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精霊の加護134 妹の誕生
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精霊の加護
Zu-Y
№134 妹の誕生
昨日、一番寄子になりに駆け付けてくれたミュンヒェー辺境伯のハイジを、村役場兼領主公邸に泊めた。今は領主公邸だが、元は村長公邸である。
俺がラスプ村の領主になったため、村長職は不要となり、元村長は代官になった。東府から来ている役人の意見もあって、公私混同が見られた元村長=代官を、村役場兼公邸から追い出していたので、流石に俺が公邸に入る気にはなれなかった。それに実家があるから不自由しないし。
しかし、昨夜は賓客のハイジ一行を村役場兼公邸に泊めたので、俺たちもラスプ村の代表として、初めて村役場兼公邸に泊まった。
奔放なハイジは、情夫3人を伴ってラスプ村に来てるだけあって、まったく遠慮がない。昨夜は、情夫3人と盛り上がったハイジが、何をも憚ることなく艶めかしい声を大音量で上げていたので、地元で負けてられるか!と対抗心をむき出しにした俺は、わが妻たちを散々に攻め立てた。当然、わが妻たちの喘ぎ声も大きくなった。
期せずして,昨夜はハイジとわが妻たちのよがり声合戦になったのだった。笑
「ゲオルク様、絶倫でござりまするな。」
朝餉の席で、ハイジが遠慮なくぶっ込んで来た。苦笑
「いきなり何を言うやら。」と俺はお茶を濁したが…。
「されば、昨夜のことでござりまするよ。わらわが情夫どもをひと通り相手にした後も、ゲオルク様は延々と続けておられましたな。あれでわらわも再燃してしもうたのです。」
「そっちは3人、こっちは7人だからな。」
「なんと、ひと晩で奥方全員と…。」
「俺はわが妻たちを平等に愛しているのだ。」
「ゲオルク様、もしやと思いますが、バフの術や回復の術を使うておらぬでしょうな?」
「ああ。使ってるよ。」
「なりませぬ。すぐにおやめなされ。お命を縮めまするぞ。」
「え?」
ここでハイジの目が険しくなった。
「自然に回復するのであれば構いませぬ。されど、バフの術や回復の術を使うているのであれば話は別でござりまする。お体に無理をさせておりまするぞ。
わらわの愛読書『閨中心得』にも戒むるべきことの章に『術を用いて繰り返しまぐわうは、命を縮むる愚かな所業なり。』と書かれてござりますれば。」
「閨中心得?何それ?」
「閨の秘術について書かれた本にござりまする。体位の四十八手なども書かれておりますれば、わらわの愛読書でござりまする。ゲオルク様が御所望とあらば、写本して献上しましょう程に。」
「いやいや。」俺が断り掛けたところに、
「辺境伯様、頂戴致します。」リーゼが被せて来て、わが妻たちが頷いている。「え?マジで?」四十八手に食い付いたか?
「旦那様のお体のことですもの。見過ごせませんわ。」ああ、俺の体を心配してくれてたのか。それなのに俺は何と言うことを考えてしまったんだ。汗
「ふむ、よき奥方たちだの。」ハイジが感心している。
「なぁ、ハイジ。自然回復なら全員としても平気なんだよな。」
これにはわが妻たち全員からジト目が飛んで来た。苦笑
そんな中でハイジは、
「流石ゲオルク様。天晴な物言い。」と、笑い飛ばしてたけれどもな。
朝餉を終え、ハイジたち一行は、国境の町ミュンヒェーへと帰って行った。
その後、ハイジのアドバイスを受けて、夜伽はふたりまでとなった。ドーラとトーラは、発情期のみの生本番だけでいいと言うことになり、その他の日を、リーゼ、ジュヌ、カルメン、ベス、ビーチェからふたりずつで回した。しかし、ドーラもトーラも発情期のみでは月イチで寂しいので、週1くらいで声を掛けた。だから、週2回は3人になったのだ。
10日後に、ハイジから、愛読書の「閨中心得」の写本が届き、俺とわが妻たちの間で、四十八手がブームとなったのは内緒だ。笑
それと、「閨中心得」の記述により、エッチを休む日も導入した。ハイジはこのことには触れていなかったから、多分この部分は、無視してるんじゃないかと思う。笑
さて、真面目な方では、ハイジを見送ったその日から、ラスプ村の政務に励んだ。と言っても、政務の詳細は手馴れた代官と、有能な東府からの役人ふたりに丸投げなので、俺は、キノコ畑=キノコを育てる樹木林を、毎日アクアビット号で巡回して、ツリにキノコの促成栽培を頼んでいるのだ。
