精霊の加護

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精霊の加護166 痴女どのたちの正体

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精霊の加護
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№166 痴女どのたちの正体

 教国から王都に戻り、まず最初に、王宮の王太子殿下の執務室へ、この旅の報告に来ていた。
 帝国謀反貴族の子息子女9人の、教国での出家と聖山への入山を見届け、ヘルムートとアイチャの婚約を報告すると、同行していたわが妻たちとガキンチョ5人組は、退室するように言われた。そして、俺だけ殿下の執務室に残された。

 殿下が東部公爵様にアイコンタクトを送ると、東部公爵様が、
「ゲオルク。ヘルムートへの助力に加え、本流でのジャイアントクロコダイル掃討も大儀であった。」東部公爵様のお言葉だ。
「報告は来ているがな、そなたから改めて報告せよ。」との殿下の仰せだ。
「承知しました。
 まずですね、俺が現地に到着したら、東府近衛隊の隊長が現場を仕切ってまして、火を嫌うジャイアントクロコダイルを上陸させない様に、本流の両岸に沿って2㎞ぐらいですかね?等間隔で篝火を焚いてたんですよ。本流に掛かる橋の上にも焚いていましたから、ジャイアントクロコダイルを上手く篝火で囲って閉じ込めた感じですね。
 で、閉じ込めたジャイアントクロコダイルを、精霊たちに索敵してもらったら18匹もいました。」

 俺はここでひと息入れて水を飲んだ。

「それが街道に上がって来たら、甚大な被害になっていたな。」東部公爵様が呟いた。
「ですね。篝火は、応援に駆け付けた貴族家の手勢と、冒険者パーティが手分けして、夜通し焚いてくれまして、翌日、日が昇ってから掃討作戦を開始しました。
 水の精霊のワラが、上流から流れ込む本流の水の多くを、篝火で囲んだエリアを飛ばして放水しまして、エリア内の本流の水量がぐっと減ったっところを火の精霊のフィアが熱線を送り込んでエリア内の本流の水を沸騰させてですね、熱さに追われて本流から岸に上がって来たジャイアントクロコダイルを、冷気の精霊のチルが一気に凍結したんですよ。
 俺たちの仕事はここまでで、後は貴族家の手勢と冒険者たちが手分けして18匹全部にトドメを刺してくれました。
 と、まぁこんな感じです。」

「南部の危機と同じく迅速な対応だな。」南部公爵様が回想し、
「うむ。その通りだな。」北部公爵様が同意した。
「ゲオルク、いい働きだ。」と西部公爵様。

「しかし精霊魔法は飛んでもない威力だな。」殿下が、ぼそっと言った。
「ですね。第一や第二形態の頃と比べると、威力が格段に違いますよ。」
「確か余が最初に検分したときは、第一形態と第二形態であったな。あのときですら宮廷魔術師たちを圧倒しておったが…。」
「今や第四ないし第五形態ですからね。」
「見掛けも幼女や少女から大人の女になっておるしな。しかも一部はそなた好みの巨乳ではないか。」
「そうなんですよ。巨乳が第五形態で、並乳が第四形態です。
 軽く膨らんでいた第三形態までは、殿下の痴女どのたちにロリコン認定されてましたけどね。」
「ゲオルク、痴女と呼ぶなと申したであろう。」

「殿下、聞き違いですよ。侍女どのと申し上げたのです。」
「痴れ者め。誤魔化すでないわ。お前が痴女と呼ぶ度に、あのふたりが閨で、泣きながら文句を言って来るのだ。泣き付かれる余の身にもなって見よ。」
「え?閨…?」
「ん?申してなかったか?あのふたりは余の側女そばめぞ。」
「えっ?ええー?」
「ふたりとも中部の下級貴族家の娘でな、幼少の頃より王宮勤めをしており、ずっと余の身の回りの世話をしていたのだ。余が色気付き出した頃、身近にいたゆえ、つい手を出してしもうた。」
「そ、そうなんですね。」まさか殿下のぶっちゃけ話を聞くことになろうとは思わなかった。

「いずれ余が正室を迎えたら、ふたりとも側室として迎えるつもりだ。よって、ゲオルクよ。ふたりを揶揄うのはやめて仲良くせよ。側近と側女ふたりの仲が悪いのでは、余が困るのでな。しかと申し付けたぞ。」
「承知しました。」まさかの展開であった。冷や汗もんだ。

