面白がって、リヴァイアサンの目と鼻の先に雷を落とし続けるものだから、海中でターンを繰り返したリヴァイアサンは完全に混乱して、闇雲に逃げ回る羽目に陥った。
『ゲオルク、お腹すいたー。』アードベクをひと口含んで、メタにべろちゅーで魔力補給。

 その後も、何度も魔力補給をしつつ、執拗に雷を落とし続けて、リヴァイアサンをとことん追い込むメタ。それを観戦して大いに楽しんでいる他の精霊たち。鬼や、こいつら、鬼や。と思いつつも、俺もそこそこ楽しんでいたりする。笑

『逃げ足が落ちたー。』『疲れて来たよー。』『へばって来たよー。』
 どうやらリヴァイアサンは、ヘロヘロになって来たようだが、そこでメタが、
『休ませてやんなーい。』と言って直撃弾を見舞った。
『逃げたー。』『まだ元気ー。』『リヴァイアサン、やればできるー。』いや、やればできるって、そう言う使い方は違うと思うぞ。苦笑

 その後も、目と鼻の先に雷を落として反転させ、へばると雷の直撃弾で脅すと言う攻撃?いたぶり?を繰り返していたが、ひどく消耗して来たリヴァイアサンは、直撃弾への反応が悪くなって来た。
 そろそろトドメと行くかね。

「チルとメタ以外は魔力放出でリヴァイアサンを威嚇。海面から飛び跳ねるぐらい、震え上がらせてやれ。」
『『『『『『『はーい。』』』』』』』
「メタは、皆から脅されたリヴァイアサンが飛び跳ねたら、そこを全力の落雷で狙い撃ちだ。いいか?」
『はーい。』
「外すなよ。直撃だぜ。」
『任せて。』
「チルはリヴァイアサンが飛び跳ねたら海面を凍らせてな、リヴァイアサンが海中の戻れないようにしてくれ。」
『はーい。』

『ゲオルク、この下にいる。』
「よし、皆、魔力放出による威嚇。行けぇ!」
『『『『『『『うーーーーーっ。だあーーーーーっ!』』』』』』』
 精霊たちに魔力放出による威嚇に、完全にパニクったリヴァイアサンが、予想通り、海面から飛び跳ねた。この行動は、ワラを救助して契約した直後に、南部湾からリヴァイアサンを追い払ったときの反応と一緒だ。

「よし、メタ、チル、行けぇー!」
『『うーーーーーっ。だあーーーーーっ!』』
 バリバリバリと凄まじい音を立てた落雷が、直撃でリヴァイアサンを襲った。落雷の直撃を受けたリバイアサンは、紫電に包まれ、もんどり打ちながら海面に落下した。
 しかし海面はチルによって広範囲に凍結されていた。落雷の直撃を受けたリヴァイアサンは、落下した海面の氷上で横たわり、ぴくぴくと痙攣している。

 最後にメタが大きい雷を見舞って、リヴァイアサンにトドメを刺したのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 毎週土曜22時に投稿します。

 以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「母娘丼W」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/265755073

 カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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