ツリが促成栽培を掛けると、いつも収穫できる日常的なキノコ類はもとより、旬のある高級キノコ類もよく成長する。旬がある高級キノコは、旬とは別の時期に出荷すると、さらに価格が跳ね上がる。
俺は、高級キノコについては、東府を飛ばしてすべて王都へ出荷するように指示した。
「ご領主様、何も王都まで出荷しなくとも、東府で十分高く売れるではありませんか。それに東府から王都までの輸送コストが余分に掛かりますよ。」代官の言であるが、まったく何を言っているのやら。
「代官、何を言う。確かに輸送コストは余分に掛かるが、その分、王都では東府より高く売れるのだぞ。今に見ていろ。王都から買い付け人が来るようになるわ。さすれば輸送コストは王都の商人持ちよ。」
「たかがキノコを、王都から何日も掛けてわざわざ買い付けになど来るとは思えませぬが…。」分かってねぇな、代官は。
「まあ、見てろって。」
1ヶ月もすると俺の目論見通りになった。王都から仲買人が殺到したのだ。
ここで困ったことがひとつ。予想以上に仲買人がラスプ村を訪れたので、宿泊施設が足りなくなった。このままでは宿屋に泊まれない仲買人たちは、自前の馬車で泊まることになるので、俺は精霊たちを総動員して簡易宿泊所を建てた。
ぶっちゃけ、野営の準備と同じなので、場所さえあれば大したことはない。
仲買人たちは、王都から片道およそ2週間を掛けてラスプ村に高級キノコを仕入に来たのだ。手ぶらでは帰れない。
そこで俺は、高級キノコの特急品はセリを行うことにしたのだが、値段が鰻上りになって、予想をはるかに上回った。
折角ラスプ村まで来てくれた仲買人たちが不利益を被らないように、高級キノコの並品質は均等に卸した。そして仲買人たちの仕入希望量になるべく沿うように、ツリに頑張ってもらった。ツリがいれば無尽蔵に高級キノコを促成栽培できる。
もちろん大量に生産し過ぎで値崩れを起こさないように、仲買人たちの購入希望量の8割程度で売り切れと言ったがな。笑
そんな中で、袖の下=賄賂とともに、専売権の獲得を持ち掛けて来た大手仲買人が数名いたが、俺はきっぱりと断った。俺が断ると、大手仲買人たちは代官や、東府から派遣されてる役人ふたりに袖の下を持って行った。流石に相談役の神父さんには行ってなかったがな。笑
東府の役人ふたりは清廉潔白だから心配していなかったが、ちょっと心配していた俗物の代官ですら、流石にそこまで腐っていなかった。
「ご領主様、仲買人のひとりがですね、袖の下で『高級キノコを専売に。』と言って来とるのです。断っておりますがしつこくて困ります。」
「俺がきっぱり断ったから、融通の利きそうな代官を訪ねて行ったのだろう。」
「おのれ、賄賂が効くと思われたのか!わしも舐められたものよな。」代官は憤慨している。
「まあまあ、代官。その仲買人は大手のあそこあたりよな。」
「そうなのです。大手ゆえ、無下にもできませぬ。」
「されば、別の大手が私たちにも話を持って来ました。本当にけしからん。」東府からの役人ふたりにも、袖の下の話が来ていた。
「わしには来なんだの。ふぉっふぉっふぉ。」神父さんが愉快そうに笑った。
「それならさ、3人ともその話を受けちゃえよ。」
「「「え?」」」代官と役人ふたりがハモった。笑
ちなみに神父さんだけは、済ましていたがな。
「ゲオルク卿、見損ないましたぞ!」「左様、私は今日でお暇を頂きます!」東府からの役人ふたりが激高した。
「待て待て待て待て。早まるなよ。俺の言葉が足りなかったな。すまん。」
「「「?」」」「ふぉっふぉっふぉ。」神父さんだけが笑っている。
「それぞれが袖の下の話を受けてな、『ゲオルクの目があるゆえ確約はできぬが、ご期待に添うように精一杯頑張ろう。』と満面の笑みで言うのだ。」
「それは…。」「まさか…。」「なるほど!」
「それでな、役人は『代官に別の業者が来てるゆえ、さらに工作資金を出せぬか?』とな。それから代官は『役人ふたりに別の業者が来てるゆえ、さらに工作資金を出せぬか?』とな。互いにライバルの存在をちらつかせて煽るのだ。賄賂の額を可能な限り吊り上げよ。」
俺に意図を察した3人が大きく頷いた。
「大手の威光をかざして、左様な工作をする輩にはひと泡吹かせねばならぬ。絞れるだけ絞り取ってな、『ゲオルク様に目を付けられて、今回は専売にはできなかったが、これだけ余分な融通枠を確保したぞ。』と自慢気に言って、高級キノコを回してやれ。ただし、傷物などのアウトレット品でいい。そこそこな量をな。
そして『次回こそは上手くやるゆえ、山吹色の手土産を忘れるなよ。』と囁くのだ。
