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精霊の加護138 無人島探検
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精霊の加護
Zu-Y
№138 無人島探検
リシッチャ島のすぐ西にある小さな無人島。南部公爵様のご領地から、俺に譲られる予定の島だ。譲られる条件は、この無人島の開発だ。
南府から南部湾を突っ切って、島の北側、すなわち南部湾に面する側に上陸した。この島の南部湾に面する北側は、非常にきれいな白い砂浜だ。珊瑚が風化された白い砂粒は、星の形をしている。このため、砂浜を歩くと、キュッキュと心地よい音がする。
このきれいな白い星型の砂粒は、小さな瓶に詰めて、『星の砂』として売り出したら、そこそこ売れそうな気がする。笑
島の北側の白い砂浜から振り返って島を見ると、まず、砂浜の南端から南国の森林が生い茂り、森林が島全体を覆っている。
これだけの森林が育つのだから、水源はしっかりしているはずだ。
この島を上手く開発できるかは、水源の有無に掛かっているだろう。水源がなければ、人が住むには適さない。人が住めなければ、島で産業を起こせないし、開発も立ち行かない。
砂浜には、ツリ、クレ、フィアが建てた野営所がある。
ツリは屋根を葺く植物の葉や、ベッドの干し草となる牧草の確保に、クレは土壌をせり上げて野営地を取り巻く塀や、野営所の壁の造形に、フィアは窯での干し草の乾燥にと、大いに働いた。
一段落ついたところで、ツリ、クレ、ファイアに、お気に入りのウイスキー、アードベクをひと口含んでのからのべろちゅーで魔力を補給した。
体液には魔力が、アルコールには魔力増幅効果があるのだ。
アードベクで増幅された唾液中の魔力を、精霊たちは好んで呑み、ほろ酔いとなっている。笑
しばらくして、島の水源を調べに行っていたワラが帰って来た。
ワラによると、この無人島は、南部群島の他の島と同じくサンゴ礁のため、地質は石灰ベースで、そこに大量の雨水が浸み込んで、ろ過され、豊富な地下水脈となっている。とのことだ。
中央の山に降り注いだ雨水は、山の石灰質でろ過され、山の麓の何ヶ所かに湧き水として湧出しており、そのまま川となって島のあちこちから海に注いでいるのだそうだ。
「ワラ、ご苦労さん。」
『お腹すいたー。』ぶっちゅー。もちろんアードベクもひと口含んでいる。
続いて島全体を覆う南国樹林を偵察して来た、チル、ウィン、メタ、ソル、ダクが帰って来た。
『森には獣が結構いるー。』
『でも大きいのはいなーい。』
『魔獣もいなーい。』
『小さい獣ばっかりー。』
『山にはペガサスがいるー。』
「え?ペガサスならナイトの仲間か?」俺はナイトに聞いてみた。
『多分そう。僕の仲間。リシッチャ島は人が多くて、ちょくちょく双子山に登って来る人間がいるから、騒がしいんだよ。だから、双子山からこっちに来てる仲間もいる。少数だけどね。』ナイトの仲間か。
双子山とは、リシッチャ島の風の谷を構成しているふたつの山だ。風の谷の奥地は、ナイトの仲間の聖獣ペガサスが棲んでいる。
「皆、偵察ご苦労さん。ご褒美だぞー。」
『『『『『やったー。』』』』』偵察を終えた、チル、ウィン、メタ、ソル、ダクにも魔力補給をした。
あとはクロチュデルスゥデ号が帰って来るのを待つか。いい入り江が見付かってれば、クレに船着場を造ってもらおう。それまでは、浜でのんびりしてるかな。
浜にタープを張り、日影を作って、皆で寝転ぶ。
季節は晩春で、しかも南部の中でも南に位置する南部群島だ。海水浴には早いが、浜でのんびり寝転ぶにはいい季節だ。ほんのり暑いくらいだ。
