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精霊の加護141 ラスプ・デルスゥデ島開発計画とラモの正体
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精霊の加護
Zu-Y
№141 ラスプ・デルスゥデ島開発計画とラモの正体
日の出とともに目覚め、山頂から俺の第2の領地となるラスプ・デルスゥデ島を見渡した。
ゆったりとした歩みの馬車で、4時間あれば1周できる小さな島ではあるが、俺なりに工夫して島の開発計画を立てた。これから移民を募り、無人島から発展して行くことを期待したい。
開発の方針が固まったので、今日、島を発って南府に帰り、領地を提供してくれた南部公爵様に開発計画を上申する。向こう3年間の税の免除に同意してもらえるかが一番の懸案事項だ。
清々しい山の朝を満喫して朝餉を摂り、リシッチャ島から遊びに来ていたペガサス3頭に別れを告げ、昨日切り開いた登山道を下りて東の入り江の港へと進んだ。
この島まで送ってくれて、海上からの島の偵察や、東の入り江の港の基礎開発の手伝いに、南の入り江の港や南の浜の利用法に助言をくれた、南部湾警備隊クロチュデルスゥデ号のラモ船長と、そのクルーたちには本当に世話になった。
ラモ船長が引き受けてくれるなら、今後も島の開発に、尽力して欲しいものだ。
東の入り江港を出航して、一旦リシッチャ島ラクシーサ港に入港した。隣の島と言うだけあって、ほんの30分である。もっともウィンにいい風を吹かしてもらったがな。笑
ビーチェが実家に顔を出して来ると言って、ひと足先にナイトでリシッチャ島ラクシーサの刀術道場に行っていた。
俺はリシッチャ島ラクシーサに上陸すると、珊瑚のブレスレットを購入して、ドーラとトーラにプレゼントした。王国出身のわが妻たちにはすでにプレゼントしているが、ここの珊瑚ブレスレットには、能力上昇補正が付加されている。ドーラは攻撃、トーラは剛力だ。
ドーラとトーラが喜んだのは言うまでもなかろう。
それから冒険者ギルドに行って、無人島改めラスプ・デルスゥデ島の開発計画を立案したことと、南府公爵様に開発計画を報告した後に王都に帰ることを、王太子殿下に鳩便で送った。そしてラクシーサ港に戻った。
ラクシーサ港で、実家に顔を出して来たビーチェが合流して、昼前にラクシーサを出航。そのまま南府を目指した。
俺は、クロチュデルスゥデ号とは別行動で、ナイトに乗って南部湾東岸の中心港町のネヴェッツィへと飛んだ。1時間でネヴェッツィへ着き、そこで真珠のネックレスを2つ購入。
さらに南部湾を突っ切って、南部湾西岸の中心港町のヴァジェノへと飛んだ。2時間後にヴァジェノへ着くと、そこで螺鈿の髪留を2つ購入。
ちなみにどちらの町も、ペガサスのナイトで降り立つと、大騒ぎになった。もっとも騒ぎの原因は、ナイトだけでなくて、精霊たちが飛んで付いて来たと言うのもあるんだけどな。苦笑
ネヴェッツィで購入した真珠のネックレスも、ヴァジェノで購入した螺鈿の髪留も、ラクシーサで購入した珊瑚の腕輪と同じように、能力上昇補正が付加されている。当然、王国出身のわが妻たちにはすでにプレゼントしているもので、今回はドーラとトーラへのプレゼントだ。真珠のネックレスも螺鈿の髪留も、ドーラ用には攻撃を、トーラ用には剛力を付加している。
ナイトでヴァジェノを飛び立って、リシッチャ島ラクシーサと南府を繋ぐ航路上の、まだラクシーサ寄りに、クロチュデルスゥデ号を見付けたのは、ヴァジェノを発ってから1時間半後だった。
甲板後部では、ラモがわが妻たちに囲まれて、ご機嫌である。笑い声がこんなに上空にまで届いて来やがるし。まったくしょうがねぇなぁ、あいつは。苦笑
ナイトで甲板に降り立つと、わが妻たちが一斉に俺の所にやって来た。一転、ラモは置き去りである。
「何だよ、ゲオルク。随分早いじゃないか。もっとゆっくり買い物をしてくればいいのにさ。」とラモがボヤいている。笑
「一刻も早くわが妻たちと会いたかったのでな。」
「ちぇっ。」
俺は4時間半も頑張ってくれたナイトに、お礼の角砂糖を上げた。
『これこれ。美味しいなぁ。もう、疲れなんかふっとんじゃうよ。』ナイトは大喜びだ。角砂糖が大好物なのである。
