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精霊の加護027 フィアとの契約
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精霊の加護
Zu-Y
№27 フィアとの契約
朝餉を早めに摂り、朝イチから火の精山にアタックしている。山の中腹の間はまだハイキングのような感じでよかったが、山頂が近付くにつれて傾斜が増し、登山の様相を帯びて来た。
出発時から定期的に掛けてくれている、カルメンさんのバフの術が非常に効果的だ。特に重装備のタンク、ベスさんには、バフの術は非常にありがたい効果だ。
また、休憩時にはヒーラー、ジュヌさんの回復の術が一発で疲れを取ってくれる。これも非常にありがたい。
正直、俺は火の特大精霊に早く会いたくて気が急くのだが、登山に焦りは禁物である。足でも滑らせ、滑落しようものならよくて大怪我、下手すりゃお陀仏である。
精霊婆さんの話によると、火の特大精霊は火の精山の山頂付近に住んでいるが、決まった場所にはおらず、縄張りとしている山頂付近をうろうろしているらしい。
昼前には山頂付近に到達し、火の特大精霊の気配を探ってみた。よっしゃー、確かに強いオーラを感じる!
俺は思念を飛ばしてみた。
『こんにちは。火の精霊さん、どこにいるの?』
『誰?』お!思念が返って来た。思念による会話=念話を続けよう。
『俺はゲオルク。君の名前は?』
『フィアだよ。』
『そうか、フィアって言うんだ。よろしくね。』
『うん。あれ?フィアの、仲間も、一緒?』
『うん。ふたりとも俺と契約してるんだ。』
『ツリだよ。』『クレだよ。』
そのとき、俺の眼の前にぼうっと大きな赤い珠が現れた。一抱えもある大きさだ。その巨大な赤い珠は発光しながら幼子の形を取った。第一形態だ。ちなみについてない。女の子だ。笑
「やぁ、フィアだね?初めまして。」
『ゲオルクだね。こんにちは~。』
「うん。そうだよ。」
『ゲオルクは、何しに、来たの?』
「フィアを誘いに来たんだ。フィアさえよかったら、フィアと契約して一緒に旅をしたいんだよ。」
『旅?』
「うん、仲間たちと一緒にあちこちを見て回るんだよ。」
『面白そうだね。』
『面白いよ。』『楽しいよ。』ツリとクレから、絶妙なタイミングでフォローが来た。
フィアがふわふわと浮遊して来て、俺のまわりをぐるぐる回った。
『ゲオルクは、魔力、多いね。これなら、いっぱい、契約、できるね。
決めた。フィア、一緒に行く。』
フィアはふわふわ浮遊しながら俺の頭を両腕で抱え込んだ。俺もそのままフィアを抱き抱えた。超軽い。笑
契約の儀式だ。フィアは舌を絡ませて来る濃厚なキスをして来た。しばらくそのままでいると、フィアの体が赤く輝き出した。
『ぷはー。契約完了。』
「急に精霊が現れましたわ!」
「しかも濃厚なキスをしながらとは…。」
「あたしゃ、幼女とこのキスはアウトだと思うんだよねぇ。」
「ゲオルク君、契約完了したのね。」
4人のお姉様方が驚いている。
契約前は当然お姉様方にはフィアが見えないのだが、フィアと俺との濃厚なキスで契約が成立した途端、フィアを見られるようになる訳だから、そりゃ驚くだろう。
そう言えば、第一形態のフィアと契約したから、魔力の上限が1万加算されてるはずだ。これで16万だな。
その後、赤く輝くフィアのところにツリとクレがやって来て、ツリは緑色に、クレは橙色にそれぞれ輝き出した。
すると、フィアとツリとクレが3人で手を取り合ってくるくる回り出した。少女ふたりと幼女ひとりの組み合わせは、端から見てると姉妹のようにも見える。
回りながら3人は交互にキスをして、巨大な光の珠に変わった。そのまま俺のまわりを3つの巨大な珠が回っている。次第に回転がゆっくりになって最後は止まり、3人とも人型に戻った。
『ゲオルクとの、思い出を、ふたりから、教わった。』
『ツリが教えたー。』『クレも教えたー。』
3人は仲良く微笑んでいる。情報の共有が完了したようだ。
「じゃぁ、フィア、改めてよろしくな。それからこの4人は俺の仲間なんだ。」
「「「「よろしく。」」」」
フィアは俺の後ろに隠れた。まぁそうなるわな。苦笑
さて、フィアの精霊魔法を試してみるか。
山頂付近は、森林限界を超えており、火山性のガスもあるので植物がろくに生えていない荒地である。このなら遠慮せずにいろいろぶっ放せる。
フィアに火の玉を放出するイメージを送ると、フィアが上空へ向かって火の玉を何発も連射した。
「凄いわね。」「凄いですわね。」「凄いねぇ。」「うむ、凄いな。」
お姉様方がすっかり感心している。
魔力切れを起こしたフィアが吸い付いて来た。濃厚なべろちゅーだ。
「あたしゃ、幼女とこのキスは、やっぱりアウトだと思うよ。」知るか!
