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精霊の加護100 王太子殿下の仲裁
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精霊の加護
Zu-Y
№100 王太子殿下の仲裁
王教同盟を祝う晩餐会が続いている最中、俺たちを訪ねて来た男がいる。
「ゲオルク・スピリタス卿。初めてお目に掛かる。わしはマルディノン侯爵だ。」ああ、あのシルヴェストルの父親か。
「あ、これは、ご丁寧に。ゲオルク・スピリタスです。」
「此度は愚息が飛んだご迷惑をお掛けしたようで相すまぬ。
エリザベスどのもすまなんだ。御父上にも詫状を送った。」
「で、シルヴェストルどのはどうされるおつもりで?」
「きつく叱りおいた。それゆえ、名誉棄損の訴えは取り下げてもらいたい。」え?それだけ?
「あのような言い掛かりを付けて来たのに、叱っただけですか?それで許せと?」
「わしがこうして直に詫びに来ておるではないか?」
「話にならんな。このような席で話すことではない。明日、出直して来い。シルヴェストルも連れて来て、俺たちにしっかり詫びさせろよ。」
「なんだと?侯爵に対してその態度は無礼ではないか?」
「ふざけるな。お前こそ、それが詫びに来ている者の態度かよ?」
俺がイラっとしたのを敏感に感じ取った精霊たちが軽く怒気を発すると、マルディノン侯爵は、その圧に耐えかね、その場に座り込んだ。
「ゲオルク卿、ちょっとこっちに参れ。側室たちも精霊たちも連れて参るのだぞ。」王太子殿下からお声が掛かった。どうやら険悪な雰囲気を察したらしい。
「殿下のお呼びだ。失礼する。」
「…。」マルディノン侯爵は逃げるように席へと戻って行った。
「いかがしたのだ。」殿下が聞いて来た。
「すみません、実は…。」
俺は詳細を話した。もちろん殿下は詳細を把握していた。
「まったくしょうがないな。あの男は。実は先程、衛兵隊から詳しい報告を聞いたので、すぐにマルディノン侯を呼んで、此度はシルヴェストルが一方的に悪いゆえ、しっかり詫びて収めよと申し付けたのだ。」
「詫びたと言えば詫びましたよ。『愚息が迷惑を掛けて相すまぬ。』『叱ったからこれで訴訟を取り下げろ。』『わしが直に詫びに来たではないか。』だそうです。」
「まったくいい歳をして、あの男は示談のまとめ方も知らぬのか?まあよい、もう一度言って聞かす。賠償金は白金貨1枚もあれば十分であろう?」
「いやいやいやいや、なんでそんな高額になるんですか?」
「お前と拗れたら、バース伯とも拗れるのだぞ。小競り合いにでもなってみよ、下手すれば内乱になるわ。さすれば原因を作ったマルディノン家は爵位剥奪の上、改易にせざるを得ぬ。そう考えれば白金貨1枚など安いものよ。」
「俺としちゃあ、シルヴェストルを一から鍛え直してもらえばそれで十分ですよ。」
「鍛え直すとな?」
「騎士団か近衛隊か衛兵隊で何年か、徹底的に性根を叩き直せばいいんじゃないですか?」
「ふむ、訴訟に負けて強制労働を食らうよりずっとましだな。よし、マルディノン侯には、白金貨1枚かシルヴェストルの数年間の兵役のいずれかを選ばせよう。それなら訴訟は取り下げでよいな。」
「どちらも飲まなきゃ訴訟は取り下げませんよ。」
「貴族の子弟が横恋慕で婚約不履行と不貞行為をでっち上げ、逆に名誉棄損で訴訟を起こされるなど、前代未聞だ。事の真相が公になれば、マルディノン家は笑いものになるだけだ。訴訟は絶対に避けたいだろうよ。」
「ではそれでお願いします。」
「そうだ、ついでに紹介しておこう。」
俺は、王太子殿下に、王后陛下、王妃殿下、一の姫殿下、二の姫殿下を紹介された。
確かに4人ともボン・キュッ・ボンだ。遺伝的素質はマリー様にも備わっていると見てまず間違いない。
ちなみに、国王陛下の御正室の王后陛下と御側室の王妃殿下は、従姉妹なのだとか。
「ゲオルク、マリーの遺伝的素質は理解したな。」王太子殿下が俺の耳元で囁いた。ぶんぶんと頷く俺。
その流れで、お約束通り、マリー様にドーラを紹介しに行った。もちろん他のわが妻たちも連れてな。
「マリー様、龍人のドーラを紹介します。」
「まあ、こちらが!初めまして。マリーです。」
