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精霊の加護081 博士号取得
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精霊の加護
Zu-Y
№81 博士号取得
俺が子爵になった翌日、俺たちは宿屋で、王宮での結婚披露宴の招待状を書いていた。それぞれの実家などに送るためだ。
俺はラスプ村の両親と弟のアルベルト、そして村の教会の神父さん。王都に一緒に来てるけど、東府魔法学院のルードビッヒ教授と東府教会の大司教様。現在の直属の上司である王太子殿下と、前に仕えていた東部公爵様。それと、王都にいらっしゃるので、4公爵様の残りのお三方と宰相様。
リーゼさんは、東府近郊ブレメン村のご両親と妹のクラウディアさん。
ジュヌさんは、王都近郊シャンパ村のご両親と姉のシュザンヌさん、そしてシュザンヌさんがレノーと婚約していたらレノーも呼ぶと言って、一応レノー宛の招待状も書いていた。
カルメンさんは、西府近郊リャビーセ村のご両親とメイドのアリシアさん。
ベスさんは、北部火山地区湯の町バースのバース伯爵様、御正室様、御側室様、執事のセバスチャンさんと、その奥さんで元メイド長のアンナさん。北府に出向している兄のアンドリューさんとその奥方のジェニファーさん、それから他家へ嫁いでいる姉のキャサリンさんとその御主人のラスゴー伯爵様。
ビーチェさんは、南部リシッチャ島ラクシーサのご両親と弟のロレンツォ、南府のマルコさんとジューリアさん。
書き終わると、地方への手紙を皆でギルドに出しに行った。ジュヌさんは、シャンパ村からの納品馬車を探しに行き、俺はギルドの後に、王宮、王都教会を回って、最後にルードビッヒ教授の宿屋に行った。
そして、ルードビッヒ教授に招待状を渡すとともに、3日後に迫った王都魔法学院での、魔法学会での研究発表の最終打ち合わせを行った。
「私は早々にゲオルクを紹介するから、説明はゲオルクが行いたまえ。」
「は?俺は教授の発表の助手なんじゃないですか?」
「何を言う?この研究のアイディアからデータ収集に分析まで、君が主導したではないか。しかも古語のスピリタスが精霊と酒の両方の意味を持つ理由についての推論は実に斬新だった。私はまったく思い付かなかったのだぞ。魔法学から言語学へ学問領域を跨いだアプローチだ。この論文は言語学会で発表しても十分通じるものだぞ。」
「しかしですね。執筆したのは教授じゃありませんか。」
「その通り。私は、この研究においてはゲオルクの書記に毛が生えたようなものだ。」
「そんな。」
「突っ込んだ質問が殺到したとき、それを見事に捌くのは、私よりゲオルクの方が適任なのだ。質問者が納得しなかったら、一発ぶっ放して証拠を見せればいいのだからな。」
「何を言ってるんですか?そんなことしたら講堂が壊れますよ。」
「なんだ、ゲオルクはジョークも通じんのか?」は?てか、教授ってジョークを言う人だったの?
「真顔で仰るからジョークとは思いませんでした。」
「ふむ、半分本気だったから、そっちが顔に出たのかもしれん。」おい!どっちだよ。あ!これもジョークか?
「ゲオルク、君はプレゼンの経験はあるか?」
「ありません。」
「ではこれから特訓する。」え?
