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精霊の加護046 ウィンとの契約
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精霊の加護
Zu-Y
№46 ウィンとの契約
聖獣ペガサスの群れとの行き違いは解消され、漆黒のペガサスの仔馬のナイトを仲間に迎えた。そのナイトの案内で風の特大精霊の縄張りへ向かって進んでいる。ペガサスたちとのやり取りに時間を取られたが、夜中の3時には出発した。
夜の陸風を背に受けているのと、カルメンさんの支援魔法のバフの術で体力強化されているのとで、風の谷の川岸を伝っての登りが苦にならない。
上流特有の大きな岩は、クレが精霊魔法で粉々に砕いてくれるので、順調に風の谷の中ほどに差し掛かった。
もうぼちぼち冬になるこの季節、夜明けは朝7時だ。辺りが明るくなって来た。
朝夕の時間帯は海風と陸風の入れ替わりで凪になるので、凪の間はこのまま進む。
しばらくすると、日中の海風が、向かい風となって吹き出したので、俺たちは休息場所を選んで、朝餉の準備に取り掛かった。
お姉様方が料理の腕を振るっているので、俺はツリの精霊魔法で牧草を生やし、スノウとナイトに振舞った。ともに1歳馬の仔馬である牝馬のスノウと牡馬のナイトは仲が良く、2頭並んで俺とツリで育てた牧草を食んでいる。
ツリの木の精霊魔法は、植物全般の成長を網羅しているので、牧草はもとより、穀物でも野菜でもすぐに育成できる。肉を獣から調達しさえすれば、旅の途中での食糧の心配はなくなる。これは冒険者にとって非常にありがたい。
朝餉の準備をお姉様方に任せた俺は、精霊たちを連れて、川岸を取り囲む森の縁の樹々に、ツリの魔法でちょいと干渉して、昼の日差しよけと、簡易ベッドを作った。さらにそのベッドに敷くふかふかの干し草は、ツリが草を生やしてクレが土で囲ってそこにフィアが熱風を送って作った。精霊たちはとっても便利だ。
朝餉の後、俺は精霊たちと見張りについたが、精霊たちがいるのと、活動時間帯ではない昼なのとで、夜行性の魔物や獣は姿を見せなかった。昼過ぎに見張りを交代して干し草ベッドに潜り込むと、精霊たちも続いて潜り込んで来た。
日暮れまでぐっすり寝て、皆で夕餉を摂ると、また夜に本土のある北から来る陸風を背に受けて、川岸を登る。
このような行程を繰り返すこと3日。風の谷の最深部の風の特大精霊の縄張りに、ようやくたどり着いたのは、夜明け前の薄明時だった。
『ここが風の精霊の縄張りだよ。』と、ナイトが教えてくれたので、俺はナイトに礼を言って、風の特大精霊とのコンタクトを試みる。念話を送ってみた。
『風の精霊さん、こんばんは。俺はゲオルク。聞こえたら返事して。』
『ウィンだよ。ゲオルクは、ウィンと、話せるなんて、珍しい。何しに、来たの?』風の特大精霊が眼の前に現れた。
「ウィンって言うんだ。俺たちはウィンを迎えに来たんだよ。俺たちと一緒に旅に出ようよ。」
『旅?』
「俺と契約して、俺たちと一緒にあちこちをまわるんだ。」
『うーん、どうしようかなぁ。』
「嫌なら諦めるけど…。」
『行って、みたい。でも、ウィンが、毎日風を、起こしてるから、ウィンが、行ったら、風が、止まる。』
「他にいっぱいいる小さな精霊たちがやってくれるから大丈夫だよ。
なぁ、みんな。」
『『『『『うん。』』』』』俺の精霊たちが肯定の返事をしてくれた。
『じゃぁ、ウィンも、行く。』
そう言ったウィンは、両手を広げて俺の所へ飛び込んで来たかと思うと、両手で俺の顔を抱えて、ぶちゅーっと濃厚なキスをして来た。契約の儀式である。
