36 / 183
精霊の加護033 南府からの指名依頼
しおりを挟む
精霊の加護
Zu-Y
№33 南府からの指名依頼
ディバラを出発し、途中、宿場町で2泊して、3日目に北府へ到着した。
その足でレンタル馬車を北府営業所に返し、北府の定宿に向かった。ベスさんは自宅のアパートへ帰るかと思っていたが、そこだと厩がない。一方、俺たちが泊まる宿には厩がある。
ベスさんは、スノウと離れるのが嫌なので自分も宿屋に泊まると言い出した。まぁ、いいけどね。
「ベスさん、次は鉱山エリアに行くけど、数日休みにしようと思うんだ。その間ずっとここに泊まるの?」
「うむ。そうするつもりだ。いっそのことアパートは引き払うかな。」
「え?引き払うって?」
「うむ。言葉通りだな。ゲオルクどの、どうせ、鉱山エリアで金属の精霊と契約したら次は南部へ行くのであろう?」
「南部に行く前に、一旦東府には報告に帰るけど、まぁそうなるね。」
「さすれば長い間、留守にすることになる。それに、そうこうしてるうちにゲオルクどのがAランクに上がれば、一緒に住むことになるのだからあの部屋はもう要らぬではないか。」
「まぁ確かにそうかな。」
「私も東府のアパートは解約してるわよ。」リーゼさんの言葉にジュヌさんもカルメンさんも頷いている。
「ゲオルクさん、Aランクになるためには、もっとクエストを受けなければいけませんわ。」
「そうだね、あたしたちもレベル上げしたいし、休暇はクエストでどうだい?」
「皆さん、休みはいいの?」
「ギルドで受付やってるときに比べれば、北府に来てからの毎日は楽だったわね。温泉でものんびりできたし。」
「どんだけギルドの受付はブラックなのさ。」
「だから売れ残るのよねぇ。私たちは。」
「何言ってんの!モテモテだったくせに。」
「ゲオルクさん、誰でもいいと言う訳ではありませんわ。やはり一生を託すのですからそれなりの殿方でないと。」
「雑魚にモテてもしょうがないと?」
「そんな、雑魚だなんて。でもまぁ、有体に申せばそう言うことですわね。」
「ゲオルク、半端な冒険者と結婚したとするだろ。そしたら結構な割合で若後家だよ。あたしたちは若くして死んじまった冒険者もいっぱい見てるからね、冒険者と結婚するならAランクってのは、そう言うこった。少なくともAランクに上り詰めた奴は、おいそれとは死なないからね。」
「なるほどな。確かに冒険者は危険だな。もちろん有事となれば騎士団もただでは済まないがな。それにしてもギルドは騎士団に勝るとも劣らぬブラックさよな。」
ベスさんが納得している。やっぱ騎士団もブラックなんだ。苦笑
「そう言えば北府騎士団はその後どうなったかな。」
俺が何の気なしに疑問を口にした。
「近衛隊が介入したからな、団長は連行されたゆえ、仮に罪に問われなくても監督責任を取らされて更迭よな。さすれば、組織は刷新されていような。いずれにせよ、以前よりはましになってるのではないかな。」
「ふーん、じゃあさ、明日、アパートを引き払ったら騎士団でも見に行こうか?どう?ベスさん。」
「うむ。それもいいな。皆はどうする?一緒に来るか?」
「そうね。午前中で終わるわよね。」
「ん?まぁそうだと思うがな。」
「だったら午後はスイーツに行きましょう。」
「あら、それはいいですわね。」
「あたしもそれがいいな。」
「うむ。そうしよう。」
明日の行動が決まった。
翌朝、宿屋で朝餉を済ませて宿を出る。ベスさんは厩からスノウを連れて来ていた。
「スノウも連れて行くの?」
「当たり前だ。あんな窮屈なとこに繋いでおけるか!騎士団の詰所に行くのだから、馬場で自由に走らせてやるのだ。な、スノウ。」
スノウはヒヒンと応えた。
「スノウ、それでいいの?」一応スノウにも確認する。
『もちろんだ。あそこはご主人を乗せて散々走った。懐かしいよ。』なるほど、前世の記憶って奴ね。
ベスさんの大家の所で賃貸契約を解約し、最低限の荷物を引き上げると、それ以外は道具屋に売り払ってしまった。物に執着しないとこなど、実に男前なベスさんだけのことはある。笑
それから騎士団詰所に向かった。結局半壊した建物は撤去されていた。新たに建て直すのかな?