ちなみにナイトに角砂糖の味を覚えさせたのは、ビーチェの弟のロレンツォである。乗せてもらいたくて、手なずけようとしていたのだ。
まぁ、ペガサスに乗せてもらって空を飛んでみたい気持ちは、分からないでもないがな。
ドーラとトーラに、それぞれ真珠のネックレスと螺鈿の髪留をプレゼントしたら、これまた大喜びだった。ふたりとも後で生ぱふぱふをしてくれるそうだ。笑
南府へ帰還する洋上では、ウィンには、クロチュデルスゥデ号の斜め後ろからいい風を送ってもらい、他の精霊たちには、空砲の精霊魔法をどんどんぶっ放してもらっている。
アードベクで魔力を増幅するせいもあるが、精霊たちにいくら吸われても、俺の魔力は、あまり減った気がしない。契約した精霊たちが、形態進化したおかげで、魔力量の上限が79万になっちまったしな。もっとも精霊たちによると、俺の魔力量の上限の潜在能力は、ミリオネア=100万なんだそうだ。
そして何より、使った魔力の回復量が凄まじいのだとか。
将来、俺の正室となる三の姫殿下のマリー様は、精霊と話せて魔力量も多いが、回復量が少ないために精霊魔術師になれなかった。
ちなみに俺は、これらの理由により、魔力切れの症状を体験したことが一度もない。王国出身のわが妻たち5人によると、魔力切れを起こすと意識が飛ぶんだそうだ。
潜在魔力量が高かったリーゼ、ジュヌ、カルメン、あるいはそこそこだったベス、ビーチェは、潜在能力の割には、初期の魔力量上限がえらく低かった。
このせいで5人とも、魔力切れを頻繁に起こして、一旦は冒険者や騎士団員のの道を諦めていたのである。
しかし、魔力量の上限は、潜在能力まで引き上げることができる。その方法は、俺がルードビッヒ教授の研究対象となった際に、精霊たちから教わったのだが、魔力切れを頻繁に起こすか、魔力が満タンのときに、外部から魔力補給をすると言うものだった。
魔力は体液に含まれるから、高濃度の魔力を含む俺の体液の補給を繰り返した王国のわが妻たち5人は、どんどん魔力量の上限が伸びて、すでに潜在能力の上限まで達している。
ちなみに俺の体液に含まれる魔力は、汗<唾液<血液<ホワイとブレスの順に、どんどん濃くなる。
特に、ホワイトブレスは、口から補給するよりも、蜜壺へ直接放出する方が、魔力上昇の効果が2倍である。
とは言え、妊娠のリスクを避けるために、蜜壺へ直接放出ではなく、コツコツのお口経由で上限を上げて来たのだ。まぁたまには蜜壺への直接放出もさせてもらったけどな。笑
なお、体液による、魔力上限の上昇効果は、異種族の龍人や獣人には効かないようだ。しかし、ドーラとトーラの魔力量は、その正体が聖獣と言う種族特性で十分高いため、俺が知る限り、このふたりの妻たちが魔力切れを起こしたことは一度もない。
話は逸れたが、南部湾を航海中に、精霊たちは精霊魔法を絶えずぶっ放し続け、俺は繰り返し魔力を繰り返し補給したのだった。
この調子で行けば、精霊たちのカラフルメロンボール18個による、レインボーぱふぱふも、そう遠くない将来に堪能できるであろう。実に楽しみである♪
昼前にリシッチャ島を出航したクロチュデルスゥデ号は、ウィンの順風を受けてその船足を如何なく発揮し、日付が変わった深夜に南府湾に入港した。
なんか中途半端な時間帯だなー。
クロチュデルスゥデ号のクルーは、南部湾警備隊の詰所で朝まで仮眠を取るそうだ。
俺たちは、流石にこの時間にリシッチャ亭に行く訳にもいかないから、南部港の片隅で、アクアビット号で仮眠を取ることにしたのだが…、
「ゲオルク、僕んちにおいでよ。どうせ明日の午前中には、僕んちに来るんだからさ。って、日付が変わったからもう今日だったな。あはははは。」
「ラモ、何言ってんの?なんで今日の午前中にお前んちに行くんだよ。」
「いいから、いいから。その代わり、アクアビット号で僕んちまで送っておくれよ。」
なんか訳が分からないまま、ラモんちに行くことになった。ってか俺たち全員泊まれるのか?そんなに大きいのか?ラモんちは。
「あ、そこ右ね。後はまっすぐで。」ラモが、御者台の後ろの席で、御者をしている俺に行き先を示している。
え?こっちって…?まさかな。
眼の前の立派なお屋敷には門番がいる。ってか、ここって南部公爵様のお屋敷なんだけど!