俺はウィンを受け止め、抱き抱えた。第一形態のウィンは幼女だから、親が幼子を抱き抱えるようなものである。色気も減ったくれもない。まぁ、せめて第四形態、できれば第五形態が俺としては好ましい。
ウィンの体が紫色に光って契約が成立すると、お姉様方にもウィンが見えるようになった。お姉様方にウィンが見えるようになるとき、俺とウィンはキスの最中だ。
「やっぱりあたしゃ、このキスはアウトだと思うんだよ。」
「カルメンの言う通りですわ。幼子にするキスではありませんね。」
「ゲオっち、そのキス、僕にもちょうだい。」
「おい!ビーチェ、どさくさに紛れて何を言っているのだ?」
「あら、ベスはいいの?じゃぁ、僕がベスの分もしてもらうよ。」
「そんなことは言っておらんではないか。」
「え?じゃぁ、ベスもゲオっちにキスして欲しいの?」
「当たり前ではないか。ゲオルクどのは私の婚約者だぞ。」
もちろん俺としてはやぶさかではない!笑
第一形態のウィンとの契約が完了したので、俺の魔力量の上限は1万増えて、20万5000になった。多分だけどね。
その後、紫色に輝くウィンの所に、5人の精霊たちがやって来て、緑色、橙色、赤色、藍色、青色にそれぞれ輝き出した。
ウィンを含めた6人で手を取り合って、くるくる回り出し、6人はウィンを中心に交互にキスをして、それぞれが特大な光の珠になり、俺のまわりをくるくると回った。いつも通りだ。そして人型に戻ると、精霊たちの情報共有は完了するのだ。
『ウィンは、ゲオルクとの、思い出を、皆から、教わった。』
『ツリが教えたー。』『クレもー。』『フィアもー。』『チルもー。』『ワラもー。』
「ウィン、どうだ?旅の思い出は。」
『楽しー。』
「だろー。これからいっぱい旅をしような。」
『うん。それと、研究に、付き合うのも、いい。』
「マジか?」正直驚いた。
『『『『『そだねー。』』』』』
「マジか?」他の皆もか!
ルードビッヒ教授の研究に付き合うのも楽しいと言う、精霊たちの爆弾発言のショックから立ち直ったところで、俺はウィンに貫頭衣を着せることになる。しかし、精霊は衣類が嫌いなので、ウィンもゴネる。いつものパターンだ。苦笑
「ほら、皆と一緒だろ?」
『やー、それ嫌ーい。』
バタつくウィンをようやく宥めて、貫頭衣を頭からすっぽり被せ、腰の所で紐を結んだ。
「これでよしと。」
『この紐、やー。窮屈ー。』
「裸じゃまずいんだよ。すぐ慣れるからさ。」
『ぶー。』むくれ顔もかわいい。笑
ウィンの魔法を早速試すことにした。
まずは、真空派のイメージを送って、川岸にせり出している森の樹々を数本切り倒した。ウインドカッターとか、カマイタチとか呼ばれる風の攻撃魔法だ。次に暴風を起こして樹々をなぎ倒す。魔力切れを起こしたウィンに魔力を供給し、精霊魔法の試射を続けた。
「はぁ、もう威力が違い過ぎて話にならないわ。私の存在価値ってあるのかしら。」
魔術師のリーゼさんが、精霊魔法の威力の凄さに凹んでいる。精霊魔術師と普通の魔術師は別物だから、比べても仕方ないんだけど…。
「リーゼ、何を言っている。Lアタッカーがふたりもいて、私は心強いぞ。」
「そだよ。そもそも精霊魔法と比べること自体、ナンセンスだよ。」
「そうですわよ。精霊魔法は別物ですわ。それにリーゼは単独でしょう。ゲオルクさんは、精霊たちと協力してるんですのよ。」
「分かってはいるつもりなのだけれど、こうも威力が違うと…。」
「あたしゃ、リーゼの気持ちも分かるよ。ゲオルクが強力な支援魔法を使ったら、いくら精霊魔法だと分かっていても、あたしも同じ気持ちになると思う。ジュヌはどうだい?」
「そうですわね。確かにゲオルクさんが強力な回復の精霊魔法を使ったらそういう気持ちになると思いますわ。」
え?俺のせい?