「ですわね。」放っとけ!
フィアの体が赤く光って補給完了。その後もいろいろ火の魔術を試してみた。するとツリとクレが自分たちもやると言って加わった。
火の魔法に加えて、木の魔法、土の魔法を散々放って、何度も魔力補給をしたのだが、やはり魔力が減ってる気がしない。
折角だから試してみたかった弓矢攻撃にチャレンジしてみた。それは矢に精霊達の属性魔法を纏わせて放つのだ。そして矢が着弾したら属性魔法が発動すると言うものだが、試してみるとイメージ通り上手く行った。
発想の大元は火の属性による火矢なのだが、木の属性では着弾と同時に対象を蔓で絡め取り、土の属性では着弾で地震を起こして激しく揺さぶる。どれもイメージ通りだ。
山頂付近で散々試しているとすっかり昼をまわってしまった。休憩して、遅めの昼餉を摂った後、下山を開始する訳だが、その前にフィアに貫頭衣を着せるところでひと悶着あった。
『それいやー、要らなーい。』
「でもさ、フィア。俺と契約して皆から見えるようになったから裸じゃまずいんだよ。ちょっとだけ着てみてよ。」
『これ、邪魔ー。』
「ツリもクレも着てるだろ?3人で御揃いだぞ。」
『ぶー。』むくれた顔もかわいいなぁ。
何とか宥めすかして貫頭衣を着せた。
夕刻前に無事下山し、村長さんの湯治宿に帰館すると、村長さんが出迎えてくれた。第一形態のフィアは右肩に乗っており、両手はツリとクレと繋いでいる。俺は完全に娘3人のパパ状態である。
「村長さん、お陰様でフィアと無事契約できたよ。」
「おお、こちらが火の精霊様ですか。かわいらしいですな。」
フィアが俺の後ろに隠れる。
「これは、嫌われてしまいましたか?」
「いや、精霊は人見知りなんで、嫌われてる訳ではないよ。ところで、こちらに逗留している伯爵様の御者に、帰路も乗せて帰ってもらえるか、聞いといてくれないかな?」
「お安い御用です。」
部屋に戻って、夕餉までは部屋付きの露天風呂で入浴タイムだ。今日の登山の疲れを落とそう。と言っても、カルメンさんのバフの術とジュヌさんの回復の術で元気なのだが…。笑
最初は俺と精霊達で入った。ツリとクレは結構慣れて来たが、フィアはまだ慣れてないので、お姉様方が遠慮したのだ。くーっ、残念。
3人とも体の隅々まで洗ってやるとくすぐったがりながらキャッキャとはしゃいでいる。何とも長閑な光景だ。
湯船に浸かり、両脇にツリとクレ、正面にまだ小さなフィアを抱いていると、フィアが聞いて来た。
『ゲオルク、なんで、4人は、来ないの?』
「フィアがまだ慣れてないから気を使ってるんだよ。」
『フィア、平気。記憶、共有したし、4人は、ゲオルクの、魔力の、匂いだから。』
「そうか、それなら次は一緒に入ろう。」
『うん。』
俺たちと入れ替わりでお姉様方が入浴しているときに、湯治宿の若い衆が来て伯爵様の御者の予定を伝えてくれた。
伯爵様の御者は丸3日間の休暇をこの湯治宿で堪能し、明後日の朝イチで帰る予定なんだそうだ。明日が丸1日空いた。ひょっとすると伯爵様は、俺たちの帰路のことを計算して、御者に3日間の休暇を出したのかもしれない。いや、きっとそうだ。
ほんとによくできた人だなぁ。貴族ともなると威張り散らすばかりの糞野郎が多いが、バース伯爵様のような方こそ真の貴族様だよな。
湯上りのお姉様方は、浴衣に着替えてすっかり寛いでおり、この浴衣姿が何とも艶めかしい。たわわなメロン8個を遠目から鑑賞しつつ愛でていると何とも幸せな気分になって来る。笑
夕餉を摂って、今夜はフィアの歓迎会を兼ねた部屋呑みとなった。と言っても精霊たちは呑む訳ではない。ちなみに、形態進化が進むと呑み出すそうだが、少なくとも第二形態の今までは呑んだことはない。結局精霊3人の飲み物?は、俺とのちゅーだった。
翌日は完全オフ。お姉様方とは別行動で、俺は精霊たちを連れて、手土産を持って精霊婆さんの家を訪ねた。
「こんにちは。精霊婆さんいる~?」
