精霊の加護

Zu-Y

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精霊の加護101 示談と弟子たちとの再会

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精霊の加護
Zu-Y

№101 示談と弟子たちとの再会

 王太子殿下の仲裁で、マルディノン侯爵家との示談が成立した。
 殿下はマルディノン候に、示談金として白金貨1枚を吹っ掛けた後、俺が白金貨1枚の代わりにシルヴェストルを騎士団に5年入れて、性根を叩き直すと言う案を提示すると、マルディノン候はあっさり承知した。
 これで、俺も名誉棄損の訴えを取り下げることに同意したのだ。

 シルヴェストルは駄々をこねたが、ベスに横恋慕した挙句に、俺を不貞行為、ベスを婚約不履行と不貞行為と言う、ありもしない罪で衛兵所に訴え出たのだから、当然の報いである。
 ベスに相手にされないから逆恨みとかって、騎士団で性根を叩き直してもらって来いってんだ。

「スピリタス伯は残れ。」
 殿下のこのひと言でマルディノン候とシルヴェストルは殿下の執務室を後にした。もちろん、シルヴェストルはそのまま騎士団詰所に連行されたがな。
 これから5年間、実家とは無縁の騎士団の宿舎に入ってしっかり鍛え直してもらって来い。ざ・ま・あ♪
 俺とわが妻たちと精霊たちは殿下の執務室に残った。

「ゲオルクよ、余が何を言いたいか分かっておろうな?」
「はい。帝国行きですね。」
「うむ。確かにそれもあるが、その前に言うておきたいことがある。それについて、心当たりはあるな?」
「はい。マリー様のことですね。もう腹を括りました。10年後には…。」
「違うわ!分かってて惚けおるのか!」
「はて?殿下はいったい何をお怒りで?とんと心当たりがございませぬ。」
「昨夜のことだ。いくら側室とは言え、嫌がる者を手籠めにするとは何事ぞ!」
「はあ?昨夜のは、お代官様プレイでございますよ。」
「なんだと?」

「それにしても侍女どのたちは、もう覗かぬと言っていたのに、性懲りもなく、また覗いてたんですな。それを殿下にご注進ー!ですか?いやはや、とんだ痴女どのたちで。」
「たわけ、痴女とは何たる言い草だ!」
「いえ、侍女と言ったんですよ。でも痴女ですか。上手い言い回しですね、殿下。使わせて頂きます。」
「そなたが言ったのではないか!余のせいにして誤魔化すな!
 そんなことより、ほんとに無理やりではないのだな?」
「違いますよー。大体無理やり犯ってたら、今ここで俺と一緒にいたり、こんなに和んでたりしないでしょう?」俺はこれ見よがしにドーラの腰に手を回して引き寄せた。
「あ、主様♥」

「ドーラ、そなたが一番嫌がっていたと聞いたが、違うのか?」
「わらわたち龍族は、発情期以外は番わぬゆえ、確かに最初は抵抗があったのじゃがな、主様に散々攻め立てられて…、あっ、いかぬ。思い出したら、か、体が…。」悶え出すドーラ。両腕で自分を抱き、くねくねもじもじし出した。
 こ、これは。頂のポチリをつんつんしたら面白そうだ。笑
「分かった。もうよいわ。バカバカしくてやってられん。」殿下がそっぽを向いた。

「殿下、ひとつ提案があるのですが?」
「ん?何の提案だ?」
「今後は、痴女どのたちふたりに見て来たことを実演させてはいかが…。」
「もうよいっ!」
「えー、その方が痴女どのたちも喜びましょうに。」
「黙っておれ。それに痴女と呼ぶなと言っておろうが!」
「ははっ。」この辺でやめとこう。これ以上引っ張ると殿下の怒りが爆発しかねないからな。何ごとも引き際が肝心なのだ。苦笑

 しばらくこめかみを揉んでいた殿下が話し始めた。
「さてゲオルク、帝国だがな、王帝同盟を受け入れると言って来た。しかし、そなたの領内巡視と身内の帝国留学、つまり人質は同盟の条件から外して欲しいそうだ。それと、反王国派で南部に工作を仕掛けて来た連中は、帝国で罰を与えるゆえ、任せて欲しいとのことだ。
 ゆえにそなたを同盟締結使節団の正使としてボドブリ帝国に遣わす。余の真意は分かるな。」
「はい。人質を出させて、ボドブリ帝国内を巡視して、反王国派の首謀者はひっ捕らえて来ます。」
「うむ。それでいい。もしごねよったら、多少は暴れて来てもよいぞ。」
「多少はと言いますと、民間人に被害を与えなければ、皇帝の住まいぐらいはぶっ潰して来てもよろしいので?」
「はっはっはっ。いつぞやのミュンヒェーの領主館みたいにか?構わんぞ。皇帝を震え上がらせて来い。」
「承知しました。」ミュンヒェーの領主館はぶっ潰すまではやってないんだけどな。