「わらわがドーラじゃ。マリー姫はかわいいのう。」ドーラは遠慮がない。それもそのはず、ドーラの正体はエンシェントドラゴンだから、龍族の王のようなものなのだ。
「ドーラ、私は龍人と会うのは初めてです。本当に龍の角が生えているのですね。」
「そうなのじゃ。よく飾り物と間違われるがの。」
「そうなんですね。」マリー様はご機嫌だ。
「あのー、立ち入ったことを伺いますが、ドーラはエンシェントドラゴンなのですよね?」マリー様がドーラに尋ねた。
「そうなのじゃ。主様から聞いたのじゃな。」
「はい。」マリー様が眼を輝かせている。
「ここではドラゴンに変身できぬぞ。大騒ぎになるゆえな。」茶目っ気たっぷりにドーラが言うと、マリー様は、うふふと笑った。かわいい♪
「それと皆さん、ゲオルク様から聞きました。いろいろアドバイスをありがとうございます。あれからミルクは毎日飲んでおりますのよ。」
「三の姫様、努力はいつか報われましょうぞ。」マリー様と顔見知りのベスが代表して挨拶していた。
一方、平民出身のリーゼ、ジュヌ、カルメン、ビーチェは大人しくしている。まだ、王族との会話には慣れていないのだろう。笑
その後も和やかに晩餐会は続いた。マルディノン侯爵は、その後は寄り付いて来なかった。精霊たちによるお灸が、余程堪えたらしい。笑
無事晩餐会が終わって部屋に戻り、皆で風呂に入った。
精霊たちを洗ってやり、湯船の中でわが妻たちのメロンボールをつんつんして、イチャイチャを満喫した。笑
風呂から上がって火照った体を湯冷まししたので、そろそろベッドに入るか。と言っても睡眠に就くのはずっと先だ。そりゃあ、ねぇ、これからやることあるしさ♪
わが妻たちもベッドに入って来た。これからは、むふふな大人の時間である。実は、今夜はぜひとも試したいことがあるんだよね。
6連ぱふぱふの後、俺はドーラを集中攻撃した。
「主様、どうしたのじゃ?なぜわらわだけ?」
「昼間『満月以外は発情しない。』と言ったよな。ほんとにその気にならないか試したくてな。」
「発情はしておらんが、攻められたら気持ちはいいのじゃ。」
「そうかそうか、ほれほれ。逃がさんぞ、観念せい。」
「うわー、ダーリン、悪代官みたいだー。」
「う、くっ…。あ、そこは、らめなのじゃー。ああー、そこもやめてたもー。あひぃー。」おお、ドーラもノリノリじゃんよ。
結論から言うとドーラは大いに乱れて、当然の如く最後まで行った。何が満月の夜しか発情しないだ。大笑
「ううう、わらわとしたことが、満月ではないと言うに番うてしもうた。しくしく。この龍人の体がいかんのじゃ。感度が良過ぎるのじゃ。めそめそ。しかも、発情期じゃなくても番う人族の気持ちが分かってしもうたのじゃ。ぐすっ。」
そう言ってベッドで、半泣きで放心しているドーラを横に、大丈夫な日と言うことを確認して、残りのわが妻たちとも久しぶりに最後まで行ったのだった。
俺は、終始悪代官キャラに徹して、わが妻たちを蹂躙した。
もちろんわが妻たちも、「あーれー。」とか、「お許し下さい。」とか、「くっ、ころ…。」とか、「らめー。」とか、「お嫁に行けない。」とか、超ノリノリで。
ちなみに最後の台詞には「いやいやお嫁には行ってるだろ!」と、思わずツッコミを入れてしまったけどな。笑
あ、そう言えば今日って俺の誕生日じゃん。それで今日は、最後まで犯らせてくれたのか!最高のプレゼントだな。
ところで部屋付きの侍女たちは覗いて…じゃなかった、監視しているのだろうか?ま、そんなこたぁ、どうでもいいけどね。
翌朝、殿下からの使いが来た。午前中にわが妻たちを連れて、執務室に出仕せよとのことだ。
そこで早速、わが妻たちと精霊を伴って殿下の執務室に行った。精霊たちは特に呼ばれてはいなかったが、当然ついて来た。精霊たちは俺とセットだからな。
殿下の執務室に着くと、中から殿下の声が聞こえて来る。
「余はそこなシルヴェストルが一方的に悪いゆえ、詫びて収めよと申したはずだが?」
なるほど、殿下は昨日仰ってた通り、早速仲裁をしてくれている訳か。シルヴェストルも呼ばれているのだな。
「いえ、私が直に詫びに行ったのですが、スピリタス伯は、無礼な態度を取りましてございます。」なんだよ、俺の態度が悪いってか?