「僕は、同じSアタッカーで僕なんかよりずっと強い人がパーティにいたら心強いけどな。もちろん、そのSアタッカーが刀剣士ならライバル心も沸くだろうし、あまりに差があったら凹むと思うけど、普通の剣士なら気にならないよ。刀剣士と剣士じゃ違うからね。」
「私は、同じ重騎士がいて私よりずっと強くても気にならないと思う。自分自身を鍛えるのみだな。もともと騎士団は騎士だけの集まりだから、私はそういう考えになったのかもしれんな。」
「そうね。でも、もっと強力な魔法を習得したいわ。中級魔法も一部だけしか覚えてないし、上級魔法はまったく覚えてないもの。」
「わたくしも、中級や上級の回復魔法を学びたいですわね。」
「あたしも中級支援魔法や上級支援魔法を学びたいねぇ。」
「あ、それなら僕も。魔力不足で覚えられなかった刀術スキルにチャレンジしたい。」
「私もそうだな。
なぁ、ゲオルクどの。次は金属の精霊だな。私たちは同行しないで、各々が修行に励むと言うのはどうだ?」
「え?」いきなり急展開っすかぁ?しかも俺、このままじゃボッチ?いや、精霊がいるからボッチじゃないか。
「あ、それいいかも。僕はしばらく実家で修行するよ。」
「じゃあ私は近場の南府魔法学院かしら。」
「わたくしは南府教会ですわね。」
「あたしゃその両方だね。」
「私は南府騎士団に通おう。」
「それなら皆、リシッチャ亭に泊まるといいよ。僕が一緒に行って叔父さんに頼んで上げる。でも、僕だけ一旦皆とお別れだねー。リシッチャ流の刀術スキルを学ぶなら僕んちが一番だからねー。せっかく皆と仲良くなったのに寂しーなー。」
「なんか修行の方向で決まり?」
「そうね。」「そうですわね。」「そうだね。」「うむ。そうだな。」「そだねー。」
まじか!泣
取り敢えず朝餉を摂りながら皆で帰る算段をした。下りは海風を背に受ける方がいいから昼の行動に切り替えることにした。そうは言っても夜通し歩いて来たから、昼過ぎまで仮眠を取ってからの出発になる。
昼下がりに起き出して、ウィンの風の精霊魔法の試し撃ちで倒した樹々の代わりを、ツリの木の精霊魔法で生やして、森を元通りした。
さあ、戻ろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/4/3
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№46 ウィンとの契約
聖獣ペガサスの群れとの行き違いは解消され、漆黒のペガサスの仔馬のナイトを仲間に迎えた。そのナイトの案内で風の特大精霊の縄張りへ向かって進んでいる。ペガサスたちとのやり取りに時間を取られたが、夜中の3時には出発した。
夜の陸風を背に受けているのと、カルメンさんの支援魔法のバフの術で体力強化されているのとで、風の谷の川岸を伝っての登りが苦にならない。
上流特有の大きな岩は、クレが精霊魔法で粉々に砕いてくれるので、順調に風の谷の中ほどに差し掛かった。
もうぼちぼち冬になるこの季節、夜明けは朝7時だ。辺りが明るくなって来た。
朝夕の時間帯は海風と陸風の入れ替わりで凪になるので、凪の間はこのまま進む。
しばらくすると、日中の海風が、向かい風となって吹き出したので、俺たちは休息場所を選んで、朝餉の準備に取り掛かった。
お姉様方が料理の腕を振るっているので、俺はツリの精霊魔法で牧草を生やし、スノウとナイトに振舞った。ともに1歳馬の仔馬である牝馬のスノウと牡馬のナイトは仲が良く、2頭並んで俺とツリで育てた牧草を食んでいる。
ツリの木の精霊魔法は、植物全般の成長を網羅しているので、牧草はもとより、穀物でも野菜でもすぐに育成できる。肉を獣から調達しさえすれば、旅の途中での食糧の心配はなくなる。これは冒険者にとって非常にありがたい。
朝餉の準備をお姉様方に任せた俺は、精霊たちを連れて、川岸を取り囲む森の縁の樹々に、ツリの魔法でちょいと干渉して、昼の日差しよけと、簡易ベッドを作った。さらにそのベッドに敷くふかふかの干し草は、ツリが草を生やしてクレが土で囲ってそこにフィアが熱風を送って作った。精霊たちはとっても便利だ。
朝餉の後、俺は精霊たちと見張りについたが、精霊たちがいるのと、活動時間帯ではない昼なのとで、夜行性の魔物や獣は姿を見せなかった。昼過ぎに見張りを交代して干し草ベッドに潜り込むと、精霊たちも続いて潜り込んで来た。
日暮れまでぐっすり寝て、皆で夕餉を摂ると、また夜に本土のある北から来る陸風を背に受けて、川岸を登る。
このような行程を繰り返すこと3日。風の谷の最深部の風の特大精霊の縄張りに、ようやくたどり着いたのは、夜明け前の薄明時だった。
『ここが風の精霊の縄張りだよ。』と、ナイトが教えてくれたので、俺はナイトに礼を言って、風の特大精霊とのコンタクトを試みる。念話を送ってみた。
『風の精霊さん、こんばんは。俺はゲオルク。聞こえたら返事して。』
『ウィンだよ。ゲオルクは、ウィンと、話せるなんて、珍しい。何しに、来たの?』風の特大精霊が眼の前に現れた。
「ウィンって言うんだ。俺たちはウィンを迎えに来たんだよ。俺たちと一緒に旅に出ようよ。」
『旅?』
「俺と契約して、俺たちと一緒にあちこちをまわるんだ。」
『うーん、どうしようかなぁ。』
「嫌なら諦めるけど…。」
『行って、みたい。でも、ウィンが、毎日風を、起こしてるから、ウィンが、行ったら、風が、止まる。』
「他にいっぱいいる小さな精霊たちがやってくれるから大丈夫だよ。
なぁ、みんな。」
『『『『『うん。』』』』』俺の精霊たちが肯定の返事をしてくれた。
『じゃぁ、ウィンも、行く。』
そう言ったウィンは、両手を広げて俺の所へ飛び込んで来たかと思うと、両手で俺の顔を抱えて、ぶちゅーっと濃厚なキスをして来た。契約の儀式である。
俺はウィンを受け止め、抱き抱えた。第一形態のウィンは幼女だから、親が幼子を抱き抱えるようなものである。色気も減ったくれもない。まぁ、せめて第四形態、できれば第五形態が俺としては好ましい。
ウィンの体が紫色に光って契約が成立すると、お姉様方にもウィンが見えるようになった。お姉様方にウィンが見えるようになるとき、俺とウィンはキスの最中だ。
「やっぱりあたしゃ、このキスはアウトだと思うんだよ。」
「カルメンの言う通りですわ。幼子にするキスではありませんね。」
「ゲオっち、そのキス、僕にもちょうだい。」
「おい!ビーチェ、どさくさに紛れて何を言っているのだ?」
「あら、ベスはいいの?じゃぁ、僕がベスの分もしてもらうよ。」
「そんなことは言っておらんではないか。」
「え?じゃぁ、ベスもゲオっちにキスして欲しいの?」
「当たり前ではないか。ゲオルクどのは私の婚約者だぞ。」
もちろん俺としてはやぶさかではない!笑
第一形態のウィンとの契約が完了したので、俺の魔力量の上限は1万増えて、20万5000になった。多分だけどね。
その後、紫色に輝くウィンの所に、5人の精霊たちがやって来て、緑色、橙色、赤色、藍色、青色にそれぞれ輝き出した。
ウィンを含めた6人で手を取り合って、くるくる回り出し、6人はウィンを中心に交互にキスをして、それぞれが特大な光の珠になり、俺のまわりをくるくると回った。いつも通りだ。そして人型に戻ると、精霊たちの情報共有は完了するのだ。
『ウィンは、ゲオルクとの、思い出を、皆から、教わった。』
『ツリが教えたー。』『クレもー。』『フィアもー。』『チルもー。』『ワラもー。』
「ウィン、どうだ?旅の思い出は。」
『楽しー。』
「だろー。これからいっぱい旅をしような。」
『うん。それと、研究に、付き合うのも、いい。』
「マジか?」正直驚いた。
『『『『『そだねー。』』』』』
「マジか?」他の皆もか!