お屋敷の正門前でアクアビット号を停めると、対応に出て来た門番が飛んでもないことを抜かしやがった。
「あ、ラモ様、お帰りなさいまし。」はぁ?なんですと?お帰り…???
「おい、ラモ。どう言うことだ?」俺は後部座席にいるラモを振り返った。
「ここ、僕んちなんだよねー。だから遠慮しなくていいよ。」軽っ!
「えー?ってことは、ラモは南部公爵様の…。」
「あ、そうなんだよ。南部公爵は僕の父上なんだよね。仕事のときは、なるべく南部公って呼ぶようにしてるんだけどさ、ついつい父上って言いそうになっちゃってね。ゲオルクも、僕が何度も父上って言いそうになったの、気付いてたよね?」いやいやいや、まったく気付いてなかったんすけどー!
俺、お口パクパク酸欠金魚。
やっとのことで、驚愕から立ち直り、
「わが妻たちは、このことを承知してるのか?」と聞いたが、
「知ってるよ。ゲオルクがネヴェッツィとヴァジェノに買い物に行ってる間に、船で話しておいたからね。」とあっさりした返事。まじか?
そのままお南部公爵様のお屋敷に入ると、わが妻たちと精霊たちと一緒にあてがわれた一番広い客間に通されたのだった。
その晩は、最後のラモの件でどっと疲れて爆睡した。ドーラとトーラと約束していた生ぱふぱふのことは、すっかり頭から飛んでいたのだった。
翌朝、南部公爵様に奥方様を紹介され、南部公爵様と奥方様とラモと一緒に朝餉を摂っている。もちろんわが妻たちも一緒に。
精霊たちは食べないので、俺のまわりをふわふわと漂っている。
「ゲオルク、昨日はずいぶん遅かったようだな。」と南部公爵様。
「はい。入港したのは日付が変わった頃でしたので。こちらには夜分遅く罷り越しまして、大変ご迷惑をお掛けしました。」
「よいよい。気にするな。そなたのせいではないわ。」
「そうですよ、ゲオルク卿。御屋形様の言う通りです。
ラモ、あなた、仮にも船長なのですから、入港時間ぐらいきちんと計算しなさいな。」南部公爵様の奥方様だ。
「いやー、母上。ゲオルクの風の精霊様がいい風を吹かしてくれてね、思いの外早く着いちゃったんだよ。はっはっは。」全然、堪えてない。笑
「それでも時間調整ぐらいできるでしょう?」
「母上、僕の愛しいハニーが順風満帆でいい船足を出してたんだよ。止められる訳ないじゃないか。」ラモのハニーと言うのは、どうもクロチュデルスゥデ号のことらしい。
「お前なぁ。船と結婚する気か?」
「おお!父上、冗談が言えるようになったんだね。これも母上の薫陶の賜物かな?」
「もうよいわ。このお調子もんが。」俺もだが、わが妻たちも必死に笑いを堪えていた。
朝餉が終わり、紹介された南部公爵夫人が席を立って、南部公とラモと俺は、南部公爵様の執務室に移動した。わが妻たちは解放したが、精霊たちは俺について来ている。
南部公爵様の執務室で、俺は、島の視察をもとにした開発計画を、南部公爵様に報告した。
島をラスプ・デルスゥデ島と名付けたこと。
観光と漁業の両面で開発して行くこと。
島の玄関口は、東の入り江の港にし、ここにメインの町を造ること。
北の浜に海水浴客用の宿屋、山頂にグランピング用の宿屋、南の浜にサーファー用の宿屋を造ること。
南の入り江に外洋漁業用の港を造るために防波堤を造ったことと、ここに漁業集落を造ること。
西のマングローブでエビの養殖を行うための集落を造ること。
島の周回道路と、東の入り江から山頂への登山道路を普請して来たこと。
南部の各町村から、ラスプ・デルスゥデ島への移民を募りたいこと。
向こう3年は税を免除したいこと。
島の行政執行に、南府から役人を派遣して欲しいこと。
島の開発責任者をラモに引き受けて欲しいこと。