「その声はゲオルクどのじゃな。お上がりなされ。」ふむ、最初の訪問時とはえらい違いだな。笑
「お陰様でフィアと無事契約できたよ。」
「フィアとな?」精霊婆さんはフィアの名前を知らないのかな?
『あー、久しぶり。』
「おお~、精霊様じゃー。」精霊婆さんはまた這い蹲って拝み出した。
それから、精霊婆さんに紅茶とケーキを振舞ってもらって、いろいろ精霊の話をして来た。ちなみにケーキは俺が手土産に持って行ったやつだった。笑
俺は精霊婆さんに請われるまま、各種精霊魔法を見せてやったら、とても感激された。
お昼も回ったし、そろそろお暇するか。
「じゃあ、みんな、そろそろ帰ろうか。
精霊婆さん、いろいろありがとうございました。俺たち、明日バースに帰るんだ。」
「精霊様、行ってしまわれますのか。」精霊婆さんは名残を惜しんで涙ぐんでいる。
『うん、じゃあね。』感極まる精霊婆さんに対して、フィアはケロッとしていた。
湯治宿に帰ると、部屋では4人が寛いだ格好で駄弁っていた。
「あら、ゲオルク君、お帰りなさい。」
「あ、ただいまー。何してたの?」
「温泉とおしゃべりですわ。」
「うむ。皆と情報交換出来て、充実した休日であるな。」
「あたしたちゃ、温泉三昧だよ。」
「こう言う無駄な時間の遣い方って、ほんとに贅沢よねぇ。」
『ゲオルクー、お風呂ー。』『温泉ー。』『フィアもー。』
って、3人とももう脱いじゃって部屋付きの露天にまっしぐらだし。笑
「皆も一緒にどう?」
「フィアは大丈夫ですの?」
「ああ、昨日はなんで皆は来ないんだ?って言ってたよ。」
「え?もうあたしらに慣れたのかい?」
「ツリやクレと記憶を共有してるからね。」
「どうなってるのかしら?その辺の仕組みはよく分からないわね。」
「まぁ、精霊独特なんでしょ。あるがままに受け入れればいいんじゃないかな?」
「なるほどな、ゲオルクどのは、細かいことにはあまり拘らんのだな。」
「あ、いいんじゃない?大丈夫ならそれで。それにそのー、言いにくいんだけど、俺の魔力の匂いがするとかで、それもあって大丈夫っぽい。」
「そうなんですの?」
「だからさ、定期的に補充すればいいんじゃないかな?」
「何を都合のいいこと言ってるんだい!まったくもう。」
『ゲオルクー、早くー!』『遅ーい!』『まだー?』
「はいはい、今行くよ。皆も一緒でいいよなー?」
『『『いいよー。』』』
で、結局、皆で入っている。フィアはまだ俺にしがみついたままだが、ツリとクレは、4人の間をふわふわ漂ったりもしていた。俺は8個のメロンボールを鑑賞し、愛でていた。眼福、眼福。
すっかり休暇を楽しんだ俺たちは、翌日バースへ戻った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/2/20
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№27 フィアとの契約
朝餉を早めに摂り、朝イチから火の精山にアタックしている。山の中腹の間はまだハイキングのような感じでよかったが、山頂が近付くにつれて傾斜が増し、登山の様相を帯びて来た。
出発時から定期的に掛けてくれている、カルメンさんのバフの術が非常に効果的だ。特に重装備のタンク、ベスさんには、バフの術は非常にありがたい効果だ。
また、休憩時にはヒーラー、ジュヌさんの回復の術が一発で疲れを取ってくれる。これも非常にありがたい。
正直、俺は火の特大精霊に早く会いたくて気が急くのだが、登山に焦りは禁物である。足でも滑らせ、滑落しようものならよくて大怪我、下手すりゃお陀仏である。
精霊婆さんの話によると、火の特大精霊は火の精山の山頂付近に住んでいるが、決まった場所にはおらず、縄張りとしている山頂付近をうろうろしているらしい。
昼前には山頂付近に到達し、火の特大精霊の気配を探ってみた。よっしゃー、確かに強いオーラを感じる!