「揉めたのか?いかような示談の条件を出したぞ?」
「ゲオルク・スピリタス、お召しにより参上仕りました。」
「スピリタス伯、来たか。ちょうどマルディノン候に事実関係を確認しておったところだ。」
俺とわが妻たちと精霊たちが執務室に通されると、やはり、マルディノン侯爵とシルヴェストルがいた。
シルヴェストルは俺を睨んで来たが、マルディノン侯は、昨日の晩餐会で精霊たちに軽く威圧されているから、眼を逸らした。
「で、マルディノン候、話を戻すが、そなたが提示した示談の条件を申してみよ。」
「はぁ、私が直接詫びに出向いたのと、シルヴェストルを叱り置いたゆえ、訴訟を取り下げるように申しました。」
「スピリタス伯、間違いないか?」
「その通りでございます。」
「で、示談金はいくらを提示したのだ?」
「え?示談金ですか?…そのようなものは提示しておりませぬが?」
「マルディノン候よ、そなたはいい歳をして、示談のまとめ方も知らぬのか?」
「あ、いえ…。」
「スピリタス伯とその妻エリザベスはな、そこなシルヴェストルにより、事実無根の婚約不履行と不貞行為を訴えられ、衛兵隊の取り調べを受けたのだぞ。
マルディノン候、そなたにも、そしてバース伯にも確認したが、シルヴェストルとエリザベスは、婚約には至っていなかったのは間違いなのであろう?」
「確かにそうですが、ずっと縁談の使者は送っていたのです。侯爵家からの再三の縁談の申し入れを、格下の伯爵家が断ると言うのはいかがなものでしょう。」
「何を申される。そこな腰抜けの次男坊など、誰が伴侶として選ぶものか!」ベスがきっぱり言い切ると、
「なんだと?」シルヴェストルがいきり立った。
「エリザベス、シルヴェストル、控えよ。」
ふたりを制して殿下は続ける。
「つまりだ、シルヴェストルからエリザベスへの求婚をエリザベスは断り続けており、そのエリザベスがスピリタス伯と結婚したと言うことで間違いないな。」
「それは、そうですが…。」
「では、シルヴェストルの申し立てたエリザベスの婚約不履行は、婚約自体がなかったのだから、事実無根だな。よって両名の不貞行為も成立しなくなる。マルディノン候、この事実認定に不服はあるか?」
「…ございません。」
「父上!」シルヴェストルが泣き付いた。
「シルヴェストル、事実と違うと申すか?許す。その根拠を述べよ。」
「はい、殿下。私は15の折の子弟披露目の儀でエリザベスどのを見初め、再三求婚して参りました。女だてらに北部騎士団に入ってからもです。その北部騎士団を辞め、いよいよ私の求婚を受ける気になったかと言うところで、その者と結婚したのです。」
「その通りだとして、どこで婚約が成立していたのだな?」
「私の求婚にほだされて北部騎士団を辞めたのですから、そこで婚約が成立していることになります。」
「私が北部騎士団を辞めたのは、そなたの求婚に応じたからではないのだが。」
「今更、何を言うか!」
「私が北部騎士団を辞めたのは別の理由だ。そもそもそなたからの求婚が、最近まで届き続けていたなどと言う話は、わが君を将来の夫として選んだと、父上に報告しに行ったときに、初めて聞いたのだ。」
「バース伯が握り潰していたと言うことか?」
「違うな、私はすべての縁談を断るように父上にお願していたのだ。」
「なぜだ?」
「私は強い男が好きだ。私を侮辱した4人の騎士団員をたったひとりで瞬時にねじ伏せるような男がな。そのような男が初物と聞けば飛び付く。初物食いも好きだからな。もっとも、翌朝になって、北部の女は初めてだったと抜け抜けと言い放ちおった。こう言う太々しさと強かさにも、私は大いに惹かれるのだ。
