精霊の加護

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精霊の加護143 婚約発表

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精霊の加護
Zu-Y

№143 婚約発表

 婚約発表当日である。
 殿下の執務室に呼ばれて出向くと、4人の公爵様と宰相様がいらして、さらに、4公爵家のご嫡男様方がいらした。
 ふたりは顔見知りである。ひとりは北府近衛隊の副長リチャード。もうひとりはラモこと、南部湾警備隊の高速帆船船長ジェローラモ。
 残りのふたりは初めましてだ。東部公爵様のご嫡男のヘルムート様と、西部公爵様のご嫡男のディエゴ様。
 ふたりとも、東府と西府の騎士団員養成所の学生のため、普段は学生寮住まいなので、俺が東部公爵様のお屋敷や、西部公爵様のお屋敷にお邪魔したときは、お屋敷にはいなかったのだ。

 しかしなんだか、ヘルムート様とディエゴ様は、どちらも俺を睨んでいると言うか、余り友好的な眼ではない。気になる。
「初めまして。ゲオルク・スピリタスです。」
「ヘルムートだ。」「ディエゴだ。」
「おい。」「こら。」東部公爵様と西部公爵様が、それぞれのご嫡男のぶっきら棒な対応を注意した。
 いったいなんで俺が、このふたりからヘイトを向けられにゃいかんの?

「おやおや、普段はライバルのふたりが、対ゲオルクでは共同戦線を張ったのかな?」
「「ラモどの!」」ふたりがラモの軽口にきつく反応した。
「ラモ。今のは地雷を踏み抜いたぞ。もう少し空気を読め。」リチャードがラモを窘めた。
「え?僕、何か悪いこと言った?」ラモがきょとんとしている。

 そこへマリー様が登場。
「「マリー!」」ヘルムート様とディエゴ様が反応したが…。
 マリー様はそれに気付かなかったのか、それともスルーしたのか、
「ゲオルク様!」と俺の所に一目散だ。ふたりの顔が今まで以上に険しくなった。なるほどね。そう言うことか。なんとなく真相が分かった。笑

 するとマリー様がヘルムート様とディエゴ様に言い放った。
「ふたりとも、また悪戯しに来たの?今日の婚約発表で悪戯したら、もう本当に絶交ですからね!」
「違っ…。」「誤解だ。」ヘルムート様とディエゴ様が呟いた。

「なんだ、ふたりとも。マリー様に悪戯を仕掛けてたのかい?まったくもう。女性には優しくしなきゃいけないって教えただろう。悪戯なんてもっての外だぞ。」
「「…。」」ラモの注意に押し黙るふたり。悪戯してたのね。反応が正直過ぎる。笑

「マリー様、これくらいの年頃の男の子は、好きな女の子に悪戯を仕掛けたくなるものなんですよ。私に免じて許して差し上げて下さい。」
「「ラモどのっ!」」さっきよりも反応がきつい。ってか、ほとんど絶叫。図星のど真ん中。笑
「ラモー、だから空気読めって。」リチャードが額に手を当てている。
 確かにラモのこのひと言、素なら空気が読めていないが、おそらくわざとに違いない。
「まぁまぁ、リチャード。
 なぁ、ふたりとも。失恋は男を強くするんだ。辛さを乗り越えることでね。かく言うこの僕も、ゲオルクには、目を付けてた女の子を掻っ攫われたんだけどね。その辛さを乗り越えてひとまわり成長したのさ。」うぉいっ!マリー様の前で爆弾落とすなっ!
「「え?そうなの?」」
「そうだよ。でもね、女は星の数ほどいる。失恋したら次の娘を探せばいいのさ。きっといい出会いが君たちふたりを待っているよ。」
 うんうんと頷くふたり。

 一件落着かと思いきや、ラモが落とした爆弾が炸裂…。
「ゲオルク様。どう言うことですの?また側室ですか?」にこやかなマリー様の目は笑っていなかった。
「いえ、違います。ラモが言ってるのはビーチェのことです。
 な、ラモ。そうだよな?」
「どうだったかなー。」このやろ!

