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精霊の加護102 西都で数日待機後バレンシーへ先発
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精霊の加護
Zu-Y
№102 西都で数日待機後バレンシーへ先発
昨夜、ゲオルク学校がDランクに上がったお祝いをし、前回の遠征での、マチルダ、レベッカ、ルイーザの、精霊たちに対する無礼な態度を許して、元の師弟関係に戻った。
それから宿屋に宿泊して、わが妻たちとのむふふなひとときを堪能した。
結婚したとは言え、冒険者としての活動中は、けじめを付けることになっているし、ましてや、野営中にそう言うことをしてれば、敵や魔獣の奇襲に対応できないから、下手すると死に直結する。
ただし、長距離移動した後、数日滞在する町の宿屋に宿泊したときは、到着日に限り、むふふなひとときがありなのである。もっとも最後までではなくお口でだけどな。
そういう訳で、昨日は6人の妻たちに、代わる代わる楽しいことをしてもらいつつ、たわわに実るメロンボール12個を賞味し、指先探検隊で6つの洞窟ダンジョンを最深部まで攻略して来たのだ。
ちなみにぱふぱふは毎日OKである。
なお、むふふなひとときの二次的な効果として、俺の魔力注入によって、潜在魔力量の上限に達していないリーゼ、ジュヌ、カルメンの上限値も100上がった。最後まで行けば1回につき200上がるのだが、口だと半分の100なのだ。
それと、俺の魔力が入ると、わが妻たちの魔力循環が良くなって、しばらくは魔法やスキルの効果が上がる。
そして、俺の魔力の匂いがすると言うので、精霊たちがわが妻たちに対して、いつもよりフレンドリーになる。
普段の精霊は、精霊を見る力がない者とは、関わりたがらないが、フレンドリーになると、受け答えをするようにまでなるのだ。
朝餉を摂ってギルドへ行くと、すでにゲオルク学校が来ていた。
「あ、師匠。おはざーっす。」「「「「おはざーっす。」」」」
「おう。もうクエスト受けたのか?」
「やだなー、師匠と一緒に行くに決まってるじゃないですか。」残り4人もうんうんと頷いている。
「いやいや、Dランクパーティだし、単独で行って来いよ。」
「「「「「えー。」」」」」
「じゃあ、こうしようぜ。同じクエストを受けて成果で勝負。負けたら夕餉代持ちってことで。」
「いやいや、師匠たちのパーティ、Bランクっすよね?勝負になんないっすよ。」ホルヘが誘いに乗って来ない。
「1ランク差2倍で、2ランク違うから4倍でどうよ?」
「人数差もあるじゃないですか?」
「お前ら5人で俺たち7人だから、ざっくり1.5倍で6倍ってとこか?」
「師匠、精霊たちもカウントして下さいよね。」
「まじか?じゃあ、精霊8人足して15人だから3倍な。3×4で12倍でいいな。」
「師匠たち、馬車もありますよね?」
「ちっ、分かったよ。馬車の分も入れて15倍でどうだ?」
「じゃあそれで。」ホルヘがようやく話に乗って来た。
「ダーリン、15倍とかってヤバくない?」
「そうね。上手く乗せられたわね。」
「ふむ。ホルヘはなかなかの交渉上手であったな。わが君、流石にきついと思うぞ。」
「まあ、何とかなるっしょ。それに、どうせ負けても夕餉代だし。」とは言え、確かにヤバいかもしれない。でも負ける気はないけどな。
「で、師匠。どのクエストやります?」
「任すよ。そっちで決めてくれ。」
「15倍もハンデをくれてるのに余裕っすね。」
ホルヘが選んで来たのは、西府から半日のリャビーセ村からのクエストで、牧場を襲うクレイジーウルフの討伐だった。
依頼を寄越したリャビーセ村は農家と酪農家の村で、乳牛牧場、肉牛牧場、闘牛牧場が点在する。クレイジーウルフの群れは、牧場の牛たちを狙っているのだ。もっとも闘牛は凶暴だから、狙われて被害に遭うのは乳牛か肉牛だろう。