巻き上げた賄賂は、商人たちの宿を建てる資金にする。商人たちに還元するのだから、問題はあるまい。」
「ゲオルク、そなた、いつからそんなに悪どくなったぞ。」元村長の代官が呆れている。それにここ最近のご領主様呼びが、昔のゲオルク呼びに戻ってるし、言葉遣いも。地が出たってか?笑
一方で、東府からの役人ふたりは「「妙手。」」とハモった。そして、激高して暇をくれと言った役人が、
「ゲオルク卿、早まったことを申し上げまして、誠に申し訳ありませんでした。」と、詫びて来たので、
「いやいや、そなたの清廉さの現れゆえ、咎める気は微塵もない。その心根で今後も政務に励んでくれ。」と言っておいた。
「ふぉっふぉっふぉ。」相変わらず神父さんだけが笑っていた。
ラスプ村がキノコ卸売市場となったために起きたこれら一連の騒動では、大手の威をちらつかせた仲買人から搾り取るだけ絞り取って、アウトレット品を掴ませて終結した。
これ以降、キノコ市場の開催は月に1度、20日とその前後1日、すなわち19~21日となり、ラスプ村キノコ市として定着して行くことになる。
ちなみに、今回カモとなった大手の仲買人どもは、それから専売権について何も言って来なくなった。十分懲りたらしい。笑
なお、ここで搾り取った金は、仲買人たちの宿泊施設の建設費に充てたから、大手の連中が自分たちの宿泊所を自費で建てたようなものである。笑
キノコ市の開催中に、実家では臨月だった母さんが妹を産んでいた。
キノコ市が終わって実家に帰ると、俺は、妹にもうメロメロになってしまった。ぶっちゃけマジかわいい。超美形揃いのわが妻たちをも遥かに凌ぐ、抜群のかわいさである。(兄馬鹿)
「「「「「「「きゃー、かわいい!」」」」」」」わが妻たちも、妹のかわいさに身悶えしながら、順に抱いている。もちろんドーラやトーラもである。異種族なのに。
しかし、精霊たちは興味を示さない。あー、わが妹は精霊を見ることができないのな。残念。しかしまあ父さんと母さんも見られないし、俺に続いてアルも精霊を見られるのが、実は稀有な例だった訳である。
妹は、コンスタンツェと名付けられたので、家族ではコンツェと呼ぶことにした。すでにわが一家はコンツェを中心に回っている。
実は、俺はアルを心配していた。アルはようやく4歳。つまり、まだまだ甘えたい盛りである。特に母さんには。だから、母さんをコンツェに取られたと思って拗ねるのではないかと心配してたのだ。
しかしこれはまったくの杞憂だった。
コンツェに興味を示さない精霊たちではあるが、精霊と話せるアルには大いに興味を示す。当然、精霊たちはアルしか構わない。ゆえに、アルは精霊たちにべったりとなった。
「ツリー、おっぱいー。」『はいはい。』
「クレも、おっぱいー。」『うふふ。』
…。
と、こんな調子で精霊たち全員のおっぱいを、取っ換え引っ換えまさぐっている。おそらくおっぱいに行くのは、コンスタンツェに母さんを独占されているから、その反動だろう。幼子にとっては、母親=おっぱい=食事、なのだからな。
しかし!である。
『アルは、おっぱい好きねー。』
「んー?好きだよー。」
『ゲオルクと、一緒ねー。』
「えー、ゲオ兄もおっぱい好きなの?」
『大好きよー。』
「ゲオ兄、赤ちゃんみたーい。きゃはは。」
アルよ、それだとお前、自分が赤ちゃんだと言ってることになるのだぞ。
それにしても精霊たちよ、アルに余計なことを吹き込まんでくれ。確かに大好きだけれども…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/10/30
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№134 妹の誕生
昨日、一番寄子になりに駆け付けてくれたミュンヒェー辺境伯のハイジを、村役場兼領主公邸に泊めた。今は領主公邸だが、元は村長公邸である。
俺がラスプ村の領主になったため、村長職は不要となり、元村長は代官になった。東府から来ている役人の意見もあって、公私混同が見られた元村長=代官を、村役場兼公邸から追い出していたので、流石に俺が公邸に入る気にはなれなかった。それに実家があるから不自由しないし。
しかし、昨夜は賓客のハイジ一行を村役場兼公邸に泊めたので、俺たちもラスプ村の代表として、初めて村役場兼公邸に泊まった。
奔放なハイジは、情夫3人を伴ってラスプ村に来てるだけあって、まったく遠慮がない。昨夜は、情夫3人と盛り上がったハイジが、何をも憚ることなく艶めかしい声を大音量で上げていたので、地元で負けてられるか!と対抗心をむき出しにした俺は、わが妻たちを散々に攻め立てた。当然、わが妻たちの喘ぎ声も大きくなった。