あー、こんなことならわが妻たちに水着を…、俺の渾身のデザインの水着を用意しておくんだった。
「お前さん、こりゃのんびりできていいじゃないか。」
「だろー。ここは浜の宿屋の専用ビーチにしてさ、混まないビーチで贅沢に時を過ごしてもらおうかと思うんだよね。」
「うむ。わが君、これは流行りそうだな。」
そんな感じで、昼餉を摂りつつまったりしていると、昼下がりになってクロチュデルスゥデ号が帰って来た。俺は、わが妻たちを北の浜に残し、上陸に使ったボートでクロチュデルスゥデ号へと戻った。浜を見るとわが妻たちが優雅に手を振っている。笑
「ラモ。いい入り江は見付かったか?」
「ああ。あったよ。リシッチャ島側の東岸にいい入り江があってね、ここは船着場さえ拵えればすぐ使えるだろうね。
それと外海に面した南岸にも、港にできそうな入り江があったんだけど、こっちの入り江といっても、あまり陸に入り込んでいないんだ。外海の荒い波が直接打ち寄せるから、防波堤を造らなければならないよ。それとここよりは狭いけどいい感じの浜もあった。
西側にはマングローブが広がってて、ざっと見た感じでは、船を付けられそうな所はなかったね。」
マングローブは、遠浅の海にヒルギの仲間の樹木が生えた南国の海沿いの特徴的な樹林だ。ヒルギの仲間は海水に強く、根は海底の砂を掴むようにして、半分砂地から出ている。満潮のときは海に浸かり、干潮のときは海面から裸出する。気根と言う特殊な根を海面から出して呼吸をしているのだ。
根のまわりは小魚やエビの棲家になるので、天然のエビの養殖場にもなる優れモノだ。
「そうか!マングローブか。それなら天然に近い形でエビの養殖もできそうじゃないか。」
「へぇ、ゲオルクはそんなことまで知ってるんだ。大したもんじゃないか。」ラモに感心されてしまった。笑
マングローブ林からは、大量の葉が海水に落ちるが、暖かい海水温のため、すぐに分解が進み、これによって海水中のプランクトンが増えるのだ。当然、プランクトンを餌とするエビや小魚も増える訳だ。しかも、入り組んだ根の隙間には、天敵の大型魚は入って来られないから、エビや小魚にとっては、絶好の隠れ家ともなる訳だ。
クロチュデルスゥデ号で、東の入り江に行った。
「クレ、ここから島に向かって真っすぐ、5m幅で海底をせり上げてな、船着場を造ってくれ。」
『はーい。』
イメージ通りの船着場が出来上がると、隣でラモが目を見開いて絶句していた。笑
早速、そこにクロチュデルスゥデ号を船着場に接岸させ、アクアビット号と曳馬を降ろした。ラモ船長とクルーたちはここに残って、諸々の埠頭設備を設営するそうだ。
この東の入り江に造る港は、リシッチャ島に面しているから、この島の玄関口にしよう。将来的にはラクシーサ港との航路を設置するのだ。
俺は、東の入り江の整備をラモたちクロチュデルスゥデ号のクルーに任せて、ここ東の入り江から、先程まで上陸していた北の浜を目指し、樹林の中に道路を切り開いて行くことにした。島の縁に沿って周回道路を通すのだ。
精霊たちがいれば、大規模な土木工事も容易い。道路予定地の樹々を、フィアに燃やしたり、ウィンの竜巻でなぎ倒したり、メタの落雷で粉砕したり、ダクに枯らさせたりしてぐんぐん進む。
ぬかるんだ所があれば、ワラに水脈を操らせ川を造ったり、森林火災になり掛けたらチルに凍結させて火を収めたり、切り開き過ぎたらツリに樹木を再生させた。
樹木を除いた後は、クレに地面を固めさせ、道路として仕上げた。
2時間半もすると、東の入り江から北の浜まで、無人島を1/4周する周回道路が完成した。