ちなみにカルメンのご両親は、西府で断トツのエスパーニャ商会の経営者を早々に隠居して、リャビーセ村に大きな隠居邸を構え、今もエスパーニャ商会の筆頭株主として莫大な配当金を受けつつ、闘牛牧場のパトロンをしながら、悠々自適の生活をしている。
ホルヘの奴、よく考えてるなぁ。苦笑
クレイジーウルフなら小規模でも数頭の群れだから、ゲオルク学校がひとつの群れを討伐しただけで俺たちの負けだ。5頭の群れを討伐されたら俺たちは75頭を狩らなきゃいかん。
「日数は今日も入れて5日でいいか?」
「そうっすね。被害に遭ってるリャビーセ村には、歩けば1日掛かりますから往復で2日。夜に襲って来るのを待ち伏せしなけりゃいけませんから、向こうで3日ってとこですかね。」
「俺たちも後発隊が追い付いて来るまでここで待たなきゃいかんからちょうどいい日数だ。」
「えー、そっちの理由で決めるんすか?」
「まあな。それと相手のパーティが戦闘している群れに横槍を入れるのはなし。ただし明らかにピンチのときに助けに入るのはあり。でいいか?」
「そうっすね。マナー通りで。」このルールは冒険者の暗黙のマナーだ。
「ところでお前ら歩いて行くの?レンタル馬車を借りるか、タクシー馬車を使わないのか?」
「そうっすね。借りたらハンデが15倍から12倍に戻っちゃうしな。皆、どうする?」
「俺、歩くの、たりーから馬車がいいな。」アルフォンソがすぐに答えた。
「アル、またそんなこと言って。無駄遣いはダメでしょう?」
「でもよう、マチルダ。1日歩いて疲れちまったら元も子もねぇだろう。」
「いやいや、1日歩いたぐらいで疲れないわよ。ね、ルイーザ。」
「そうね。1日歩くと言っても道はずっと平坦だし、ひと晩寝れば疲れは取れるわ。馬車を使う程でもないわね。」
「なんだよ、レベッカもルイーザも倹約か?財布のひもが固いこって。」アルが肩をすくめている。
「俺はアルと同意見だな。歩いて行ったら、師匠たちのパーティに半日遅れることになる。」
「だろ?俺はそれが言いたかったんだよ。」嘘つけ!
「それでもひと群れ狩ったら私たちの勝ちよね。」
結局、ゲオルク学校は徒歩移動を選択した。
「じゃあ、4日後な。」
で、俺たちは外交馬車でリャビーセ村に向かっている。昼過ぎにはリャビーセ村に着くので、午後は休んで今夜からクレイジーウルフを狩ることにした。
ゲオルク学校の連中の到着は夕方だ。奴らはおそらく今夜は休むことになる。しかし、このひと晩の出遅れが大きく物を言うことを教えてやろう。
「旦那様、15倍ものハンデを取り返せますの?」
「うん、あいつらが坊主なら俺たちの勝ちでしょ。」ちなみに坊主とは、1頭も獲れないことの隠語である。
「お前さん、そうは言うけどさ、あいつらだってDランクだよ。流石に数日粘って坊主はないだろう?」
「いいや、あいつらは今日1日掛けてリャビーセ村に移動するから今夜は休むだろ?俺たちは昼に着くから午後に休んで今夜から狩るじゃん。今夜狩れるだけ狩っちまうのさ。」
「あなた、そうは言っても流石に今夜でいくつもの群れをすべて狩るのは無理よね。」
「まあね。狩れなかった群れは当分寄り付かないように明け方には追っ払うかな。」
「「「「「「え?」」」」」」
「あ、そう言うことか。わが君、流石だぞ。策士だな。」
「「「「「ん?」」」」」ベスは気付いたようだが他の5人はピンと来ていない。
「精霊たちに魔力放出で威嚇させるんだよ。そしたらしばらくはこの辺り一帯には寄り付かないだろうさ。」
「おお、主様。それは気付かなんだ。よい思案じゃな。」
「なるほどー、そういうことかぁ。リヴァイアサンも追っ払っちゃったもんねぇ。」
「そう言えば、闘牛たちもおとなしくさせちまったしねぇ。」
リャビーセ村に到着する前、精霊たちを索敵に飛ばした。今は昼だから夜行性のクレイジーウルフは休んでいるだろう。大体の位置を把握しておくのだ。
『いたよー。』『見付けたよー。』『めっけー。』『寝てるー。』『こっちもー。』『ここにもいたー。』
精霊たちから続々と発見の報が届く。
精霊たちがすでに6群52頭を発見した。皆、大地に巣穴を掘り、昼間はその巣穴に潜り込んで休んでいる。
うーん、夜まで待たずにやっちまうか?