それから学会発表の特訓が始まった。これは研究協力でひたすら魔法をぶっ放していたのより、何倍もきつかった。
教授は説明があやふやなところ、分かりにくいところ、誤解を招く表現を的確に突いて来る。俺が返答に窮すると、
「では今の質問が出ないように説明をやり直したまえ。」と来るのだ。
「ゲオルク、私は学界では、他の研究者の発表で、あやふやなところ、分かりにくいところ、誤解を招く表現を徹底的に突き詰める。
これは意地悪ではない。真理を追究するためなのだ。当然、私の洗礼を受けた研究者は、私の発表でも厳しく追及して来る。」
「それって、教授への仕返しを俺が受けるってことですか?」
「ゲオルク、仕返しなどとそんな低俗な足の引っ張り合いではない。もっと高尚な、互いを高め合う、言うなれば切磋琢磨だ。いいか、この切磋琢磨こそ、学問を研ぎ澄まし、真理を追究するための王道なのだ。」
「では質問を受けないように頑張ります。」
「違うな、質問が出ない発表もまた詰まらん。」
「え?言ってることが逆では。」
「逆ではない。質問にはこちらの見落としや、考えが及ばなかった点への指摘もあるのだ。それをその場にいる研究者で一緒に考えて解き明かせば、研究はさらなる高みに登る。」
「つまり、説明不足に起因する質問は減らし、内容を高める質問は大歓迎と言うことですか?」
「その通り。さぁ、プレゼンの練習を進めようではないか。」
それから学会発表まで毎日、特訓に次ぐ特訓をされた。途中から、精霊たちも俺に質問するようになり、変な答えをすると、『ちょっと違ーう。』とか、『それ分かんなーい。』とか、容赦なく突っ込んで来た。精霊たちは教授にすらツッコむ。
教授が変な質問をすると、精霊たちは俺の所にやって来て『ごにょごにょ』と耳元で囁く。
「教授、今の質問はその前の説明を誤解してるから出る質問だそうです。」
「何?では詳しく聞いてくれたまえ。」
『ごにょごにょ。』
「酒の成分で重要なのは…、
このふたつの成分を混同してるからさっきの質問が出るのだそうです。」
「なるほど。そう言うことか。確かにそうだな。いや素晴らしい!ありがとう、精霊たちよ。」
教授が精霊たちに直に話し掛けると、精霊たちは俺の後ろに隠れる。教授が精霊たちに言いたいことを俺に伝えると、精霊たちは俺の後ろに隠れない。そこんところはブレない。笑
で、3日後。
俺は王都魔法学院の講堂の壇上でガチガチになっていた。
最前列には、興味津々の眼をした教授連が並んでいる。しかも、王都、西府、南府、北府の各魔法学院の主任教授だそうだ。この人たち、ガンガン質問して来るんだろうなぁ。
それから、三の姫殿下のマリー様もいる。ここでしくじったら幻滅されて、婚約話が流れるかも。と、ちょっと期待してみたりもするのだが、どうせそんな風に上手く行く訳もない。
あー、ルードビッヒ教授が俺と研究内容の紹介を始めた。
「…という訳で、このゲオルク・スピリタス卿の着想と推察力、洞察力には、私も大いに感服したので、ぜひ皆さんにもその感動を味わって…。」
おい、ハードル上げんじゃねぇよ!とも言えず…。大泣
『ゲオルク、ガチガチー。』『ガチガチー。』『緊張し過ぎー。』『し過ぎー。』『リラックス、リラックスー。』『ゲオルク、エッチー。』『スケベー。』
「こら、最後のふたり!」『『『『『『『うふ。』』』』』』』精霊たちの心遣いが嬉しい。
あ、お姉様方がいた。随分、後ろの方に座ってるんだな。でも俺だけをじっと見つめてくれている。あ、5人揃ってメロンボールを両手で両脇から中心に向かってクイックイッと押す、ぱふぱふポーズをしている。今夜、帰ったらご褒美のぱふぱふってことかぁ。やりぃ。笑
ふぅ、なんか、緊張が取れた。ちょうどそのとき、教授の紹介が終わった。いよいよ俺の出番だ。
「それでは、酒の成分と魔力供給の関係について、発表します。東府魔法学院主任教授直属特別研究員のゲオルク・スピリタスです。
そもそも俺がこの研究テーマを思い付いたきっかけは、俺の精霊たちが第三形態に進化してから、酒を呑むようになったからでした。俺の精霊たちは…。」
話す前は緊張していたが、精霊たちのチャチャ入れと、お姉様方のぱふぱふポーズで緊張は解け、話し始めると嘘のように舌が滑らかに動く。
口が乾くたびに水をひと口ずつ含みながらしゃべりまくること1時間弱。その間、主任教授たちはメモを取りながら、ひたすら食い入るように聞いていた。
