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精霊の加護094 策略の焚刑
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精霊の加護
Zu-Y
№94 策略の焚刑
教国の前教皇以下、数名の反王国派中心人物たちを、20年以上前の先代ミュンヒェー辺境伯夫妻暗殺の黒幕として、教国から王国へ引っ立てて来つつ、王国東部の国境の町ミュンヒェーに到着した。
そしてミュンヒェーの領主館で、現ミュンヒェー辺境伯であるハイジに面会した。
「ゲオルク様、なんとお礼を申してよいか。これで両親の仇を討てまする。」
「ああ、薄々疑ってはいたが、まさか前教皇が黒幕とはな。」
「明日にでも、王家へ処断の許可を求める鳩便を送りまする。」
「それなら不要だぞ。ハイジへの鳩便と同時に殿下にも鳩便を送っている。その中で、黒幕の処断はハイジに一任したい旨を書いておいた。もし、殿下がお許しにならなければ、前教皇の処刑をやめるようにとの鳩便が、とうに殿下からハイジに届いているはずだ。」
「何から何まで。ほんにありがとうござりまする。このご恩は生涯忘れませぬ。」
女傑ハイジが、珍しく感涙に咽た。
「ご領主様、王家より鳩便でございます。」ハイジの家臣が急報の到着を告げる。
「なんと。このタイミングでか。明日であれば処断できたものを。」ハイジはがっくりと肩を落とし、鳩便を開いた。
読み進めて行くにつれ、眼が見開かれ、満面に残忍な笑みが浮かぶ。この笑顔を見れば、鳩便の内容は一目瞭然だ。殿下は処断を許可したんだな。
と、言うことは…、帝国への無言の威圧に使うおつもりだろうか。
教国の前教皇を処刑したとなれば、帝国の皇帝の身内でも容赦はしないと言う、強いメッセージになる。
むしろ、帝国が頑なになりはしないだろうか?
そうか!そのときは徹底的にやる気なんだ。反王国の身内を差し出すか、滅亡するかを選べと、無言で迫る気なんだ。帝国がここまで煮え切らずに、恭順を逡巡して来たことを、帝国にとことん後悔させるおつもりなのだな。
「ゲオルク様。これを。」ハイジは鳩便を俺に渡して来た。これにより俺の思考はいったん中断した。
そこには『先代暗殺の黒幕以下、主だった者の処断はゲオルク・スピリタス子爵に一任する。』と書いてあった。
差出人はもちろん皇太子殿下だ。つまり殺れと言うことだな。まったく具体的に書いて寄越さないところが、ほんとに狡猾だ。ま、それくらいの方が、将来の国王として頼もしいけどな。
俺へ一任か…。
俺はハイジに一任してくれと書き送った。それなのに敢えて俺に一任か。まぁ、俺はハイジへの一任を願ったのだから、殿下から一任された俺が、ハイジに一任してもいいのだが…。
それでも俺に一任と言って来たことに、何か殿下からのメッセージがある気がする。
いや、待てよ。やはり単に殺るだけではだめだな。ハイジはバッサリと殺る気だから、それにさらにひと工夫を加えろと、殿下はお考えなのだ。
帝国を戦慄させ、それでいてこちらが後に引けなくなるような一方通行な方法ではなくて、それこそ柔軟に、かつ臨機応変に対応できるような…。そんなひと工夫か?これ、ひと工夫どころじゃねぇだろ!
