35 / 183
精霊の加護032 ハイラン高地のユニコーン
しおりを挟む
精霊の加護
Zu-Y
№32 ハイラン高地のユニコーン
セアリューからハイラン高地までは馬車で2日。ハイラン高地までに村はなく、雪を凌ぐための無人の山小屋があるだけだそうだ。
暦では秋の半ばだが、北部の北の雪山エリアの奥ともなると、すでに雪が降っている。ハイラン高地はほぼ万年雪だそうだ。
馬車での移動は、寒さ対策を心配したのだが、ジュヌさんによる魔法障壁の展開と、フィアの火の魔法であっさり解決された。魔力を消費し続けるジュヌさんとフィアには俺の魔力を定期的に供給すればよい。濃厚なキスで。
順調に進んで、セアリューとハイラン高地の中間地点の山小屋に着いた。今夜はここで宿泊だ。寒さを凌ぐには、人肌で温め合うのが一番いい方法だと思うのだが、どのタイミングで提案するかだ。前後左右をメロンボールで埋め尽くされたい!
しかーし!山小屋には暖炉があり、薪も十分あって、山小屋の中はすぐに暖かくなった。ちくしょう。泣
夕餉の準備は俺がすることになった。鍋に火を掛け、保存食の干し肉やらなんやらをぶち込んで、赤唐辛子、ジンジャー、ガーリックなどをたっぷり効かせたホットスープを作った。仕上げに塩胡椒で味を調えた。
「ゲオルク、実にいい辛さじゃないか。体の芯から温まって来るようだよ。」
「ほんとですわ。これぞ冒険者の手料理と言った感じですわね。」
「これは美味しいわ。ゲオルク君、見直したわよ。」
「確かに旨い。我が家の料理人たちにも引けを取らぬな。」
「どうも。」
ふふふ、実は強壮剤も入れている。上手く行けば今夜は…。強壮剤でのほてりを、辛味でのほてりと見紛おうし、強壮剤を使ったのがバレても寒さ対策と、いくらでも言い逃れができる。ふふふのふ。
皆でがっつり夕餉を食って、それから俺は、
「暖房液だ。」と言って、バース伯爵様から頂いた30年物のアードベクの封を切った。独特な香りが漂う。
「ゲオルクどの、これは?」流石にベスさん、目敏い。
「伯爵様から貰ったんだよ。」
「これを父上様が下されたのか?」
「うん。」
「なんと、ゲオルクどのは、父上様から余程気に入られたと見える。」
「そうなの?」
「兄上がこれを所望したことがあったのだがな、そのときは、そなたにはまだ早いと一蹴されたのだ。」マジか?
まあでも、確かに伯爵様とは気が合うしな。きっと伯爵様と俺は相性がいいのだろう。
俺は皆のグラスにアードベクを注いだ。強壮剤入りのスープの後に、ウイスキーで酔わせれば…。ふふふのふ!
「チル、氷をお願い。」
『はーい。』
ストレートだとあからさまだから、ロックがいいよね。
「ゲオルク君、精霊魔法でロックアイスって…。なんて罰当たりな使い方なのかしら。」
「まあいいじゃないの。」
明日はハイラン高地に着くだろう。
「ベスさん、明日はいよいよハイラン高地だね。上手くユニコーンが見付かるといいね。」
「ああ、そうだな。皆には私の我儘に付き合せてすまないと思っている。」
「ユニコーンと言えば、馬の聖獣だからね。やはり重騎士だけあって、馬に関することには目がないのも無理はないよ。」
「そうではないのだ。」
ハイラン高地にユニコーンがいると言う話を聞いて、ベスさんが飛び付いた。重騎士で馬好きなのかと思っていたのだが…。
「違うの?」
「ユニコーンはな、人と信頼関係を築いた馬が亡くなった後に、生まれ変わった聖獣だと言う言い伝えがあるのだ。」
「へぇ。」
「私には、そう言う馬がいた。新雪のような純白の牝馬でパウダースノウと言う名だった。一緒に騎士団に入隊してな、まさに以心伝心で私の意のままに動いてくれたのだ。魔力不足で騎馬スキルを十分に使えなかった私でも、スノウと一緒ならスキル抜きでも、十分に騎士団で通用したのだが、惜しいことに昨年、作戦中の事故で彼女を亡くしてしまった。」涙ぐむベスさん。
「ではユニコーンの中にスノウの生まれ変わりが?」