「ラモどの。ペリーヌ姉上がいるのに、ビーチェにちょっかいを出していたんですの?」マリー様の矛先がラモに向いた。
「え?違いますよ。やだなー、マリー様、変な誤解をしないで下さいよ。」
「マリー様、ラモは、俺の他の妻たちも口説こうとしたんですよ。」
「ゲオルク、違うだろ!あれは南部流の挨拶だって言ったじゃないか。」
「どうだったかなー。」さっきと同じ返事を返してやった。笑
「くっ、参ったなー。」俺の些細な仕返しに気付いたラモが苦笑いをしている。他の皆は爆笑。

「さあ、冗談はこの辺にして、今日の打ち合わせだ。」王太子殿下が話を元に戻した。

 その後の会話の中で、俺を呼び捨てにしたヘルムート様とディエゴ様に対してマリー様が激怒し、ふたりは俺をゲオルクどの、俺はふたりをヘルムートどの、ディエゴどのと呼ぶようになった。
 なお、リチャードとラモは、俺の友人なので互いに呼び捨てであるが、これについては、マリー様は何も言わなかった。

 婚約発表の儀は、王都にいる貴族たちや、エカチェリーナにアイチャ、王都の名士たちを集めて昼前に行われた。
 4人の公爵様は、この婚約発表に合わせて、ご領地から公爵行列で王都に入られた。護衛など300名も引き連れて来たのだから、費用も馬鹿になるまい。なんか申し訳ない気がする。

 時刻になって、司会の宰相様が婚約発表の儀の開催を宣言。それを受けて俺とマリー様が雛壇に着く。会場からは一斉の拍手。俺のまわりで精霊たちがふわふわしてるのはいつものこと。笑
 マリー様側には国王陛下、王太子殿下、皇后陛下、王妃殿下、一の姫殿下、二の姫殿下。
 俺側にはわが妻たち。貴族出身のベス、王都出身のジュヌ、後は出会った順に、リーゼ、カルメン、ビーチェ、ドーラ、トーラ。
 王太子殿下がマリー様と俺の婚約を正式に発表し、国王陛下が挨拶を述べた。臣下の座にいる貴族たちが首を垂れて、それを聞いていた。

 そのまま正餐会となり、豪華な昼餉を頂いた。
 マリー様が俺と婚約したことで、ハートブレイクなはずのヘルムートどのとディエゴどのだが、ヘルムートどのはアイチャに、ディエゴどのはエカチェリーナに眼を付けたらしく、盛んに話し掛けていた。このふたり、どうもマリー様一筋ではなかったようだ。笑

 正餐会の後、殿下の執務室に俺とマリー様は呼び出されていた。何だか重要なことがあるので、証人になれと言うらしいのだが詳細は分からん。
 殿下の執務室に行くと、一の姫殿下、二の姫殿下、南部公爵様と嫡男のラモ、北部公爵様と嫡男のリチャードがいた。

「皆の者、揃ったな。
 余、トレホス王国王太子、ミカエル・パリセイユ・トレホスは、わがパリセイユ・トレホス王家の婿となることが確定したゲオルク・スピリタス侯爵を証人として、わが一の妹ナディアと北部公爵家嫡男リチャード、および、わが二の妹ペリーヌと南部公爵家嫡男ジェローラモの婚姻の儀を、三国同盟締結とともに、ここ王都で執り行うことを宣言する。」
「御意。」リチャードは卒なくこなしたが、
「えー?…あ、御意。」ラモはやらかした。苦笑
「ラモ、不満か?」王太子殿下が詰め寄った。
「いえ、不満なんて飛んでもないですよ。いきなりだったので驚いただけです。」ラモは何とか体面を保った。

 どうでもいいけど、殿下のお名前ってミカエル様だったのな。今日まで知らなかった。それと一の姫殿下がナディア様ってものな。
 それにしても、大天使ミカエルと同じ名前だなんて、傲慢な殿下にピッタリじゃね?マジ笑えるわ。と思っていたら、見透かされたのか殿下に睨まれた。冷汗

「なんだ、南部公から聞いてなかったのか?」殿下がラモの話へ戻した。
「はい。『殿下から、婚姻の儀のご相談があるかもしれぬ。』とだけは聞いてましたがね。」
「そうか。南部公はそなたが逃げ出すとでも思っていたのかな?」
「なんで僕がペリーヌ様との結婚話から逃げ出すんです?」
「いや、だってラモはもっと自由に遊んでいたい性質たちだろう?」
「何を言ってるんですか。僕が愛しいペリーヌ様から逃げる訳ないでしょうに。」
「ラモ様。」ペリーヌ様の目がハートマークになっている。
「今宵は、お部屋を訪うからね。朝まで愛を語り明かそう。」そう言ってラモはペリーヌ様に情熱的なキスをしたのだが、殿下がこれ見よがしに咳払いをした。殿下のお邪魔虫め。

 その横で、リチャードとナディア様がこっそりと恋人繋ぎをしていたのは内緒だ。笑
 いやはや、こっちもこっちで盛り上がってるのな。

 その夜、俺は発情期に入ったトーラを生で抱いた。それと、リーゼとジュヌもお口までではあるが堪能した。
 え?婚約発表の夜にいいのかって?いいんだよ。マリー様はまだ子供だから、抱ける訳ゃねーだろっ。10年後までとっとくさ。

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設定を更新しました。R4/11/20

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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