精霊たちが下見をして来た通り、この島に厄介な獣はいないが、土木工事の過程で厄介だったのは、スズメバチなどの攻撃的な昆虫たちだった。もっとも奴らにしてみれば自分たちの巣を守る防衛なのだがな。
わが妻たちが何度か刺され、ソルの回復のご厄介になった。ジュヌが回復しようとすると、
『ソルがやるー。』と言って、エリアヒールをバンバン使っていた。普通にヒールでいいのに。
それまで、『ソルの出番はー?』と言ってぶー垂れていたので、ソルは出番に飢えていたようだ。笑
北の浜でわが妻たちと合流したときは、そろそろ夕方と言う刻限だった。今日はこの辺までにしておこう。
わが妻たちに夕餉の準備を任せて、俺はナイトで東の入り江に飛んだ。
「ラモ、こっちは東の入り江から北の浜まで周回道路を開通させた。そっちは?」
「係留のための施設やらなんやらを造ってるよ。」
「今夜はどうする?」
「僕たちはここに停泊したまま、クロチュデルスゥデ号で寝泊まりするよ。」
「そうか、じゃぁまた明日な。」
「うん。ご婦人方によろしく。」
再び北の浜に戻り、でーんと大きな野天風呂を拵えて、ワラに水源から真水を引いてもらった。次にフィアに温めてもらっていい湯加減にした。そして、精霊たちとわが妻たちと一緒に、皆で野天風呂に入った。至福だ。
第四形態の精霊たちの並乳を、先行投資で「大きくなあれ。」と念じつつ、もみもみしながら、わが妻たちと第五形態になったツリのメロンボール計16個を鑑賞したのだった。
ところで、ラスプ村を発って以来、東府、王都と素通りして来たので、マイドラゴンは暴走寸前である。
偵察に行ったクレたちの報告では、この島の樹林に魔獣や大きな獣はいないそうなので、今夜はわが妻たちとむふふするのだ。笑
そんな不謹慎なことを考えながら湯に浸かっていると、辺りは徐々に暮れて来て、空には星がポツンポツンと見え出して来た。こりゃ星空がきれいかもな。山から見上げる星空なんてのもいいだろうな…。
そうだ!この島の山はさほど高くないから、山頂一帯で星を見ながら宿泊ってのもありだぞ。山の宿屋と一緒にキャンプ形式の離れを造って、グランピングとかってのもありじゃね?
よし、夕餉の後に、ナイトで山頂に行ってみよう。
夕餉は、北の浜の前の遠浅の海で漁った、地魚、貝類、エビ、カニをぶち込んだシーフードたっぷりの潮汁だ。無駄な味付けはせずとも、様々な魚介から出る出汁だけで十分に旨かった。
夜、浜からの満天の星空が美しかったので、ナイトに乗っけてもらって、山頂までひとっ飛び。
無人島の山は大して高くないので、山頂も樹々が生い茂っていて、暗い中で着陸場所を探すのには苦労しそうだ。明かりを確保できないかな?そう思ったら…。
ソルが発光の精霊魔法を使って、一面を照らしてくれたので、あっさり着陸場所を見付けて着地した。
「ソルは発光もできたのな。」
『うん。光の精霊だもん。』
「知らなかったよ。」盲点だった。
…待てよ、と言うことは…。
「ひょっとしてダクは明るい所を暗くしたりできるのか?」
『吸光は、野外とか、開けた所は無理。光を吸ってもまわりから光がいくらでも回り込んできちゃう。でも狭い所ならなら暗くできるよ。』
「まじか!拠点の強襲とかに使えるな。」
『うーん、でもそれだとこっちも見えなくなるから、エリアブラインドの方がいいかな。』
「あ、それもそうか。」ブラインドは敵の視界を奪う状態異常の精霊魔法だ
さて、山頂からの星空も、予想通り格別にきれいだった。
山頂付近の、東、南、西の斜面の樹林を切り開いて、草を生やして草原にして、グランピング場だな。もちろん普通に泊まれる宿屋も建てるけどな。山頂へのアクセスは、取り敢えず東の入り江から1本道でいいか。
「そう言えばさ、昼の下見のときにペガサスがいるって言ってなかったっけ?」