「左様。伝説が本当なら、スノウの生まれ変わりがいるのではないかと期待している。冷静に考えれば可能性など無きに等しい。しかし…。」
「行こう。そして見付けよう。あたしたちが必ず見付けてやるさ。」
「そうですわ。きっと見付けてみせますわ。」
なんかそのまま皆で盛り上がって痛飲してしまった。もちろん30年物は、ベスさんが勿体ないと言うので、皆で最初の1杯ずつだけにして、大事にしまったがね。
結局、真っ先に潰れたのは俺だった。泣
翌朝起きて、軽く朝餉を取り山小屋を出発。ラッキーなことにこの日は穏やかに晴れていた。しかし俺たちを乗せた馬車はグイグイと進んで行く。2頭立てだが馬は両方とも元気だ。干し草もたっぷり食わせてるしな。
昼過ぎにはハイラン高地に着いたが、ハイラン高地はとにかく広くて延々と続いている。ユニコーンがいる場所は分からない。
そうだ、精霊たちに聞いてみよう。
「なぁ、ユニコーンの居場所って分かるか?」
『もっと上。』『まだ先。』
と言う訳で俺たちはハイラン高地をさらに奥へと進んだ。
日も落ちて来たので、今夜はここで野営をしよう。フィアの火の魔法で辺り一帯の雪を溶かし、クレの土の魔法で、馬車のまわりを囲うように地面をせり上がらせた。
屋根を掛けようかと思ったが、星空がすごくきれいなのでやめた。きれいな星空を眺めながら夕餉を摂って寝る前に屋根を掛ければいいさ。
今夜の夕餉はリーゼさん担当だ。今夜も温まる熱いスープがいいなと思っていたら、やはりその様だ。クリーミーなミルクベースのシチューだった。ほくほくのポテトがとてもいい。そしてベーコンも旨い。
夕餉を終えてひと息ついたところで、精霊たちに聞いてみた。
「この辺にユニコーンはいそうか?」
『いるよ。』
「え?いるの?」
『でもまだ出て来ないよ。』『こっちの、様子を、見てる。』『警戒中ー。』
「なぁ、ユニコーンと話せるか?」
『『『『うん。』』』』
「ベスさんの相棒だったスノウはいるかって聞いてみてよ。」
『『『『承知ー。』』』』
精霊たちから、それぞれの色の小さな光の粒がたくさん浮き上がって、ゆっくりと満天の星空へと上昇して行く。
しばらくすると、
『いるよ。』『真っ白の仔。』『ベスがいるって伝えた。』『こっちに来るって。』
「まことか?」
『『『『うん。』』』』あ、ベスさんに返事した。だいぶ慣れて来たな。
しばらく沈黙が続き、馬の足音が聞こえて来た。
俺たちは迎えに出たのだが…駈け寄ってきたユニコーンは1頭。真っ白だったが…仔馬ではないか。
「ああ、スノウ。そなた、スノウだな。」え?そうなの?仔馬でいいの?
真っ白な仔馬のユニコーンは、嬉しそうに嘶いて、ベスさんに駈け寄り、体を擦り付けて明らかに甘えている。ユニコーンの首を抱いてベスさんは号泣した。
「昨年亡くなったって言ってたから、生まれ変わって1年くらいなのね。」
「だから仔馬なのですわ。」
「なるほどなー。」
「ベスに対するあの反応、スノウで間違いないだろうね。」
リーゼさんも、ジュヌさんも、カルメンさんも、もらい泣きしている。
『すごく喜んでる。』この様子を見れば分かるよ。
『迎えに、来てくれて、ありがとう、だって。』え?迎え?
『ベスと、一緒に、行くって。』なんですと?
『ゲオルクに、これからよろしくだって。』ちょっと待って。どう言うことだ?
「ベスさん、あのー。」
「おお、ゲオルクどの。スノウがな、一緒に来てくれるそうだ。」
「そりゃ構わないけど、群れから勝手に連れてっちゃって大丈夫なの?」
『群れの長がね、スノウをよろしく頼むって。』え?意外とあっさりなのね。
『困ったことがあったら駈け付けるって。』そりゃ心強い。
「まぁ、いいか。意思疎通は精霊達かベスさんを通せばできるしな。」
『ゲオルクも、できるよ。』え?
『フィアたちと、話すのと、一緒。』おおー、念話が通じるのか?
「スノウ、聞こえる?」早速話し掛けてみた。
『聞こえる。ご主人の番いだな。』番いって…ベスさんの夫って意味?