「よし、いつ発てる?」
「殿下、俺たちは冒険者ですよ。今からでも発てます。」
「いや待て、随行する者たちの準備ができておらん。」
「じゃあ俺たちが先に発ちますよ。随行する者たちには、急いで追わせて下さい。西府でクエストを受けてますんで、そこで合流でいいですか?それともバレンシーで合流します?」
「いや、馬車の準備もできてなくてな。」

「馬車のメンテは終わってるのでしょう?馬も王宮にはふんだんにいますよね?後は何が足りないんです?」
「いや、御者がな。」
「それなら俺たちでやりますよ。」
「待て、正使とその側室たちが御者をやると言うのはちょっとな。」
「どうせ役人どもはちんたらやってるのでしょう?俺たちがさっさと発ったと聞けば、少しは急ぐんじゃないですか?同盟締結に関わるのは奴らにとっては、功績になるんですよね?だったらそれに置いて行かれたとなれば、嫌が応でも焦るんじゃないですか?」
「なるほど、それも一理あるな。よし分かった。すぐ発て。西府で合流だぞ。」
「西府で数日待っても追い付いて来なければ、バレンシーに行きますよ。」
「それもよかろう。しかしな、バレンシーでは合流まで待つのだぞ。決してそなたらだけで帝国に行くなよ。」
「はい。」一応素直に返事はしておいたが、出たとこ勝負だぜぃ。くくく。

「それとな、帝国では、ゆめゆめ油断するでないぞ。暗殺を仕掛けて来るかもしれんからな。」
「そうですね。しかしこちらには精霊たちがいます。妙な気配はすぐに感じ取ってくれるでしょう。」
『『『『『『『『任せて!』』』』』』』』

 そう言う訳で俺たちは、その後すぐに、外交用の4頭立ての馬車に乗って王都を出発した。目指すは西府だ。

 今は馬の扱いが得意なベスが御者をやっている。ドーラが、ベスの横でいろいろ学んでいる。俺は残りの嫁と馬車の中にいた。
 ちなみにベスが御者をやっているとき、ベスの愛馬のスノウは、御者席の横にぴったり並走している。そうするとスノウにべったりなナイトもそのまわりにいる。笑

 西府と言えばゲオルク学校…じゃなかった、アルマチとホレルはどうしてるだろうか?
 直近の奴らとの絡みでは、調子に乗った奴らを、俺が見放したようにしてわざと冷たく突き放してやった。あれで反省して精進していればいいのだがな。
 アルマチとホレルは合流して非常にバランスのいいパーティになったが、小娘3人が甘えん坊で世間知らずなのだ。もっとも男のふたりのうちひとりもガキンチョだがな。リーダーをやっているホルヘだけが、まあまともな方だろう。

 最後に一緒に行動したとき、俺の精霊たちのかわいい悪戯にごねたゲオルク学校の小娘3人~マチルダとレベッカとルイーザ~は、そのことで俺の逆鱗に触れた。
 精霊たちに楯突くなど、精霊魔術師である、俺を蔑ろにしたのも当然。雷を落として、追っ払ってやった。
 男のひとりのアルフォンソもこっちの気遣いが分からないクソガキだから、突き放している。
 とは言え、西府で面倒を見て来たかわいい教え子どもだから、多少なりとも気には掛かるのだ。

 ゲオルク学校…じゃなかった、アルマチとホレルは、西府を本拠にしているから、西都で受付主席を務めていたカルメンも、かわいがっていた。
「お前さん、随分西府に向けて急ぐじゃないか。やっぱりゲオルク学校が気になるんだろう?」
「アルマチとホレルな。
 まあ、気にはなるな。反省して奮起してればいいが、いじけて腐ってるなら流石に縁切りだけどな。」
「あいつらはそんなに馬鹿じゃないと思うよ。」
「そうだといいけどな。まともなの1と、ガキンチョ1と、身の程知らずの甘えん坊が3だぜ。まともとそうじゃないのと言う括りなら1:4じゃないか。」
「あたしの評価は違うねぇ。まとも1、何も考えてないの1、お前さんにべた惚れが3だ。」
「ホルヘとアルの評価は同じか。それと俺は、ションベン臭い小娘は本気でお断りだ。俺は成熟した大人の女が好みなんだよ。」
 そう言ってカルメンの腰に手を回すと、ピシッと伸ばした手を叩かれ、
「道中は我慢しな。」と、つれない返事だ。苦笑
 ま、本音のところでは、奴らがちったぁ、ましになってることを期待してるんだけどな。