俺たち…と言うか、俺たちの中にベスさんを見付けた門番のひとりが敬礼し、もうひとりが中にすっ飛んで行った。しばらくすると、新たな責任者っぽいのが出て来た。
確かこの男は、ベスさんが騎士団に殴り込みを掛けたとき、対応してきた男だ。あのときはベスさんに、小者と一蹴されたけどな。
「副長、よくおいで下さいました。いい馬ですな。この艶やかな純白、副長のスノウを思い出します。」
「うむ。スノウの生まれ変わりなのだ。」
「はぁ。ところで今日は何用で?」あ、毛色が似ているだけなのに、とか思ってるな。笑
「うむ。騎士団の様子を見るのと、馬場でスノウを走らせてやろうと思ってな。」
「そうですか。では私がご案内致します。これでも今は団長代理でして。」
「さもあろうな。そなたは一番まともであったゆえ。」え?小者って言ってなかったっけ?
団長代理がベスさんに向かって眼を見開いている。
「今なんと?」
「ん?そなたが一番まともであったゆえ、団長代理になって当然と思ったからそう申した。」
すると団長代理の頬をツーっと涙が伝った。
「嬉しいことを仰せられる。」
団長代理は涙を見られないように俺たちを先導した。もう見ちゃったけどな。
団長代理の話によると、半壊した騎士団詰所の修復には予算を出さぬと言われ、撤去を命じられたそうだ。撤去したら新しい詰所が建てられるのかと思っていたら、それもなしだとか。
今はテントが詰所だ。北部公爵様のご裁定で、詰所の建設費用は府民からの寄付にせよとのこと。つまり今までのようにふんぞり返っている騎士団では、寄付は集まらない。府民と親身に向き合い、真摯に府民の手助けをして、詰所を再建できる程の寄付が集まるまでに、府民の信頼を勝ち取れと言うことだ。
俺は実にいい裁定だと思うが、これから冬になれば雪も降ろうし、テントのままでは寒かろうな。
それからベスさんは、馬場でみっちり1時間ほどスノウを走らせた。1歳馬のスノウにはまだ乗れないので、馬場の中心から長く伸ばしたひもを頭絡に繋ぎ、ぐるぐると周回させるのだ。右回り、左回りと、交互に繰り返し走らせた。いわゆる調教だが、ベスさんとスノウの息はぴったりだ。
スノウが大いに喜んでいた。ベスさんも凄く生き生きとしていた。
帰り際に団長代理から、ギルドが俺たちを探していると伝えられた。しかし、取り敢えず、スイーツを堪能してから行こうと言うことになって、テラス席のあるスイーツ店で、スノウを繋ぎつつ、ゆっくり甘味を堪能した。
昼下がりになって、俺たちはようやく冒険者ギルドに到着した。俺は受付に行って申し出た。
「スピリタスのゲオルクだ。騎士団詰所でギルドから呼び出されていると聞いたのだが。」俺は冒険者カードを提示した。
「まずは、スピリタスへ南府ギルドからの指名依頼が来てます。それと、スピリタスの皆さんに緊急のお手紙がたくさん来ています。」
なんだこりゃ。いったい何通あるんだ?