途中、普通の魔力供給、つまりべろちゅーと、ウイスキーのアードベクをひと口含んでのちゅーを実演して、その効果を比較して見せた。酒を含んだちゅーにより、精霊たちの魔力がすぐさま満タンになって輝き出すと、会場からはどよめきが起こった。
ひと通りの発表が終わると、主任教授たちからの質問が集中したが、ルードビッヒ教授に徹底的にしごかれていただけあって、あやふや、分かりにくい、誤解を招いたと言うような類のものはなく、発表内容に関する的確な質問ばかりだった。
ルードビッヒ教授も混同した酒の成分による効果の違いも、精霊たちの受け売りで澱みなく受け答えができ、古語においてスピリタスが、精霊と酒の両方を意味することについて、酒が精霊の魔力補給を増強する効果に起因するとの仮説も、大きな支持を集めた。俺の学会デビューは、大成功で無事に終了した。
この後、この研究成果は非常に高く評価され、ルードビッヒ教授の強い推薦もあって、各魔法学院の主任教授たちによる投票の結果、満場一致で俺は魔法学博士の学位を授与されることになったのだった。それは数日後のこと。
学会終了後、王都、西府、南府、北府の各魔法学院の主任教授たちに囲まれ、握手を求められた。
北府魔法学院の主任教授は、
「私は実に愚かなことをしたものだ。折角、スピリタス卿が北府魔法学院の書庫を訪ねてくれたと言うのに、論文の仕上げを優先して、卿との面会を後回しにしてしまった。」
「いえ、その節は急なことですみませんでした。」
南府魔法学院の主任教授も、
「スピリタス卿が提供してくれた吸魔の羽衣は実に興味深い研究材料だ。私はあれの解析が楽しくてな。もちろんそれ以上に、南部湾の危機を救ってくれたことに感謝しているがね。」
「その解析のおかげで、教国の素材と帝国の縫製技術が使われていることを突き止められたんですよね。」
俺が確認すると、南府魔法学院の主任教授は、
「いや、それはルードビッヒ教授の成果だ。」
「教授は南府魔法学院からの解析データが非常に有効だったと仰ってましたよ。南府の基礎研究をベースに、王都と東府と南府で情報交換をしながら、さらなる解析を進めることができたとか。
ねぇ、教授。」隣のルードビッヒ教授に話を振った。
「いかにも。南府魔法学院の基礎研究の賜物ですな。それに王都魔法学院との情報交換も非常に有益でした。」
「私も共同研究は実に楽しかった。」王都魔法学院の教授が加わった。すると西府魔法学院の主任教授も、
「私も仲間に入れて欲しかったですね。羨ましい限りです。」
「すみません、俺が手に入れた吸魔の羽衣が3枚だけだったもので。次に手に入れたら西府にお回しします。」
「北府にも回してくれたまえ。」と、北府魔法学院の主任教授。
5つの魔法学院の主任教授を、まとめて相手をしている俺を、他の研究者たちは羨望の眼差して見ていた。
主任教授たちから解放されると、すぐさまマリー様がやって来た。いつもの侍女たちを引き連れて。
「ゲオルク様、素晴らしい発表でした。」
「マリー様、失礼なからその御年で魔法学会の正会員とは凄いですね。」
「いいえ、聞くだけです。まだ発表したことはありませんの。」
「でも目を輝かせて聞いていて下さいましたね。」
「はい。とても興味深いものでした。」この子、ひょっとして天才なんじゃね?なんだかんだで、発表の内容を理解しちゃってるんだもんな。まだ8歳なのに。
「発表内容で、ご不明なところはございませんでしたか?」
「いえ、特には。ところで、これからどのような方向に研究を発展させていくおつもりですか?」
「さぁ、私は冒険がメインですからね、研究は片手間なんです。」
「片手間のお仕事には見えませんわ。ゲオルク様は天才でいらっしゃいますのね。」おっと、先にそれを言われるとは。苦笑
「そんなことはありませんよ。ルードビッヒ教授のご指導のおかげです。」
「ああ、東府魔法学院の主任教授ですね。あの方も天才ですものね。ゲオルク様は、凄い方に師事されてますのね。」
「ええ。本当に凄い方ですよ。研究への情熱が何とも桁外れです。」
そこへルードビッヒ教授が戻って来た。
「三の姫殿下、相変わらず御熱心ですな。ゲオルクの発表はいかがでしたか?」
「素晴らしかったですわ。」
「ゲオルクとは親しいようですがお知り合いでしたか?」
「ええ、ゲオルク様はわたくしの婚約者ですの。」赤くなってもじもじしながらそんなことを言うマリー様。かわいい。でも、俺の婚約者って…いつの間に?