よし、やっちゃまおう。
俺はわが妻たちに精霊たちから索敵情報が届いたことを告げ、ペガサスのナイトで上空から回って様子を見て、状況が許せば奇襲攻撃を仕掛けてみることを提案した。
もちろん6群52頭は伏せている。全部話したらひとりでやる気かと怒られるからだ。
わが妻たちは、案の定、あっさり承諾した。
「じゃあさ、あたしたちは、先にあたしんちに行ってるよ。お前さんも偵察が終わったら来とくれ。」
カルメンのご両親の隠居邸で合流する段取りにして、索敵から戻って来た精霊たちに案内させ、巣穴の場所にナイトに乗って飛んで行くことにした。
「よし、ナイト、俺を乗せて連れてってくれよ。」
『いいよ。』
俺はナイトに跨って、大空に舞い上がった。
「じゃあ行って来る。」
わが妻たちに見送られて、精霊たちの案内に従い、6つの巣穴を順に回ることにした。
最初の巣穴では、
『クレがやるー。』巣穴が崩れ落ちて生き埋めにした。
次の巣穴では、
『フィアがやるー。』巣穴に火柱が立って丸焼きにした。
その後も順に、
『チルがやるー。』巣穴の中が氷漬けになって閉じ込めた。
『ワラがやるー。』巣穴に激流が流れ込んで溺死させた。
『ウィンがやるー。』巣穴ごと竜巻に巻き上げられて落下した。
『メタがやるー。』巣穴に落雷かあって感電した。
どこでも、瀕死の個体はすべて、ツリによって、蔓に雁字搦めにされた。
6群52個体をすべて収納腕輪に回収した。
『うー、ソルだけ何もできないー。』
「まあまあ。ソルは回復とバフだからさ、いつでも出番はあるぞ。」
『ぶー。』
「ゲオルクー、お腹すいたー。」「クレもー。」「フィアもー。」「チルもー。」「ワラもー。」「ウィンもー。」「メタもー。」
俺はポケットボトルを出して、ひと口含んでから、美少女+αの第三形態7人と次々に濃厚なべろちゅーを交わした。
ポケットボトルには、ウイスキーのアードベクを入れている。アルコールは、体液を介した精霊たちへの魔力補給の効率を高めるのだ。
このため精霊たちは、すぐさま各々の色に輝いた。魔力が満タンの証である。
もちろん最後には出番がなかったソルともべろちゅーをしたけどな。ソルはまだ第二形態だから酒は呑めないので、普通のべろちゅーだけれども。
アルコールを含んだべろちゅーで精霊たちは効率よく魔力補給をしたものの、精霊たちは、アルコールでほろ酔いとなってしまったので、帰路ではベタベタに甘えて来た。
おいおい、ナイトに乗って飛んでるんだから勘弁してくれよ。と思ったが、精霊たちはそんなのお構いなしだ。
もっとも精霊たちは軽いから、空中で抱き付かれてもバランスを崩すことはない。俺は精霊たちを、空中でくすぐったり、揉んだり、摘まんだりと、精霊たちとスキンシップを交わしながら、リャビーセ村に向かったのだった。
ナイトがリャビーセ村にあるカルメンのご両親の隠居邸に着いた。わが妻たちはすでに着いていた。
「おうゲオルク。久しいな。」「いらっしゃい。ゲオルク。」「ゲオルク様、ご無沙汰してます。」
「お義父さん、お義母さん、アリシアさん、ご無沙汰してます。」
「ゲオルク、クレイジーウルフの討伐に来てくれたんだってな。リャビーセ村全体では、乳牛が5頭、肉牛が3頭殺られちまってよ。皆、難儀してるんだ。」
「うちの闘牛も襲われてちょこっとケガをしたさね。もっとも2頭ほど返討ちにしてたけどね。闘牛を襲うなんざ、バカなクレイジーウルフさね。」
「いや、クレイジーウルフだから気狂いなんだろうぜ。わははは。」
「うふふ、そうさねぇ。」
「精霊に治してもらいましょうか?」
「わたくしが治しましたわ。」流石ジュヌ、素早いな。
「で、主様。クレイジーウルフの様子はどうであったかの?」
「ああ、見付けた巣穴のクレイジーウルフは全部狩って来た。」
「ちっ、やっぱり抜け駆けして来たね。まったくお前さんと来たら。」
「ダーリン、何頭やっつけたの?」
「52頭。」
「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」
わが妻6人と、バルタザールさんとエスメラルダさんとアリシアさんがハモった。