なあ、わが君。」
「ここでそれ、言っちゃう?」赤面もんだよ、まったく。
「そうだな。思わず言ってしまった。何やら恥ずかしくなって来てしまったな。」
俺はベスを引き寄せ、キスをした。呆気に取られる一同。横でわが妻たちはくすくすと笑っている。
「こら!ゲオルク、控えんか!」
「あ、殿下。すみません。つい…。」
「つい…、ではないわ。たわけ。場所を弁えよ。
こほん、婚約不履行も不貞行為も事実無根。ゆえにシルヴェストルの訴えはスピリタス伯とその妻エリザベスの名誉を著しく棄損した。この事実が公になれば笑いものになるのは、マルディノン侯爵家。マルディノン侯爵家の威信は地に落ちような。」
「「…。」」
「そこで示談だが、マルディノン候。スピリタス伯は白金貨1枚で訴えを取り下げると言っている。」俺は言ってねぇけどな。てか、示談金よりも、シルヴェストルに灸を据えてやりたいのだが。
「なんと法外な。」だよねー。俺としてはマルディノン候の意見に賛成だな。
「そうでもないぞ。示談をまとめなければ、そなたはスピリタス伯とバース伯を敵に回す。小競り合いから内乱にでも発展してみよ。その責任は100%マルディノン家ゆえ、内乱の罪を一身に背負わされ、マルディノン家は爵位剥奪の上、領地没収、改易されて家名断絶だ。どうだ、白金貨1枚など安いものであろう?」
「くっ、確かに。」ちょちょちょっ、納得しちゃうのぉ?爵位剥奪、領地没収、改易、家名断絶と畳み掛けられて、小心者のマルディノン候はビビっちまいやがったな。笑
「殿下、俺はシルヴェストルを数年間に兵役に就かせて性根を叩き直すと言うのでも構いません。と申し上げましたよね。」
「スピリタスどの、それは真か?」おいおい、敬称が付いたぞ。笑
「ああ、俺としてはシルヴェストルの性根を叩き直してもらう方がいい。それにマルディノン候、あんただって、この馬鹿の被害者みたいなもんだしな。」
「スピリタスどの、そこを分かって頂けるか?こ奴は昔から揉め事ばかり起こしおって…。」
「父上、兵役は嫌でございます。」
「うるさい、自分で蒔いた種であろう。そう言う女々しいところがエリザベスどのに嫌われたのだ!数年間の兵役で鍛え直してもらって来い。」おっと、マルディノン候ったら、白金貨1枚でこっちに寝返っちゃったよ。笑
「なあ、ベス。兵役で日頃の訓練が一番きついのはどこかな?」
「やはり騎士団であろうな。」
「じゃぁ騎士団に5年間ってことで。」
「スピリタス伯、寛大な条件に感謝する。誠に忝い。」マルディノン侯爵が深々と頭を下げた。
「ではそう言うことで示談成立だな。」王太子殿下がまとめた。
「父上ー!」シルヴェストルの悲鳴が殿下の執務室に響き渡った。
ベスは心底蔑むような眼で、泣き喚くシルヴェストルを見ていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/8/7
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№100 王太子殿下の仲裁
王教同盟を祝う晩餐会が続いている最中、俺たちを訪ねて来た男がいる。
「ゲオルク・スピリタス卿。初めてお目に掛かる。わしはマルディノン侯爵だ。」ああ、あのシルヴェストルの父親か。
「あ、これは、ご丁寧に。ゲオルク・スピリタスです。」
「此度は愚息が飛んだご迷惑をお掛けしたようで相すまぬ。
エリザベスどのもすまなんだ。御父上にも詫状を送った。」
「で、シルヴェストルどのはどうされるおつもりで?」
「きつく叱りおいた。それゆえ、名誉棄損の訴えは取り下げてもらいたい。」え?それだけ?