期せずして,昨夜はハイジとわが妻たちのよがり声合戦になったのだった。笑
「ゲオルク様、絶倫でござりまするな。」
朝餉の席で、ハイジが遠慮なくぶっ込んで来た。苦笑
「いきなり何を言うやら。」と俺はお茶を濁したが…。
「されば、昨夜のことでござりまするよ。わらわが情夫どもをひと通り相手にした後も、ゲオルク様は延々と続けておられましたな。あれでわらわも再燃してしもうたのです。」
「そっちは3人、こっちは7人だからな。」
「なんと、ひと晩で奥方全員と…。」
「俺はわが妻たちを平等に愛しているのだ。」
「ゲオルク様、もしやと思いますが、バフの術や回復の術を使うておらぬでしょうな?」
「ああ。使ってるよ。」
「なりませぬ。すぐにおやめなされ。お命を縮めまするぞ。」
「え?」
ここでハイジの目が険しくなった。
「自然に回復するのであれば構いませぬ。されど、バフの術や回復の術を使うているのであれば話は別でござりまする。お体に無理をさせておりまするぞ。
わらわの愛読書『閨中心得』にも戒むるべきことの章に『術を用いて繰り返しまぐわうは、命を縮むる愚かな所業なり。』と書かれてござりますれば。」
「閨中心得?何それ?」
「閨の秘術について書かれた本にござりまする。体位の四十八手なども書かれておりますれば、わらわの愛読書でござりまする。ゲオルク様が御所望とあらば、写本して献上しましょう程に。」
「いやいや。」俺が断り掛けたところに、
「辺境伯様、頂戴致します。」リーゼが被せて来て、わが妻たちが頷いている。「え?マジで?」四十八手に食い付いたか?
「旦那様のお体のことですもの。見過ごせませんわ。」ああ、俺の体を心配してくれてたのか。それなのに俺は何と言うことを考えてしまったんだ。汗
「ふむ、よき奥方たちだの。」ハイジが感心している。
「なぁ、ハイジ。自然回復なら全員としても平気なんだよな。」
これにはわが妻たち全員からジト目が飛んで来た。苦笑
そんな中でハイジは、
「流石ゲオルク様。天晴な物言い。」と、笑い飛ばしてたけれどもな。
朝餉を終え、ハイジたち一行は、国境の町ミュンヒェーへと帰って行った。
その後、ハイジのアドバイスを受けて、夜伽はふたりまでとなった。ドーラとトーラは、発情期のみの生本番だけでいいと言うことになり、その他の日を、リーゼ、ジュヌ、カルメン、ベス、ビーチェからふたりずつで回した。しかし、ドーラもトーラも発情期のみでは月イチで寂しいので、週1くらいで声を掛けた。だから、週2回は3人になったのだ。
10日後に、ハイジから、愛読書の「閨中心得」の写本が届き、俺とわが妻たちの間で、四十八手がブームとなったのは内緒だ。笑
それと、「閨中心得」の記述により、エッチを休む日も導入した。ハイジはこのことには触れていなかったから、多分この部分は、無視してるんじゃないかと思う。笑
さて、真面目な方では、ハイジを見送ったその日から、ラスプ村の政務に励んだ。と言っても、政務の詳細は手馴れた代官と、有能な東府からの役人ふたりに丸投げなので、俺は、キノコ畑=キノコを育てる樹木林を、毎日アクアビット号で巡回して、ツリにキノコの促成栽培を頼んでいるのだ。
ツリが促成栽培を掛けると、いつも収穫できる日常的なキノコ類はもとより、旬のある高級キノコ類もよく成長する。旬がある高級キノコは、旬とは別の時期に出荷すると、さらに価格が跳ね上がる。
俺は、高級キノコについては、東府を飛ばしてすべて王都へ出荷するように指示した。
「ご領主様、何も王都まで出荷しなくとも、東府で十分高く売れるではありませんか。それに東府から王都までの輸送コストが余分に掛かりますよ。」代官の言であるが、まったく何を言っているのやら。
「代官、何を言う。確かに輸送コストは余分に掛かるが、その分、王都では東府より高く売れるのだぞ。今に見ていろ。王都から買い付け人が来るようになるわ。さすれば輸送コストは王都の商人持ちよ。」
「たかがキノコを、王都から何日も掛けてわざわざ買い付けになど来るとは思えませぬが…。」分かってねぇな、代官は。
「まあ、見てろって。」
1ヶ月もすると俺の目論見通りになった。王都から仲買人が殺到したのだ。
ここで困ったことがひとつ。予想以上に仲買人がラスプ村を訪れたので、宿泊施設が足りなくなった。このままでは宿屋に泊まれない仲買人たちは、自前の馬車で泊まることになるので、俺は精霊たちを総動員して簡易宿泊所を建てた。