「ベスさんの婚約者だよ。」
『でももう番ってるじゃないか。』
「まぁそうだけど。」仔馬に突っ込まれるのって、なんか妙にハズいな。
『ご主人の心の中に、お前はいっぱい。』マジか?テンション上がるわー。
「そうか。そいつは嬉しいな。あと俺はゲオルクな。」
『分かった。ご主人が認めるだけあって、ゲオルクは強い。群れの長。』群れ?ああ、スピリタスのことか。
「俺が一応スピリタスのリーダーだけどな。皆、対等だぞ。」
『いや、ゲオルク、ハーレムの長。強いから。』何?ハーレムだと?…んー、間違っちゃいないか。
「まぁ、これからよろしくな。スノウ。」
『よろしく。』
スノウを引き受けるにあたって、餌は何を食べさせればいいのか心配だったのだが、普通の馬と同じでいいそうだ。あと、ユニコーン独特の角だが、幻惑の術で隠せるのだとか。実際に角を隠したスノウはまったく普通の仔馬と変わらなかった。
その夜、スノウはユニコーンの群れに帰って、仲間に旅立ちの挨拶をして来た。
スノウは朝イチで帰って来て、道中は馬車の後ろにピタリとついて来る。ベスさんは馬車の最後部に陣取って、ずっとスノウと話していた。端から見るとちょっと異様な光景であるが、それは口が裂けても言えない。苦笑
山小屋で1泊、セアリューの教会で1泊。セアリューではシャルが純白の仔馬のスノウに釘付けになっていた。笑
翌日、ラスゴーで1泊した際には、俺と精霊達は、特解痺草が自生する高原の監視小屋に泊まりに行って、ゲオルギウスと痛飲した。なお、その晩の監視は、精霊たちがやってくれた。
ディバラに戻ったのは、予定より3日早かった。レンタル馬車の営業所は、ここディバラと、北府にもあるのだが、回送の手間賃と、回送に掛かる3日分のレンタル料を払えば、北府の営業所で返却してもいいと言うので、そうすることにした。
このとき、スノウにひと目惚れしたディバラ営業所の所長が、ぜひ譲って欲しいと言って来たが、譲る訳がない。笑
北府に戻ったら、次は鉱山エリアに行くが、北府で少し休暇を取ろうっと。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/3/6
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№32 ハイラン高地のユニコーン
セアリューからハイラン高地までは馬車で2日。ハイラン高地までに村はなく、雪を凌ぐための無人の山小屋があるだけだそうだ。
暦では秋の半ばだが、北部の北の雪山エリアの奥ともなると、すでに雪が降っている。ハイラン高地はほぼ万年雪だそうだ。
馬車での移動は、寒さ対策を心配したのだが、ジュヌさんによる魔法障壁の展開と、フィアの火の魔法であっさり解決された。魔力を消費し続けるジュヌさんとフィアには俺の魔力を定期的に供給すればよい。濃厚なキスで。
順調に進んで、セアリューとハイラン高地の中間地点の山小屋に着いた。今夜はここで宿泊だ。寒さを凌ぐには、人肌で温め合うのが一番いい方法だと思うのだが、どのタイミングで提案するかだ。前後左右をメロンボールで埋め尽くされたい!
しかーし!山小屋には暖炉があり、薪も十分あって、山小屋の中はすぐに暖かくなった。ちくしょう。泣
夕餉の準備は俺がすることになった。鍋に火を掛け、保存食の干し肉やらなんやらをぶち込んで、赤唐辛子、ジンジャー、ガーリックなどをたっぷり効かせたホットスープを作った。仕上げに塩胡椒で味を調えた。
「ゲオルク、実にいい辛さじゃないか。体の芯から温まって来るようだよ。」
「ほんとですわ。これぞ冒険者の手料理と言った感じですわね。」
「これは美味しいわ。ゲオルク君、見直したわよ。」
「確かに旨い。我が家の料理人たちにも引けを取らぬな。」
「どうも。」
ふふふ、実は強壮剤も入れている。上手く行けば今夜は…。強壮剤でのほてりを、辛味でのほてりと見紛おうし、強壮剤を使ったのがバレても寒さ対策と、いくらでも言い逃れができる。ふふふのふ。
皆でがっつり夕餉を食って、それから俺は、
「暖房液だ。」と言って、バース伯爵様から頂いた30年物のアードベクの封を切った。独特な香りが漂う。
「ゲオルクどの、これは?」流石にベスさん、目敏い。
「伯爵様から貰ったんだよ。」
「これを父上様が下されたのか?」
「うん。」
「なんと、ゲオルクどのは、父上様から余程気に入られたと見える。」
「そうなの?」
「兄上がこれを所望したことがあったのだがな、そのときは、そなたにはまだ早いと一蹴されたのだ。」マジか?