「あのような言い掛かりを付けて来たのに、叱っただけですか?それで許せと?」
「わしがこうして直に詫びに来ておるではないか?」
「話にならんな。このような席で話すことではない。明日、出直して来い。シルヴェストルも連れて来て、俺たちにしっかり詫びさせろよ。」
「なんだと?侯爵に対してその態度は無礼ではないか?」
「ふざけるな。お前こそ、それが詫びに来ている者の態度かよ?」
俺がイラっとしたのを敏感に感じ取った精霊たちが軽く怒気を発すると、マルディノン侯爵は、その圧に耐えかね、その場に座り込んだ。
「ゲオルク卿、ちょっとこっちに参れ。側室たちも精霊たちも連れて参るのだぞ。」王太子殿下からお声が掛かった。どうやら険悪な雰囲気を察したらしい。
「殿下のお呼びだ。失礼する。」
「…。」マルディノン侯爵は逃げるように席へと戻って行った。
「いかがしたのだ。」殿下が聞いて来た。
「すみません、実は…。」
俺は詳細を話した。もちろん殿下は詳細を把握していた。
「まったくしょうがないな。あの男は。実は先程、衛兵隊から詳しい報告を聞いたので、すぐにマルディノン侯を呼んで、此度はシルヴェストルが一方的に悪いゆえ、しっかり詫びて収めよと申し付けたのだ。」
「詫びたと言えば詫びましたよ。『愚息が迷惑を掛けて相すまぬ。』『叱ったからこれで訴訟を取り下げろ。』『わしが直に詫びに来たではないか。』だそうです。」
「まったくいい歳をして、あの男は示談のまとめ方も知らぬのか?まあよい、もう一度言って聞かす。賠償金は白金貨1枚もあれば十分であろう?」
「いやいやいやいや、なんでそんな高額になるんですか?」
「お前と拗れたら、バース伯とも拗れるのだぞ。小競り合いにでもなってみよ、下手すれば内乱になるわ。さすれば原因を作ったマルディノン家は爵位剥奪の上、改易にせざるを得ぬ。そう考えれば白金貨1枚など安いものよ。」
「俺としちゃあ、シルヴェストルを一から鍛え直してもらえばそれで十分ですよ。」
「鍛え直すとな?」
「騎士団か近衛隊か衛兵隊で何年か、徹底的に性根を叩き直せばいいんじゃないですか?」
「ふむ、訴訟に負けて強制労働を食らうよりずっとましだな。よし、マルディノン侯には、白金貨1枚かシルヴェストルの数年間の兵役のいずれかを選ばせよう。それなら訴訟は取り下げでよいな。」
「どちらも飲まなきゃ訴訟は取り下げませんよ。」
「貴族の子弟が横恋慕で婚約不履行と不貞行為をでっち上げ、逆に名誉棄損で訴訟を起こされるなど、前代未聞だ。事の真相が公になれば、マルディノン家は笑いものになるだけだ。訴訟は絶対に避けたいだろうよ。」
「ではそれでお願いします。」
「そうだ、ついでに紹介しておこう。」
俺は、王太子殿下に、王后陛下、王妃殿下、一の姫殿下、二の姫殿下を紹介された。
確かに4人ともボン・キュッ・ボンだ。遺伝的素質はマリー様にも備わっていると見てまず間違いない。
ちなみに、国王陛下の御正室の王后陛下と御側室の王妃殿下は、従姉妹なのだとか。
「ゲオルク、マリーの遺伝的素質は理解したな。」王太子殿下が俺の耳元で囁いた。ぶんぶんと頷く俺。
その流れで、お約束通り、マリー様にドーラを紹介しに行った。もちろん他のわが妻たちも連れてな。
「マリー様、龍人のドーラを紹介します。」
「まあ、こちらが!初めまして。マリーです。」
「わらわがドーラじゃ。マリー姫はかわいいのう。」ドーラは遠慮がない。それもそのはず、ドーラの正体はエンシェントドラゴンだから、龍族の王のようなものなのだ。
「ドーラ、私は龍人と会うのは初めてです。本当に龍の角が生えているのですね。」
「そうなのじゃ。よく飾り物と間違われるがの。」
「そうなんですね。」マリー様はご機嫌だ。
「あのー、立ち入ったことを伺いますが、ドーラはエンシェントドラゴンなのですよね?」マリー様がドーラに尋ねた。
「そうなのじゃ。主様から聞いたのじゃな。」
「はい。」マリー様が眼を輝かせている。
「ここではドラゴンに変身できぬぞ。大騒ぎになるゆえな。」茶目っ気たっぷりにドーラが言うと、マリー様は、うふふと笑った。かわいい♪
「それと皆さん、ゲオルク様から聞きました。いろいろアドバイスをありがとうございます。あれからミルクは毎日飲んでおりますのよ。」
「三の姫様、努力はいつか報われましょうぞ。」マリー様と顔見知りのベスが代表して挨拶していた。
一方、平民出身のリーゼ、ジュヌ、カルメン、ビーチェは大人しくしている。まだ、王族との会話には慣れていないのだろう。笑
その後も和やかに晩餐会は続いた。マルディノン侯爵は、その後は寄り付いて来なかった。精霊たちによるお灸が、余程堪えたらしい。笑
無事晩餐会が終わって部屋に戻り、皆で風呂に入った。
精霊たちを洗ってやり、湯船の中でわが妻たちのメロンボールをつんつんして、イチャイチャを満喫した。笑
風呂から上がって火照った体を湯冷まししたので、そろそろベッドに入るか。と言っても睡眠に就くのはずっと先だ。そりゃあ、ねぇ、これからやることあるしさ♪
わが妻たちもベッドに入って来た。これからは、むふふな大人の時間である。実は、今夜はぜひとも試したいことがあるんだよね。
6連ぱふぱふの後、俺はドーラを集中攻撃した。
「主様、どうしたのじゃ?なぜわらわだけ?」
「昼間『満月以外は発情しない。』と言ったよな。ほんとにその気にならないか試したくてな。」
「発情はしておらんが、攻められたら気持ちはいいのじゃ。」
「そうかそうか、ほれほれ。逃がさんぞ、観念せい。」
「うわー、ダーリン、悪代官みたいだー。」
「う、くっ…。あ、そこは、らめなのじゃー。ああー、そこもやめてたもー。あひぃー。」おお、ドーラもノリノリじゃんよ。
結論から言うとドーラは大いに乱れて、当然の如く最後まで行った。何が満月の夜しか発情しないだ。大笑
「ううう、わらわとしたことが、満月ではないと言うに番うてしもうた。しくしく。この龍人の体がいかんのじゃ。感度が良過ぎるのじゃ。めそめそ。しかも、発情期じゃなくても番う人族の気持ちが分かってしもうたのじゃ。ぐすっ。」
そう言ってベッドで、半泣きで放心しているドーラを横に、大丈夫な日と言うことを確認して、残りのわが妻たちとも久しぶりに最後まで行ったのだった。
俺は、終始悪代官キャラに徹して、わが妻たちを蹂躙した。
もちろんわが妻たちも、「あーれー。」とか、「お許し下さい。」とか、「くっ、ころ…。」とか、「らめー。」とか、「お嫁に行けない。」とか、超ノリノリで。
ちなみに最後の台詞には「いやいやお嫁には行ってるだろ!」と、思わずツッコミを入れてしまったけどな。笑
あ、そう言えば今日って俺の誕生日じゃん。それで今日は、最後まで犯らせてくれたのか!最高のプレゼントだな。
ところで部屋付きの侍女たちは覗いて…じゃなかった、監視しているのだろうか?ま、そんなこたぁ、どうでもいいけどね。
翌朝、殿下からの使いが来た。午前中にわが妻たちを連れて、執務室に出仕せよとのことだ。
そこで早速、わが妻たちと精霊を伴って殿下の執務室に行った。精霊たちは特に呼ばれてはいなかったが、当然ついて来た。精霊たちは俺とセットだからな。
殿下の執務室に着くと、中から殿下の声が聞こえて来る。
「余はそこなシルヴェストルが一方的に悪いゆえ、詫びて収めよと申したはずだが?」
なるほど、殿下は昨日仰ってた通り、早速仲裁をしてくれている訳か。シルヴェストルも呼ばれているのだな。
「いえ、私が直に詫びに行ったのですが、スピリタス伯は、無礼な態度を取りましてございます。」なんだよ、俺の態度が悪いってか?
「揉めたのか?いかような示談の条件を出したぞ?」
「ゲオルク・スピリタス、お召しにより参上仕りました。」
「スピリタス伯、来たか。ちょうどマルディノン候に事実関係を確認しておったところだ。」
俺とわが妻たちと精霊たちが執務室に通されると、やはり、マルディノン侯爵とシルヴェストルがいた。
シルヴェストルは俺を睨んで来たが、マルディノン侯は、昨日の晩餐会で精霊たちに軽く威圧されているから、眼を逸らした。
「で、マルディノン候、話を戻すが、そなたが提示した示談の条件を申してみよ。」
「はぁ、私が直接詫びに出向いたのと、シルヴェストルを叱り置いたゆえ、訴訟を取り下げるように申しました。」
「スピリタス伯、間違いないか?」
「その通りでございます。」
「で、示談金はいくらを提示したのだ?」
「え?示談金ですか?…そのようなものは提示しておりませぬが?」
「マルディノン候よ、そなたはいい歳をして、示談のまとめ方も知らぬのか?」
「あ、いえ…。」
「スピリタス伯とその妻エリザベスはな、そこなシルヴェストルにより、事実無根の婚約不履行と不貞行為を訴えられ、衛兵隊の取り調べを受けたのだぞ。
マルディノン候、そなたにも、そしてバース伯にも確認したが、シルヴェストルとエリザベスは、婚約には至っていなかったのは間違いなのであろう?」
「確かにそうですが、ずっと縁談の使者は送っていたのです。侯爵家からの再三の縁談の申し入れを、格下の伯爵家が断ると言うのはいかがなものでしょう。」
「何を申される。そこな腰抜けの次男坊など、誰が伴侶として選ぶものか!」ベスがきっぱり言い切ると、
「なんだと?」シルヴェストルがいきり立った。
「エリザベス、シルヴェストル、控えよ。」
ふたりを制して殿下は続ける。
「つまりだ、シルヴェストルからエリザベスへの求婚をエリザベスは断り続けており、そのエリザベスがスピリタス伯と結婚したと言うことで間違いないな。」
「それは、そうですが…。」
「では、シルヴェストルの申し立てたエリザベスの婚約不履行は、婚約自体がなかったのだから、事実無根だな。よって両名の不貞行為も成立しなくなる。マルディノン候、この事実認定に不服はあるか?」
「…ございません。」
「父上!」シルヴェストルが泣き付いた。
「シルヴェストル、事実と違うと申すか?許す。その根拠を述べよ。」
「はい、殿下。私は15の折の子弟披露目の儀でエリザベスどのを見初め、再三求婚して参りました。女だてらに北部騎士団に入ってからもです。その北部騎士団を辞め、いよいよ私の求婚を受ける気になったかと言うところで、その者と結婚したのです。」
「その通りだとして、どこで婚約が成立していたのだな?」
「私の求婚にほだされて北部騎士団を辞めたのですから、そこで婚約が成立していることになります。」
「私が北部騎士団を辞めたのは、そなたの求婚に応じたからではないのだが。」
「今更、何を言うか!」
「私が北部騎士団を辞めたのは別の理由だ。そもそもそなたからの求婚が、最近まで届き続けていたなどと言う話は、わが君を将来の夫として選んだと、父上に報告しに行ったときに、初めて聞いたのだ。」
「バース伯が握り潰していたと言うことか?」
「違うな、私はすべての縁談を断るように父上にお願していたのだ。」
「なぜだ?」