ぶっちゃけ、野営の準備と同じなので、場所さえあれば大したことはない。
仲買人たちは、王都から片道およそ2週間を掛けてラスプ村に高級キノコを仕入に来たのだ。手ぶらでは帰れない。
そこで俺は、高級キノコの特急品はセリを行うことにしたのだが、値段が鰻上りになって、予想をはるかに上回った。
折角ラスプ村まで来てくれた仲買人たちが不利益を被らないように、高級キノコの並品質は均等に卸した。そして仲買人たちの仕入希望量になるべく沿うように、ツリに頑張ってもらった。ツリがいれば無尽蔵に高級キノコを促成栽培できる。
もちろん大量に生産し過ぎで値崩れを起こさないように、仲買人たちの購入希望量の8割程度で売り切れと言ったがな。笑
そんな中で、袖の下=賄賂とともに、専売権の獲得を持ち掛けて来た大手仲買人が数名いたが、俺はきっぱりと断った。俺が断ると、大手仲買人たちは代官や、東府から派遣されてる役人ふたりに袖の下を持って行った。流石に相談役の神父さんには行ってなかったがな。笑
東府の役人ふたりは清廉潔白だから心配していなかったが、ちょっと心配していた俗物の代官ですら、流石にそこまで腐っていなかった。
「ご領主様、仲買人のひとりがですね、袖の下で『高級キノコを専売に。』と言って来とるのです。断っておりますがしつこくて困ります。」
「俺がきっぱり断ったから、融通の利きそうな代官を訪ねて行ったのだろう。」
「おのれ、賄賂が効くと思われたのか!わしも舐められたものよな。」代官は憤慨している。
「まあまあ、代官。その仲買人は大手のあそこあたりよな。」
「そうなのです。大手ゆえ、無下にもできませぬ。」
「されば、別の大手が私たちにも話を持って来ました。本当にけしからん。」東府からの役人ふたりにも、袖の下の話が来ていた。
「わしには来なんだの。ふぉっふぉっふぉ。」神父さんが愉快そうに笑った。
「それならさ、3人ともその話を受けちゃえよ。」
「「「え?」」」代官と役人ふたりがハモった。笑
ちなみに神父さんだけは、済ましていたがな。
「ゲオルク卿、見損ないましたぞ!」「左様、私は今日でお暇を頂きます!」東府からの役人ふたりが激高した。
「待て待て待て待て。早まるなよ。俺の言葉が足りなかったな。すまん。」
「「「?」」」「ふぉっふぉっふぉ。」神父さんだけが笑っている。
「それぞれが袖の下の話を受けてな、『ゲオルクの目があるゆえ確約はできぬが、ご期待に添うように精一杯頑張ろう。』と満面の笑みで言うのだ。」
「それは…。」「まさか…。」「なるほど!」
「それでな、役人は『代官に別の業者が来てるゆえ、さらに工作資金を出せぬか?』とな。それから代官は『役人ふたりに別の業者が来てるゆえ、さらに工作資金を出せぬか?』とな。互いにライバルの存在をちらつかせて煽るのだ。賄賂の額を可能な限り吊り上げよ。」
俺に意図を察した3人が大きく頷いた。
「大手の威光をかざして、左様な工作をする輩にはひと泡吹かせねばならぬ。絞れるだけ絞り取ってな、『ゲオルク様に目を付けられて、今回は専売にはできなかったが、これだけ余分な融通枠を確保したぞ。』と自慢気に言って、高級キノコを回してやれ。ただし、傷物などのアウトレット品でいい。そこそこな量をな。
そして『次回こそは上手くやるゆえ、山吹色の手土産を忘れるなよ。』と囁くのだ。
巻き上げた賄賂は、商人たちの宿を建てる資金にする。商人たちに還元するのだから、問題はあるまい。」
「ゲオルク、そなた、いつからそんなに悪どくなったぞ。」元村長の代官が呆れている。それにここ最近のご領主様呼びが、昔のゲオルク呼びに戻ってるし、言葉遣いも。地が出たってか?笑
一方で、東府からの役人ふたりは「「妙手。」」とハモった。そして、激高して暇をくれと言った役人が、
「ゲオルク卿、早まったことを申し上げまして、誠に申し訳ありませんでした。」と、詫びて来たので、
「いやいや、そなたの清廉さの現れゆえ、咎める気は微塵もない。その心根で今後も政務に励んでくれ。」と言っておいた。
「ふぉっふぉっふぉ。」相変わらず神父さんだけが笑っていた。
ラスプ村がキノコ卸売市場となったために起きたこれら一連の騒動では、大手の威をちらつかせた仲買人から搾り取るだけ絞り取って、アウトレット品を掴ませて終結した。
これ以降、キノコ市場の開催は月に1度、20日とその前後1日、すなわち19~21日となり、ラスプ村キノコ市として定着して行くことになる。