「ラモ、島の開発や内政を仕切るのは、将来、余の後を継ぐのに役立とうな。しかしお前には現在南部湾警備隊クロチュデルスゥデ号の船長と言う重責もある。ラモよ。お前はどうしたい?」
「折角だから両方やるよ。」
「なんと。」
「クロチュデルスゥデ号の母港を、東の入り江港にすれば何とかなると思うんだよね。父上、その許可を下さい。
ゲオルク、ところでさ、東の入り江港とか南の入り江港とか言いにくいよね?名前決めないか?」
「確かにそうだな。」
「で、提案なんだけどさ、東の入り江港はラスプ・デルスゥデ島の玄関だからラスプ港、南の入り江港はフォンターナ港でどう?」
「フォンターナ?南部言葉で噴水だよな?なんで噴水なんだ?」
「クジラが潮を吹いてたろ。あれが噴水みたいだったじゃないか。」
「なるほど、それはいいな。そうしよう。」
「ラモ、お前、本当に船長と開発責任者を兼任するつもりか?いつからそんなに勤勉になったんだ?」
「父上、酷いなー。僕はいつだって勤勉さ。ただし、仕事も楽しんでやってるからね、おちゃらけて見えるのはそのせいだと思うんだよ。
大体さ、僕がテキトーならゲオルクが僕に、島の開発責任者を頼む訳ないだろ?」
南部公爵様はしばらく考えて、
「うむ。確かにそうだな。分かった。ラモ。お前の言う通りにしよう。クロチュデルスゥデ号の母港はラスプ港とする。お前の片腕となる行政官を、何人か見繕って連れて行け。
それとゲオルク。そなたの要望、すべて承知した。移民を募り、3年間の納税免除を認める。そなたが立案した開発計画は、余の予想を上回る出来だ。」
「いえいえ、開発計画の立案には、ラモの助言を大いに反映してますので、実質上は俺とラモの共同立案です。」
「そうなのか?」南部公爵様がラモに問い質した。
「んー、まぁそうかな。だからこそ、僕は開発責任者を引き受ける気になったんだけどね。」
「分かった。ふたりとも、期待してるぞ。」
ラモと、ラモが選んだ行政官は非常に優秀で、ラスプ・デルスゥデ島は、大人気の海のリゾート地に変貌し、大いに発展して行く。
そして、3年間の税優遇措置期間が終わった後、ラスプ・デルスゥデ島の税収を折半する、南部公爵とゲオルクの懐を、大いに富ませるのであった。それは後日譚。
ひと通りの報告を終えると、南部公爵様が、
「ゲオルクは今日、発つのか?」
「はい。この後、発つつもりです。」
「そうか。実はな、数日前に殿下から緊急な招集があってな、余も準備が整う明日には発つ。
ラモ、此度は供せよ。」
「えー?いきなり?」
「南部公爵様、そう言うことでしたら、俺たちも出発を明日に延ばして、お供します。」
「いや、殿下から、ゲオルクは速やかに王都へ寄越すようにとのことなのでな、予定通り今日発ってくれ。道中なるべく急いでな。」
「いったい何ですかね?」
「行けば分かるであろう。」
ここでは言えないことなのかな?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/13
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№141 ラスプ・デルスゥデ島開発計画とラモの正体
日の出とともに目覚め、山頂から俺の第2の領地となるラスプ・デルスゥデ島を見渡した。
ゆったりとした歩みの馬車で、4時間あれば1周できる小さな島ではあるが、俺なりに工夫して島の開発計画を立てた。これから移民を募り、無人島から発展して行くことを期待したい。
開発の方針が固まったので、今日、島を発って南府に帰り、領地を提供してくれた南部公爵様に開発計画を上申する。向こう3年間の税の免除に同意してもらえるかが一番の懸案事項だ。
清々しい山の朝を満喫して朝餉を摂り、リシッチャ島から遊びに来ていたペガサス3頭に別れを告げ、昨日切り開いた登山道を下りて東の入り江の港へと進んだ。