「クレージーウルフは夜行性だろ?皆、巣穴で寝てたんだよ。だから巣穴を殲滅したら一網打尽って感じ?」
「わが君、詳しく。」ベスに詰め寄られた。苦笑
「まずクレが地震で巣穴を潰して生き埋めにして、次にフィアが巣穴に火柱を立てて焼いて、チルが巣穴こと氷漬けにして、ワラが巣穴に激流を流し込んで溺死させて、ウィンが竜巻で吹き上げて落っことして殺して、メタが落雷で感電死させたんだよ。
で、瀕死のクレージーウルフはすべてツリがぐるぐる巻きにして確保。最後に、俺がトドメを刺した。」
「「「「「「…。」」」」」」わが妻たちは呆れているが…、
「わはははは。流石ゲオルク。一気にうちの闘牛たちをビビらせただけのことはある。」
「そうだねぇ。ゲオルク、やっぱり闘牛士におなりよ。あたしたちがタニマチをしてやるさね。ねぇ、あんた。」
「おうよ。」
「いやいや、冒険者で十分ですよ。」
「凄い。精霊魔術師、凄すぎる…。やはり伝説…。」と、横でアリシアさんがぶつぶつ言っている。
一応、念のため、クレイジーウルフが動き出す宵の口に、精霊たちに魔力の一斉放出をさせて、残ってる奴らを追っ払おう。
一休みして、日暮れを待ち、精霊たちに索敵させたが、もうすでにクレイジーウルフの群れはないと言う。かすかに群れからはぐれた単独個体が3頭ほど隠れて、警戒しているらしい。3頭ならゲオルク学校に狩らせてやっても、いいかとも思ったが、馬車台をケチって出遅れたことを後悔させるために、精霊たちに魔力の一斉放出をさせた。
するとはぐれ個体3頭が、一目散に逃げて行ったとのことだ。これでこの辺りは、特大精霊の縄張りとして認識されたはずだ。もう当分はこの辺りに、クレージーウルフが寄り付くことはあるまい。
なお、精霊たちの一斉放出で、闘牛たちが怯えたのはご愛敬だ。笑
その晩は、カルメンさんのご両親の隠居邸に、皆で泊めてもらって、楽しく呑み明かした。
翌朝、俺たちは西府に向けて出発した。狩った52頭をギルドに証拠として納めるためだ。
魔石の取り出しや解体はギルドに任せ、魔石、肉、毛皮などの売り上げから、解体手数料を引いてもらう。
3日後、坊主で帰って来たゲオルク学校が、俺たちがクエストを受けた翌日の昼には、クレイジーウルフ52頭を納品したと聞いたらさぞ驚き、出だしで後れを取ったことを反省するだろう。
昼過ぎに西府に到着し、ギルドでクレイジーウルフ52頭を納品した。そして、ギルドに、クレイジーウルフの魔石の取り出しと解体、魔石、肉、毛皮の買取を頼んだ。
昨日の今日である上に、52頭と言う桁違いの討伐数に、ギルド内は騒然となっている。
その晩、宿屋でわが妻全員とのむふふな展開を楽しんで、カンストしてない3人の魔力量上限を100ずつ上げた。
翌朝、ギルドに顔を出すと、クレイジーウルフ52頭の討伐報酬は大金貨2枚と金貨8枚になった。
そしてドーラがCランクに上がったのだが、
「わらわは何もしておらぬぞえ。」と、受付嬢に文句を言っていた。
パーティクエストの達成だから、パーティメンバーに等しく貢献度が割り振られるんだよな。笑
それから俺も正式なAランクになって、冒険者カードがシルバーカードからゴールドカードに変わった。と言ってもAランク相当となんも変わんない。笑
俺がBランクに上がってからあとひと月で1年になるそうで、普通はBランクからAランクは1年以上開けるのだが、俺は実績のせいで早々にAランク相当になっていたため、1ヶ月前倒しして正式なAになるそうだ。
ってか、Aランク相当でわが妻たちを口説いていいってことになって、すでに結婚してしまったので、もう冒険者ランクはどうでもいいってのが本音である。
さて、坊主で帰って来るであろうゲオルク学校は依頼未達成であるが、一緒に受けた俺たちが依頼を達成しているので、依頼失敗にはならない。
ゲオルク学校を明後日まで待つ気はないし、チンタラしている王都の役人どもを待つつもりもない。役人どもは、やっと着いた西府で、俺たちがすでにバレンシーへ向けて先発したと聞けば、さらに焦るだろう。
