精霊の加護

Zu-Y

文字の大きさ
上 下
41 / 183

精霊の加護038 もう1泊

しおりを挟む
精霊の加護
Zu-Y

№38 もう1泊

 翌朝、朝餉を摂ってから、リシッチャ亭のご亭主のマルコさんと女将さんのジューリアさんに別れを告げ、俺とビーチェさんはリシッチャ亭を出発した。

 冒険者として、刀剣士の装備をしたビーチェさんは、リシッチャ亭の看板娘のときと、雰囲気がガラッと違う気がする。黙ってればだが…。笑
「ゲオっちー、早くスピリタスの仲間に僕を引き会わせてよね。」
「うん。今日あたり、ふたりが南府に着くかもしれないんだけどさ、着かなかったらギルドに伝言を残して、王都に向かおう。」
「えー、そしたらゲオっちとふたり旅じゃん。やーん、僕を襲わないでよねー。」
「参ったなぁ。」やっぱり雰囲気は変わらんか。前言撤回。苦笑

 そうこうしてるうちに冒険者ギルドに着いて、受付に行くと、受付嬢からランクアップが告げられた。
「ゲオルクさんはBランク昇格、ビーチェさんは飛び級でDランク昇格です。」
「え?俺は北部のバースでCランクに上がったばかりだぞ?」
「そんなことは関係ないですよ。なんたって、精霊を救出して、リヴァイアサンを追い払って、このひと月ずっと荒れてた海を静めましたからね。」
「僕はゲオっちと一緒にいただけだよ。それになんで飛び級?」
「ビーチェさんもこの依頼達成のサポート認定されてますし、冒険者を中断したときには、Eランク直前まで行ってましたから、Dランクに到達したんです。めったにないですが、Dランクまでは、飛び級することもあるんですよ。」
「ゲオっち、ありがと。」
 感極まったビーチェさんが抱き付いて来て、しかも濃厚なのをぶちゅーっとやって来たので、ギルド内が騒然となった。ほぼすべての冒険者から、凄まじい嫉妬の視線が雨あられと降り注いで来る。すっごーく気分がいい!笑

 俺はBランクのシルバーカードを新たに受け取った。職業欄には、従来からの「射手」に加えて「精霊魔術師」と書き込まれている。ちょっと嬉しい。
 新たな冒険者カードを受け取った後、俺はスピリタスのメンバー宛の伝言を依頼した。
「南府の指名依頼が終了したので東府に向かう。王都で合流を待つ。」
 この伝言を王都、東府、西府の冒険者ギルドに早馬便で送り、南府のギルドにも残した。

 南府からの定期馬車が到着した。定期馬車には純白の仔馬が付いて来ていた。もしや?
『スノウか?』思念を送ってみると、
『あ、ゲオルク!ご主人も一緒だぞ。』やっぱりスノウだった。
『そうか。よく来たな。』

 定期馬車から、ジュヌさんとベスさんが降りて来た。
「あら、ゲオルクさん。わざわざお出迎えですの?」
「おお、ゲオルクどの。会いたかったぞ。」
「ジュヌさん、ベスさん、お疲れ様。わざわざ来てもらって悪いんだけど、指名依頼は達成しちゃったんだ。」
「え?こちらへ来てまだ3日目ではありませんの?」
「うむ。流石、私が見込んだ男だ!」

「それとさ、紹介しとくよ。南府でスピリタスに入ってもらったベアトリーチェさん。Sアタッカーの刀剣士でDランク。
 ビーチェさん、神官のジュヌヴィエーヴさんと重騎士のエリザベスさん。ジュヌさんはEランクのヒーラー、ベスさんはDランクのタンク。」
「僕、ビーチェだよ。よろしくね。」
「よろしくですわ。わたくしはジュヌと呼んでくださいませ。」
「私はベスでいい。よろしくな。」

「でさ、東府へ向かうのに、今日の王都への定期馬車へ乗ろうかと思ってたんだ。」
「わたくしたちとんぼ返りですの?」
「ふむ。せめて1日ぐらいは南府でゆっくりしたいものだな。」
「ゲオっち、1日くらいいいじゃん。もう1泊、僕んちに泊まろうよ。」
「そうだな。」
「ゲオルクどのは、ビーチェの家に泊まってたのか?」
「そだよー。皆も泊まるはずだったの。」
「え?」
「ああ、ビーチェさんとこは宿屋兼レストランなんだ。」
「メインはレストランだけどねー。僕はそこの看板娘だったんだけど、ゲオっちに引き抜かれたんだ。」
「ビーチェは、冒険者だったのではなくて?」
「昔ね。でも魔力が少なくていったん諦めたんだ。で、叔父さんの店で看板娘をしてたんだけど、ゲオっちが魔力不足を解消してくれて、昨日、冒険者に復帰したんだよ。」

「ゲオルクさん、つまり、そう言うことですのね。」
「まったく、ゲオルクどのは見境ないな。」
「ちょっと待って、ベスさん。見境ないと言うのは心外だよ。俺が見込んだ女性で、潜在能力は高いのに魔力不足で困っている女性に限る!」
 あと、美人で巨乳と言う条件も付くがそれは取り敢えず伏せておく。
「まぁ確かにスピリタスのメンバーは皆そうですわね。」
「え?ゲオっち、スピリタスのメンバー全員とデキてるの?」
「まぁ、そう言うことかな。魔力不足で冒険者の夢を諦めてた潜在能力のある女性の魔力不足を解消して、パーティを組んだのがスピリタスだ。」
「しかしな、だらだらと関係を続けている訳ではないぞ。そこは一線引いている。」
「うん分かった。皆と僕とは境遇が似てるんだね。仲良くやって行けそうだよ。」