『今、いなーい。』『いないねー。』
「どうしたんだろ?」
『さっき、双子山に帰るって言ってたよ。』俺の疑問にナイトが答えた。
「え?ナイト、いつの間に仲間と会ったんだ?」
『んー、会ってはないけど、念話で話した。』
「俺たちが来たせいで追い出しちゃった感じか?悪いことしたなぁ。別にいてもらっても全然構わないんだけどなぁ。」
『じゃぁ、そう言っとく。』
「てかさぁ、この山にいてくれてさ、たまに姿を見せてくれると、宿泊客が喜ぶと思うんだよな。」
『でも宿泊客に絡まれるのは、嫌だと思うよ。』
「もちろん絡ませないよ。宿泊客には『そっと見て。じゃないと来てくれなくなる。』って、言っとくさ。」
『それならいいかも。』
山頂の下見を終えて北の浜の野営所に帰り、わが妻たちの寝所を訪おうかと思ったら、精霊たちが声を揃えて、
『『『『『『『『『ゲオルクー、お風呂ー。』』』』』』』』』と言って来た。
「え?今日はもう入ったじゃん。」
『夜、出掛けたー。』まぁそうだけど…。
『汗掻いたー。』いやいや、汗は掻いてないだろ。
『お願ーい。』しゃーねぇな。
これが罠とも知らず、素直に野天風呂に向かう俺。
『ゲオルクー、ぱふぱふする?』湯船に浸かろうとしたところを、第五形態のツリが聞いて来た。プリンとメロンボールを顕わにして。
「おうっ!」迷わず応諾。
その場で立ったままツリのメロンボールに挟まれて、「ツリは緑色だからほんとにメロンみたいだなー。」などと油断し切っていたら、ぱくり。へ?
下を見るとマイドラゴンが、膝立ちをしたダクに捕食されていた。
うぉいっ!これからわが妻たちと…、
れろれろちゅばちゅば。やばっ、ダクの舌遣いが超やばっ。耐えろ!マイドラ…。チーン。
瞬殺でした。泣
お前、早撃ちかよっ。とマイドラゴンにツッコみたくなるぐらい、あっさりとホワイトブレスを吐き出して…、いや、吸い取られてしまいましたとさ。大泣
ホワイトブレスを口いっぱいに頬張ったダクは、頬をパンパンにしてふわふわと浮遊して行き、残りの精霊たち全員に口移しでホワイトブレスを分け与えた。そしていつも通り、全員揃ってゴクリとやって、緑、橙、赤、藍、青、紫、黄、白、黒の9色に輝いたのだった。
その後、俺は口から魂のような白いモヤモヤを半分出しつつ、野天風呂でしっかり、第四形態の並乳16個に、先行投資をさせられたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/6
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№138 無人島探検
リシッチャ島のすぐ西にある小さな無人島。南部公爵様のご領地から、俺に譲られる予定の島だ。譲られる条件は、この無人島の開発だ。
南府から南部湾を突っ切って、島の北側、すなわち南部湾に面する側に上陸した。この島の南部湾に面する北側は、非常にきれいな白い砂浜だ。珊瑚が風化された白い砂粒は、星の形をしている。このため、砂浜を歩くと、キュッキュと心地よい音がする。
このきれいな白い星型の砂粒は、小さな瓶に詰めて、『星の砂』として売り出したら、そこそこ売れそうな気がする。笑
島の北側の白い砂浜から振り返って島を見ると、まず、砂浜の南端から南国の森林が生い茂り、森林が島全体を覆っている。
これだけの森林が育つのだから、水源はしっかりしているはずだ。
この島を上手く開発できるかは、水源の有無に掛かっているだろう。水源がなければ、人が住むには適さない。人が住めなければ、島で産業を起こせないし、開発も立ち行かない。
砂浜には、ツリ、クレ、フィアが建てた野営所がある。