まあでも、確かに伯爵様とは気が合うしな。きっと伯爵様と俺は相性がいいのだろう。
俺は皆のグラスにアードベクを注いだ。強壮剤入りのスープの後に、ウイスキーで酔わせれば…。ふふふのふ!
「チル、氷をお願い。」
『はーい。』
ストレートだとあからさまだから、ロックがいいよね。
「ゲオルク君、精霊魔法でロックアイスって…。なんて罰当たりな使い方なのかしら。」
「まあいいじゃないの。」
明日はハイラン高地に着くだろう。
「ベスさん、明日はいよいよハイラン高地だね。上手くユニコーンが見付かるといいね。」
「ああ、そうだな。皆には私の我儘に付き合せてすまないと思っている。」
「ユニコーンと言えば、馬の聖獣だからね。やはり重騎士だけあって、馬に関することには目がないのも無理はないよ。」
「そうではないのだ。」
ハイラン高地にユニコーンがいると言う話を聞いて、ベスさんが飛び付いた。重騎士で馬好きなのかと思っていたのだが…。
「違うの?」
「ユニコーンはな、人と信頼関係を築いた馬が亡くなった後に、生まれ変わった聖獣だと言う言い伝えがあるのだ。」
「へぇ。」
「私には、そう言う馬がいた。新雪のような純白の牝馬でパウダースノウと言う名だった。一緒に騎士団に入隊してな、まさに以心伝心で私の意のままに動いてくれたのだ。魔力不足で騎馬スキルを十分に使えなかった私でも、スノウと一緒ならスキル抜きでも、十分に騎士団で通用したのだが、惜しいことに昨年、作戦中の事故で彼女を亡くしてしまった。」涙ぐむベスさん。
「ではユニコーンの中にスノウの生まれ変わりが?」
「左様。伝説が本当なら、スノウの生まれ変わりがいるのではないかと期待している。冷静に考えれば可能性など無きに等しい。しかし…。」
「行こう。そして見付けよう。あたしたちが必ず見付けてやるさ。」
「そうですわ。きっと見付けてみせますわ。」
なんかそのまま皆で盛り上がって痛飲してしまった。もちろん30年物は、ベスさんが勿体ないと言うので、皆で最初の1杯ずつだけにして、大事にしまったがね。
結局、真っ先に潰れたのは俺だった。泣
翌朝起きて、軽く朝餉を取り山小屋を出発。ラッキーなことにこの日は穏やかに晴れていた。しかし俺たちを乗せた馬車はグイグイと進んで行く。2頭立てだが馬は両方とも元気だ。干し草もたっぷり食わせてるしな。
昼過ぎにはハイラン高地に着いたが、ハイラン高地はとにかく広くて延々と続いている。ユニコーンがいる場所は分からない。
そうだ、精霊たちに聞いてみよう。
「なぁ、ユニコーンの居場所って分かるか?」
『もっと上。』『まだ先。』
と言う訳で俺たちはハイラン高地をさらに奥へと進んだ。
日も落ちて来たので、今夜はここで野営をしよう。フィアの火の魔法で辺り一帯の雪を溶かし、クレの土の魔法で、馬車のまわりを囲うように地面をせり上がらせた。
屋根を掛けようかと思ったが、星空がすごくきれいなのでやめた。きれいな星空を眺めながら夕餉を摂って寝る前に屋根を掛ければいいさ。
今夜の夕餉はリーゼさん担当だ。今夜も温まる熱いスープがいいなと思っていたら、やはりその様だ。クリーミーなミルクベースのシチューだった。ほくほくのポテトがとてもいい。そしてベーコンも旨い。
夕餉を終えてひと息ついたところで、精霊たちに聞いてみた。
「この辺にユニコーンはいそうか?」
『いるよ。』
「え?いるの?」
『でもまだ出て来ないよ。』『こっちの、様子を、見てる。』『警戒中ー。』
「なぁ、ユニコーンと話せるか?」
『『『『うん。』』』』
「ベスさんの相棒だったスノウはいるかって聞いてみてよ。」
『『『『承知ー。』』』』
精霊たちから、それぞれの色の小さな光の粒がたくさん浮き上がって、ゆっくりと満天の星空へと上昇して行く。
しばらくすると、
『いるよ。』『真っ白の仔。』『ベスがいるって伝えた。』『こっちに来るって。』
「まことか?」
『『『『うん。』』』』あ、ベスさんに返事した。だいぶ慣れて来たな。
しばらく沈黙が続き、馬の足音が聞こえて来た。
俺たちは迎えに出たのだが…駈け寄ってきたユニコーンは1頭。真っ白だったが…仔馬ではないか。
「ああ、スノウ。そなた、スノウだな。」え?そうなの?仔馬でいいの?