「北府ギルドでは個人宛の手紙を受付が扱うのかしら?」リーゼさんが驚いて聞いた。
「いいえ、普通は事務方の者が、手紙が来てると言う通知を張り出すだけですが、この量に加えて、VIPからのお手紙もありますので。」
「VIPから?」俺にVIPから手紙?そもそもVIPって誰よ。
南府ギルドからの指名依頼ってのも気になるが、まずは手紙からやっつけよう。仕分けすると、ほとんどが俺宛だった。ひとつひとつ確認する。
まず、東府魔法学院のルードビッヒ主任教授から、「そろそろ中間報告に来るように。」って、3ヶ月に1回でいいって言ってたのに!
次に、東府教会の大司教様から、「東府公爵様からのお召しがあったから一旦東府へ戻られたし。」って、ほんとにお召しが来たんだ。
うお、東部公爵様からだ!「東部公爵邸へ参上せよ。」だって?マジかよ!
えー、王宮からも?王宮への招待状じゃないか。東府公爵様とどちらを優先すればいいんだ?
あ、北府魔法学院の主任教授からも来てる。「先日のお訪ねの際には最優先でお会いすべきだったと後悔しております。いつでも最優先で時間を取りますので、ぜひ再訪して下さい。」あらら。これは長くなるなぁ。
それ以外はすべて、いろいろな貴族からで、仕官の希望があれば取り立てるとか、娘が会いたがっているとか、息子を弟子入りさせたいとか、そんなんばっかりだった。これらはスルーでいいや。
リーゼさんには東府ギルドのギルマスから、ジュヌさんには王都ギルドのギルマスから、カルメンさんには西府ギルドのギルマスから手紙が来ていた。
「東府ギルドに拠点にするよう、ゲオルク君を説得して欲しい。って書いてあるわ。条件はBランクへの昇格クエストとパーティ拠点の提供だそうよ。」
「王都ギルドからも同じことを言って来てますわね。」
「西府ギルドもそう言って来てるな。それと、初心者パーティのサポートについて表彰したいとさ。当時は、あたしが表彰申請しても、見向きもしなかったくせによく言うよ。」
「え?カルメンさん、表彰申請してくれてたの?」
「あれ?ゲオルクには言ってなかったか?」
「初耳だよ。」
「そうか。ゲオルクに伝えるのは、表彰申請が通ってからにしようと思ってたんだった。」
「私には兄上様から手紙が来ている。義弟となるゲオルクどのを紹介して欲しいそうだ。」
「手紙のすべてには応えられないよ。どれに応えるか皆で精査しよう。あと、応えられないところには詫状を書かないとな。」
結局見知らぬ貴族からのオファーは、仕官する気もないし、見知らぬ娘に会いたくもないし、弟子など取る気もないからすべてパス。それから、東府ギルド、王都ギルド、西府ギルドからの拠点要請もパス。スピリタスは特定の拠点を作らずにあちこちで活動するのだ。
王家からと東部公爵様からの呼び出しなら王家優先だろうと思っていたが、ベスさんが鋭い指摘をしてくれた。
「ゲオルクどの、この招待状は王家からではなく王宮からだぞ。」
「え?違うの?」
「違うな。王宮からと言うことは、王家の直臣の侍従長からの呼び出しだ。それならば東部公爵様の方が序列は遥かに上だぞ。」
なるほど、そう言うものなのか。貴族出のベスさんがいてくれてよかった。
最終的に、東部公爵様のお召しに応えるのが最優先と言うことになり、鉱山エリア行を後回しにして、東府に帰ることにした。東府に帰れば、ルードビッヒ教授と東府大司教様にもお会いすることができる。
なお、東府に発つ前にここ北府で、北府魔法学院の主任教授と、ベスさんの兄上様に会ってから行く。明日の午前中に北府魔法学院を訪ね、午後はバース伯爵家の北府屋敷に回ることにした。北府を発つのは明後日だ。
「ゲオルクさん、南府ギルドからの指名依頼も内容を確認しておいた方がよいのではなくて?」
「あ、忘れるとこだった。ジュヌさん、ありがとう。」
南府ギルドの指名依頼は、かなり深刻な内容だった。
南部公爵領は大きな南部湾を形成する本土と、南部湾の外縁に沿って点在する島々から構成されているが、この南部湾を縄張りとしている水の精霊が、怒り狂って暴走しているそうだ。