「そうでしたか。では1ヶ月後の結婚披露宴は、三の姫様もゲオルクのお相手なのですかな?」やばい!教授、それ姫殿下には内緒…、とも言えず。汗
「なんのことですの?」マリー様の眼が険しくなった。やばい、やばい、やばい!
「ん?ゲオルク、どう言うことだ?」教授、俺に振るんかい!
「実は、1ヶ月後は、俺のパーティメンバー5人との結婚披露宴です。三の姫殿下との御婚約のお話は水面下で進んでいるようですが、三の姫殿下が御成人されてから正式発表されると、王太子殿下から伺っております。」
「ゲオルク様、わたくし、そのようなことは聞いておりませんわよ。」怒ってる、怒ってる、怒ってる。
「はて?殿下からお話が行っているものとばかり。」殿下、悪ぃ。あとは頼んまーす。てへぺろ。
「あ、それで兄上様はわたくしに、湖の御用邸でゆっくりして来いと仰ったんだわ。ゲオルク様の御結婚披露宴から遠ざけるためね。ゲオルク様、ひょっとして御結婚披露宴は、王宮で行いますのね?」
バレた!しかし何という洞察力。8歳とは思えん!でももう隠してもしょうがないな。すべて殿下のせいにして全部吐いちまおうっと。にやり。
「はい。王太子殿下や、公爵様方も招きますので、警備の都合上そうなります。これも殿下からご提案頂きました。」
「なぜわたくしには内緒で進めていますの?」
「はて?ご存知なかったのですか?側室5人との結婚披露宴ゆえ、将来、御正室となられるマリー様をお呼びするのは気が引けまして、殿下にご相談したところ、『任せろ。』と仰ったので、お任せしました。俺は詳しいことは知りませんので、殿下にお尋ね下さい。」
「分かりました。ゲオルク様、これにて失礼致します。
皆の者、兄上様の所に行きますよ。」マリー様は、激おこプンプン丸で、侍女たちを引き連れて行った。あーああ、知ーらねーっと。
「ゲオルク、私は何かまずいことを言ったか?」
「いえ、教授。お気になさらないで下さい。」
「しかし殿下が…。」
「構いませんよ。殿下は、王国の次期国王ですからね。妹ひとり捌けないで、何とするんですか。」
「ふむ。それもそうか。」教授が納得した。苦笑
そして3日後、俺は王都魔法学院に呼び出され、正式に魔法学博士の学位を授与されたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/6/26
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№81 博士号取得
俺が子爵になった翌日、俺たちは宿屋で、王宮での結婚披露宴の招待状を書いていた。それぞれの実家などに送るためだ。
俺はラスプ村の両親と弟のアルベルト、そして村の教会の神父さん。王都に一緒に来てるけど、東府魔法学院のルードビッヒ教授と東府教会の大司教様。現在の直属の上司である王太子殿下と、前に仕えていた東部公爵様。それと、王都にいらっしゃるので、4公爵様の残りのお三方と宰相様。
リーゼさんは、東府近郊ブレメン村のご両親と妹のクラウディアさん。
ジュヌさんは、王都近郊シャンパ村のご両親と姉のシュザンヌさん、そしてシュザンヌさんがレノーと婚約していたらレノーも呼ぶと言って、一応レノー宛の招待状も書いていた。
カルメンさんは、西府近郊リャビーセ村のご両親とメイドのアリシアさん。
ベスさんは、北部火山地区湯の町バースのバース伯爵様、御正室様、御側室様、執事のセバスチャンさんと、その奥さんで元メイド長のアンナさん。北府に出向している兄のアンドリューさんとその奥方のジェニファーさん、それから他家へ嫁いでいる姉のキャサリンさんとその御主人のラスゴー伯爵様。
ビーチェさんは、南部リシッチャ島ラクシーサのご両親と弟のロレンツォ、南府のマルコさんとジューリアさん。
書き終わると、地方への手紙を皆でギルドに出しに行った。ジュヌさんは、シャンパ村からの納品馬車を探しに行き、俺はギルドの後に、王宮、王都教会を回って、最後にルードビッヒ教授の宿屋に行った。
そして、ルードビッヒ教授に招待状を渡すとともに、3日後に迫った王都魔法学院での、魔法学会での研究発表の最終打ち合わせを行った。
「私は早々にゲオルクを紹介するから、説明はゲオルクが行いたまえ。」
「は?俺は教授の発表の助手なんじゃないですか?」
「何を言う?この研究のアイディアからデータ収集に分析まで、君が主導したではないか。しかも古語のスピリタスが精霊と酒の両方の意味を持つ理由についての推論は実に斬新だった。私はまったく思い付かなかったのだぞ。魔法学から言語学へ学問領域を跨いだアプローチだ。この論文は言語学会で発表しても十分通じるものだぞ。」
「しかしですね。執筆したのは教授じゃありませんか。」
「その通り。私は、この研究においてはゲオルクの書記に毛が生えたようなものだ。」
「そんな。」
「突っ込んだ質問が殺到したとき、それを見事に捌くのは、私よりゲオルクの方が適任なのだ。質問者が納得しなかったら、一発ぶっ放して証拠を見せればいいのだからな。」
「何を言ってるんですか?そんなことしたら講堂が壊れますよ。」
「なんだ、ゲオルクはジョークも通じんのか?」は?てか、教授ってジョークを言う人だったの?