俺たちはギルドに、ゲオルク学校への手紙と今回のクエストの分け前として金貨5枚を預け、役人どもにはバレンシーへ向かうとの伝言を頼んで、バレンシーへ向けて西府を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/8/14
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№102 西都で数日待機後バレンシーへ先発
昨夜、ゲオルク学校がDランクに上がったお祝いをし、前回の遠征での、マチルダ、レベッカ、ルイーザの、精霊たちに対する無礼な態度を許して、元の師弟関係に戻った。
それから宿屋に宿泊して、わが妻たちとのむふふなひとときを堪能した。
結婚したとは言え、冒険者としての活動中は、けじめを付けることになっているし、ましてや、野営中にそう言うことをしてれば、敵や魔獣の奇襲に対応できないから、下手すると死に直結する。
ただし、長距離移動した後、数日滞在する町の宿屋に宿泊したときは、到着日に限り、むふふなひとときがありなのである。もっとも最後までではなくお口でだけどな。
そういう訳で、昨日は6人の妻たちに、代わる代わる楽しいことをしてもらいつつ、たわわに実るメロンボール12個を賞味し、指先探検隊で6つの洞窟ダンジョンを最深部まで攻略して来たのだ。
ちなみにぱふぱふは毎日OKである。
なお、むふふなひとときの二次的な効果として、俺の魔力注入によって、潜在魔力量の上限に達していないリーゼ、ジュヌ、カルメンの上限値も100上がった。最後まで行けば1回につき200上がるのだが、口だと半分の100なのだ。
それと、俺の魔力が入ると、わが妻たちの魔力循環が良くなって、しばらくは魔法やスキルの効果が上がる。
そして、俺の魔力の匂いがすると言うので、精霊たちがわが妻たちに対して、いつもよりフレンドリーになる。
普段の精霊は、精霊を見る力がない者とは、関わりたがらないが、フレンドリーになると、受け答えをするようにまでなるのだ。
朝餉を摂ってギルドへ行くと、すでにゲオルク学校が来ていた。
「あ、師匠。おはざーっす。」「「「「おはざーっす。」」」」
「おう。もうクエスト受けたのか?」
「やだなー、師匠と一緒に行くに決まってるじゃないですか。」残り4人もうんうんと頷いている。
「いやいや、Dランクパーティだし、単独で行って来いよ。」
「「「「「えー。」」」」」
「じゃあ、こうしようぜ。同じクエストを受けて成果で勝負。負けたら夕餉代持ちってことで。」
「いやいや、師匠たちのパーティ、Bランクっすよね?勝負になんないっすよ。」ホルヘが誘いに乗って来ない。
「1ランク差2倍で、2ランク違うから4倍でどうよ?」
「人数差もあるじゃないですか?」
「お前ら5人で俺たち7人だから、ざっくり1.5倍で6倍ってとこか?」
「師匠、精霊たちもカウントして下さいよね。」
「まじか?じゃあ、精霊8人足して15人だから3倍な。3×4で12倍でいいな。」
「師匠たち、馬車もありますよね?」
「ちっ、分かったよ。馬車の分も入れて15倍でどうだ?」
「じゃあそれで。」ホルヘがようやく話に乗って来た。
「ダーリン、15倍とかってヤバくない?」
「そうね。上手く乗せられたわね。」
「ふむ。ホルヘはなかなかの交渉上手であったな。わが君、流石にきついと思うぞ。」
「まあ、何とかなるっしょ。それに、どうせ負けても夕餉代だし。」とは言え、確かにヤバいかもしれない。でも負ける気はないけどな。
「で、師匠。どのクエストやります?」
「任すよ。そっちで決めてくれ。」
「15倍もハンデをくれてるのに余裕っすね。」
ホルヘが選んで来たのは、西府から半日のリャビーセ村からのクエストで、牧場を襲うクレイジーウルフの討伐だった。
依頼を寄越したリャビーセ村は農家と酪農家の村で、乳牛牧場、肉牛牧場、闘牛牧場が点在する。クレイジーウルフの群れは、牧場の牛たちを狙っているのだ。もっとも闘牛は凶暴だから、狙われて被害に遭うのは乳牛か肉牛だろう。