「ところで殿下、御正室をお迎えになりますので?」
「うむ。実はつい最近、宰相の娘を娶ることに決まってな。ロイヤルウエディングゆえ、準備が面倒でならん。」
「それはおめでとうございます。で、どんなお方ですか?」
「余はよう知らぬ。宰相に聞けばよかろう。」
「は?知らぬとは?」
「今年の子弟披露目の儀で会うただけなのだ。とは言え、余はしかと覚えてはおらぬ。あまり目立たぬ女子おなごであろう。」
「ご結婚相手ですよね?」
「王家の婚姻とはそんなものよ。」
「ん?今年の子弟披露目の儀ってことは15歳ですか?」
「そうなるの。余とは多少離れておるが、そなたとマリー程ではないぞ。まあ歳の差などどうでもよいがな。」
「そんなもんですか。」そう言えば、アンドリュー義兄上も同じことを言ってたな。

「ところで、三国同盟締結の後は、どうするのだ?」殿下が聞いて来たので、
「残り少ない夏を満喫しに、ラスプ・デルスゥデ島に行きます。海水浴で数日のんびりしたら、ラモと一緒に島の開発をします。」
「ラモめ、新婚早々に仕事なぞしたくないと、ゴネやせんかな。のう、南部公。」殿下がニヤッと笑った。
「あり得ますな。」
「え?ラモとペリーヌ様はご結婚成されたので?」

「何を言っておる。教国に行く前に、三国同盟とともに、ナディアとリチャード、ペリーヌとラモの成婚の儀を行うと伝えたではないか。」
「ああ、そう言えばそうでしたね。」
「明日が三国同盟締結ゆえ、ナディアとリチャードの成婚の儀は明後日、ペリーヌとラモの成婚の儀は明々後日だ。まったくそなたは鋭いかと思うと、抜けおるの。」
「すみません。」

「で、島の開発の後はどうするのだ?」
「はい。島の開発が軌道に乗ったら、秋口には、西部大草原に行って、競馬の町の建設の下準備をします。
 秋の終わりにはハイラン高地に行って、冬の間に開発計画を練ります。」

「冬のハイラン高地は雪に埋もれてしまうではないか。」北部公爵様だ。
「そうですね。だからいっそのこと、雪を使って何か町おこしができないか、考えるつもりです。」
「なるほどな。発想の転換か。」北部公爵様が感心している。

 ハイラン高地に行けば、スノウの仲間のユニコーンたちにも会えるから、開発の話も通しておかないとな。ユニコーンたちとは共存して行かないといけないし。ってか、あいつら1年中あそこにいて、雪に埋もれてる間って何を食ってるんだろ?後でスノウに聞いてみるか。
 それから移動手段のこともある。ハイラン高地は北府から馬車で4日も掛かるもんな。一番開発しにくい場所だよな。

「ところで殿下。提案があるのですが。」
「なんだ?」
「王国の大街道なんですけどね、王都を中心に四府を繋いでるじゃないですか。そのせいで、例えば東府から南府に行くには王都を経由することになりますが、王都に人も物も集中して混みますよね?四府を繋ぐ大街道を造りませんか?」
「それな。実は余も考えたことはあるのだがな。
 王都と四府はそれぞれ馬車で5~6日掛かる。四府同士を繋ぐと7~8日は掛かることになる。仮に7つの宿場を用意するとして、28の宿場がいるのだ。人通りが少なければ、宿場は成り立たん。
 またそちらに一部の客が流れると、王都と繋いでいる街道筋の宿場が寂れてしまう。」
「確かにそうですね。」

「四府同士を繋ぐ街道の構想は魅力的だがな、28の宿場を造ってもそれが成り立たぬ上に、従来の宿場が寂れては元も子もない。」
「しかし王都の混雑具合も相当ですよね。」
「そうなのだ。」
「取り敢えず、旅人の流れを調べませんか?王都に入る旅人の目的地を調べて、どれくらいの旅人が四府を繋ぐ街道に流れるか、そしてその流れが王都の街道にどれだけ影響を及ぼすか、そこんところを調べましょうよ。」

「宰相、どうだな?」
「そうですね。新街道を開けば、その街道の治安維持も必要になります。宿場ごとに自警団が出来上がるまでは、四府の騎士団に負担が掛かりますね。」
「すみません。それは考えていませんでした。」俺の考えはまだまだ甘いな。
「それと物資の移動がどうなるかです。国王陛下の施策の根幹は、各地の特産品を王都に集めて、王都で盛んに取引して莫大な商業利益を上げ、それを各地に分配してさらなる特産品の生産を促しています。
 王都への物資の集中が減れば、王都での取引も減り、収益が減って、各地への分配金が減り、各地の産業は低迷するでしょう。」これも気付かなかったな。