「私は強い男が好きだ。私を侮辱した4人の騎士団員をたったひとりで瞬時にねじ伏せるような男がな。そのような男が初物と聞けば飛び付く。初物食いも好きだからな。もっとも、翌朝になって、北部の女は初めてだったと抜け抜けと言い放ちおった。こう言う太々しさと強かさにも、私は大いに惹かれるのだ。
なあ、わが君。」
「ここでそれ、言っちゃう?」赤面もんだよ、まったく。
「そうだな。思わず言ってしまった。何やら恥ずかしくなって来てしまったな。」
俺はベスを引き寄せ、キスをした。呆気に取られる一同。横でわが妻たちはくすくすと笑っている。
「こら!ゲオルク、控えんか!」
「あ、殿下。すみません。つい…。」
「つい…、ではないわ。たわけ。場所を弁えよ。
こほん、婚約不履行も不貞行為も事実無根。ゆえにシルヴェストルの訴えはスピリタス伯とその妻エリザベスの名誉を著しく棄損した。この事実が公になれば笑いものになるのは、マルディノン侯爵家。マルディノン侯爵家の威信は地に落ちような。」
「「…。」」
「そこで示談だが、マルディノン候。スピリタス伯は白金貨1枚で訴えを取り下げると言っている。」俺は言ってねぇけどな。てか、示談金よりも、シルヴェストルに灸を据えてやりたいのだが。
「なんと法外な。」だよねー。俺としてはマルディノン候の意見に賛成だな。
「そうでもないぞ。示談をまとめなければ、そなたはスピリタス伯とバース伯を敵に回す。小競り合いから内乱にでも発展してみよ。その責任は100%マルディノン家ゆえ、内乱の罪を一身に背負わされ、マルディノン家は爵位剥奪の上、領地没収、改易されて家名断絶だ。どうだ、白金貨1枚など安いものであろう?」
「くっ、確かに。」ちょちょちょっ、納得しちゃうのぉ?爵位剥奪、領地没収、改易、家名断絶と畳み掛けられて、小心者のマルディノン候はビビっちまいやがったな。笑
「殿下、俺はシルヴェストルを数年間に兵役に就かせて性根を叩き直すと言うのでも構いません。と申し上げましたよね。」
「スピリタスどの、それは真か?」おいおい、敬称が付いたぞ。笑
「ああ、俺としてはシルヴェストルの性根を叩き直してもらう方がいい。それにマルディノン候、あんただって、この馬鹿の被害者みたいなもんだしな。」
「スピリタスどの、そこを分かって頂けるか?こ奴は昔から揉め事ばかり起こしおって…。」
「父上、兵役は嫌でございます。」
「うるさい、自分で蒔いた種であろう。そう言う女々しいところがエリザベスどのに嫌われたのだ!数年間の兵役で鍛え直してもらって来い。」おっと、マルディノン候ったら、白金貨1枚でこっちに寝返っちゃったよ。笑
「なあ、ベス。兵役で日頃の訓練が一番きついのはどこかな?」
「やはり騎士団であろうな。」
「じゃぁ騎士団に5年間ってことで。」
「スピリタス伯、寛大な条件に感謝する。誠に忝い。」マルディノン侯爵が深々と頭を下げた。
「ではそう言うことで示談成立だな。」王太子殿下がまとめた。
「父上ー!」シルヴェストルの悲鳴が殿下の執務室に響き渡った。
ベスは心底蔑むような眼で、泣き喚くシルヴェストルを見ていた。
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設定を更新しました。R4/8/7
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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