この島まで送ってくれて、海上からの島の偵察や、東の入り江の港の基礎開発の手伝いに、南の入り江の港や南の浜の利用法に助言をくれた、南部湾警備隊クロチュデルスゥデ号のラモ船長と、そのクルーたちには本当に世話になった。
ラモ船長が引き受けてくれるなら、今後も島の開発に、尽力して欲しいものだ。
東の入り江港を出航して、一旦リシッチャ島ラクシーサ港に入港した。隣の島と言うだけあって、ほんの30分である。もっともウィンにいい風を吹かしてもらったがな。笑
ビーチェが実家に顔を出して来ると言って、ひと足先にナイトでリシッチャ島ラクシーサの刀術道場に行っていた。
俺はリシッチャ島ラクシーサに上陸すると、珊瑚のブレスレットを購入して、ドーラとトーラにプレゼントした。王国出身のわが妻たちにはすでにプレゼントしているが、ここの珊瑚ブレスレットには、能力上昇補正が付加されている。ドーラは攻撃、トーラは剛力だ。
ドーラとトーラが喜んだのは言うまでもなかろう。
それから冒険者ギルドに行って、無人島改めラスプ・デルスゥデ島の開発計画を立案したことと、南府公爵様に開発計画を報告した後に王都に帰ることを、王太子殿下に鳩便で送った。そしてラクシーサ港に戻った。
ラクシーサ港で、実家に顔を出して来たビーチェが合流して、昼前にラクシーサを出航。そのまま南府を目指した。
俺は、クロチュデルスゥデ号とは別行動で、ナイトに乗って南部湾東岸の中心港町のネヴェッツィへと飛んだ。1時間でネヴェッツィへ着き、そこで真珠のネックレスを2つ購入。
さらに南部湾を突っ切って、南部湾西岸の中心港町のヴァジェノへと飛んだ。2時間後にヴァジェノへ着くと、そこで螺鈿の髪留を2つ購入。
ちなみにどちらの町も、ペガサスのナイトで降り立つと、大騒ぎになった。もっとも騒ぎの原因は、ナイトだけでなくて、精霊たちが飛んで付いて来たと言うのもあるんだけどな。苦笑
ネヴェッツィで購入した真珠のネックレスも、ヴァジェノで購入した螺鈿の髪留も、ラクシーサで購入した珊瑚の腕輪と同じように、能力上昇補正が付加されている。当然、王国出身のわが妻たちにはすでにプレゼントしているもので、今回はドーラとトーラへのプレゼントだ。真珠のネックレスも螺鈿の髪留も、ドーラ用には攻撃を、トーラ用には剛力を付加している。
ナイトでヴァジェノを飛び立って、リシッチャ島ラクシーサと南府を繋ぐ航路上の、まだラクシーサ寄りに、クロチュデルスゥデ号を見付けたのは、ヴァジェノを発ってから1時間半後だった。
甲板後部では、ラモがわが妻たちに囲まれて、ご機嫌である。笑い声がこんなに上空にまで届いて来やがるし。まったくしょうがねぇなぁ、あいつは。苦笑
ナイトで甲板に降り立つと、わが妻たちが一斉に俺の所にやって来た。一転、ラモは置き去りである。
「何だよ、ゲオルク。随分早いじゃないか。もっとゆっくり買い物をしてくればいいのにさ。」とラモがボヤいている。笑
「一刻も早くわが妻たちと会いたかったのでな。」
「ちぇっ。」
俺は4時間半も頑張ってくれたナイトに、お礼の角砂糖を上げた。
『これこれ。美味しいなぁ。もう、疲れなんかふっとんじゃうよ。』ナイトは大喜びだ。角砂糖が大好物なのである。
ちなみにナイトに角砂糖の味を覚えさせたのは、ビーチェの弟のロレンツォである。乗せてもらいたくて、手なずけようとしていたのだ。
まぁ、ペガサスに乗せてもらって空を飛んでみたい気持ちは、分からないでもないがな。
ドーラとトーラに、それぞれ真珠のネックレスと螺鈿の髪留をプレゼントしたら、これまた大喜びだった。ふたりとも後で生ぱふぱふをしてくれるそうだ。笑