俺は思念を飛ばしてみた。
『こんにちは。火の精霊さん、どこにいるの?』
『誰?』お!思念が返って来た。思念による会話=念話を続けよう。
『俺はゲオルク。君の名前は?』
『フィアだよ。』
『そうか、フィアって言うんだ。よろしくね。』
『うん。あれ?フィアの、仲間も、一緒?』
『うん。ふたりとも俺と契約してるんだ。』
『ツリだよ。』『クレだよ。』
そのとき、俺の眼の前にぼうっと大きな赤い珠が現れた。一抱えもある大きさだ。その巨大な赤い珠は発光しながら幼子の形を取った。第一形態だ。ちなみについてない。女の子だ。笑
「やぁ、フィアだね?初めまして。」
『ゲオルクだね。こんにちは~。』
「うん。そうだよ。」
『ゲオルクは、何しに、来たの?』
「フィアを誘いに来たんだ。フィアさえよかったら、フィアと契約して一緒に旅をしたいんだよ。」
『旅?』
「うん、仲間たちと一緒にあちこちを見て回るんだよ。」
『面白そうだね。』
『面白いよ。』『楽しいよ。』ツリとクレから、絶妙なタイミングでフォローが来た。
フィアがふわふわと浮遊して来て、俺のまわりをぐるぐる回った。
『ゲオルクは、魔力、多いね。これなら、いっぱい、契約、できるね。
決めた。フィア、一緒に行く。』
フィアはふわふわ浮遊しながら俺の頭を両腕で抱え込んだ。俺もそのままフィアを抱き抱えた。超軽い。笑
契約の儀式だ。フィアは舌を絡ませて来る濃厚なキスをして来た。しばらくそのままでいると、フィアの体が赤く輝き出した。
『ぷはー。契約完了。』
「急に精霊が現れましたわ!」
「しかも濃厚なキスをしながらとは…。」
「あたしゃ、幼女とこのキスはアウトだと思うんだよねぇ。」
「ゲオルク君、契約完了したのね。」
4人のお姉様方が驚いている。
契約前は当然お姉様方にはフィアが見えないのだが、フィアと俺との濃厚なキスで契約が成立した途端、フィアを見られるようになる訳だから、そりゃ驚くだろう。
そう言えば、第一形態のフィアと契約したから、魔力の上限が1万加算されてるはずだ。これで16万だな。
その後、赤く輝くフィアのところにツリとクレがやって来て、ツリは緑色に、クレは橙色にそれぞれ輝き出した。
すると、フィアとツリとクレが3人で手を取り合ってくるくる回り出した。少女ふたりと幼女ひとりの組み合わせは、端から見てると姉妹のようにも見える。
回りながら3人は交互にキスをして、巨大な光の珠に変わった。そのまま俺のまわりを3つの巨大な珠が回っている。次第に回転がゆっくりになって最後は止まり、3人とも人型に戻った。
『ゲオルクとの、思い出を、ふたりから、教わった。』
『ツリが教えたー。』『クレも教えたー。』
3人は仲良く微笑んでいる。情報の共有が完了したようだ。
「じゃぁ、フィア、改めてよろしくな。それからこの4人は俺の仲間なんだ。」
「「「「よろしく。」」」」
フィアは俺の後ろに隠れた。まぁそうなるわな。苦笑
さて、フィアの精霊魔法を試してみるか。
山頂付近は、森林限界を超えており、火山性のガスもあるので植物がろくに生えていない荒地である。このなら遠慮せずにいろいろぶっ放せる。
フィアに火の玉を放出するイメージを送ると、フィアが上空へ向かって火の玉を何発も連射した。
「凄いわね。」「凄いですわね。」「凄いねぇ。」「うむ、凄いな。」
お姉様方がすっかり感心している。
魔力切れを起こしたフィアが吸い付いて来た。濃厚なべろちゅーだ。
「あたしゃ、幼女とこのキスは、やっぱりアウトだと思うよ。」知るか!