 西府への道中、何度か魔物と遭遇した。ビッグボア、オーク、人面樹などだ。わが妻たちが颯爽と狩ってしまった。
 カルメンが味方にバフ、敵にデバフを掛け、ジュヌが魔法障壁を張る。リーゼが遠目から攻撃魔法で削って、到達した魔物をベスが盾で止めて槍で突き、ビーチェが華麗な刀術の餌食にするし、ドーラが大剣を振りまわして薙ぎ払う。
非常に見事な連携だ。
 ここんとこ、精霊魔法に頼りっぱなしの俺は、遠矢、動き的、速射、精密狙いと言った弓矢の技を駆使して、弓矢の腕が鈍らないようにしている。

 ソルは、カルメンと一緒にバフの重ね掛けで活躍してるが、他の精霊たちは、出番がないのにぶー垂れている。俺はむくれた精霊たちのご機嫌を取るのにひと苦労である。苦笑

 野営をしたり、途中の町に泊まったりしながら、そんな感じで馬車旅を数日続け、西府に着いた。
 西府ギルドに入ると、昼過ぎと言うこともあって冒険者たちの数は少ない。ギルドにいない奴らはクエストで、ギルドにいる奴らは呑んだくれている。どこのギルドも似たようなもんだ。笑

「あー、カルメンさん!お帰りなさい!」受付嬢のひとりが、カルメンを見付けて、カウンターから飛び出して来た。その声を聞き付けた他の受付嬢たちもわらわらと出て来て、カルメンを取り囲む。
「こらこら、あんたたち、仕事中だろ。」
 姐御肌のカルメンは面倒見がよく、後輩の受付嬢たちの失敗のフォローをいつもやっていた。だからこそこうやって慕われているのだ。

 もちろん若い冒険者たちのこともよく気に掛けていて、背伸びした若い冒険者たちが、実力不相応のクエストを受けようとすると、止めたりもしていた。
 それと、初物食いが好きだったカルメンには、当時の俺もそうだが、別の意味で面倒を見られていたりもする。もっとも俺は初物じゃなかったがな。笑

「お前さん、今、何か失礼なことを考えてたろ?」
「え?お前さん…って?」受付嬢のひとりが反応した。
「皆もゲオルクのことは覚えてるだろう?」
「覚えてますよ。カルメンさんを引き抜いた飛んでもない奴ですからね。」受付嬢たちから一斉に睨まれた。あらら、俺って、評判悪そう。前回はこんな雰囲気じゃなかったのになー。苦笑
「あたしゃ結婚したんだ。このゲオルクとね。」
「えー?」×多。
「なんだよ、皆、そんなに驚くことはないだろう?あたしが結婚しちゃいけないってのかい?」
「そんなことはないですけど、よりによってゲオルクさんとですか?」
「おいおい、酷い言われようだな。」

「そもそもゲオルクさんは、パーティメンバーとしてカルメンさんを引き抜いたんですよね?それなのにカルメンさんに手を付けるなんて!」
「いやいや、確かにパーティメンバーとして引き抜いたけどさ、カルメンのことは、西府に来た日からずっと狙ってたぜ。」
「おや、嬉しいことを言ってくれるねぇ。お前さん。」カルメンがデレたので、すかさず抱き寄せる。
 俺を見ていた受付嬢たちが全員ジト目になった。笑

 ちょうどそのタイミングで…、
「キングシンバ3頭、狩って来たぜーって、あれー、師匠じゃないっすかぁ!あー、カルメンさんも!」ホルヘだ。
「え、師匠?俺たちがDランクに上がったから駆け付けてくれたんですか?」アルフォンソだ。
「「「師匠ー!」」」
マチルダとレベッカとルイーザが抱き付いて来た!