「真顔で仰るからジョークとは思いませんでした。」
「ふむ、半分本気だったから、そっちが顔に出たのかもしれん。」おい!どっちだよ。あ!これもジョークか?
「ゲオルク、君はプレゼンの経験はあるか?」
「ありません。」
「ではこれから特訓する。」え?
それから学会発表の特訓が始まった。これは研究協力でひたすら魔法をぶっ放していたのより、何倍もきつかった。
教授は説明があやふやなところ、分かりにくいところ、誤解を招く表現を的確に突いて来る。俺が返答に窮すると、
「では今の質問が出ないように説明をやり直したまえ。」と来るのだ。
「ゲオルク、私は学界では、他の研究者の発表で、あやふやなところ、分かりにくいところ、誤解を招く表現を徹底的に突き詰める。
これは意地悪ではない。真理を追究するためなのだ。当然、私の洗礼を受けた研究者は、私の発表でも厳しく追及して来る。」
「それって、教授への仕返しを俺が受けるってことですか?」
「ゲオルク、仕返しなどとそんな低俗な足の引っ張り合いではない。もっと高尚な、互いを高め合う、言うなれば切磋琢磨だ。いいか、この切磋琢磨こそ、学問を研ぎ澄まし、真理を追究するための王道なのだ。」
「では質問を受けないように頑張ります。」
「違うな、質問が出ない発表もまた詰まらん。」
「え?言ってることが逆では。」
「逆ではない。質問にはこちらの見落としや、考えが及ばなかった点への指摘もあるのだ。それをその場にいる研究者で一緒に考えて解き明かせば、研究はさらなる高みに登る。」
「つまり、説明不足に起因する質問は減らし、内容を高める質問は大歓迎と言うことですか?」
「その通り。さぁ、プレゼンの練習を進めようではないか。」
それから学会発表まで毎日、特訓に次ぐ特訓をされた。途中から、精霊たちも俺に質問するようになり、変な答えをすると、『ちょっと違ーう。』とか、『それ分かんなーい。』とか、容赦なく突っ込んで来た。精霊たちは教授にすらツッコむ。
教授が変な質問をすると、精霊たちは俺の所にやって来て『ごにょごにょ』と耳元で囁く。
「教授、今の質問はその前の説明を誤解してるから出る質問だそうです。」
「何?では詳しく聞いてくれたまえ。」
『ごにょごにょ。』
「酒の成分で重要なのは…、
このふたつの成分を混同してるからさっきの質問が出るのだそうです。」
「なるほど。そう言うことか。確かにそうだな。いや素晴らしい!ありがとう、精霊たちよ。」
教授が精霊たちに直に話し掛けると、精霊たちは俺の後ろに隠れる。教授が精霊たちに言いたいことを俺に伝えると、精霊たちは俺の後ろに隠れない。そこんところはブレない。笑
で、3日後。
俺は王都魔法学院の講堂の壇上でガチガチになっていた。
最前列には、興味津々の眼をした教授連が並んでいる。しかも、王都、西府、南府、北府の各魔法学院の主任教授だそうだ。この人たち、ガンガン質問して来るんだろうなぁ。
それから、三の姫殿下のマリー様もいる。ここでしくじったら幻滅されて、婚約話が流れるかも。と、ちょっと期待してみたりもするのだが、どうせそんな風に上手く行く訳もない。
あー、ルードビッヒ教授が俺と研究内容の紹介を始めた。
「…という訳で、このゲオルク・スピリタス卿の着想と推察力、洞察力には、私も大いに感服したので、ぜひ皆さんにもその感動を味わって…。」
おい、ハードル上げんじゃねぇよ!とも言えず…。大泣
『ゲオルク、ガチガチー。』『ガチガチー。』『緊張し過ぎー。』『し過ぎー。』『リラックス、リラックスー。』『ゲオルク、エッチー。』『スケベー。』
「こら、最後のふたり!」『『『『『『『うふ。』』』』』』』精霊たちの心遣いが嬉しい。
あ、お姉様方がいた。随分、後ろの方に座ってるんだな。でも俺だけをじっと見つめてくれている。あ、5人揃ってメロンボールを両手で両脇から中心に向かってクイックイッと押す、ぱふぱふポーズをしている。今夜、帰ったらご褒美のぱふぱふってことかぁ。やりぃ。笑
ふぅ、なんか、緊張が取れた。ちょうどそのとき、教授の紹介が終わった。いよいよ俺の出番だ。
「それでは、酒の成分と魔力供給の関係について、発表します。東府魔法学院主任教授直属特別研究員のゲオルク・スピリタスです。
そもそも俺がこの研究テーマを思い付いたきっかけは、俺の精霊たちが第三形態に進化してから、酒を呑むようになったからでした。俺の精霊たちは…。」
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途中、普通の魔力供給、つまりべろちゅーと、ウイスキーのアードベクをひと口含んでのちゅーを実演して、その効果を比較して見せた。酒を含んだちゅーにより、精霊たちの魔力がすぐさま満タンになって輝き出すと、会場からはどよめきが起こった。
ひと通りの発表が終わると、主任教授たちからの質問が集中したが、ルードビッヒ教授に徹底的にしごかれていただけあって、あやふや、分かりにくい、誤解を招いたと言うような類のものはなく、発表内容に関する的確な質問ばかりだった。
ルードビッヒ教授も混同した酒の成分による効果の違いも、精霊たちの受け売りで澱みなく受け答えができ、古語においてスピリタスが、精霊と酒の両方を意味することについて、酒が精霊の魔力補給を増強する効果に起因するとの仮説も、大きな支持を集めた。俺の学会デビューは、大成功で無事に終了した。
この後、この研究成果は非常に高く評価され、ルードビッヒ教授の強い推薦もあって、各魔法学院の主任教授たちによる投票の結果、満場一致で俺は魔法学博士の学位を授与されることになったのだった。それは数日後のこと。
学会終了後、王都、西府、南府、北府の各魔法学院の主任教授たちに囲まれ、握手を求められた。
北府魔法学院の主任教授は、
「私は実に愚かなことをしたものだ。折角、スピリタス卿が北府魔法学院の書庫を訪ねてくれたと言うのに、論文の仕上げを優先して、卿との面会を後回しにしてしまった。」
「いえ、その節は急なことですみませんでした。」
南府魔法学院の主任教授も、
「スピリタス卿が提供してくれた吸魔の羽衣は実に興味深い研究材料だ。私はあれの解析が楽しくてな。もちろんそれ以上に、南部湾の危機を救ってくれたことに感謝しているがね。」
「その解析のおかげで、教国の素材と帝国の縫製技術が使われていることを突き止められたんですよね。」
俺が確認すると、南府魔法学院の主任教授は、
「いや、それはルードビッヒ教授の成果だ。」
「教授は南府魔法学院からの解析データが非常に有効だったと仰ってましたよ。南府の基礎研究をベースに、王都と東府と南府で情報交換をしながら、さらなる解析を進めることができたとか。
ねぇ、教授。」隣のルードビッヒ教授に話を振った。
「いかにも。南府魔法学院の基礎研究の賜物ですな。それに王都魔法学院との情報交換も非常に有益でした。」
「私も共同研究は実に楽しかった。」王都魔法学院の教授が加わった。すると西府魔法学院の主任教授も、
「私も仲間に入れて欲しかったですね。羨ましい限りです。」
「すみません、俺が手に入れた吸魔の羽衣が3枚だけだったもので。次に手に入れたら西府にお回しします。」
「北府にも回してくれたまえ。」と、北府魔法学院の主任教授。
5つの魔法学院の主任教授を、まとめて相手をしている俺を、他の研究者たちは羨望の眼差して見ていた。
主任教授たちから解放されると、すぐさまマリー様がやって来た。いつもの侍女たちを引き連れて。
「ゲオルク様、素晴らしい発表でした。」
「マリー様、失礼なからその御年で魔法学会の正会員とは凄いですね。」
「いいえ、聞くだけです。まだ発表したことはありませんの。」
「でも目を輝かせて聞いていて下さいましたね。」