南部湾の海が荒れたままなので、漁師は漁に出られず、島への定期船も出せずにいる。
このままだと漁師は死活問題だし、南府民を始めとする南部の民は、海からの恵みがなくなったままならば、間もなく飢えてしまう。さらに南部の島々の島民は、本土からの物資が来ないままだと、物資不足で難儀することになる。いや、すでに難儀しているかもしれない。
穏やかな精霊が暴走すると言うのは俄かには信じ難いから、なおのこと、しっかり調査して原因を突き止め、解決せねばならない。
「これが最優先じゃないかな。」
「そうだね。民の難儀を解決するのが最優先だね。」
「ゲオルクどの、そなたは一刻も早く南府に向かった方がいいのではないか?兄上様と北府魔法学院には、私がゲオルクどのの代わりに行って事情を説明しておこう。北府魔法学院には、先日ゲオルクどのに同行しているから話は通じると思うぞ。」
「そうよね。私も一旦東府に行くわ。ルードビッヒ教授と大司教様に事情を申し上げて、南府の問題が片付き次第、東府に戻ると伝えるわ。東部公爵様には、大司教様からお伝え頂ければいいと思うのよ。それと東府ギルドにも断りを入れなくちゃ。」
「それならあたしゃ、西府ギルドに行こう。ゲオルクの拠点を持たないと言う意向を伝えて要請を断り、角が立たないように表彰だけは受けて来るよ。ついでにアルマチとホレル…じゃなかった、ゲオルク学校の様子も見て来てやるよ。」カルメンさん、ゲオルク学校って言うのはやめて!
「ならば私は王都ですわね。王都ギルドにご希望に添えない旨を伝えて来ますわ。それから王宮には、ゲオルクさんの意向として、南部の問題を解決して、その後に東部公爵様のお召を受けてから王宮に伺います。とお返事しておきますわ。」
「皆、ありがとう。なんか申し訳ないね。」
「では皆は明日北府を発つゆえ、出発の準備をな。私は、兄上様と北府魔法学院のことを片付けてから皆の後を追おう。取り敢えずこれからバース伯爵家の北府屋敷に行って参る。」
冒険者ギルドでベスさんと別れ、俺たちは旅立ちの準備をした。携帯食や薬品など、必要物資の仕入れである。それと精霊達のために、新しい絹の薄織の反物も購入せねばな。
宿屋でベスさんと合流すると、難しい顔をしていた。
「兄上様は一旦バースに帰られていた。父上様へのご報告に行かれたのだ。兄上様が北府に戻られるまでは、私は北府に足止めになるが、兄上様はすぐにまた出府されるそうなので、せいぜい2~3日待つだけだ。」
「まあ仕方ないよ。それでもベスさんは北府の用事が終わり次第、南府に来られるから早いでしょ。ジュヌさんも王都の用事が終わり次第だから早いよね。一方、リーゼさんとカルメンさんは東府と西府をそれぞれ往復するから、その分は余分に掛かるね。」
「いずれにせよ、南府で合流するまで別行動ですわね。」
その夜は北府最後の夜だと言うので、夕餉の後は皆で呑んだ。しばしのお別れと言うことで、ベスさんがぱふぱふをしてくれた。超幸せ。
翌日、ベスさんとスノウに見送られて定期馬車で王都へ向かった。定期馬車は数日掛けて王都に着く。
王都到着前日、最後の宿泊地では、しばしの別れを惜しんだリーゼさん、ジュヌさん、カルメンさんが、皆でぱふぱふをしてくれた。超幸せ×3。
王都では皆が別れた。俺は精霊たちを連れて南府行の馬車に、リーゼさんは東府行の馬車に、カルメンさんは西府行の馬車にそれぞれ乗り継いだ。ジュヌさんは王都に残るので、それぞれジュヌさんに見送られて王都を後にした。
南府までは定期馬車はさらに数日掛かる。依頼内容はややこしそうだが、南部に行くのは初めてなので楽しみだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/3/6
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№33 南府からの指名依頼
ディバラを出発し、途中、宿場町で2泊して、3日目に北府へ到着した。
その足でレンタル馬車を北府営業所に返し、北府の定宿に向かった。ベスさんは自宅のアパートへ帰るかと思っていたが、そこだと厩がない。一方、俺たちが泊まる宿には厩がある。
ベスさんは、スノウと離れるのが嫌なので自分も宿屋に泊まると言い出した。まぁ、いいけどね。
「ベスさん、次は鉱山エリアに行くけど、数日休みにしようと思うんだ。その間ずっとここに泊まるの?」
「うむ。そうするつもりだ。いっそのことアパートは引き払うかな。」
「え?引き払うって?」
「うむ。言葉通りだな。ゲオルクどの、どうせ、鉱山エリアで金属の精霊と契約したら次は南部へ行くのであろう?」
「南部に行く前に、一旦東府には報告に帰るけど、まぁそうなるね。」
「さすれば長い間、留守にすることになる。それに、そうこうしてるうちにゲオルクどのがAランクに上がれば、一緒に住むことになるのだからあの部屋はもう要らぬではないか。」
「まぁ確かにそうかな。」
「私も東府のアパートは解約してるわよ。」リーゼさんの言葉にジュヌさんもカルメンさんも頷いている。
「ゲオルクさん、Aランクになるためには、もっとクエストを受けなければいけませんわ。」
「そうだね、あたしたちもレベル上げしたいし、休暇はクエストでどうだい?」
「皆さん、休みはいいの?」
「ギルドで受付やってるときに比べれば、北府に来てからの毎日は楽だったわね。温泉でものんびりできたし。」
「どんだけギルドの受付はブラックなのさ。」
「だから売れ残るのよねぇ。私たちは。」
「何言ってんの!モテモテだったくせに。」
「ゲオルクさん、誰でもいいと言う訳ではありませんわ。やはり一生を託すのですからそれなりの殿方でないと。」
「雑魚にモテてもしょうがないと?」
「そんな、雑魚だなんて。でもまぁ、有体に申せばそう言うことですわね。」
「ゲオルク、半端な冒険者と結婚したとするだろ。そしたら結構な割合で若後家だよ。あたしたちは若くして死んじまった冒険者もいっぱい見てるからね、冒険者と結婚するならAランクってのは、そう言うこった。少なくともAランクに上り詰めた奴は、おいそれとは死なないからね。」
「なるほどな。確かに冒険者は危険だな。もちろん有事となれば騎士団もただでは済まないがな。それにしてもギルドは騎士団に勝るとも劣らぬブラックさよな。」
ベスさんが納得している。やっぱ騎士団もブラックなんだ。苦笑
「そう言えば北府騎士団はその後どうなったかな。」
俺が何の気なしに疑問を口にした。
「近衛隊が介入したからな、団長は連行されたゆえ、仮に罪に問われなくても監督責任を取らされて更迭よな。さすれば、組織は刷新されていような。いずれにせよ、以前よりはましになってるのではないかな。」
「ふーん、じゃあさ、明日、アパートを引き払ったら騎士団でも見に行こうか?どう?ベスさん。」
「うむ。それもいいな。皆はどうする?一緒に来るか?」
「そうね。午前中で終わるわよね。」
「ん?まぁそうだと思うがな。」
「だったら午後はスイーツに行きましょう。」
「あら、それはいいですわね。」
「あたしもそれがいいな。」
「うむ。そうしよう。」
明日の行動が決まった。
翌朝、宿屋で朝餉を済ませて宿を出る。ベスさんは厩からスノウを連れて来ていた。
「スノウも連れて行くの?」
「当たり前だ。あんな窮屈なとこに繋いでおけるか!騎士団の詰所に行くのだから、馬場で自由に走らせてやるのだ。な、スノウ。」
スノウはヒヒンと応えた。
「スノウ、それでいいの?」一応スノウにも確認する。
『もちろんだ。あそこはご主人を乗せて散々走った。懐かしいよ。』なるほど、前世の記憶って奴ね。
ベスさんの大家の所で賃貸契約を解約し、最低限の荷物を引き上げると、それ以外は道具屋に売り払ってしまった。物に執着しないとこなど、実に男前なベスさんだけのことはある。笑
それから騎士団詰所に向かった。結局半壊した建物は撤去されていた。新たに建て直すのかな?