「そう言うことだ。ゲオルク。」
「すみません、俺の考えが足りませんでした。」
「よい。王国の発展を願ってのことゆえな。
 一方で王都の受け入れ態勢と混雑も限界だ。いずれにせよ人流を調査しておくのはしておこう。王都への入都の際に、どこから来たか、どこへ行くのかを聞いて、記録すればよいだけだからな。」
「はい。」
「ではそなたも下がってよい。報告と提案、大儀であった。王都にいる間は、王宮に泊まって行くがいい。部屋は用意させている。」

 俺は殿下の執務室を出た。
 いい提案だと思ったが、新たな宿場の建設や、従来からある宿場の寂れ、街道の治安維持、国王様の施策との兼ね合いは考えていなかった。新たな街道を造れば便利だな、だけではダメなんだな。いい勉強になった。

 しかしゲオルクのこの提案から、王都を中心に人流調査が始まり、王都への一極集中の限界と相まって、ゲオルクの提案通り、四府を結ぶ街道が整備されて行くことになるのだが、それは後日譚。

 いつもの部屋に案内された。
 いつもの痴女どの…じゃなかった侍女どのふたりが、お茶を入れてくれている。
「いつも済まないね。ところでわが妻たちは?」
「ギルドに行ってますよ。なんでもマリー様たちの冒険者登録の付き添いだそうです。」
「そうなんだ。ところで今更だけど、おふたりは俺たちの担当なの?」
「はい。殿下から直接申し付かっております。」

「監視とか、手間掛けるね。」
「もう監視はしていませんよ。」
「それだと張り合いがないなぁ。覗かれてると思うと燃えるんだよねー。」
「何と言うことを仰るのですか!」
「痴態を見せ付けられていたこちらの身にもなって下さい。」
「いやぁ、君らが殿下に報告するときに思わず赤面して、報告を聞いた殿下が呆れ返ったら面白いかなと思ったんだよ。で、実際にどの程度、報告するの?」
「「知りませんっ。」」おお、シンクロ。笑

「ところでおふたりはこれからも俺たちの担当なのかな?」
「多分そうだと思います。」
「ふーん、ならさ、名前を聞いてもいいか?」
「マリアンヌです。」「ジャンヌです。」
「マリアンヌどのにジャンヌどのか、これからもよろしくな。」
「「承知しました。」」ふたりはお辞儀して部屋から出て行った。あのふたりが殿下の側女なら、弄るのは程々にしとかないとな。苦笑

『ゲオルクー、お風呂ー。』『お風呂ー。』
「おう。」思わず力が入る。
 今や、精霊たちとのお風呂は、俺にとってはご褒美タイムである。と言うのも、今の精霊たちは、俺がこよなく愛する巨乳の第五形態×5人、許容範囲の並乳=第四形態×4人だからな。
 以前の第三形態までだったら、「はいはい。」と、テキトーに答えてた気がする。苦笑

 精霊たちとの、キャッキャうふふのイチャイチャモード入浴を終え、寛いでいるとわが妻たちが帰って来た。
「お帰りー。ギルドでマリーたちを、冒険者登録して来たって?」
「そうなのよ。」
「ダーリン、早かったじゃん。」
「まぁね。で、マリーたちのランクは?」王女だからって優遇されることはないだろうと思うが、ちょっと気になったので聞いてみた。
「うむ。マリー様たちは全員、Gランクスタートだったがな、登録したその日にEランクに飛び級昇格したのだ。」
「マジか?何でだよ。」
「ブラディベアの討伐がな、クエスト認定されたのだ。ブラッディベアはGランクでは到底狩れない獲物だからな。」なぜがドヤるベス。ベスはマリー贔屓だからな。笑
「他の4人もか?」
「そうじゃな、5人ともEランクへ飛び級じゃ。」
「あたしゃ、妥当な昇級だと思うよ。」
「わたくしもそう思います。でも、当人たちは大層驚いてましたわね。」

「ところで、お頭様、今夜は、新月…。」
「おう!」
 俺がその気になると、トーラは、
「ダメ、お風呂が、先。」と言ってそそくさと浴室へ行った。かわいい♪
 この流れで、夕餉前に湯上りのトーラを生で頂き、夕餉後にはリーゼとジュヌを頂いた。こっちはお口だけど。

 明日は教帝同盟と三国同盟の締結だな。その後は当然、晩餐会だ。わが妻たちのスピリタス調が映えるだろうな。楽しみだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 今週から毎週土曜22時に投稿します。

 以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「母娘丼W」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/265755073

 カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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