「ですわね。」放っとけ!
フィアの体が赤く光って補給完了。その後もいろいろ火の魔術を試してみた。するとツリとクレが自分たちもやると言って加わった。
火の魔法に加えて、木の魔法、土の魔法を散々放って、何度も魔力補給をしたのだが、やはり魔力が減ってる気がしない。
折角だから試してみたかった弓矢攻撃にチャレンジしてみた。それは矢に精霊達の属性魔法を纏わせて放つのだ。そして矢が着弾したら属性魔法が発動すると言うものだが、試してみるとイメージ通り上手く行った。
発想の大元は火の属性による火矢なのだが、木の属性では着弾と同時に対象を蔓で絡め取り、土の属性では着弾で地震を起こして激しく揺さぶる。どれもイメージ通りだ。
山頂付近で散々試しているとすっかり昼をまわってしまった。休憩して、遅めの昼餉を摂った後、下山を開始する訳だが、その前にフィアに貫頭衣を着せるところでひと悶着あった。
『それいやー、要らなーい。』
「でもさ、フィア。俺と契約して皆から見えるようになったから裸じゃまずいんだよ。ちょっとだけ着てみてよ。」
『これ、邪魔ー。』
「ツリもクレも着てるだろ?3人で御揃いだぞ。」
『ぶー。』むくれた顔もかわいいなぁ。
何とか宥めすかして貫頭衣を着せた。
夕刻前に無事下山し、村長さんの湯治宿に帰館すると、村長さんが出迎えてくれた。第一形態のフィアは右肩に乗っており、両手はツリとクレと繋いでいる。俺は完全に娘3人のパパ状態である。
「村長さん、お陰様でフィアと無事契約できたよ。」
「おお、こちらが火の精霊様ですか。かわいらしいですな。」
フィアが俺の後ろに隠れる。
「これは、嫌われてしまいましたか?」
「いや、精霊は人見知りなんで、嫌われてる訳ではないよ。ところで、こちらに逗留している伯爵様の御者に、帰路も乗せて帰ってもらえるか、聞いといてくれないかな?」
「お安い御用です。」
部屋に戻って、夕餉までは部屋付きの露天風呂で入浴タイムだ。今日の登山の疲れを落とそう。と言っても、カルメンさんのバフの術とジュヌさんの回復の術で元気なのだが…。笑
最初は俺と精霊達で入った。ツリとクレは結構慣れて来たが、フィアはまだ慣れてないので、お姉様方が遠慮したのだ。くーっ、残念。
3人とも体の隅々まで洗ってやるとくすぐったがりながらキャッキャとはしゃいでいる。何とも長閑な光景だ。
湯船に浸かり、両脇にツリとクレ、正面にまだ小さなフィアを抱いていると、フィアが聞いて来た。
『ゲオルク、なんで、4人は、来ないの?』
「フィアがまだ慣れてないから気を使ってるんだよ。」
『フィア、平気。記憶、共有したし、4人は、ゲオルクの、魔力の、匂いだから。』
「そうか、それなら次は一緒に入ろう。」
『うん。』
俺たちと入れ替わりでお姉様方が入浴しているときに、湯治宿の若い衆が来て伯爵様の御者の予定を伝えてくれた。
伯爵様の御者は丸3日間の休暇をこの湯治宿で堪能し、明後日の朝イチで帰る予定なんだそうだ。明日が丸1日空いた。ひょっとすると伯爵様は、俺たちの帰路のことを計算して、御者に3日間の休暇を出したのかもしれない。いや、きっとそうだ。
ほんとによくできた人だなぁ。貴族ともなると威張り散らすばかりの糞野郎が多いが、バース伯爵様のような方こそ真の貴族様だよな。
湯上りのお姉様方は、浴衣に着替えてすっかり寛いでおり、この浴衣姿が何とも艶めかしい。たわわなメロン8個を遠目から鑑賞しつつ愛でていると何とも幸せな気分になって来る。笑