南府へ帰還する洋上では、ウィンには、クロチュデルスゥデ号の斜め後ろからいい風を送ってもらい、他の精霊たちには、空砲の精霊魔法をどんどんぶっ放してもらっている。
アードベクで魔力を増幅するせいもあるが、精霊たちにいくら吸われても、俺の魔力は、あまり減った気がしない。契約した精霊たちが、形態進化したおかげで、魔力量の上限が79万になっちまったしな。もっとも精霊たちによると、俺の魔力量の上限の潜在能力は、ミリオネア=100万なんだそうだ。
そして何より、使った魔力の回復量が凄まじいのだとか。
将来、俺の正室となる三の姫殿下のマリー様は、精霊と話せて魔力量も多いが、回復量が少ないために精霊魔術師になれなかった。
ちなみに俺は、これらの理由により、魔力切れの症状を体験したことが一度もない。王国出身のわが妻たち5人によると、魔力切れを起こすと意識が飛ぶんだそうだ。
潜在魔力量が高かったリーゼ、ジュヌ、カルメン、あるいはそこそこだったベス、ビーチェは、潜在能力の割には、初期の魔力量上限がえらく低かった。
このせいで5人とも、魔力切れを頻繁に起こして、一旦は冒険者や騎士団員のの道を諦めていたのである。
しかし、魔力量の上限は、潜在能力まで引き上げることができる。その方法は、俺がルードビッヒ教授の研究対象となった際に、精霊たちから教わったのだが、魔力切れを頻繁に起こすか、魔力が満タンのときに、外部から魔力補給をすると言うものだった。
魔力は体液に含まれるから、高濃度の魔力を含む俺の体液の補給を繰り返した王国のわが妻たち5人は、どんどん魔力量の上限が伸びて、すでに潜在能力の上限まで達している。
ちなみに俺の体液に含まれる魔力は、汗<唾液<血液<ホワイとブレスの順に、どんどん濃くなる。
特に、ホワイトブレスは、口から補給するよりも、蜜壺へ直接放出する方が、魔力上昇の効果が2倍である。
とは言え、妊娠のリスクを避けるために、蜜壺へ直接放出ではなく、コツコツのお口経由で上限を上げて来たのだ。まぁたまには蜜壺への直接放出もさせてもらったけどな。笑
なお、体液による、魔力上限の上昇効果は、異種族の龍人や獣人には効かないようだ。しかし、ドーラとトーラの魔力量は、その正体が聖獣と言う種族特性で十分高いため、俺が知る限り、このふたりの妻たちが魔力切れを起こしたことは一度もない。
話は逸れたが、南部湾を航海中に、精霊たちは精霊魔法を絶えずぶっ放し続け、俺は繰り返し魔力を繰り返し補給したのだった。
この調子で行けば、精霊たちのカラフルメロンボール18個による、レインボーぱふぱふも、そう遠くない将来に堪能できるであろう。実に楽しみである♪
昼前にリシッチャ島を出航したクロチュデルスゥデ号は、ウィンの順風を受けてその船足を如何なく発揮し、日付が変わった深夜に南府湾に入港した。
なんか中途半端な時間帯だなー。
クロチュデルスゥデ号のクルーは、南部湾警備隊の詰所で朝まで仮眠を取るそうだ。
俺たちは、流石にこの時間にリシッチャ亭に行く訳にもいかないから、南部港の片隅で、アクアビット号で仮眠を取ることにしたのだが…、
「ゲオルク、僕んちにおいでよ。どうせ明日の午前中には、僕んちに来るんだからさ。って、日付が変わったからもう今日だったな。あはははは。」
「ラモ、何言ってんの?なんで今日の午前中にお前んちに行くんだよ。」
「いいから、いいから。その代わり、アクアビット号で僕んちまで送っておくれよ。」
なんか訳が分からないまま、ラモんちに行くことになった。ってか俺たち全員泊まれるのか?そんなに大きいのか?ラモんちは。
「あ、そこ右ね。後はまっすぐで。」ラモが、御者台の後ろの席で、御者をしている俺に行き先を示している。
え?こっちって…?まさかな。
眼の前の立派なお屋敷には門番がいる。ってか、ここって南部公爵様のお屋敷なんだけど!