真っ白な仔馬のユニコーンは、嬉しそうに嘶いて、ベスさんに駈け寄り、体を擦り付けて明らかに甘えている。ユニコーンの首を抱いてベスさんは号泣した。
「昨年亡くなったって言ってたから、生まれ変わって1年くらいなのね。」
「だから仔馬なのですわ。」
「なるほどなー。」
「ベスに対するあの反応、スノウで間違いないだろうね。」
リーゼさんも、ジュヌさんも、カルメンさんも、もらい泣きしている。
『すごく喜んでる。』この様子を見れば分かるよ。
『迎えに、来てくれて、ありがとう、だって。』え?迎え?
『ベスと、一緒に、行くって。』なんですと?
『ゲオルクに、これからよろしくだって。』ちょっと待って。どう言うことだ?
「ベスさん、あのー。」
「おお、ゲオルクどの。スノウがな、一緒に来てくれるそうだ。」
「そりゃ構わないけど、群れから勝手に連れてっちゃって大丈夫なの?」
『群れの長がね、スノウをよろしく頼むって。』え?意外とあっさりなのね。
『困ったことがあったら駈け付けるって。』そりゃ心強い。
「まぁ、いいか。意思疎通は精霊達かベスさんを通せばできるしな。」
『ゲオルクも、できるよ。』え?
『フィアたちと、話すのと、一緒。』おおー、念話が通じるのか?
「スノウ、聞こえる?」早速話し掛けてみた。
『聞こえる。ご主人の番いだな。』番いって…ベスさんの夫って意味?
「ベスさんの婚約者だよ。」
『でももう番ってるじゃないか。』
「まぁそうだけど。」仔馬に突っ込まれるのって、なんか妙にハズいな。
『ご主人の心の中に、お前はいっぱい。』マジか?テンション上がるわー。
「そうか。そいつは嬉しいな。あと俺はゲオルクな。」
『分かった。ご主人が認めるだけあって、ゲオルクは強い。群れの長。』群れ?ああ、スピリタスのことか。
「俺が一応スピリタスのリーダーだけどな。皆、対等だぞ。」
『いや、ゲオルク、ハーレムの長。強いから。』何?ハーレムだと?…んー、間違っちゃいないか。
「まぁ、これからよろしくな。スノウ。」
『よろしく。』
スノウを引き受けるにあたって、餌は何を食べさせればいいのか心配だったのだが、普通の馬と同じでいいそうだ。あと、ユニコーン独特の角だが、幻惑の術で隠せるのだとか。実際に角を隠したスノウはまったく普通の仔馬と変わらなかった。
その夜、スノウはユニコーンの群れに帰って、仲間に旅立ちの挨拶をして来た。
スノウは朝イチで帰って来て、道中は馬車の後ろにピタリとついて来る。ベスさんは馬車の最後部に陣取って、ずっとスノウと話していた。端から見るとちょっと異様な光景であるが、それは口が裂けても言えない。苦笑
山小屋で1泊、セアリューの教会で1泊。セアリューではシャルが純白の仔馬のスノウに釘付けになっていた。笑
翌日、ラスゴーで1泊した際には、俺と精霊達は、特解痺草が自生する高原の監視小屋に泊まりに行って、ゲオルギウスと痛飲した。なお、その晩の監視は、精霊たちがやってくれた。
ディバラに戻ったのは、予定より3日早かった。レンタル馬車の営業所は、ここディバラと、北府にもあるのだが、回送の手間賃と、回送に掛かる3日分のレンタル料を払えば、北府の営業所で返却してもいいと言うので、そうすることにした。
このとき、スノウにひと目惚れしたディバラ営業所の所長が、ぜひ譲って欲しいと言って来たが、譲る訳がない。笑
北府に戻ったら、次は鉱山エリアに行くが、北府で少し休暇を取ろうっと。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/3/6
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。


巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる