精霊の加護

Zu-Y

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精霊の加護069 7人まとめて第三形態

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精霊の加護
Zu-Y

№69 7人まとめて第三形態

 帝国側の国境の砦を2つとも壊滅させ、バレンシーへの帰還中に、精霊たちがとんでもないことになった。完全に俺にすり寄って、べたついて、しがみついて来たのだ。
 精霊たちは無茶苦茶軽いから、一応歩けるのだが、両腕、両脚にひとりずつしがみつき、おんぶと抱っこで前後にひとりずつ、あとは肩車で頭にひとりしがみついている。つまり俺は、同時に7人の精霊たちにしがみつかれているのだ。

「どうしたのかしら、急に甘えんぼさんになっちゃったわねぇ。」
「うふふ。大活躍でしたから、ご褒美と言うことでよろしいんじゃなくて?」
「そうだねぇ。それにしても凄まじい威力だったよ。」
「まったくだな。あんなにいともたやすく壊滅させるとは。」
「だよねー。ほんと、規格外だよねー。」
「俺もあそこまでとは思わなかった。っておい、くすぐったいぞ。」精霊たちが俺をぺろぺろ舐めて光っている。
 汗も体液だから多少なりとも魔力を含む訳だが、それで光ってるってことは、精霊たちの魔力は満タンの証だが、それでも舐めている。舐めては光り、光っては舐めるの繰り返しだ。もしや…、
 第三形態への進化の前兆か?確かに全力放出を繰り返したからな。あれで全員、第二形態の上限に達したとしたら、今夜は全員第三形態に行くかもしれん。

 バレンシー砦に着くと、領主兼司令官のサルバドールどのが、警備兵を従えて出迎えてくれたのだが、凱旋でやんややんやとなるはずが、精霊7人にしがみつかれた俺を見て、ドン引きしている。が、取り敢えず、労いの言葉だけは掛けてくれた。
「精霊魔術師様、お勤めご苦労様です。」
「ああ、サルバドールどの、ありがとう。ってか、こんなんですまん。それと俺のことはゲオルクでいいから。」
「ゲオルクどの、その…、大変ですな。」同情された。ちくしょう。泣

 一緒に出迎えてくれたゲオルク学校の連中も、完全に引いている。だよなー。
「師匠、凱旋が台無しっす。」ホルヘが容赦なく突っ込む。
「いや、離れんのだ。」
「師匠、結構マジでシュールっす。」アルフォンソが素直な感想を述べて、残り全員も頷いている。泣

 結局そのまま国境の町バレンシーに帰り、町の中を好奇の眼に晒されながら、宿屋に戻った。
 サルバドールどのは、領主館で歓待したいと言ってくれたのだが、精霊たちがこの調子では歓待も減ったくれもない。精霊たちが落ち着いたら改めてと言うことで、この日は、宿屋に戻ったのだ。

 部屋に戻ると、全員を部屋付きの風呂に入れて順に洗ってやった。全員はぁはぁと息が荒い。やはりな、第三形態へ変化するに違いない。
 ベッドに仰向けに横たわると、ツリが跨って来た。
『吸って。』え?舐めるんじゃないの?
『吸って!』はい。ちゅーちゅー。
 吸ってる間にひとしきり悶えていたツリは、そのまま発光し出すと、直径1mの抱えきれない球体になった。球体は光を増しながらさらに膨らんで、その直径は2m程になった。そしてゆっくり人型を取る。
 そして現れたのは、少女と呼ぶには成長しており、女と呼ぶには幼な過ぎる、そんな微妙なお年頃。胸は膨らみかけの蕾で、腰は微かにくびれている、少女+αな体型だった。
 ふっ、まだまだだな。これが正直な俺の感想である。ロリな奴らにはどストライクかもしれんが、俺はお姉様方のようなバインバインのメロンボールがいい。と言うか、バインバインでないと欲情しない。
『ゲオルクー、お腹すいたー。』
「はいはい。」矢尻で指先をグリグリやって、血が滲んだ所を舐めさせる。そうしてるうちに、
『次はクレー。』と言って、クレが跨って来た。『吸ってー。』以下同文。
 これがさらに、フィア、チル、ワラ、ウィン、メタと続いて行ったのだった。