お屋敷の正門前でアクアビット号を停めると、対応に出て来た門番が飛んでもないことを抜かしやがった。
「あ、ラモ様、お帰りなさいまし。」はぁ?なんですと?お帰り…???
「おい、ラモ。どう言うことだ?」俺は後部座席にいるラモを振り返った。
「ここ、僕んちなんだよねー。だから遠慮しなくていいよ。」軽っ!
「えー?ってことは、ラモは南部公爵様の…。」
「あ、そうなんだよ。南部公爵は僕の父上なんだよね。仕事のときは、なるべく南部公って呼ぶようにしてるんだけどさ、ついつい父上って言いそうになっちゃってね。ゲオルクも、僕が何度も父上って言いそうになったの、気付いてたよね?」いやいやいや、まったく気付いてなかったんすけどー!
俺、お口パクパク酸欠金魚。
やっとのことで、驚愕から立ち直り、
「わが妻たちは、このことを承知してるのか?」と聞いたが、
「知ってるよ。ゲオルクがネヴェッツィとヴァジェノに買い物に行ってる間に、船で話しておいたからね。」とあっさりした返事。まじか?
そのままお南部公爵様のお屋敷に入ると、わが妻たちと精霊たちと一緒にあてがわれた一番広い客間に通されたのだった。
その晩は、最後のラモの件でどっと疲れて爆睡した。ドーラとトーラと約束していた生ぱふぱふのことは、すっかり頭から飛んでいたのだった。
翌朝、南部公爵様に奥方様を紹介され、南部公爵様と奥方様とラモと一緒に朝餉を摂っている。もちろんわが妻たちも一緒に。
精霊たちは食べないので、俺のまわりをふわふわと漂っている。
「ゲオルク、昨日はずいぶん遅かったようだな。」と南部公爵様。
「はい。入港したのは日付が変わった頃でしたので。こちらには夜分遅く罷り越しまして、大変ご迷惑をお掛けしました。」
「よいよい。気にするな。そなたのせいではないわ。」
「そうですよ、ゲオルク卿。御屋形様の言う通りです。
ラモ、あなた、仮にも船長なのですから、入港時間ぐらいきちんと計算しなさいな。」南部公爵様の奥方様だ。
「いやー、母上。ゲオルクの風の精霊様がいい風を吹かしてくれてね、思いの外早く着いちゃったんだよ。はっはっは。」全然、堪えてない。笑
「それでも時間調整ぐらいできるでしょう?」
「母上、僕の愛しいハニーが順風満帆でいい船足を出してたんだよ。止められる訳ないじゃないか。」ラモのハニーと言うのは、どうもクロチュデルスゥデ号のことらしい。
「お前なぁ。船と結婚する気か?」
「おお!父上、冗談が言えるようになったんだね。これも母上の薫陶の賜物かな?」
「もうよいわ。このお調子もんが。」俺もだが、わが妻たちも必死に笑いを堪えていた。
朝餉が終わり、紹介された南部公爵夫人が席を立って、南部公とラモと俺は、南部公爵様の執務室に移動した。わが妻たちは解放したが、精霊たちは俺について来ている。
南部公爵様の執務室で、俺は、島の視察をもとにした開発計画を、南部公爵様に報告した。
島をラスプ・デルスゥデ島と名付けたこと。
観光と漁業の両面で開発して行くこと。
島の玄関口は、東の入り江の港にし、ここにメインの町を造ること。
北の浜に海水浴客用の宿屋、山頂にグランピング用の宿屋、南の浜にサーファー用の宿屋を造ること。
南の入り江に外洋漁業用の港を造るために防波堤を造ったことと、ここに漁業集落を造ること。
西のマングローブでエビの養殖を行うための集落を造ること。
島の周回道路と、東の入り江から山頂への登山道路を普請して来たこと。