ルードビッヒ教授の研究に付き合うのも楽しいと言う、精霊たちの爆弾発言のショックから立ち直ったところで、俺はウィンに貫頭衣を着せることになる。しかし、精霊は衣類が嫌いなので、ウィンもゴネる。いつものパターンだ。苦笑
「ほら、皆と一緒だろ?」
『やー、それ嫌ーい。』
バタつくウィンをようやく宥めて、貫頭衣を頭からすっぽり被せ、腰の所で紐を結んだ。
「これでよしと。」
『この紐、やー。窮屈ー。』
「裸じゃまずいんだよ。すぐ慣れるからさ。」
『ぶー。』むくれ顔もかわいい。笑
ウィンの魔法を早速試すことにした。
まずは、真空派のイメージを送って、川岸にせり出している森の樹々を数本切り倒した。ウインドカッターとか、カマイタチとか呼ばれる風の攻撃魔法だ。次に暴風を起こして樹々をなぎ倒す。魔力切れを起こしたウィンに魔力を供給し、精霊魔法の試射を続けた。
「はぁ、もう威力が違い過ぎて話にならないわ。私の存在価値ってあるのかしら。」
魔術師のリーゼさんが、精霊魔法の威力の凄さに凹んでいる。精霊魔術師と普通の魔術師は別物だから、比べても仕方ないんだけど…。
「リーゼ、何を言っている。Lアタッカーがふたりもいて、私は心強いぞ。」
「そだよ。そもそも精霊魔法と比べること自体、ナンセンスだよ。」
「そうですわよ。精霊魔法は別物ですわ。それにリーゼは単独でしょう。ゲオルクさんは、精霊たちと協力してるんですのよ。」
「分かってはいるつもりなのだけれど、こうも威力が違うと…。」
「あたしゃ、リーゼの気持ちも分かるよ。ゲオルクが強力な支援魔法を使ったら、いくら精霊魔法だと分かっていても、あたしも同じ気持ちになると思う。ジュヌはどうだい?」
「そうですわね。確かにゲオルクさんが強力な回復の精霊魔法を使ったらそういう気持ちになると思いますわ。」
え?俺のせい?
「僕は、同じSアタッカーで僕なんかよりずっと強い人がパーティにいたら心強いけどな。もちろん、そのSアタッカーが刀剣士ならライバル心も沸くだろうし、あまりに差があったら凹むと思うけど、普通の剣士なら気にならないよ。刀剣士と剣士じゃ違うからね。」
「私は、同じ重騎士がいて私よりずっと強くても気にならないと思う。自分自身を鍛えるのみだな。もともと騎士団は騎士だけの集まりだから、私はそういう考えになったのかもしれんな。」
「そうね。でも、もっと強力な魔法を習得したいわ。中級魔法も一部だけしか覚えてないし、上級魔法はまったく覚えてないもの。」
「わたくしも、中級や上級の回復魔法を学びたいですわね。」
「あたしも中級支援魔法や上級支援魔法を学びたいねぇ。」
「あ、それなら僕も。魔力不足で覚えられなかった刀術スキルにチャレンジしたい。」
「私もそうだな。
なぁ、ゲオルクどの。次は金属の精霊だな。私たちは同行しないで、各々が修行に励むと言うのはどうだ?」
「え?」いきなり急展開っすかぁ?しかも俺、このままじゃボッチ?いや、精霊がいるからボッチじゃないか。
「あ、それいいかも。僕はしばらく実家で修行するよ。」
「じゃあ私は近場の南府魔法学院かしら。」
「わたくしは南府教会ですわね。」
「あたしゃその両方だね。」
「私は南府騎士団に通おう。」
「それなら皆、リシッチャ亭に泊まるといいよ。僕が一緒に行って叔父さんに頼んで上げる。でも、僕だけ一旦皆とお別れだねー。リシッチャ流の刀術スキルを学ぶなら僕んちが一番だからねー。せっかく皆と仲良くなったのに寂しーなー。」
「なんか修行の方向で決まり?」
「そうね。」「そうですわね。」「そうだね。」「うむ。そうだな。」「そだねー。」
まじか!泣
取り敢えず朝餉を摂りながら皆で帰る算段をした。下りは海風を背に受ける方がいいから昼の行動に切り替えることにした。そうは言っても夜通し歩いて来たから、昼過ぎまで仮眠を取ってからの出発になる。
昼下がりに起き出して、ウィンの風の精霊魔法の試し撃ちで倒した樹々の代わりを、ツリの木の精霊魔法で生やして、森を元通りした。
さあ、戻ろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/4/3
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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