くそっ!殿下め、無茶ぶりも甚だしい。
俺はしばらく黙考した。頭の中でいろいろなアイディアが目まぐるしく絡み合い、全体のイメージが固まって来た。細部を詰めて、考えがまとまった。よし、これで行こう。
こほん。と咳払いをして俺は厳かに告げた。
「アーデルハイド・ミュンヒェー辺境伯よ、王太子殿下に成り代わり、ゲオルク・スピリタス子爵が申し付ける。先代ミュンヒェー辺境伯夫妻の暗殺に関与した黒幕以下、主だった者どもを全員極刑に処せ。」
「ははー。」ハイジの奴、ノリノリでやんの。横でクララとジークが、間に受けて若干引いてるのが笑える。
「ハイジ、いかにする所存か?」
「明日、獄中にて斬首にいたしまする。」
「生温いっ!」俺は吠えた。
「え?」驚くハイジ。
「中央広場で焚刑にせよ。群衆を集め、衆目に晒すのだ。」
ごくり。ハイジが息を呑んだ。クララとジークは蒼褪めている。
「ゲオルク様、本気ですか?曲がりなりにも相手は前教皇ですが?」
「何を言っている?先代辺境伯夫妻暗殺の黒幕だ。ハイジ、腹を括らんか!」
「くくく。このわらわに腹を括れと?よくぞ申しましたな。まさか、かような仕儀になるとは思いも寄らぬことでござりました。
ゲオルク様、神の使徒かと思えば魔王のような一面をお見せになる。そなた様は、ほんに底が知れぬお方でござりまするな。」
その後ハイジの哄笑が部屋中に響き渡った。しかし、クララとジークは顔面蒼白である。
夕餉を終えて、部屋に引き上げると、ドーラがもじもじしている。
「ドーラ、どうした?」
「主様、明日は満月。よって今宵から3日間、わらわは発情期なのじゃ。今宵は子種を所望する。」
「え?」残りのわが妻たちも頷いている。あ、皆に話は通ってるのね。
ちょうど今夜は馬車旅禁欲生活明けの解禁日だしな。
そのままドーラを美味しく頂いた後、残り5人とはお口なのだった。ベスとビーチェは魔力量が上限に達しているので、リーゼとジュヌとカルメンの上限を100ずつ上げた。
翌日、ミュンヒェーの中央広場で、野次馬の群衆が見守る中に、前教皇以下数名の囚人が引き立てられた。
ハイジが堂々と威厳を持って宣言する。
「今ここに、精霊魔術師ゲオルク・スピリタス子爵のご監察の下、先代ミュンヒェー辺境伯夫妻暗殺の黒幕とその一味を焚刑に処す。」
群衆が固唾を飲んで見守る中、前教皇以下、側近の数名は磔柱に括り付けられ、足元から腰までに薪と藁束を積み上げられた。
磔柱は焼け落ちぬように太くし、表面には泥を塗っている。
前教皇たちはこの期に及んで何かを喚いているが、猿轡を噛まされているので何を言ってるかは分からない。まったく見苦しい。
準備が整うと、見物に群がった群衆はシーンと静まり返った。
貴賓席に座っていた俺が立ち上がると、シーンと静まり返った群衆の視線が俺の一身に集まる。俺は無言で采配を振るった。
俺の采配を合図に、
「やれっ。」
裂帛の気合を帯びたハイジの合図が静寂を切り裂き、松明の火が藁束と薪に次々と点された。と同時に、あっという間に火は燃え盛る。
前教皇たちは悲鳴を上げ、その悲鳴はしばらく続いた後、業火に掻き消されたのだった。
30年の長きに亘って教国に君臨し、教国を反王国路線に導いた前教皇と、その側近どもを全員焚刑に処した。これで教国とのいざこざには、終止符が打たれたのだ。
今後の教国は、親王国派の新教皇の下、同盟国として友好的な関係を築いて行くことになろう。
暗殺犯どもの焚刑が終わり、ここは遺体安置所。そこにいる数体の焼死体であるはずの塊は、呻いていた。
ソルとジュヌがその死体もどきにエクストラリペアを掛けている。ケガを治すリペア系回復魔法の最上位魔法だ。火傷はケガの一種だからな。
そう、この死体もどきは焚刑に処せられた前教皇以下、側近数名だ。
「うう。」前教皇が呻く。
「気付いたか?焚刑の感想は?」
「お許しください。」
「いや、焚刑の感想は?と聞いている。」
「お許しください。」
「答えになってないだろ?」
「お許しください。」
「ダメだ、こりゃ。」
「お許しください。」壊れたかな?
殿下の意を受けて、もっとも残忍な処刑の手段である焚刑を、群衆を集めてド派手に行った。この噂は殿下の目論見通り、帝国を直撃し、恭順か敵対かの選択において、恭順への大いなる圧力となろう。
と言うのも、選択肢の敵対が滅亡に変わることになるからな。
そう、焚刑は芝居である。もっとも前教皇以下の数名は、あれが芝居だったなどとは、今の今まで知らなかった。火に焙られ、全身に火傷を負って瀕死の状態になったのだ。
しかし炎の中の前教皇以下の囚人どもに、ジュヌとソルがリペアを掛け続けていたのだ。
なぜ助けたか?それは殿下に切り札のジョーカーを持たせるためだ。
もし焚刑の薬が効き過ぎて、王国が怖れられ過ぎるなどの不都合が起きれば、実は前教皇たちは生きている。王国の慈悲により救われていた。として逃げ道を作るのだ。
焚刑がいい塩梅で効果を発揮したら、前教皇たちは、焚刑に処せられたと思われつつ、名もなき犯罪奴隷として死ぬまで働かせるだけだ。
ハイジは、両親を暗殺した犯人たちに業火の苦しみを与え、さらに残りの生涯を犯罪奴隷として強制労働をさせるのだから、親の仇は討ったも同然。と納得してくれている。
最後に俺が采配を振るったことで、焚刑を指示したのは、ハイジではなく俺であると周囲に知らしめている。
このことは当然帝国に伝わる。そしてその俺が帝国を訪れたらどうなるか。考えるまでもない。帝国の連中は、俺に対して戦々恐々、震えあがることだろう。
そうだな、帝都では、皇帝の城を半壊にでもしてやろうか?思いっ切り傲慢に振舞ってみるかな。
その夜、ハイジの招きに応じて晩餐会に参加した。
わが妻たちはドレスを着ている。ちなみにドーラはドレスを持っていないので、適当なのを借りた。ドーラのドレスも作らないとな。もちろんスピリタス調で。なお、精霊たちはいつものまんまだ。
「ゲオルク様、なんとお礼を言ってよいか。」昨日から何度目だよ。
「ハイジ、もう礼はいいよ。昨日から何度目だっつーの。」
「はい。でもいくらお礼を言っても言い足りぬのです。両親の仇を討つと誓って20有余年、まさか本懐を遂げられようとは。」
「まぁ気持ちは分かるがな。」
「わらわは、ゲオルク様の寄子になりまする。」
「いやいや、爵位が上のハイジが、爵位が下の俺の寄子って変だから。」
「いいえ、変ではござりませぬ。ゲオルク様の爵位は、すぐにわらわの上になりまする。」
「じゃぁ、そうなったら考えるよ。」
「約束でござりますよ。わらわがゲオルク様の一番寄子ですからね。」
「分かった分かった。」
このときは適当に返事をしたが、実際にそう言うことになってしまうのは後日譚。苦笑
部屋に戻ると発情期のドーラが今夜も子種を所望と言ってやって来た。今宵は満月。ドーラの発情が最高潮だ。当然俺は、我慢できなかった。夜遅くまでドーラを堪能したのだった。
翌日、ハイジとクララとジークに見送られて、国境の町ミュンヒェーを後にした。
ミュンヒェーの滞在は2泊3日の短期だが、非常に内容が濃かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/7/24
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№94 策略の焚刑
教国の前教皇以下、数名の反王国派中心人物たちを、20年以上前の先代ミュンヒェー辺境伯夫妻暗殺の黒幕として、教国から王国へ引っ立てて来つつ、王国東部の国境の町ミュンヒェーに到着した。
そしてミュンヒェーの領主館で、現ミュンヒェー辺境伯であるハイジに面会した。
「ゲオルク様、なんとお礼を申してよいか。これで両親の仇を討てまする。」
「ああ、薄々疑ってはいたが、まさか前教皇が黒幕とはな。」
「明日にでも、王家へ処断の許可を求める鳩便を送りまする。」
「それなら不要だぞ。ハイジへの鳩便と同時に殿下にも鳩便を送っている。その中で、黒幕の処断はハイジに一任したい旨を書いておいた。もし、殿下がお許しにならなければ、前教皇の処刑をやめるようにとの鳩便が、とうに殿下からハイジに届いているはずだ。」
「何から何まで。ほんにありがとうござりまする。このご恩は生涯忘れませぬ。」
女傑ハイジが、珍しく感涙に咽た。
「ご領主様、王家より鳩便でございます。」ハイジの家臣が急報の到着を告げる。
「なんと。このタイミングでか。明日であれば処断できたものを。」ハイジはがっくりと肩を落とし、鳩便を開いた。
読み進めて行くにつれ、眼が見開かれ、満面に残忍な笑みが浮かぶ。この笑顔を見れば、鳩便の内容は一目瞭然だ。殿下は処断を許可したんだな。
と、言うことは…、帝国への無言の威圧に使うおつもりだろうか。
教国の前教皇を処刑したとなれば、帝国の皇帝の身内でも容赦はしないと言う、強いメッセージになる。
むしろ、帝国が頑なになりはしないだろうか?