「うえーん、じじょー、あのどぎは、ずびまぜんでじだー!」
「うえーん、やっどDラングになりばじだー!」
「うえーん、ごででゆるじでもだえまずよねー!」
 3人ともギャン泣きだ。「師匠、あのときはすみませんでした。」「やっとDランクになりました。」「これで許してもらえますよね。」と言ってたようだ。苦笑

 以前、帝国への威嚇のために、帝国との国境の町バレンシーへ、帝国側の国境の砦を殲滅しに行ったとき、西府からアルマチとホレルを同行させた。
 バレンシーで、精霊たちがかわいい悪戯をしたのだが、それを真に受けたマチルダとレベッカとルイーザが拗ねて、精霊たちが詫びているのに、それを無視したのだ。
 そもそも精霊たちの悪戯は、決してこの3人をターゲットにしたものではなかった。俺を困らせるためにいつも仕掛けて来るやつである。そう、俺にロリコン疑惑が掛かる程度の他愛もないものだ。

 大体、あの悪戯で3人が拗ねること自体、俺や精霊たちの知ったことではないのだ。
 精霊たちの詫びを無視して拗ね続けている3人に俺が激怒し~と言っても激怒したフリなのだが~、アルの気が利かない対応にも不満があったので、バレンシーからの帰路はアルマチとホレルを突き放して別行動を取った。
 許しを請う奴らに、Dランクになったら許すと言ってな。

「あー、あー、許す。許す。だから泣くのをやめろ。」小娘3人がビービーとウザい。これだからガキは…。
「ほらほら、あんたたち。子供みたいに泣くんじゃないよ。」カルメンが小娘3人を宥めている。
「「「ううう~、ひっく。うう…。ぐすっ。」」」
「ほらほら3人とも、美人が台無しじゃないか。うちの人はね、大人の女が好きなんだ。だから子供みたいに泣いてちゃ、愛想付かされちゃよ。」
 3人がピタッと泣きやんだ。おいおいウソ泣きだったんじゃねぇだろーな。笑

 ゲオルク学校、じゃなくてアルマチとホレルの5人は、最近Dランクに上がったようだ。
 5人は、自分たちがDランクになったことを聞き付けた俺が、わざわざ許しに来てくれたと思っているようだが、それは違う。単なる偶然だ。まあでもそれは黙っておく。笑

 この夜、アルマチとホレルのDランク昇格を祝って、夕餉を奢ってやった。
 俺がゲオルク学校とは言わずに、アルマチとホレルと言う呼び方を使っていると、カルメンからクレームが来た。
「お前さん、前回、生ぱふぱふでゲオルク学校を認めると言う約束だったじゃないか。」
「そうだけどさー、照れ臭いんだよ。」
「それでもさ、男が一旦した約束を反故にしちゃあ、男を下げるよ。」
「だなー。仕方ない。我慢するか。」

「前も気になったんですけど、そのぱふぱふって何ですか?」レベッカが聞いて来た。そう言えば前回もこいつが聞いて来た気がする。あのときはお茶を濁したが…。
「あー、うちの人の顔をさ、おっぱいに挟んで両横からぱふぱふってやってやるんだよ。」カルメンがシレっと答えた。
「「「「ええー!」」」」「…。」前回の会話で思い至っていたマチルダだけは俯いたが、他の4人は大層反応した。
「それに生が付いたらさー、分かるよねー。」ビーチェが煽った。
「えっ、えっー?」「え、どういうこと?」「…。」「くー、羨まし過ぎる。」「師匠、まさか全員と?」
 レベッカは不意を突かれてテンパり、ルイーザは分かったくせに惚け、マチルダは真っ赤になって俯き、アルは素直な感想を述べ、ホルヘは冷静に全員とか?と聞いて来た。いやぁ、性格が出るなぁ。

「そりゃあな、皆、わが妻だからな。」
「でも、前回って、結婚前ですよね。婚約はしてるって言ってましたけど。」
「そうだけど、カルメンには、会ったその日にぱふぱふをしてもらったぜ。」そしてそれ以上のこともな。もっともそれ以来は躱され続けたけど…。
「いいなぁ。」アルがまた素直な感想を呟いたのだが…、
「アル、あんたいい加減にしなさいよ。」
「あ、マチルダ、ごめん。マジごめん。その言葉の綾って言うかさ…。本気じゃないから。」
「ふんっ。」そっぽを向くマチルダ。
「違うって。マチルダにぱふぱふしてもらうことを想像して、いいなって言ったんだよ。」
「あ、あ、あんた、何言ってるのよ!」真っ赤になって怒るマチルダ。
「あ、やべっ。」失言に気付いて、真っ青になるアル。

 マチルダとアル以外がどっと笑った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/8/14

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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