俺たち…と言うか、俺たちの中にベスさんを見付けた門番のひとりが敬礼し、もうひとりが中にすっ飛んで行った。しばらくすると、新たな責任者っぽいのが出て来た。
確かこの男は、ベスさんが騎士団に殴り込みを掛けたとき、対応してきた男だ。あのときはベスさんに、小者と一蹴されたけどな。
「副長、よくおいで下さいました。いい馬ですな。この艶やかな純白、副長のスノウを思い出します。」
「うむ。スノウの生まれ変わりなのだ。」
「はぁ。ところで今日は何用で?」あ、毛色が似ているだけなのに、とか思ってるな。笑
「うむ。騎士団の様子を見るのと、馬場でスノウを走らせてやろうと思ってな。」
「そうですか。では私がご案内致します。これでも今は団長代理でして。」
「さもあろうな。そなたは一番まともであったゆえ。」え?小者って言ってなかったっけ?
団長代理がベスさんに向かって眼を見開いている。
「今なんと?」
「ん?そなたが一番まともであったゆえ、団長代理になって当然と思ったからそう申した。」
すると団長代理の頬をツーっと涙が伝った。
「嬉しいことを仰せられる。」
団長代理は涙を見られないように俺たちを先導した。もう見ちゃったけどな。
団長代理の話によると、半壊した騎士団詰所の修復には予算を出さぬと言われ、撤去を命じられたそうだ。撤去したら新しい詰所が建てられるのかと思っていたら、それもなしだとか。
今はテントが詰所だ。北部公爵様のご裁定で、詰所の建設費用は府民からの寄付にせよとのこと。つまり今までのようにふんぞり返っている騎士団では、寄付は集まらない。府民と親身に向き合い、真摯に府民の手助けをして、詰所を再建できる程の寄付が集まるまでに、府民の信頼を勝ち取れと言うことだ。
俺は実にいい裁定だと思うが、これから冬になれば雪も降ろうし、テントのままでは寒かろうな。
それからベスさんは、馬場でみっちり1時間ほどスノウを走らせた。1歳馬のスノウにはまだ乗れないので、馬場の中心から長く伸ばしたひもを頭絡に繋ぎ、ぐるぐると周回させるのだ。右回り、左回りと、交互に繰り返し走らせた。いわゆる調教だが、ベスさんとスノウの息はぴったりだ。
スノウが大いに喜んでいた。ベスさんも凄く生き生きとしていた。
帰り際に団長代理から、ギルドが俺たちを探していると伝えられた。しかし、取り敢えず、スイーツを堪能してから行こうと言うことになって、テラス席のあるスイーツ店で、スノウを繋ぎつつ、ゆっくり甘味を堪能した。
昼下がりになって、俺たちはようやく冒険者ギルドに到着した。俺は受付に行って申し出た。
「スピリタスのゲオルクだ。騎士団詰所でギルドから呼び出されていると聞いたのだが。」俺は冒険者カードを提示した。
「まずは、スピリタスへ南府ギルドからの指名依頼が来てます。それと、スピリタスの皆さんに緊急のお手紙がたくさん来ています。」
なんだこりゃ。いったい何通あるんだ?
「北府ギルドでは個人宛の手紙を受付が扱うのかしら?」リーゼさんが驚いて聞いた。
「いいえ、普通は事務方の者が、手紙が来てると言う通知を張り出すだけですが、この量に加えて、VIPからのお手紙もありますので。」
「VIPから?」俺にVIPから手紙?そもそもVIPって誰よ。
南府ギルドからの指名依頼ってのも気になるが、まずは手紙からやっつけよう。仕分けすると、ほとんどが俺宛だった。ひとつひとつ確認する。
まず、東府魔法学院のルードビッヒ主任教授から、「そろそろ中間報告に来るように。」って、3ヶ月に1回でいいって言ってたのに!