「はい。とても興味深いものでした。」この子、ひょっとして天才なんじゃね?なんだかんだで、発表の内容を理解しちゃってるんだもんな。まだ8歳なのに。
「発表内容で、ご不明なところはございませんでしたか?」
「いえ、特には。ところで、これからどのような方向に研究を発展させていくおつもりですか?」
「さぁ、私は冒険がメインですからね、研究は片手間なんです。」
「片手間のお仕事には見えませんわ。ゲオルク様は天才でいらっしゃいますのね。」おっと、先にそれを言われるとは。苦笑
「そんなことはありませんよ。ルードビッヒ教授のご指導のおかげです。」
「ああ、東府魔法学院の主任教授ですね。あの方も天才ですものね。ゲオルク様は、凄い方に師事されてますのね。」
「ええ。本当に凄い方ですよ。研究への情熱が何とも桁外れです。」
そこへルードビッヒ教授が戻って来た。
「三の姫殿下、相変わらず御熱心ですな。ゲオルクの発表はいかがでしたか?」
「素晴らしかったですわ。」
「ゲオルクとは親しいようですがお知り合いでしたか?」
「ええ、ゲオルク様はわたくしの婚約者ですの。」赤くなってもじもじしながらそんなことを言うマリー様。かわいい。でも、俺の婚約者って…いつの間に?
「そうでしたか。では1ヶ月後の結婚披露宴は、三の姫様もゲオルクのお相手なのですかな?」やばい!教授、それ姫殿下には内緒…、とも言えず。汗
「なんのことですの?」マリー様の眼が険しくなった。やばい、やばい、やばい!
「ん?ゲオルク、どう言うことだ?」教授、俺に振るんかい!
「実は、1ヶ月後は、俺のパーティメンバー5人との結婚披露宴です。三の姫殿下との御婚約のお話は水面下で進んでいるようですが、三の姫殿下が御成人されてから正式発表されると、王太子殿下から伺っております。」
「ゲオルク様、わたくし、そのようなことは聞いておりませんわよ。」怒ってる、怒ってる、怒ってる。
「はて?殿下からお話が行っているものとばかり。」殿下、悪ぃ。あとは頼んまーす。てへぺろ。
「あ、それで兄上様はわたくしに、湖の御用邸でゆっくりして来いと仰ったんだわ。ゲオルク様の御結婚披露宴から遠ざけるためね。ゲオルク様、ひょっとして御結婚披露宴は、王宮で行いますのね?」
バレた!しかし何という洞察力。8歳とは思えん!でももう隠してもしょうがないな。すべて殿下のせいにして全部吐いちまおうっと。にやり。
「はい。王太子殿下や、公爵様方も招きますので、警備の都合上そうなります。これも殿下からご提案頂きました。」
「なぜわたくしには内緒で進めていますの?」
「はて?ご存知なかったのですか?側室5人との結婚披露宴ゆえ、将来、御正室となられるマリー様をお呼びするのは気が引けまして、殿下にご相談したところ、『任せろ。』と仰ったので、お任せしました。俺は詳しいことは知りませんので、殿下にお尋ね下さい。」
「分かりました。ゲオルク様、これにて失礼致します。
皆の者、兄上様の所に行きますよ。」マリー様は、激おこプンプン丸で、侍女たちを引き連れて行った。あーああ、知ーらねーっと。
「ゲオルク、私は何かまずいことを言ったか?」
「いえ、教授。お気になさらないで下さい。」
「しかし殿下が…。」
「構いませんよ。殿下は、王国の次期国王ですからね。妹ひとり捌けないで、何とするんですか。」
「ふむ。それもそうか。」教授が納得した。苦笑
そして3日後、俺は王都魔法学院に呼び出され、正式に魔法学博士の学位を授与されたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/6/26
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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