ツリは屋根を葺く植物の葉や、ベッドの干し草となる牧草の確保に、クレは土壌をせり上げて野営地を取り巻く塀や、野営所の壁の造形に、フィアは窯での干し草の乾燥にと、大いに働いた。
一段落ついたところで、ツリ、クレ、ファイアに、お気に入りのウイスキー、アードベクをひと口含んでのからのべろちゅーで魔力を補給した。
体液には魔力が、アルコールには魔力増幅効果があるのだ。
アードベクで増幅された唾液中の魔力を、精霊たちは好んで呑み、ほろ酔いとなっている。笑
しばらくして、島の水源を調べに行っていたワラが帰って来た。
ワラによると、この無人島は、南部群島の他の島と同じくサンゴ礁のため、地質は石灰ベースで、そこに大量の雨水が浸み込んで、ろ過され、豊富な地下水脈となっている。とのことだ。
中央の山に降り注いだ雨水は、山の石灰質でろ過され、山の麓の何ヶ所かに湧き水として湧出しており、そのまま川となって島のあちこちから海に注いでいるのだそうだ。
「ワラ、ご苦労さん。」
『お腹すいたー。』ぶっちゅー。もちろんアードベクもひと口含んでいる。
続いて島全体を覆う南国樹林を偵察して来た、チル、ウィン、メタ、ソル、ダクが帰って来た。
『森には獣が結構いるー。』
『でも大きいのはいなーい。』
『魔獣もいなーい。』
『小さい獣ばっかりー。』
『山にはペガサスがいるー。』
「え?ペガサスならナイトの仲間か?」俺はナイトに聞いてみた。
『多分そう。僕の仲間。リシッチャ島は人が多くて、ちょくちょく双子山に登って来る人間がいるから、騒がしいんだよ。だから、双子山からこっちに来てる仲間もいる。少数だけどね。』ナイトの仲間か。
双子山とは、リシッチャ島の風の谷を構成しているふたつの山だ。風の谷の奥地は、ナイトの仲間の聖獣ペガサスが棲んでいる。
「皆、偵察ご苦労さん。ご褒美だぞー。」
『『『『『やったー。』』』』』偵察を終えた、チル、ウィン、メタ、ソル、ダクにも魔力補給をした。
あとはクロチュデルスゥデ号が帰って来るのを待つか。いい入り江が見付かってれば、クレに船着場を造ってもらおう。それまでは、浜でのんびりしてるかな。
浜にタープを張り、日影を作って、皆で寝転ぶ。
季節は晩春で、しかも南部の中でも南に位置する南部群島だ。海水浴には早いが、浜でのんびり寝転ぶにはいい季節だ。ほんのり暑いくらいだ。
あー、こんなことならわが妻たちに水着を…、俺の渾身のデザインの水着を用意しておくんだった。
「お前さん、こりゃのんびりできていいじゃないか。」
「だろー。ここは浜の宿屋の専用ビーチにしてさ、混まないビーチで贅沢に時を過ごしてもらおうかと思うんだよね。」
「うむ。わが君、これは流行りそうだな。」
そんな感じで、昼餉を摂りつつまったりしていると、昼下がりになってクロチュデルスゥデ号が帰って来た。俺は、わが妻たちを北の浜に残し、上陸に使ったボートでクロチュデルスゥデ号へと戻った。浜を見るとわが妻たちが優雅に手を振っている。笑
「ラモ。いい入り江は見付かったか?」
「ああ。あったよ。リシッチャ島側の東岸にいい入り江があってね、ここは船着場さえ拵えればすぐ使えるだろうね。
それと外海に面した南岸にも、港にできそうな入り江があったんだけど、こっちの入り江といっても、あまり陸に入り込んでいないんだ。外海の荒い波が直接打ち寄せるから、防波堤を造らなければならないよ。それとここよりは狭いけどいい感じの浜もあった。
西側にはマングローブが広がってて、ざっと見た感じでは、船を付けられそうな所はなかったね。」