そうか!そのときは徹底的にやる気なんだ。反王国の身内を差し出すか、滅亡するかを選べと、無言で迫る気なんだ。帝国がここまで煮え切らずに、恭順を逡巡して来たことを、帝国にとことん後悔させるおつもりなのだな。
「ゲオルク様。これを。」ハイジは鳩便を俺に渡して来た。これにより俺の思考はいったん中断した。
そこには『先代暗殺の黒幕以下、主だった者の処断はゲオルク・スピリタス子爵に一任する。』と書いてあった。
差出人はもちろん皇太子殿下だ。つまり殺れと言うことだな。まったく具体的に書いて寄越さないところが、ほんとに狡猾だ。ま、それくらいの方が、将来の国王として頼もしいけどな。
俺へ一任か…。
俺はハイジに一任してくれと書き送った。それなのに敢えて俺に一任か。まぁ、俺はハイジへの一任を願ったのだから、殿下から一任された俺が、ハイジに一任してもいいのだが…。
それでも俺に一任と言って来たことに、何か殿下からのメッセージがある気がする。
いや、待てよ。やはり単に殺るだけではだめだな。ハイジはバッサリと殺る気だから、それにさらにひと工夫を加えろと、殿下はお考えなのだ。
帝国を戦慄させ、それでいてこちらが後に引けなくなるような一方通行な方法ではなくて、それこそ柔軟に、かつ臨機応変に対応できるような…。そんなひと工夫か?これ、ひと工夫どころじゃねぇだろ!
くそっ!殿下め、無茶ぶりも甚だしい。
俺はしばらく黙考した。頭の中でいろいろなアイディアが目まぐるしく絡み合い、全体のイメージが固まって来た。細部を詰めて、考えがまとまった。よし、これで行こう。
こほん。と咳払いをして俺は厳かに告げた。
「アーデルハイド・ミュンヒェー辺境伯よ、王太子殿下に成り代わり、ゲオルク・スピリタス子爵が申し付ける。先代ミュンヒェー辺境伯夫妻の暗殺に関与した黒幕以下、主だった者どもを全員極刑に処せ。」
「ははー。」ハイジの奴、ノリノリでやんの。横でクララとジークが、間に受けて若干引いてるのが笑える。
「ハイジ、いかにする所存か?」
「明日、獄中にて斬首にいたしまする。」
「生温いっ!」俺は吠えた。
「え?」驚くハイジ。
「中央広場で焚刑にせよ。群衆を集め、衆目に晒すのだ。」
ごくり。ハイジが息を呑んだ。クララとジークは蒼褪めている。
「ゲオルク様、本気ですか?曲がりなりにも相手は前教皇ですが?」
「何を言っている?先代辺境伯夫妻暗殺の黒幕だ。ハイジ、腹を括らんか!」
「くくく。このわらわに腹を括れと?よくぞ申しましたな。まさか、かような仕儀になるとは思いも寄らぬことでござりました。
ゲオルク様、神の使徒かと思えば魔王のような一面をお見せになる。そなた様は、ほんに底が知れぬお方でござりまするな。」
その後ハイジの哄笑が部屋中に響き渡った。しかし、クララとジークは顔面蒼白である。
夕餉を終えて、部屋に引き上げると、ドーラがもじもじしている。
「ドーラ、どうした?」
「主様、明日は満月。よって今宵から3日間、わらわは発情期なのじゃ。今宵は子種を所望する。」
「え?」残りのわが妻たちも頷いている。あ、皆に話は通ってるのね。
ちょうど今夜は馬車旅禁欲生活明けの解禁日だしな。
そのままドーラを美味しく頂いた後、残り5人とはお口なのだった。ベスとビーチェは魔力量が上限に達しているので、リーゼとジュヌとカルメンの上限を100ずつ上げた。
翌日、ミュンヒェーの中央広場で、野次馬の群衆が見守る中に、前教皇以下数名の囚人が引き立てられた。
ハイジが堂々と威厳を持って宣言する。
「今ここに、精霊魔術師ゲオルク・スピリタス子爵のご監察の下、先代ミュンヒェー辺境伯夫妻暗殺の黒幕とその一味を焚刑に処す。」
群衆が固唾を飲んで見守る中、前教皇以下、側近の数名は磔柱に括り付けられ、足元から腰までに薪と藁束を積み上げられた。
磔柱は焼け落ちぬように太くし、表面には泥を塗っている。
前教皇たちはこの期に及んで何かを喚いているが、猿轡を噛まされているので何を言ってるかは分からない。まったく見苦しい。
準備が整うと、見物に群がった群衆はシーンと静まり返った。
貴賓席に座っていた俺が立ち上がると、シーンと静まり返った群衆の視線が俺の一身に集まる。俺は無言で采配を振るった。
俺の采配を合図に、
「やれっ。」
裂帛の気合を帯びたハイジの合図が静寂を切り裂き、松明の火が藁束と薪に次々と点された。と同時に、あっという間に火は燃え盛る。
前教皇たちは悲鳴を上げ、その悲鳴はしばらく続いた後、業火に掻き消されたのだった。
30年の長きに亘って教国に君臨し、教国を反王国路線に導いた前教皇と、その側近どもを全員焚刑に処した。これで教国とのいざこざには、終止符が打たれたのだ。
今後の教国は、親王国派の新教皇の下、同盟国として友好的な関係を築いて行くことになろう。
暗殺犯どもの焚刑が終わり、ここは遺体安置所。そこにいる数体の焼死体であるはずの塊は、呻いていた。
ソルとジュヌがその死体もどきにエクストラリペアを掛けている。ケガを治すリペア系回復魔法の最上位魔法だ。火傷はケガの一種だからな。
そう、この死体もどきは焚刑に処せられた前教皇以下、側近数名だ。
「うう。」前教皇が呻く。
「気付いたか?焚刑の感想は?」
「お許しください。」
「いや、焚刑の感想は?と聞いている。」
「お許しください。」
「答えになってないだろ?」
「お許しください。」
「ダメだ、こりゃ。」
「お許しください。」壊れたかな?
殿下の意を受けて、もっとも残忍な処刑の手段である焚刑を、群衆を集めてド派手に行った。この噂は殿下の目論見通り、帝国を直撃し、恭順か敵対かの選択において、恭順への大いなる圧力となろう。
と言うのも、選択肢の敵対が滅亡に変わることになるからな。
そう、焚刑は芝居である。もっとも前教皇以下の数名は、あれが芝居だったなどとは、今の今まで知らなかった。火に焙られ、全身に火傷を負って瀕死の状態になったのだ。
しかし炎の中の前教皇以下の囚人どもに、ジュヌとソルがリペアを掛け続けていたのだ。
なぜ助けたか?それは殿下に切り札のジョーカーを持たせるためだ。
もし焚刑の薬が効き過ぎて、王国が怖れられ過ぎるなどの不都合が起きれば、実は前教皇たちは生きている。王国の慈悲により救われていた。として逃げ道を作るのだ。
焚刑がいい塩梅で効果を発揮したら、前教皇たちは、焚刑に処せられたと思われつつ、名もなき犯罪奴隷として死ぬまで働かせるだけだ。
ハイジは、両親を暗殺した犯人たちに業火の苦しみを与え、さらに残りの生涯を犯罪奴隷として強制労働をさせるのだから、親の仇は討ったも同然。と納得してくれている。
最後に俺が采配を振るったことで、焚刑を指示したのは、ハイジではなく俺であると周囲に知らしめている。
このことは当然帝国に伝わる。そしてその俺が帝国を訪れたらどうなるか。考えるまでもない。帝国の連中は、俺に対して戦々恐々、震えあがることだろう。
そうだな、帝都では、皇帝の城を半壊にでもしてやろうか?思いっ切り傲慢に振舞ってみるかな。
その夜、ハイジの招きに応じて晩餐会に参加した。
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「ハイジ、もう礼はいいよ。昨日から何度目だっつーの。」
「はい。でもいくらお礼を言っても言い足りぬのです。両親の仇を討つと誓って20有余年、まさか本懐を遂げられようとは。」
「まぁ気持ちは分かるがな。」
「わらわは、ゲオルク様の寄子になりまする。」
「いやいや、爵位が上のハイジが、爵位が下の俺の寄子って変だから。」
「いいえ、変ではござりませぬ。ゲオルク様の爵位は、すぐにわらわの上になりまする。」
「じゃぁ、そうなったら考えるよ。」
「約束でござりますよ。わらわがゲオルク様の一番寄子ですからね。」
「分かった分かった。」
このときは適当に返事をしたが、実際にそう言うことになってしまうのは後日譚。苦笑
部屋に戻ると発情期のドーラが今夜も子種を所望と言ってやって来た。今宵は満月。ドーラの発情が最高潮だ。当然俺は、我慢できなかった。夜遅くまでドーラを堪能したのだった。
翌日、ハイジとクララとジークに見送られて、国境の町ミュンヒェーを後にした。
ミュンヒェーの滞在は2泊3日の短期だが、非常に内容が濃かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/7/24
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
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シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
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