精霊の加護

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精霊の加護115 ダクの第二形態

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精霊の加護
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№115 ダクの第二形態

 翌日から3日間、俺は領主のエウーキ伯爵とともに、エウーキ周辺の荒地を巡り、精霊魔法を駆使して、荒地の開墾を行った。

 フィアが雑草を焼き払い、クレが土をモゴモゴと耕し、ワラが地下水脈から水を引く。大きな岩はメタの雷の直撃で粉砕し、小石はウィンの旋風で吹き飛ばす。チルが一旦土を凍らせて中の害虫を殺し、ツリがダイズを急速に育てて収穫を繰り返した。
 もちろんこのダイズはエウーキの備蓄食料となるが、それよりも、ダイズなどのマメを育てると、土の中の肥料成分が増えるのだ。だから、その後に植える作物がよく育つようになる。
 かなりの範囲を耕地化して、ダイズをごっそり収穫してやったら、エウーキ伯爵はもちろんのこと、見物に来ていたエウーキの民も大喜びだった。エウーキの民は率先して収穫作業に加わって来たしな。笑

 ダイズの大収穫の流れでその夜は、領主館前の町の中央広場にエウーキの民が集まり、臨時の収穫祭となって大騒ぎだった。
 俺はと言うと、教国程ではないものの、集まったエウーキの民から、かなりの歓待を受けたのだった。

 こんな日が3日続き、毎夜収穫祭の宴が遅くまで続くものだから、わが妻たちとのむふふタイムもなくなっていた。
 エウーキに来てから、むふふタイムがない。大泣

 翌日、エウーキを発って、トーラの故郷の虎林の里に向かった。
 帝国役人たちは、和睦するまで敵対関係にあった虎林の里について来るのを逡巡していたので、1泊したらエウーキに戻ると言うとホッとして、俺たちだけにしてくれた。こいつら、職務に対してさほど忠実じゃねぇのな。イゴールどのにチクってやろうか?笑

 虎林の里は、エウーキの北に広がる大森林地帯である。この広大な大森林全域が虎林の里で、ホワイトタイガー族は、普段はこの大森林に散って、単独あるいは家族単位で暮らしている。主に狩猟生活だ。
 その形態は、基本は虎獣人だが、狩猟のときはホワイトタイガーに変身することが多いのだとか。

 トーラと、トーラの双子の弟のタイガは、族長の一族の直系で、現在はタイガが族長である。族長は虎林の里の中心にこじんまりとした家を構えていた。
 定住型の家を持つのは族長一族のみで、他は移動生活のため、テント暮らしである。

 ホワイトタイガー族は聖獣のため、長命である。トーラとタイガも、見てくれは若いが、なんと101歳だそうだ。しかしこれでもホワイトタイガーとしては若い方だとか。
 ホワイトタイガー族は末子相続のため、先頃800歳間近で大往生した先代族長夫婦の上の子たちは、皆、巣立っている。
 今の族長一族は、タイガとその奥さんと小さな男の子だ。

 タイガの家で歓待されたが、出て来た料理?は生肉だった。流石に生肉は食えん。苦笑
 トーラがタイガの奥さんと一緒に台所に行って、生肉を焼いて来てくれた。焼き加減は、予想通りレアだったがな。苦笑

 しばらくタイガの家で談笑していたが、トーラが切り出した。
「トーラ、墓参りに、行く。お頭様、来るか?」両親の墓参りかな。まあそれなら付き合うか。
「おう。」当然精霊たちはついて来る。わが妻たちも行くそうだ。タイガとタイガの子も来た。奥さんは留守番だ。

 ちょっとばかり歩いたが、やはり両親の先代族長夫婦と、歴代族長夫婦の墓参りだった。
 そして最後にトーラは隅っこの小さい墓に詣でた。
「この墓は?」
「トーラの子。弱かった。産まれて、すぐ、死んだ。」えー?驚いた。
「トーラ、子供いたのか?で、その子のその父親は?」
「武者修行の、旅で、トーラを、負かした男。名は、知らない。」はぁ?
「負けたら襲われたのか?」
「いや、トーラ、強い男、好き。トーラを、負かす。強い。だから、子種、貰った。」なんか、ドーラも似たようなことを言ってた気がする。
「まじか。」
「お頭様も、強い。」そういう基準なのな。でも俺が強いんじゃなくて、精霊たちが強いんだけどな。苦笑

「しかし、強いトーラと、トーラより強い男との間の子が弱かったとは意外だな。」
「うん、病弱、だった。でも、もしかすると、兄者、かも。」
「兄者?」
「上の兄者たちは、トーラが、産まれる、前に、巣立ってる。顔も、知らない。兄妹の子は、弱い。」まじか!その強かった男が兄者ってことか?
「ま、そう言うこともあろうかの。わらわも似たようなことがあったゆえなあ。長く生きてると、身内ですら、忘れることもあるのじゃ。」聖獣、恐るべし。それにしてもあっけらかんとしている。価値観が違うのだな。
「なるほどねぇ。」

「のう、主様よ。子種と言えばな、明日は満月じゃ。ゆえに、今宵から3日間、わらわは発情期じゃ。子種を所望するぞえ。」
「お、おう。」やった、エウーキでできなかった分を取り戻してやる。

 トーラの実家に戻ると、獣人隊の隊員だった男が来ていた。タイガの手下だ。
「族長、虎林の里の北端に…、
 おお!姫婿どのではないですか!」
「おう。元気そうだな。」
「はい。姫婿どののおかげです。
 そうそう、族長、虎林の里の北端に、ワイルドブルの大群です。」
「大群?」
「100頭は下らないかと。」
「皆を集めろ。総動員で狩る。狼煙だ。義兄どの、トーラ、行くぞ。」
「え?これから?」
「そうだ。夜通し駆ければ、夜明け前には着く。」ドーラとのむふふタイムが…。泣

 むふふタイムがお預けとなり、ひと晩中馬車を急がせ、薄明には北端に着いた。タイガたちは、ホワイトタイガーに変身して、虎林をひと晩中駆け抜けた。
 虎林の里中から、続々とホワイトタイガーが集結して来た。集合場所に来ると、一旦虎獣人に変身するのだが、中には女も結構いた。
「何人集まった?」
「31名です。」
「よし、ひとり1頭だ。」
「おう!」×多。
「では行くぞ。」
 全員がホワイトタイガーに変身した。

「タイガどの、ちょっと待ってくれ。」
「義兄どの、どうかしたか?」
「援護する。
 ダク。」『はーい。』ダクがふわふわと浮いて、両腕両脚を曲げて『うーっ!』っとタメを作り、『たあーっ!』っと言う裂帛の気合とともに、エリアスタンを放った。するとワイルドブルの100頭を超える群れは、皆バタバタと倒れ、痙攣している。
『ゲオルクー。ペコペコー。』ぶっちゅー、ちゅーちゅー。吸ってるし。よほど腹減ってんだな。笑

「義兄どの、ありがたいのだが、これでは狩りの訓練にならん。」
「そりゃ出過ぎた真似をしたな。すまん。」
「いや、感謝はしている。おかげでケガ人はひとりも出ないだろう。
 おい、ひとり1頭だ。牝と大型の牡は残せ。」
「全部じゃないのか?」
「いや、一部でいい。牝と、大型の牡を残せばすぐに群れは増える。」
「なるほどー。ところで、牡はなんで大型を残すんだ?」
「大型の牡の仔は、大きくなる。」
「なるほどな。」流石、狩猟民族。安易に狩り尽くさずに、狩った分が自然に増えて、元に戻るように配慮するんだな。

 そのまま狩りに参加した全員が、虎獣人のブーストモードになり、獲物を軽々と得物を担いで、運び始めた。
 ひとりだけホワイトタイガーに変身し、先触れとなって族長宅へ帰って、虎林の里全体の留守番連中を、狼煙で呼び集めるそうだ。
 今宵は一族全員で、族長宅前の広場で、狩猟の神に感謝を捧げる大宴会をするのだとか。

 皆で族長宅へ帰る途中、外交馬車の中では、ダクがべたべたとくっついて来て、やたらとキスを求めつつ、黒光りを繰り返している。あーこりゃ第二形態に行くわ。

 一行が泉の前を通り掛かると、昨夜の徹夜の強行軍で、丸1日以上、風呂に入っていない精霊たちが、『『『『『『『『『みーず浴びっ、みーず浴びっ。』』』』』』』』』と水浴びコールを始めた。しゃーねーなー。苦笑

 俺たちはホワイトタイガー族一行から離脱して、泉のほとりに外交馬車を停め、クレに窪みを作らせて、ワラに泉の水を引かせつつ、フィアに水を温めさせて、即席の野天風呂を造った。
 精霊たちが衣服を脱ぎ捨て、次々と野天風呂に飛び込んだ。当然わが妻たちも装備を外してそれに続く。すると、マイサンがわが妻たちに反応してドラゴン化した。苦笑

 精霊たちを洗ってやると、キャッキャと大喜びだ。第四形態の7名には、洗うときのどさくさの胸揉みにも熱が入るが、第三形態のソルではついつい手抜きになってしまう。第一形態のダクにはする気も起きない。
 ダクを洗っているとき、はぁはぁとダクの息が荒い。幼女のくせに感じまくっているのだ。
 いつもだと、この後、ベッドで第二形態へ進化させるのだが、生憎ここは行軍の途中で寄った泉のほとりに過ぎない。ベッドなどない。まさかこのまま青姦?かといって外交馬車の中でも…ねぇ。
 結局、野営のときの要領で、牧草を一気に育て、簡易窯で熱して干し草にし、簡易ベッドを作った。

 簡易ベッドに大の字に寝ると、案の定、ダクも潜り込んで来て、べろちゅーをして来た。先程から何度も魔力補給のべろちゅーを繰り返ししていたダクの身体はすぐに黒光りする。

 すると、仰向けの俺の顔に跨って来た。やはりぐしょぐしょだ。幼女なのに。
『舐めて。』と言うダクの要求に従って、俺はダクのぐしぐしょな所を丹念に舐めまわしてやると、ダクの体の輝きが一層増して、人型から球形に戻った。
 一方でわが妻たちは、初めてこの光景を見て、全員ドン引きしている。泣

 ひと抱えの大きさだった光の球体は、抱えられない大きさにまで膨れ上って、さらに眩く輝いた。その後、球体になっていたダクは、少女体型の人型を取って現れた。第二形態に進化したのだ。そして黒光りは収まった。
 ダクはそのまま抱き付いて来て、べろちゅーを求めて来ているが、魔力を補給してもなかなか輝かない。進化したては、形態進化で体内の魔力が消耗しているからな。
 俺は矢尻で指先を傷付けて血を滲ませ、それをダクに差し出した。ダクがその指をぺろぺろと舐めると、ダクの身体は黒光りした。

 この進化で、ダクによる魔力量上限の加算は、第一形態の1万から第二形態の2万となり、進化時の体液舐めで+5000。俺の魔力量の上限は1万5000上昇して、66万になった。

 初めて形態進化を見たわが妻たちは、完全にドン引きで、その分、口調もきつい。
「あたしゃ、幼女を跨らせてあそこを舐めるってのはよくないと思うんだ。」わが妻たち一同がカルメンに同調して、うんうんと頷いている。皆、俺だってそう思ってるよ。
「ダーリン、めっ!だぞっ。」おっとビーチェ、そのリアクション、むしろかわいじゃんよー。苦笑
「だって、仕方ないじゃん。」ぶー垂れる俺。

 そしてここでいつものひと悶着。
 少女体型になったダクに、貫頭衣に加えて、簡易スカートと簡易パンツを穿かせようとしたのだが…、
『やー、やー。きついの、やー。』
「でもこれを穿かないと見えちゃうんだよ。」
『ダク、平気だもーん。』
「俺が困るんだよ。な、頼むよ。」
『ぶー。』このむくれ顔、かわいい♪苦笑

 ホワイトタイガー族一行には遅れたが、行先は。族長タイガの家だと分かっている。ま、のんびり追い掛けようかね。

 半日掛けて外交馬車は族長宅に着いた。狩猟組は、各々が野宿で仮眠を取っており、留守番部隊は、狩猟組が仮眠を取っている間に、大宴会の準備をしている。

 俺たちは、タイガの好意に甘えて、タイガ宅で睡眠を取ったのだった。

「姫婿どの、姫婿どの。」
 タイガの息子に起こされて、族長宅前の広場に出ると、ホワイトタイガー族が、明々と燃え盛るキャンプファイアーを囲んで、楽しげに、呑み、食い、歌い、踊っている。