ちなみに、今回カモとなった大手の仲買人どもは、それから専売権について何も言って来なくなった。十分懲りたらしい。笑
なお、ここで搾り取った金は、仲買人たちの宿泊施設の建設費に充てたから、大手の連中が自分たちの宿泊所を自費で建てたようなものである。笑
キノコ市の開催中に、実家では臨月だった母さんが妹を産んでいた。
キノコ市が終わって実家に帰ると、俺は、妹にもうメロメロになってしまった。ぶっちゃけマジかわいい。超美形揃いのわが妻たちをも遥かに凌ぐ、抜群のかわいさである。(兄馬鹿)
「「「「「「「きゃー、かわいい!」」」」」」」わが妻たちも、妹のかわいさに身悶えしながら、順に抱いている。もちろんドーラやトーラもである。異種族なのに。
しかし、精霊たちは興味を示さない。あー、わが妹は精霊を見ることができないのな。残念。しかしまあ父さんと母さんも見られないし、俺に続いてアルも精霊を見られるのが、実は稀有な例だった訳である。
妹は、コンスタンツェと名付けられたので、家族ではコンツェと呼ぶことにした。すでにわが一家はコンツェを中心に回っている。
実は、俺はアルを心配していた。アルはようやく4歳。つまり、まだまだ甘えたい盛りである。特に母さんには。だから、母さんをコンツェに取られたと思って拗ねるのではないかと心配してたのだ。
しかしこれはまったくの杞憂だった。
コンツェに興味を示さない精霊たちではあるが、精霊と話せるアルには大いに興味を示す。当然、精霊たちはアルしか構わない。ゆえに、アルは精霊たちにべったりとなった。
「ツリー、おっぱいー。」『はいはい。』
「クレも、おっぱいー。」『うふふ。』
…。
と、こんな調子で精霊たち全員のおっぱいを、取っ換え引っ換えまさぐっている。おそらくおっぱいに行くのは、コンスタンツェに母さんを独占されているから、その反動だろう。幼子にとっては、母親=おっぱい=食事、なのだからな。
しかし!である。
『アルは、おっぱい好きねー。』
「んー?好きだよー。」
『ゲオルクと、一緒ねー。』
「えー、ゲオ兄もおっぱい好きなの?」
『大好きよー。』
「ゲオ兄、赤ちゃんみたーい。きゃはは。」
アルよ、それだとお前、自分が赤ちゃんだと言ってることになるのだぞ。
それにしても精霊たちよ、アルに余計なことを吹き込まんでくれ。確かに大好きだけれども…。
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設定を更新しました。R4/10/30
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
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誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
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現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
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異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
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蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
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【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
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Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
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これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
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