ちなみにカルメンのご両親は、西府で断トツのエスパーニャ商会の経営者を早々に隠居して、リャビーセ村に大きな隠居邸を構え、今もエスパーニャ商会の筆頭株主として莫大な配当金を受けつつ、闘牛牧場のパトロンをしながら、悠々自適の生活をしている。
ホルヘの奴、よく考えてるなぁ。苦笑
クレイジーウルフなら小規模でも数頭の群れだから、ゲオルク学校がひとつの群れを討伐しただけで俺たちの負けだ。5頭の群れを討伐されたら俺たちは75頭を狩らなきゃいかん。
「日数は今日も入れて5日でいいか?」
「そうっすね。被害に遭ってるリャビーセ村には、歩けば1日掛かりますから往復で2日。夜に襲って来るのを待ち伏せしなけりゃいけませんから、向こうで3日ってとこですかね。」
「俺たちも後発隊が追い付いて来るまでここで待たなきゃいかんからちょうどいい日数だ。」
「えー、そっちの理由で決めるんすか?」
「まあな。それと相手のパーティが戦闘している群れに横槍を入れるのはなし。ただし明らかにピンチのときに助けに入るのはあり。でいいか?」
「そうっすね。マナー通りで。」このルールは冒険者の暗黙のマナーだ。
「ところでお前ら歩いて行くの?レンタル馬車を借りるか、タクシー馬車を使わないのか?」
「そうっすね。借りたらハンデが15倍から12倍に戻っちゃうしな。皆、どうする?」
「俺、歩くの、たりーから馬車がいいな。」アルフォンソがすぐに答えた。
「アル、またそんなこと言って。無駄遣いはダメでしょう?」
「でもよう、マチルダ。1日歩いて疲れちまったら元も子もねぇだろう。」
「いやいや、1日歩いたぐらいで疲れないわよ。ね、ルイーザ。」
「そうね。1日歩くと言っても道はずっと平坦だし、ひと晩寝れば疲れは取れるわ。馬車を使う程でもないわね。」
「なんだよ、レベッカもルイーザも倹約か?財布のひもが固いこって。」アルが肩をすくめている。
「俺はアルと同意見だな。歩いて行ったら、師匠たちのパーティに半日遅れることになる。」
「だろ?俺はそれが言いたかったんだよ。」嘘つけ!
「それでもひと群れ狩ったら私たちの勝ちよね。」
結局、ゲオルク学校は徒歩移動を選択した。
「じゃあ、4日後な。」
で、俺たちは外交馬車でリャビーセ村に向かっている。昼過ぎにはリャビーセ村に着くので、午後は休んで今夜からクレイジーウルフを狩ることにした。
ゲオルク学校の連中の到着は夕方だ。奴らはおそらく今夜は休むことになる。しかし、このひと晩の出遅れが大きく物を言うことを教えてやろう。
「旦那様、15倍ものハンデを取り返せますの?」
「うん、あいつらが坊主なら俺たちの勝ちでしょ。」ちなみに坊主とは、1頭も獲れないことの隠語である。
「お前さん、そうは言うけどさ、あいつらだってDランクだよ。流石に数日粘って坊主はないだろう?」
「いいや、あいつらは今日1日掛けてリャビーセ村に移動するから今夜は休むだろ?俺たちは昼に着くから午後に休んで今夜から狩るじゃん。今夜狩れるだけ狩っちまうのさ。」
「あなた、そうは言っても流石に今夜でいくつもの群れをすべて狩るのは無理よね。」
「まあね。狩れなかった群れは当分寄り付かないように明け方には追っ払うかな。」
「「「「「「え?」」」」」」
「あ、そう言うことか。わが君、流石だぞ。策士だな。」
「「「「「ん?」」」」」ベスは気付いたようだが他の5人はピンと来ていない。
「精霊たちに魔力放出で威嚇させるんだよ。そしたらしばらくはこの辺り一帯には寄り付かないだろうさ。」
「おお、主様。それは気付かなんだ。よい思案じゃな。」
「なるほどー、そういうことかぁ。リヴァイアサンも追っ払っちゃったもんねぇ。」
「そう言えば、闘牛たちもおとなしくさせちまったしねぇ。」
リャビーセ村に到着する前、精霊たちを索敵に飛ばした。今は昼だから夜行性のクレイジーウルフは休んでいるだろう。大体の位置を把握しておくのだ。
『いたよー。』『見付けたよー。』『めっけー。』『寝てるー。』『こっちもー。』『ここにもいたー。』
精霊たちから続々と発見の報が届く。
精霊たちがすでに6群52頭を発見した。皆、大地に巣穴を掘り、昼間はその巣穴に潜り込んで休んでいる。
うーん、夜まで待たずにやっちまうか?