「おお、義兄どの、ようやくお出ましか?」
「すまん、すっかり寝入ってしまった。」
「ちょうど余興の相撲大会を行うことろだ。」
 ホワイトタイガー族は、3つの形態を取る。ひとつはホワイトタイガー、もうひとつは虎の獣人ノーマルモード、そして最後のひとつが、全筋隆起と言うスキルを使って変身する、虎の獣人ブーストモードだ。
 ブーストモードは、全身の筋肉が隆起して、ノーマルモードの倍以上の体格になる。相撲は、このブーストモードでやるから、ガチンコの迫力が半端ない。

 しかもがっぷり四つに組んで、寄り切るか、つり出すかの二択である。投げ技は打たない。力と力の真っ向勝負だ。
「タイガどの。投げ技はないのか?」
「技で起用に勝ってもつまらんではないか。われら一族の勝ち方は、力でねじ伏せるのみ。わはははは。」とんだ脳筋一族だ。

 トーナメントを勝ち上がった優勝者が、族長のタイガへの挑戦権を得た。
「少し休むか?」とタイガが挑戦者に聞くと、
「無用!」と、挑戦者は切り捨てた。しかし、
「待った!」とそこで待ったが掛かった。声の主は…、トーラである。

「タイガ、まずは、トーラと、やれ。」ロリ巨乳のトーラが、雄叫びを上げ、全筋隆起を使って巨大化し、ブーストモードになった。こうなると男も女もない。
 タイガも全筋隆起で応じる。
 うおーーーー!一族中が物凄い熱気に包まれた。トーナメントの優勝者は蚊帳の外である。笑

 土俵中央でがっぷり四つに組んだトーラとタイガは、微動だにしない。しかしふたりの顔は真っ赤だ。腕や肩だけでなく、全身の筋肉の血管が浮き上がっている。まったくの互角だ。会場中がシーンと静まり返り、勝負の行方を、固唾を飲んで見守っている。
「水ー!」行事の水入りの合図で、トーラとタイガは離れた。ふたりとも、無言で、はぁはぁと荒い呼吸をしている。力水を口に含み、呼吸を整えて、再び組んで再開。
 そしてまた互角で、ふたりとも動けない。互いに全力を出しているのに、力が拮抗していて動きに繋がらないのだ。再び水入り。
 結局これが繰り返されて、会場は興奮のるつぼ。トーナメントの優勝者の影が完全に霞んでしまった。
 5回目の水入りで行事が宣言した。
「両者、引分けー。」この裁定には会場中が、うんうんと納得している。

 十分休んだトーナメント優勝者と、トーラとの熱戦でヘロヘロになったタイガ。勝負は見えていると思ったが、なんと、タイガがあっさり寄り切って勝ってしまった。蜂の巣をつついたような会場。ホワイトタイガー族が熱狂している。

「義兄どの、勝負を所望!」好戦的な眼で俺を見て来るタイガ。頼むよー、タイガ、俺を巻き込むなよなー。
 シーンとなった会場が、行方を見守っている。これ、嫌って言えない空気じゃんよ。汗

 タイガは、全筋隆起でブーストモード全開だ。一方俺は、精霊たちを呼び、酒をひと口含んで皆にべろちゅーをして、全員を輝かせた。なお、第二形態のダクだけは、酒抜きな。酒を呑むのは第三形態だからな。

 仕切って見合って、制限時間いっぱい。
「八卦よーい…。」行事軍配が返った瞬間、9人の精霊たちが俺のまわりで魔力を放出し、憐れタイガは、俺とかち合う前に真後ろに吹っ飛ばされ、土俵から転げ落ちたのだった。
 シーーーン。と静まり返る会場。物音ひとつしない。
「姫婿どのー。」行事の勝ち名乗りを受けると、会場が大歓声に包まれた。俺がやったんじゃないんだけどね。

 しばらくして、気を失っていたタイガが目を覚まし、俺の所にやって来た。そして跪き、
「義兄どの、参った。われらホワイトタイガー族は、義兄どのに忠誠を誓う。」
 すると、まわりのホワイトタイガー族全員がタイガに倣って跪いた。
「いや、タイガどの、対等な同盟で行こう。俺は、わが妻の里を、配下にしようとは思わぬ。」
「義兄どのがそう言われるのなら。」
 それから再び大宴会になった。ホワイトタイガー族は、俺の所に注ぎに来る来る。苦笑

 当然ソルに、酒酔いを消す状態回復魔法を何度も掛けさせていたのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/9/11

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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