夕餉を摂って、今夜はフィアの歓迎会を兼ねた部屋呑みとなった。と言っても精霊たちは呑む訳ではない。ちなみに、形態進化が進むと呑み出すそうだが、少なくとも第二形態の今までは呑んだことはない。結局精霊3人の飲み物?は、俺とのちゅーだった。
翌日は完全オフ。お姉様方とは別行動で、俺は精霊たちを連れて、手土産を持って精霊婆さんの家を訪ねた。
「こんにちは。精霊婆さんいる~?」
「その声はゲオルクどのじゃな。お上がりなされ。」ふむ、最初の訪問時とはえらい違いだな。笑
「お陰様でフィアと無事契約できたよ。」
「フィアとな?」精霊婆さんはフィアの名前を知らないのかな?
『あー、久しぶり。』
「おお~、精霊様じゃー。」精霊婆さんはまた這い蹲って拝み出した。
それから、精霊婆さんに紅茶とケーキを振舞ってもらって、いろいろ精霊の話をして来た。ちなみにケーキは俺が手土産に持って行ったやつだった。笑
俺は精霊婆さんに請われるまま、各種精霊魔法を見せてやったら、とても感激された。
お昼も回ったし、そろそろお暇するか。
「じゃあ、みんな、そろそろ帰ろうか。
精霊婆さん、いろいろありがとうございました。俺たち、明日バースに帰るんだ。」
「精霊様、行ってしまわれますのか。」精霊婆さんは名残を惜しんで涙ぐんでいる。
『うん、じゃあね。』感極まる精霊婆さんに対して、フィアはケロッとしていた。
湯治宿に帰ると、部屋では4人が寛いだ格好で駄弁っていた。
「あら、ゲオルク君、お帰りなさい。」
「あ、ただいまー。何してたの?」
「温泉とおしゃべりですわ。」
「うむ。皆と情報交換出来て、充実した休日であるな。」
「あたしたちゃ、温泉三昧だよ。」
「こう言う無駄な時間の遣い方って、ほんとに贅沢よねぇ。」
『ゲオルクー、お風呂ー。』『温泉ー。』『フィアもー。』
って、3人とももう脱いじゃって部屋付きの露天にまっしぐらだし。笑
「皆も一緒にどう?」
「フィアは大丈夫ですの?」
「ああ、昨日はなんで皆は来ないんだ?って言ってたよ。」
「え?もうあたしらに慣れたのかい?」
「ツリやクレと記憶を共有してるからね。」
「どうなってるのかしら?その辺の仕組みはよく分からないわね。」
「まぁ、精霊独特なんでしょ。あるがままに受け入れればいいんじゃないかな?」
「なるほどな、ゲオルクどのは、細かいことにはあまり拘らんのだな。」
「あ、いいんじゃない?大丈夫ならそれで。それにそのー、言いにくいんだけど、俺の魔力の匂いがするとかで、それもあって大丈夫っぽい。」
「そうなんですの?」
「だからさ、定期的に補充すればいいんじゃないかな?」
「何を都合のいいこと言ってるんだい!まったくもう。」
『ゲオルクー、早くー!』『遅ーい!』『まだー?』
「はいはい、今行くよ。皆も一緒でいいよなー?」
『『『いいよー。』』』
で、結局、皆で入っている。フィアはまだ俺にしがみついたままだが、ツリとクレは、4人の間をふわふわ漂ったりもしていた。俺は8個のメロンボールを鑑賞し、愛でていた。眼福、眼福。
すっかり休暇を楽しんだ俺たちは、翌日バースへ戻った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/2/20
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
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