南部の各町村から、ラスプ・デルスゥデ島への移民を募りたいこと。
向こう3年は税を免除したいこと。
島の行政執行に、南府から役人を派遣して欲しいこと。
島の開発責任者をラモに引き受けて欲しいこと。
「ラモ、島の開発や内政を仕切るのは、将来、余の後を継ぐのに役立とうな。しかしお前には現在南部湾警備隊クロチュデルスゥデ号の船長と言う重責もある。ラモよ。お前はどうしたい?」
「折角だから両方やるよ。」
「なんと。」
「クロチュデルスゥデ号の母港を、東の入り江港にすれば何とかなると思うんだよね。父上、その許可を下さい。
ゲオルク、ところでさ、東の入り江港とか南の入り江港とか言いにくいよね?名前決めないか?」
「確かにそうだな。」
「で、提案なんだけどさ、東の入り江港はラスプ・デルスゥデ島の玄関だからラスプ港、南の入り江港はフォンターナ港でどう?」
「フォンターナ?南部言葉で噴水だよな?なんで噴水なんだ?」
「クジラが潮を吹いてたろ。あれが噴水みたいだったじゃないか。」
「なるほど、それはいいな。そうしよう。」
「ラモ、お前、本当に船長と開発責任者を兼任するつもりか?いつからそんなに勤勉になったんだ?」
「父上、酷いなー。僕はいつだって勤勉さ。ただし、仕事も楽しんでやってるからね、おちゃらけて見えるのはそのせいだと思うんだよ。
大体さ、僕がテキトーならゲオルクが僕に、島の開発責任者を頼む訳ないだろ?」
南部公爵様はしばらく考えて、
「うむ。確かにそうだな。分かった。ラモ。お前の言う通りにしよう。クロチュデルスゥデ号の母港はラスプ港とする。お前の片腕となる行政官を、何人か見繕って連れて行け。
それとゲオルク。そなたの要望、すべて承知した。移民を募り、3年間の納税免除を認める。そなたが立案した開発計画は、余の予想を上回る出来だ。」
「いえいえ、開発計画の立案には、ラモの助言を大いに反映してますので、実質上は俺とラモの共同立案です。」
「そうなのか?」南部公爵様がラモに問い質した。
「んー、まぁそうかな。だからこそ、僕は開発責任者を引き受ける気になったんだけどね。」
「分かった。ふたりとも、期待してるぞ。」
ラモと、ラモが選んだ行政官は非常に優秀で、ラスプ・デルスゥデ島は、大人気の海のリゾート地に変貌し、大いに発展して行く。
そして、3年間の税優遇措置期間が終わった後、ラスプ・デルスゥデ島の税収を折半する、南部公爵とゲオルクの懐を、大いに富ませるのであった。それは後日譚。
ひと通りの報告を終えると、南部公爵様が、
「ゲオルクは今日、発つのか?」
「はい。この後、発つつもりです。」
「そうか。実はな、数日前に殿下から緊急な招集があってな、余も準備が整う明日には発つ。
ラモ、此度は供せよ。」
「えー?いきなり?」
「南部公爵様、そう言うことでしたら、俺たちも出発を明日に延ばして、お供します。」
「いや、殿下から、ゲオルクは速やかに王都へ寄越すようにとのことなのでな、予定通り今日発ってくれ。道中なるべく急いでな。」
「いったい何ですかね?」
「行けば分かるであろう。」
ここでは言えないことなのかな?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/13
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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