よし、やっちゃまおう。
俺はわが妻たちに精霊たちから索敵情報が届いたことを告げ、ペガサスのナイトで上空から回って様子を見て、状況が許せば奇襲攻撃を仕掛けてみることを提案した。
もちろん6群52頭は伏せている。全部話したらひとりでやる気かと怒られるからだ。
わが妻たちは、案の定、あっさり承諾した。
「じゃあさ、あたしたちは、先にあたしんちに行ってるよ。お前さんも偵察が終わったら来とくれ。」
カルメンのご両親の隠居邸で合流する段取りにして、索敵から戻って来た精霊たちに案内させ、巣穴の場所にナイトに乗って飛んで行くことにした。
「よし、ナイト、俺を乗せて連れてってくれよ。」
『いいよ。』
俺はナイトに跨って、大空に舞い上がった。
「じゃあ行って来る。」
わが妻たちに見送られて、精霊たちの案内に従い、6つの巣穴を順に回ることにした。
最初の巣穴では、
『クレがやるー。』巣穴が崩れ落ちて生き埋めにした。
次の巣穴では、
『フィアがやるー。』巣穴に火柱が立って丸焼きにした。
その後も順に、
『チルがやるー。』巣穴の中が氷漬けになって閉じ込めた。
『ワラがやるー。』巣穴に激流が流れ込んで溺死させた。
『ウィンがやるー。』巣穴ごと竜巻に巻き上げられて落下した。
『メタがやるー。』巣穴に落雷かあって感電した。
どこでも、瀕死の個体はすべて、ツリによって、蔓に雁字搦めにされた。
6群52個体をすべて収納腕輪に回収した。
『うー、ソルだけ何もできないー。』
「まあまあ。ソルは回復とバフだからさ、いつでも出番はあるぞ。」
『ぶー。』
「ゲオルクー、お腹すいたー。」「クレもー。」「フィアもー。」「チルもー。」「ワラもー。」「ウィンもー。」「メタもー。」
俺はポケットボトルを出して、ひと口含んでから、美少女+αの第三形態7人と次々に濃厚なべろちゅーを交わした。
ポケットボトルには、ウイスキーのアードベクを入れている。アルコールは、体液を介した精霊たちへの魔力補給の効率を高めるのだ。
このため精霊たちは、すぐさま各々の色に輝いた。魔力が満タンの証である。
もちろん最後には出番がなかったソルともべろちゅーをしたけどな。ソルはまだ第二形態だから酒は呑めないので、普通のべろちゅーだけれども。
アルコールを含んだべろちゅーで精霊たちは効率よく魔力補給をしたものの、精霊たちは、アルコールでほろ酔いとなってしまったので、帰路ではベタベタに甘えて来た。
おいおい、ナイトに乗って飛んでるんだから勘弁してくれよ。と思ったが、精霊たちはそんなのお構いなしだ。
もっとも精霊たちは軽いから、空中で抱き付かれてもバランスを崩すことはない。俺は精霊たちを、空中でくすぐったり、揉んだり、摘まんだりと、精霊たちとスキンシップを交わしながら、リャビーセ村に向かったのだった。
ナイトがリャビーセ村にあるカルメンのご両親の隠居邸に着いた。わが妻たちはすでに着いていた。
「おうゲオルク。久しいな。」「いらっしゃい。ゲオルク。」「ゲオルク様、ご無沙汰してます。」
「お義父さん、お義母さん、アリシアさん、ご無沙汰してます。」
「ゲオルク、クレイジーウルフの討伐に来てくれたんだってな。リャビーセ村全体では、乳牛が5頭、肉牛が3頭殺られちまってよ。皆、難儀してるんだ。」
「うちの闘牛も襲われてちょこっとケガをしたさね。もっとも2頭ほど返討ちにしてたけどね。闘牛を襲うなんざ、バカなクレイジーウルフさね。」
「いや、クレイジーウルフだから気狂いなんだろうぜ。わははは。」
「うふふ、そうさねぇ。」
「精霊に治してもらいましょうか?」
「わたくしが治しましたわ。」流石ジュヌ、素早いな。
「で、主様。クレイジーウルフの様子はどうであったかの?」
「ああ、見付けた巣穴のクレイジーウルフは全部狩って来た。」
「ちっ、やっぱり抜け駆けして来たね。まったくお前さんと来たら。」
「ダーリン、何頭やっつけたの?」
「52頭。」
「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」
わが妻6人と、バルタザールさんとエスメラルダさんとアリシアさんがハモった。
「クレージーウルフは夜行性だろ?皆、巣穴で寝てたんだよ。だから巣穴を殲滅したら一網打尽って感じ?」
「わが君、詳しく。」ベスに詰め寄られた。苦笑