 それからジュヌさんとベスさんにワラを紹介して、ビーチェさんにはスノウを紹介した。
 そして結局、リシッチャ亭でもう1泊して、明日の便で王都に向かうことになった。

 リシッチャ亭に来た。昼餉時なので混み出している。
「叔父さーん、義叔母さーん、ただいまー。お客さんを連れて来たよー。」
「なんだ、ゲオルクじゃねぇか。南府を発つんじゃなかったのか?それに、えれぇ別嬪の連れだな。」
「はい。仲間のふたりがちょうど今日、南府に着いたんでもう1泊お願いしに来ました。」
「おう、うちは構わねぇよ。この支払はどっちだ?」
「依頼達成の後なんで俺が払いますよ。」
「分かった。部屋は適当に使ってくれ。ビーチェ、皆さんを部屋に案内してくんな。」

 チェックインすると俺は今までの部屋、ジュヌさんとベスさんは隣の部屋だった。
 その後、リシッチャ亭で昼餉を摂った。相変わらずの盛況で、ビーチェさんは看板娘に戻っていた。笑

 昼餉の後、午後はすっかり穏やかになったリシッチャ亭前の海に行った。
 精霊たちは大喜びで服を脱ぎ捨て海に浸かり、スノウも海ではしゃいでいた。お姉様方はパラソルを立ててのんびりと寛いでいた。
 夏だったらビキニかハイレグの水着姿が拝めたかと思うと、今の季節が恨めしい。きっと来年の夏には、リーゼさんとカルメンさんも連れて、全員でこの海に来てやる!と心に誓ったのだった。

 海から戻るとリシッチャ亭の大浴場の温泉だ。客は俺たちのみの貸し切りなので、当然、皆で混浴である。テンションアゲアゲーと思ったら、混浴はダメだとマルコさんに釘を刺された。このお邪魔虫め。
 結局、ジュヌさん、ベスさん、ビーチェさんは女湯、俺は精霊たちと男湯。ふん!別にいいさ。
 5人の精霊たちを洗ってやるといつものようにキャッキャと喜んでいたが、幼女の第一形態や少女の第二形態では、面白いことなどはなんもない。隣のメロンボール6個に思いを馳せ、精霊たちが第五形態、いやせめて第四形態であったならと涙を飲む俺であった。

 そして夕餉だ。
 今日は久々に漁が再開され、しかも大漁だったとかで、マルコさんが、地魚をふんだんに使った料理がイチ押しだと言うのでそれにした。カルパッチョ、アクアパッツァ、カルピオーネ、ピカタ…。堪能した。
 折角なので南部の酒も堪能することにした。南部は中部にも引けを取らないワインの産地だが、南部独特の酒としてはリキュールも忘れることはできない。蒸留酒のグラパは食事の友で、食後のエスプレッソにハーブの利いたサンブカを適量垂らすのも乙だ。

 夕餉を堪能した俺たちは、俺の部屋に集まって宴会の続きを始めた。ここでは主にワインだ。客足が落ち着くと、ビーチェさんも手伝いから解放されて宴会に合流した。

 王都では、ジュヌさんがギルドの所属依頼を断り、王宮との折衝もこちらの予定通りに進めて来たそうだ。王宮から俺に連絡を寄越したのは侍従長だった。
 貴族の出のベスさんによると、侍従長程度なら呼び出しに応じる必要はないらしい。王族か宰相からの呼び出しなら応じてもよかろうとの見立てだ。
 そんなに強気に出ていいのかと聞いたら、王宮との折衝に当たったジュヌさんも貴族の出のベスさんも口を揃えて、侍従長程度でノコノコ行く方が軽く見られるとのことだった。貴族の世界はよう分からん。
 ジュヌさんやベスさんが知恵袋になってくれてほんとに助かった。

 北府では、ベスさんが兄上どのと北府魔法学院に、次に北府に行ったときに立ち寄ると言うことで、話を付けて来ていた。兄上どのは、伯爵様やセバスさんが俺に一目置いたと言うことで、俺と会うのを相当楽しみにしているとのことだった。むやみにハードルを上げないで欲しい。汗。

 俺は、ワラと契約した経緯を語ったが、ベスさんは、それは王国への宣戦布告だから、仕掛けて来た相手が分かれば戦争になる。その際はスピリタスも参戦すべきだと息巻いていた。流石、元騎士団副長。しかしその意見には俺も賛成だ。

 そんなこんなで宴会は盛り上がり、興に乗ったジュヌさんが、暴走し始めた。
「ゲオルクさん、南府に来てたった2日で指名クエストを達成したのですからご褒美を差し上げますわ。何がよろしくて?」
「そりゃあご褒美と言ったら…。」ぱふぱふでんがな!笑
「うふふ。ご堪能あそばせ。」部屋着なので破壊力の高いノーブラキャミぱふである。
「ゲオルクどの、次は私だ。」おおお!
 横できょとんとしていたビーチェさんにジュヌさんがぱふぱふを説明し、その後、ビーチェさんもぱふぱふデビューをしたのだった。笑

 その夜、いい夢を見たのは言うまでもない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/3/20

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...