 シャレにならなかったのは、夕餉に誘いに来られたときだ。ちょうどワラに跨られていたのだが、よりによって事情を知らないゲオルク学校の女子3人が呼びに来てしまった。
「師匠、お食事に行きましょう?」
 鍵を掛けていたので流石に現場は目撃されなかったが、ワラの声が筒抜けである。
『あん、あん、あん、ああん。あああ~。』あれ、ワラの奴、なんか、敢えてよがり声を出してはいないか?冷汗

「師匠、何?この声?」「師匠、何やってるんです?」
 ドンドン、とドアを叩く音が大きくなって来た。俺は吸わされているから、口を塞がれていて返事ができない。
 調子に乗った他の精霊たちが、ニヤニヤしながらぶっ込みやがった。
『ああ~、ゲオルク、そこはらめぇ~』おいっ!らめぇ~って何だ?
『ああ~、そんなの、入らない~。』ふざけるな!
『痛い痛い、動かさないで~。優しくして~。』やめろ~~~~!
『あー、中に出さないでって言ったのにぃ。』何ちゅうことを言うんだっ!
 ふわふわ浮きながら、暢気にそんな悪戯を平然とやってのける精霊たち。
 ガタガタガタ。遠ざかる音。詰んだ。泣

 最後のメタまでひと通り終え、全員が第三形態に進化すると、俺の魔力量の上限が飛躍的に上昇した。
 第三形態との契約ボーナスは+3万なので、第二形態の+2万から1万上昇、第二形態から第三形態への進化時の体液舐め(今回は体液吸い)で+1万。つまり、精霊ひとりあたりの上昇分が2万で、それが7名分で14万の上昇だ。
 その結果、俺の魔力量の上限は27万5000から41万5000になったはずだ。念のために精霊たちに確認してももらったが、やはりその通りだった。

 しかしいい事ばかりではない。厄介事も起こった。
 第二形態より背が伸びたため、元貫頭衣の現シャツだとへそ出しルックになってしまうのだ。さらに胸が少しだけ膨らんだせいもあり、ツンと突き出たポチリが分かる。これはアウトだ。
 背中から絹の薄織の反物を回し、前でかわいい膨らみを包みつつ交差させて、そのまま首に掛けてうなじの所で結ぶ。よし、簡易ブラジャーだ。
 貫頭衣は新たに長いのを作り直した。
 いやだいやだと抵抗する7人を宥めすかしてようやく服を着せ終わるのに、かなりの時間を要してしまった。

 ようやく着替えを終えた精霊たちを連れてロビーに下りると、まぁ、誰もいないわな。お姉様方とゲオルク学校で夕餉を摂りに出掛けたに違いない。なんだかなー、もう、宿屋でメシ食うか?

 宿屋の食堂で適当なつまみとエールを頼んだ。注文の品が出て来るとき、宿屋の女将さんが小言を言って来た。
「ちょっとお客さん、いい大人のくせしてさ、あんなかわいい女の子を3人も泣かしちゃだめよ。」
「え?」
「部屋に別の女の子を連れ込んだんだって?うちはそう言う宿じゃないのよ。」
「違う違う。この子たちが悪ふざけをしてからかったら、あの3人が真に受けただけだって。」
「あら?そう言えばこの子たち、お客さんが連れてた子たちと違うわよね?」
「同じだよ。実はこの子たち、精霊でさ、夕方一気に成長したんだよ。」
「何言ってんのよ。」そりゃ疑うわな。
 ちょっとだけ精霊魔法を披露して精霊であることは信じてもらったが、宿代は子供料金から大人料金になった。苦笑

 つまみを片手にエールをぐびぐび流し込む。旨い!
『ゲオルクー、ちょっと頂戴。』『クレもー。』『フィアもー。』『チルもー。』『ワラもー。』『ウィンもー。』『メタもー。』なんですと?
「エールか?ってか、お前ら、呑み食い出来るの?」
『お酒を呑むだけー。』『大きくなって、呑めるようになったー。』
「つまみは?」
『要らなーい。』『食べられなーい。』
 ジョッキを渡すと、7人揃って首を横に振っている。え?呑むんじゃないの?
『口移し。』なんですと?
『早くー。』しゃーねーな。
 ひと口ずつ含んで順に口移しで呑ませてやる。なんともこっ恥ずかしい。ひと口呑んだだけで全員光り出した。あれ?ひょっとして、酒には魔力増幅の効果があるのかな?

「ちょっとお客さん。何やってんのよ!」次のつまみを運んで来た女将さんの眼が険しい。
「甘えん坊なんだよ。」
「甘えん坊てっんなら子供でしょう?子供にお酒を呑ませたらだめでしょ。」
「ちょっと呑んでみたいって言ってんだからいいじゃないか。大人の俺が付いてるから大丈夫だよ。」
「何よ、その理屈は?」
「え?大人が付いてたら、少しは子供に呑ませていいってルール、西部にはないのか?」
「聞いたことないわよ。」
「えー、東部じゃありなんだけどな。俺もガキの頃から『俺が付いてるから問題ない。呑め。』って親父に呑まされてたんだけど。」
「あり得ないわ。ほんとに東部ではそんななの?」女将さんが首を横に振っている。
「ありゃ?もしかして、ラスプ村の…、いや、まさかわが家のローカルルールだったのか?」
「とにかくここではやめてよね。」呑ませるなら部屋で呑ませろってか?
 その横で精霊たちは、鼻歌を歌ってご機嫌だった。たったひと口で少し酔ったらしい。笑

 そんなこんなで、宿屋の食堂で精霊たちと楽しくわいわいやってると、お姉様方とゲオルク学校の連中が帰って来た。

 なるほど、ゲオルク学校の女子3人の眼が赤く腫れている。こりゃほんとに泣いてたな。
「あー、第三形態に進化してるー!」
「ほら見ろ。私たちが言った通りだろう?」
「「「ぐすっ。…。」」」
「7人とも進化したのね。」
「ああ、今日は魔力の全力放出を繰り返したからね。全員、まとめて一気に第二形態をカンストしたね。」
「な、これで分かったろう?もうメソメソするんじゃないよ。」
 こくり×3。

 ごにょごにょ。ツリが耳打ちしてきた。
「あのなー、ツリが『ごめん。』ってさ。」
「「「…。」」」え?返事は?
 ごにょごにょ。次はクレ。
「クレが『ゲオルクを困らせようと思っただけ。』だってさ。」
「「「…。」」」おい、シカトか?
 ごにょごにょ。3人目はフィア。
「フィアが『3人がそんなに落ち込むとは思わなかった。』だってさ。」
「「「…。」」」こいつら、ふざけんなよ。別に悪くもない精霊たちが詫びを入れてるのになんなんだ、この態度は!

 ごにょごにょ。チルが爆弾を投下した。
「…。」流石にこれは言えない。
「師匠、チルは何て?」空気を読めないアルフォンソが聞かないでいいことを聞いて来やがった。
「まあ、前の3人と似たようなことだ。」
「なんか言いにくいことでも言ったんすか?」アルフォンソめ、それを分かってて敢えて聞くか?
「お前なぁ。そうと分かったら聞くんじゃねぇよ!」後でシメたるからな。
「すみません。」俺の怒気に引きつるアルフォンソ。
「はい、じゃぁこれで一件落着ー。」
「「「…。」」」最後まで無視かよ。
 俺が話を打ち切ったので、そこでお開きとなった。

 ここはお姉様方の部屋。スピリタスの部屋呑みである。俺がお姉様方に経緯を説明していた。
「…とまぁ、そう言う訳でさ、精霊たちがよくやる、俺へのかわいい悪戯な訳よ。それをあのバカども、真に受けやがって。」
「そんなことだろうと思ったよ。まぁ僕たちがしっかりフォローしといたからさ、もう大丈夫じゃないかな。」
「すまんね。」

「ところでアルフォンソが聞いたチルのひと言って何だったんですの?」
「ああ、あれ?『そんなにゲオルクが好きなの?』だってさ。流石に言えないだろ?」
「そうかしら?」
「いやいや、なまじあいつらのひとりでも『うん。』なんて答えられたら、精霊たちがさらに追い討ち掛けてたわな。」

「そうなのか?ゲオルクどの、どのような追い討ちだ?」
「ツリ、クレ、フィアの3人が詫びを入れたところであいつら返事しなかっただろ?あれで精霊たちはイラっと来てたのよ。もちろん、俺もイラっと来たけどね。で、チルが風向きを変えたのな。あれで『うん。』とでも言おうものなら、ワラ、ウィン、メタが畳みかけてトドメを刺してたね。」
「どんな風にだい?」

「そうだなー、例えば…、」
 それをワラが遮った。ごにょごにょ。
「ワラが『ゲオルクに惚れてるなら独り占めしようとするな。』だってさ。」
 ウィンが続く。ごにょごにょ。
「ウィンが『そんなんじゃゲオルクの相手は無理。』だってさ。」
 仕上げはメタ。ごにょごにょ。
「メタが『ゲオルクに好かれたいなら、おっぱいでかくして出直してこい。』だってさ。」
「きゃはは。なんかゲオっちって、糞野郎みたいじゃん。ウケるー。」
「はいはい、どうせ糞野郎ですよー。
 まぁ、ぶっちゃけ、あいつらを女として見たことないし、ましてや相手にする気なんてさらさらないし。師匠と弟子で十分だよ。」

 ここでもひと口ずつエールを口移しで精霊たちに与えているのだが、お姉様方はほのぼのと見ている。あのバカ3人だと、たったこれだけでギャーギャー騒ぎ出すに違いない。

 コンコン。
「誰だい?」
「ホルヘとアルフォンソです。師匠、こちらにいらしてます?」
「いるよー。」カルメンさんがドアを開けた。
「すみません、今夜のこと、お詫びに来ました。
 ほら、アル。しっかり言えよ。」
「師匠、何か俺、配慮なくてすみませんでした。」
「そうか。分かったらいい。
 あのときな、チルは『そんなにゲオルクが好きなの?』って聞いたんだよ。で、もしマチルダが『うん。』って言ったら、お前、凹むよな。」
「!」
「お前が昔から心底、マチルダに惚れてるのは知ってたからな、お前も聞いてるのに言える訳ねぇよな?わざわざ気ぃ使ってやったお前自身に邪魔されたんだぜ。」
「ほんと、すみませんでしたぁ。」その場で土下座するアルフォンソ。

「明日、お前ら、先に帰れな。あの3人もお前もガキ過ぎて、当分一緒にいたくねぇわ。あの3バカどもは、別に悪くもねぇツリとクレとフィアがわざわざ詫び入れてやったのにシカトこきやがってよ。何様のつもりだっつーの!一から修行し直して出直して来い。」
「師匠、ほんとすみませんでした。あいつらにもしっかり言い聞かせます。」と再び土下座するアルフォンソをスルーして、
「ホルヘ、お前だけはまぁまぁだ。流石、バカどものリーダーで苦労してるだけのことはある。これからもこいつらしっかりまとめてくれ。」
「分かりました。」

「明日、俺が起きる前に発てよ。」
「「え?」」
「あの3人にピーピー泣かれるのはもううんざりだ。今は顔も見たくねぇ。」
「はい。必ず。」
「アルフォンソ、明日はホルヘをしっかりサポートしろよ。あの3人に押し切られて俺と顔を合わすことになりやがったら、お前らとは金輪際縁切りだ。いいな?」
「はい。分かりました。」
「分かったらもう部屋から出てけ。お前らツラを見てると酒が不味くなる。」
「「失礼しました。お休みなさい。」」

「ゲオルク君、随分厳しいわね。」
「往路であいつらの技量の成長を見たからね、帰りはあいつらだけでも十分、大丈夫っしょ?」
「うむ。そうだな。」
「後は甘えずにひたすら修行だな。自分の思いが通らないから拗ねるとかってあり得ねぇわ。ありゃ甘えてるとしか思えんね。その腐った性根は、早いうちに叩き直さにゃいかんでしょ。」
「ときには厳しく、か。流石ゲオルクどのはいい師匠だな。」
「そんなんじゃないよ。あいつらが一緒にいたらさ、その間、野営のときにぱふぱふしてもらえないじゃん。」
「もー、それ言わなきゃカッコいいのにー。」

 俺たちは爆笑した。そして至福のぱふぱふタイムになった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/5/29

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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