「まずクレが地震で巣穴を潰して生き埋めにして、次にフィアが巣穴に火柱を立てて焼いて、チルが巣穴こと氷漬けにして、ワラが巣穴に激流を流し込んで溺死させて、ウィンが竜巻で吹き上げて落っことして殺して、メタが落雷で感電死させたんだよ。
で、瀕死のクレージーウルフはすべてツリがぐるぐる巻きにして確保。最後に、俺がトドメを刺した。」
「「「「「「…。」」」」」」わが妻たちは呆れているが…、
「わはははは。流石ゲオルク。一気にうちの闘牛たちをビビらせただけのことはある。」
「そうだねぇ。ゲオルク、やっぱり闘牛士におなりよ。あたしたちがタニマチをしてやるさね。ねぇ、あんた。」
「おうよ。」
「いやいや、冒険者で十分ですよ。」
「凄い。精霊魔術師、凄すぎる…。やはり伝説…。」と、横でアリシアさんがぶつぶつ言っている。
一応、念のため、クレイジーウルフが動き出す宵の口に、精霊たちに魔力の一斉放出をさせて、残ってる奴らを追っ払おう。
一休みして、日暮れを待ち、精霊たちに索敵させたが、もうすでにクレイジーウルフの群れはないと言う。かすかに群れからはぐれた単独個体が3頭ほど隠れて、警戒しているらしい。3頭ならゲオルク学校に狩らせてやっても、いいかとも思ったが、馬車台をケチって出遅れたことを後悔させるために、精霊たちに魔力の一斉放出をさせた。
するとはぐれ個体3頭が、一目散に逃げて行ったとのことだ。これでこの辺りは、特大精霊の縄張りとして認識されたはずだ。もう当分はこの辺りに、クレージーウルフが寄り付くことはあるまい。
なお、精霊たちの一斉放出で、闘牛たちが怯えたのはご愛敬だ。笑
その晩は、カルメンさんのご両親の隠居邸に、皆で泊めてもらって、楽しく呑み明かした。
翌朝、俺たちは西府に向けて出発した。狩った52頭をギルドに証拠として納めるためだ。
魔石の取り出しや解体はギルドに任せ、魔石、肉、毛皮などの売り上げから、解体手数料を引いてもらう。
3日後、坊主で帰って来たゲオルク学校が、俺たちがクエストを受けた翌日の昼には、クレイジーウルフ52頭を納品したと聞いたらさぞ驚き、出だしで後れを取ったことを反省するだろう。
昼過ぎに西府に到着し、ギルドでクレイジーウルフ52頭を納品した。そして、ギルドに、クレイジーウルフの魔石の取り出しと解体、魔石、肉、毛皮の買取を頼んだ。
昨日の今日である上に、52頭と言う桁違いの討伐数に、ギルド内は騒然となっている。
その晩、宿屋でわが妻全員とのむふふな展開を楽しんで、カンストしてない3人の魔力量上限を100ずつ上げた。
翌朝、ギルドに顔を出すと、クレイジーウルフ52頭の討伐報酬は大金貨2枚と金貨8枚になった。
そしてドーラがCランクに上がったのだが、
「わらわは何もしておらぬぞえ。」と、受付嬢に文句を言っていた。
パーティクエストの達成だから、パーティメンバーに等しく貢献度が割り振られるんだよな。笑
それから俺も正式なAランクになって、冒険者カードがシルバーカードからゴールドカードに変わった。と言ってもAランク相当となんも変わんない。笑
俺がBランクに上がってからあとひと月で1年になるそうで、普通はBランクからAランクは1年以上開けるのだが、俺は実績のせいで早々にAランク相当になっていたため、1ヶ月前倒しして正式なAになるそうだ。
ってか、Aランク相当でわが妻たちを口説いていいってことになって、すでに結婚してしまったので、もう冒険者ランクはどうでもいいってのが本音である。
さて、坊主で帰って来るであろうゲオルク学校は依頼未達成であるが、一緒に受けた俺たちが依頼を達成しているので、依頼失敗にはならない。
ゲオルク学校を明後日まで待つ気はないし、チンタラしている王都の役人どもを待つつもりもない。役人どもは、やっと着いた西府で、俺たちがすでにバレンシーへ向けて先発したと聞けば、さらに焦るだろう。
俺たちはギルドに、ゲオルク学校への手紙と今回のクエストの分け前として金貨5枚を預け、役人どもにはバレンシーへ向かうとの伝言を頼んで、バレンシーへ向けて西府を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/8/14
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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