次に、東府教会の大司教様から、「東府公爵様からのお召しがあったから一旦東府へ戻られたし。」って、ほんとにお召しが来たんだ。
うお、東部公爵様からだ!「東部公爵邸へ参上せよ。」だって?マジかよ!
えー、王宮からも?王宮への招待状じゃないか。東府公爵様とどちらを優先すればいいんだ?
あ、北府魔法学院の主任教授からも来てる。「先日のお訪ねの際には最優先でお会いすべきだったと後悔しております。いつでも最優先で時間を取りますので、ぜひ再訪して下さい。」あらら。これは長くなるなぁ。
それ以外はすべて、いろいろな貴族からで、仕官の希望があれば取り立てるとか、娘が会いたがっているとか、息子を弟子入りさせたいとか、そんなんばっかりだった。これらはスルーでいいや。
リーゼさんには東府ギルドのギルマスから、ジュヌさんには王都ギルドのギルマスから、カルメンさんには西府ギルドのギルマスから手紙が来ていた。
「東府ギルドに拠点にするよう、ゲオルク君を説得して欲しい。って書いてあるわ。条件はBランクへの昇格クエストとパーティ拠点の提供だそうよ。」
「王都ギルドからも同じことを言って来てますわね。」
「西府ギルドもそう言って来てるな。それと、初心者パーティのサポートについて表彰したいとさ。当時は、あたしが表彰申請しても、見向きもしなかったくせによく言うよ。」
「え?カルメンさん、表彰申請してくれてたの?」
「あれ?ゲオルクには言ってなかったか?」
「初耳だよ。」
「そうか。ゲオルクに伝えるのは、表彰申請が通ってからにしようと思ってたんだった。」
「私には兄上様から手紙が来ている。義弟となるゲオルクどのを紹介して欲しいそうだ。」
「手紙のすべてには応えられないよ。どれに応えるか皆で精査しよう。あと、応えられないところには詫状を書かないとな。」
結局見知らぬ貴族からのオファーは、仕官する気もないし、見知らぬ娘に会いたくもないし、弟子など取る気もないからすべてパス。それから、東府ギルド、王都ギルド、西府ギルドからの拠点要請もパス。スピリタスは特定の拠点を作らずにあちこちで活動するのだ。
王家からと東部公爵様からの呼び出しなら王家優先だろうと思っていたが、ベスさんが鋭い指摘をしてくれた。
「ゲオルクどの、この招待状は王家からではなく王宮からだぞ。」
「え?違うの?」
「違うな。王宮からと言うことは、王家の直臣の侍従長からの呼び出しだ。それならば東部公爵様の方が序列は遥かに上だぞ。」
なるほど、そう言うものなのか。貴族出のベスさんがいてくれてよかった。
最終的に、東部公爵様のお召しに応えるのが最優先と言うことになり、鉱山エリア行を後回しにして、東府に帰ることにした。東府に帰れば、ルードビッヒ教授と東府大司教様にもお会いすることができる。
なお、東府に発つ前にここ北府で、北府魔法学院の主任教授と、ベスさんの兄上様に会ってから行く。明日の午前中に北府魔法学院を訪ね、午後はバース伯爵家の北府屋敷に回ることにした。北府を発つのは明後日だ。
「ゲオルクさん、南府ギルドからの指名依頼も内容を確認しておいた方がよいのではなくて?」
「あ、忘れるとこだった。ジュヌさん、ありがとう。」
南府ギルドの指名依頼は、かなり深刻な内容だった。
南部公爵領は大きな南部湾を形成する本土と、南部湾の外縁に沿って点在する島々から構成されているが、この南部湾を縄張りとしている水の精霊が、怒り狂って暴走しているそうだ。
南部湾の海が荒れたままなので、漁師は漁に出られず、島への定期船も出せずにいる。