マングローブは、遠浅の海にヒルギの仲間の樹木が生えた南国の海沿いの特徴的な樹林だ。ヒルギの仲間は海水に強く、根は海底の砂を掴むようにして、半分砂地から出ている。満潮のときは海に浸かり、干潮のときは海面から裸出する。気根と言う特殊な根を海面から出して呼吸をしているのだ。
根のまわりは小魚やエビの棲家になるので、天然のエビの養殖場にもなる優れモノだ。
「そうか!マングローブか。それなら天然に近い形でエビの養殖もできそうじゃないか。」
「へぇ、ゲオルクはそんなことまで知ってるんだ。大したもんじゃないか。」ラモに感心されてしまった。笑
マングローブ林からは、大量の葉が海水に落ちるが、暖かい海水温のため、すぐに分解が進み、これによって海水中のプランクトンが増えるのだ。当然、プランクトンを餌とするエビや小魚も増える訳だ。しかも、入り組んだ根の隙間には、天敵の大型魚は入って来られないから、エビや小魚にとっては、絶好の隠れ家ともなる訳だ。
クロチュデルスゥデ号で、東の入り江に行った。
「クレ、ここから島に向かって真っすぐ、5m幅で海底をせり上げてな、船着場を造ってくれ。」
『はーい。』
イメージ通りの船着場が出来上がると、隣でラモが目を見開いて絶句していた。笑
早速、そこにクロチュデルスゥデ号を船着場に接岸させ、アクアビット号と曳馬を降ろした。ラモ船長とクルーたちはここに残って、諸々の埠頭設備を設営するそうだ。
この東の入り江に造る港は、リシッチャ島に面しているから、この島の玄関口にしよう。将来的にはラクシーサ港との航路を設置するのだ。
俺は、東の入り江の整備をラモたちクロチュデルスゥデ号のクルーに任せて、ここ東の入り江から、先程まで上陸していた北の浜を目指し、樹林の中に道路を切り開いて行くことにした。島の縁に沿って周回道路を通すのだ。
精霊たちがいれば、大規模な土木工事も容易い。道路予定地の樹々を、フィアに燃やしたり、ウィンの竜巻でなぎ倒したり、メタの落雷で粉砕したり、ダクに枯らさせたりしてぐんぐん進む。
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『ソルがやるー。』と言って、エリアヒールをバンバン使っていた。普通にヒールでいいのに。
それまで、『ソルの出番はー?』と言ってぶー垂れていたので、ソルは出番に飢えていたようだ。笑
北の浜でわが妻たちと合流したときは、そろそろ夕方と言う刻限だった。今日はこの辺までにしておこう。
わが妻たちに夕餉の準備を任せて、俺はナイトで東の入り江に飛んだ。
「ラモ、こっちは東の入り江から北の浜まで周回道路を開通させた。そっちは?」
「係留のための施設やらなんやらを造ってるよ。」
「今夜はどうする?」
「僕たちはここに停泊したまま、クロチュデルスゥデ号で寝泊まりするよ。」
「そうか、じゃぁまた明日な。」
「うん。ご婦人方によろしく。」
再び北の浜に戻り、でーんと大きな野天風呂を拵えて、ワラに水源から真水を引いてもらった。次にフィアに温めてもらっていい湯加減にした。そして、精霊たちとわが妻たちと一緒に、皆で野天風呂に入った。至福だ。
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偵察に行ったクレたちの報告では、この島の樹林に魔獣や大きな獣はいないそうなので、今夜はわが妻たちとむふふするのだ。笑
そんな不謹慎なことを考えながら湯に浸かっていると、辺りは徐々に暮れて来て、空には星がポツンポツンと見え出して来た。こりゃ星空がきれいかもな。山から見上げる星空なんてのもいいだろうな…。
そうだ!この島の山はさほど高くないから、山頂一帯で星を見ながら宿泊ってのもありだぞ。山の宿屋と一緒にキャンプ形式の離れを造って、グランピングとかってのもありじゃね?
よし、夕餉の後に、ナイトで山頂に行ってみよう。
夕餉は、北の浜の前の遠浅の海で漁った、地魚、貝類、エビ、カニをぶち込んだシーフードたっぷりの潮汁だ。無駄な味付けはせずとも、様々な魚介から出る出汁だけで十分に旨かった。
夜、浜からの満天の星空が美しかったので、ナイトに乗っけてもらって、山頂までひとっ飛び。
無人島の山は大して高くないので、山頂も樹々が生い茂っていて、暗い中で着陸場所を探すのには苦労しそうだ。明かりを確保できないかな?そう思ったら…。
ソルが発光の精霊魔法を使って、一面を照らしてくれたので、あっさり着陸場所を見付けて着地した。
「ソルは発光もできたのな。」
『うん。光の精霊だもん。』
「知らなかったよ。」盲点だった。
…待てよ、と言うことは…。
「ひょっとしてダクは明るい所を暗くしたりできるのか?」
『吸光は、野外とか、開けた所は無理。光を吸ってもまわりから光がいくらでも回り込んできちゃう。でも狭い所ならなら暗くできるよ。』
「まじか!拠点の強襲とかに使えるな。」
『うーん、でもそれだとこっちも見えなくなるから、エリアブラインドの方がいいかな。』
「あ、それもそうか。」ブラインドは敵の視界を奪う状態異常の精霊魔法だ
さて、山頂からの星空も、予想通り格別にきれいだった。
山頂付近の、東、南、西の斜面の樹林を切り開いて、草を生やして草原にして、グランピング場だな。もちろん普通に泊まれる宿屋も建てるけどな。山頂へのアクセスは、取り敢えず東の入り江から1本道でいいか。
「そう言えばさ、昼の下見のときにペガサスがいるって言ってなかったっけ?」
『今、いなーい。』『いないねー。』
「どうしたんだろ?」
『さっき、双子山に帰るって言ってたよ。』俺の疑問にナイトが答えた。
「え?ナイト、いつの間に仲間と会ったんだ?」
『んー、会ってはないけど、念話で話した。』
「俺たちが来たせいで追い出しちゃった感じか?悪いことしたなぁ。別にいてもらっても全然構わないんだけどなぁ。」
『じゃぁ、そう言っとく。』
「てかさぁ、この山にいてくれてさ、たまに姿を見せてくれると、宿泊客が喜ぶと思うんだよな。」
『でも宿泊客に絡まれるのは、嫌だと思うよ。』
「もちろん絡ませないよ。宿泊客には『そっと見て。じゃないと来てくれなくなる。』って、言っとくさ。」
『それならいいかも。』
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『『『『『『『『『ゲオルクー、お風呂ー。』』』』』』』』』と言って来た。
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『汗掻いたー。』いやいや、汗は掻いてないだろ。
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これが罠とも知らず、素直に野天風呂に向かう俺。
『ゲオルクー、ぱふぱふする?』湯船に浸かろうとしたところを、第五形態のツリが聞いて来た。プリンとメロンボールを顕わにして。
「おうっ!」迷わず応諾。
その場で立ったままツリのメロンボールに挟まれて、「ツリは緑色だからほんとにメロンみたいだなー。」などと油断し切っていたら、ぱくり。へ?
下を見るとマイドラゴンが、膝立ちをしたダクに捕食されていた。
うぉいっ!これからわが妻たちと…、
れろれろちゅばちゅば。やばっ、ダクの舌遣いが超やばっ。耐えろ!マイドラ…。チーン。
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その後、俺は口から魂のような白いモヤモヤを半分出しつつ、野天風呂でしっかり、第四形態の並乳16個に、先行投資をさせられたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/6
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
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ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
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