このままだと漁師は死活問題だし、南府民を始めとする南部の民は、海からの恵みがなくなったままならば、間もなく飢えてしまう。さらに南部の島々の島民は、本土からの物資が来ないままだと、物資不足で難儀することになる。いや、すでに難儀しているかもしれない。
穏やかな精霊が暴走すると言うのは俄かには信じ難いから、なおのこと、しっかり調査して原因を突き止め、解決せねばならない。
「これが最優先じゃないかな。」
「そうだね。民の難儀を解決するのが最優先だね。」
「ゲオルクどの、そなたは一刻も早く南府に向かった方がいいのではないか?兄上様と北府魔法学院には、私がゲオルクどのの代わりに行って事情を説明しておこう。北府魔法学院には、先日ゲオルクどのに同行しているから話は通じると思うぞ。」
「そうよね。私も一旦東府に行くわ。ルードビッヒ教授と大司教様に事情を申し上げて、南府の問題が片付き次第、東府に戻ると伝えるわ。東部公爵様には、大司教様からお伝え頂ければいいと思うのよ。それと東府ギルドにも断りを入れなくちゃ。」
「それならあたしゃ、西府ギルドに行こう。ゲオルクの拠点を持たないと言う意向を伝えて要請を断り、角が立たないように表彰だけは受けて来るよ。ついでにアルマチとホレル…じゃなかった、ゲオルク学校の様子も見て来てやるよ。」カルメンさん、ゲオルク学校って言うのはやめて!
「ならば私は王都ですわね。王都ギルドにご希望に添えない旨を伝えて来ますわ。それから王宮には、ゲオルクさんの意向として、南部の問題を解決して、その後に東部公爵様のお召を受けてから王宮に伺います。とお返事しておきますわ。」
「皆、ありがとう。なんか申し訳ないね。」
「では皆は明日北府を発つゆえ、出発の準備をな。私は、兄上様と北府魔法学院のことを片付けてから皆の後を追おう。取り敢えずこれからバース伯爵家の北府屋敷に行って参る。」
冒険者ギルドでベスさんと別れ、俺たちは旅立ちの準備をした。携帯食や薬品など、必要物資の仕入れである。それと精霊達のために、新しい絹の薄織の反物も購入せねばな。
宿屋でベスさんと合流すると、難しい顔をしていた。
「兄上様は一旦バースに帰られていた。父上様へのご報告に行かれたのだ。兄上様が北府に戻られるまでは、私は北府に足止めになるが、兄上様はすぐにまた出府されるそうなので、せいぜい2~3日待つだけだ。」
「まあ仕方ないよ。それでもベスさんは北府の用事が終わり次第、南府に来られるから早いでしょ。ジュヌさんも王都の用事が終わり次第だから早いよね。一方、リーゼさんとカルメンさんは東府と西府をそれぞれ往復するから、その分は余分に掛かるね。」
「いずれにせよ、南府で合流するまで別行動ですわね。」
その夜は北府最後の夜だと言うので、夕餉の後は皆で呑んだ。しばしのお別れと言うことで、ベスさんがぱふぱふをしてくれた。超幸せ。
翌日、ベスさんとスノウに見送られて定期馬車で王都へ向かった。定期馬車は数日掛けて王都に着く。
王都到着前日、最後の宿泊地では、しばしの別れを惜しんだリーゼさん、ジュヌさん、カルメンさんが、皆でぱふぱふをしてくれた。超幸せ×3。
王都では皆が別れた。俺は精霊たちを連れて南府行の馬車に、リーゼさんは東府行の馬車に、カルメンさんは西府行の馬車にそれぞれ乗り継いだ。ジュヌさんは王都に残るので、それぞれジュヌさんに見送られて王都を後にした。
南府までは定期馬車はさらに数日掛かる。依頼内容はややこしそうだが、南部に行くのは初めてなので楽しみだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/3/6
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる