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精霊の加護026 リバプの精霊婆
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精霊の加護
Zu-Y
№26 リバプの精霊婆
朝餉を終えると村長さんが来て困った様子だ。
「村長さん、何かトラブルでも?」
「いやー、使いを出して精霊婆を呼んだのですが、それが精霊婆の気に触ったようでして…。」
「もちろん俺たちがお話を聞かせてもらうんから、こちらから出向くよ。」
「それが、会わんと言ってるのです。完全にへそを曲げられてしまいました。本当に申し訳ありません。」
「いやいや、そんな気にしないで。」
「しかしああなってしまうと、てこでも動かんのですよ。あの頑固婆は。」
「多分大丈夫だよ。こちらには奥の手があるからね。」
「ゲオルクさん、何か考えがありますの?」
「ツリとクレがいるから大丈夫だよ。」
「ゲオルク、まさか地震を起こしたり、蔓でぐるぐる巻きとかにするんじゃないだろうね。」
横で聞いてる村長さんが蒼褪める。
「そんなことしないって。向こうは精霊婆さんだからね。だったらツリやクレのことは、ありがたがりこそすれ、無下にはしないんじゃないかな?」
「なるほど。そうよね。流石ゲオルク君。」
「ふむ。ありがたがって両手を合わせて拝むかもしれんな。」
村長さんは何が何だか分からないと言った顔をしていた。笑
精霊婆さんの家に着いた。責任を感じた村長さんと、湯治宿の若い衆数名も一緒だ。
「おうい、精霊婆よ。客人がわざわざ来てるぞーい。」いや、わざわざ来てるとかってそう言う言い方するからへそ曲げるんじゃないの?
返事がない。
「入るぞー!」村長さんがしびれを切らした。
「会わんと言うとるじゃろ!」なんだ、いるじゃねぇかよ。笑
「ほら、そんないい年してるくせに、駄々っ子みたいにへそ曲げるもんじゃないぞ。」村長さ~ん、女性に年齢のことは言うなよなー。
さっきから地雷踏み抜き過ぎだろー。苦笑
「うるさいわ!レディーに年の話をするな!」
「ははは。レディーって年でもなかろうに。それにレディーならレディーらしくせんかよー。」俺もお姉様方もプッと吹き出す。まるで漫才だな。
村長さんは結局、湯治宿の若い衆を引き連れて、精霊婆さんの家の中に入って行った。すると、中でどんちゃんと音がする。精霊婆さんが癇癪を起して何か物を投げてるっぽい。
しばらくしてしーんとした。
村長さんが出て来て
「どうぞ。こちらです。」と言うので、村長さんについて行くと、部屋の中は凄い状態で、プイと横を向いた精霊婆さんが真ん中にちょこんと座っていた。
「こんにちは。俺はゲオルクです。今日はお時間を頂いて、ありがとうございます。」
「…。」精霊婆さんは横を向いたまま返事もしない。
「これ、返事をせんか。」村長さ~ん。ほんと、頼むよー。俺は村長さんを手で制して、続けた。
「俺は、精霊魔術師です。この度は、火の…。」
「なんじゃと?」精霊婆さんが反応してこっちを向いた。村長さんも湯治宿の若い衆も驚いて俺の方を見ている。
すると次の瞬間、精霊婆さんが俺を見て目を見開き、あわわわわと震え出した。厳密に言うと俺が手を繋いでいる俺の両横のふたり、つまりツリとクレを交互に見ているのだ。
精霊婆さんは、いきなり這い蹲って、
「精霊様ー。大変失礼しましたー。何卒お許しを。」と平謝りだ。
するとツリとクレが精霊婆さんに寄って行って、精霊婆さんの頭をぽんぽんと撫でた。
『よしよし。』『怒っちゃダメ。』あ、ふたりが人見知りしない。
「ありがたや、ありがたや。」
精霊婆さんは頭を床に擦り付けたまま両手で拝んでいる。ベスさんが予想した通りになった。笑
村長さんは、精霊婆さんが無茶苦茶にした精霊婆さん宅の部屋の掃除を湯治宿の若い衆に命じた。若い衆を置いて、ひと足先に、精霊婆さんと俺たちと村長さんは、村長さんの湯治宿に戻り、一室を借りて、改めて面会している。
「村長、ほんにすまなんだの。」
「まったく、これに懲りてすぐへそを曲げる悪い癖は直してくれよ。」
「なんじゃと?村長も人が悪いではないか。精霊様がいらしてるならそう言わんか。」
「わしだって精霊様とは知らなかったのだ。そもそもわしは今まで精霊様を見たことがないんだぞ。精霊様って分かる訳がないだろ。それに精霊様は丸いと聞いとったからな。
ん?そう言えば、どうしてわしに精霊様が見えるんだ?わしには精霊様を見る力はなかったはずなんだが。」
村長さんのこの疑問に俺が答えた。
「ああ、それはふたりとも俺の契約精霊だからだよ。契約した精霊は誰でも見ることができるようになるんだ。」
「なんじゃと?ふたりの精霊様と契約とな。そんなことができる訳なかろうが?」精霊婆さんが食い付いて来た。笑
「それは、マルチの精霊魔術師が文献に残ってないだけだよ。精霊との契約維持には魔力を与え続けることが必要だからね。俺は魔力量が桁違いに多いんで複数の精霊と契約できるんだ。」
「ゲオルクどのとやら、その知識はどこで得たのじゃ?」
「ツリとクレからだよ。」
『ツリが教えたー。』『クレも教えたー。』
ふたりが精霊婆さんに気さくに答えるのを見て、
「ゲオルク君、ふたりが珍しく人見知りしないわね。精霊婆さんの問いに直接答えてるわ。」
「ああ、精霊は自分と話せる相手には人見知りしないよ。見えるだけの人には半々だね。そのときの気分次第で反応もするし、距離をとることもあるんだ。」
「あたしたちより、初対面の精霊婆さんの方に懐いてるのはちょっと妬けるねぇ。」
「ところで精霊婆さん、この辺りに火の特大精霊はいないかな?」
「特大精霊?」精霊婆さんが首を傾げる。
「ツリやクレのように人型に変身できる精霊のことだよ。珠状のときはひと抱くらいの大きさだね。」俺は両腕でハグするときように輪っかを作って見せた。
「火の精山の山頂付近におられるよ。わしも若い頃から何度もお目に掛かったことがあるがの、昔からずっと幼子のままじゃ。」
「その火の精山と言うのはどの山のこと?」
「このリバプがあるお山じゃよ。ここら辺では一番高いんじゃ。リバプは火の精山の中腹なのじゃよ。じゃから火の精霊様の加護があって、古には火の精霊魔術師も出ておるのじゃ。」よっしゃー!重要な手掛かりゲット!
「じゃぁ、早速明日にでも会いに行くか?」皆が頷く。
「まさか、精霊様と契約する気じゃなかろうの?」精霊婆さんが聞いて来た。
「俺は契約したいけどね、まぁ、精霊次第だな。」
「いかん!リバプに精霊様の加護がなくなってしまうではないか。」
「なくなんないよ。現に俺がツリを連れ出した後も、俺の故郷の森は豊かだよ。クレを連れ出した西部の大地も実りをもたらしてるしね。このリバプだって精霊だらけだから心配ないって。」リバプの精霊はほとんど赤い珠だ。
「それはそうじゃが…。しかし精霊様はわしとも契約して下さらなんだ。余所者のそなたと契約するとは思えん。」
『それは違うよ。』『契約しないのは、婆の魔力が少ないせい。』
「精霊様、今、何と?」
『魔力は1100しかないし、潜在能力も1200。』『潜在能力はアルより低い。』
「アルって、弟のアルか?」
『うん、アルの潜在能力は5000。』『アルも、契約は無理ー。』
「そうじゃったのか…。
ところで、ゲオルクどのの魔力はどれくらいあるのじゃ?」
「俺は今現在12万かな。」
「12万…、じゃと?」絶句する精霊婆さん。
『えー違うよー。』『ゲオルクは15万だよー。』
「え?マジ?いつ増えたの?」
『進化のときー。』『それと進化したせいでー。』
「なんか、ずるいわね。」
「やってられませんわね。」
『でもねー、たくさんと契約できるのは潜在能力のせいー。』
『だねー。ゲオルクはミリオネアだしー。』
「少しは分けて欲しいもんだね。」
「カルメンさん、いつでも分けるよ!」俺は思わず意気込む。
「そう言う意味じゃないよ!」
「のう、ゲオルクどの。わしにも分けてくれんかの?」精霊婆さんが知らないとはいえ爆弾発言をした。
「無理です!」絶対に守備範囲の外ですから。
精霊婆さんがきょとんとする中、4人のお姉様方が皆笑っている。確かに俺は年上好きではあるが、俺の守備範囲はせいぜい30代までだ。
その後、精霊婆さんから古の火の精霊魔術師の話や、火の精霊のさまざまな伝承を聞いた。精霊についての話が一段落したところで、マイクの話を振ってみる。
「ところで俺が駆け出しの頃に加入していたパーティなんだけど、そのうちのメンバーのひとりが北部の出身でね、故郷の村には精霊婆さんがいたそうなんだよ。そいつはマイクと言うんだけど、マイクの故郷はひょっとしてこの村だったりするかな?」
俺の問いに、村長さんがズイっと身を乗り出して反応した。
「そのマイクと言うのは、重歩兵ですか?」
「そうだよ。」おや、脈ありか?
「パーティはゲオルギウスですね?」
「その通り!」これはビンゴと見た!
「マイクはうちの放蕩息子ですよ。末っ子で甘やかしたせいで家業も手伝わんで、好き放題やっとります。」村長さんが溜息をついた。
「マイクは今、どこにいるの?知ってたら教えて。」
「お仲間の治療にために、薬草探しに行ってますよ。」
「え?誰か、病気なの?」
「病気ではありませんが、リーダーのジョルジュくんが、ルナちゃんを庇って魔物の呪いを受けてしまい、麻痺状態に陥ったんですよ。」
村長さんの話によると、マイクは4年前、ルナと、魔物との戦闘で麻痺状態を起こしたジョルジュとを連れて、ゲオルギウス3人で湯治に帰省して来たそうだ。
ジョルジュは、東府から王都への移動中に請け負った護衛クエストで、ルナを庇って魔物から麻痺の呪いを受けたらしい。王都に着くとすぐ教会で呪いを解呪して麻痺の進行は止めたのだが、解呪するまでの間に進行した麻痺は解けなかったそうだ。
リバプ湯の効能のひとつに麻痺からの回復があるため、マイクが、実家である村長さんの湯治宿に、ジョルジュとルナを連れて来て、2年ほど湯治で滞在した。ジョルジュの麻痺症状はかなり深刻だったが、2年間の湯治と、その間にマイクとルナが献身的に介護したお陰で、ジョルジュの麻痺症状は8割方回復した。
通常の生活には支障がないまでには回復したものの、冒険者としては完全回復しないと命取りになり兼ねない。たまに北府に情報収集に行っていたマイクが、北部の雪山エリアに麻痺に非常によく効く薬草=特解痺草があると言う情報を掴んで来て、2年前にゲオルギウスは、その薬草を探しに氷山エリアへ向かったと言う。
よし、ここ火山エリアの次は氷山エリアに行こう。そのためにも早く、火の特大精霊とコンタクトを取らねばな。
午後はゆっくりリバプの温泉に浸かりながら英気を養って、明日は朝イチからの火の精山頂上へアタックだ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/2/20
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№26 リバプの精霊婆
朝餉を終えると村長さんが来て困った様子だ。
「村長さん、何かトラブルでも?」
「いやー、使いを出して精霊婆を呼んだのですが、それが精霊婆の気に触ったようでして…。」
「もちろん俺たちがお話を聞かせてもらうんから、こちらから出向くよ。」
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「いやいや、そんな気にしないで。」
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「ゲオルクさん、何か考えがありますの?」
「ツリとクレがいるから大丈夫だよ。」
「ゲオルク、まさか地震を起こしたり、蔓でぐるぐる巻きとかにするんじゃないだろうね。」
横で聞いてる村長さんが蒼褪める。
「そんなことしないって。向こうは精霊婆さんだからね。だったらツリやクレのことは、ありがたがりこそすれ、無下にはしないんじゃないかな?」
「なるほど。そうよね。流石ゲオルク君。」
「ふむ。ありがたがって両手を合わせて拝むかもしれんな。」
村長さんは何が何だか分からないと言った顔をしていた。笑
精霊婆さんの家に着いた。責任を感じた村長さんと、湯治宿の若い衆数名も一緒だ。
「おうい、精霊婆よ。客人がわざわざ来てるぞーい。」いや、わざわざ来てるとかってそう言う言い方するからへそ曲げるんじゃないの?
返事がない。
「入るぞー!」村長さんがしびれを切らした。
「会わんと言うとるじゃろ!」なんだ、いるじゃねぇかよ。笑
「ほら、そんないい年してるくせに、駄々っ子みたいにへそ曲げるもんじゃないぞ。」村長さ~ん、女性に年齢のことは言うなよなー。
さっきから地雷踏み抜き過ぎだろー。苦笑
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村長さんは結局、湯治宿の若い衆を引き連れて、精霊婆さんの家の中に入って行った。すると、中でどんちゃんと音がする。精霊婆さんが癇癪を起して何か物を投げてるっぽい。
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村長さんが出て来て
「どうぞ。こちらです。」と言うので、村長さんについて行くと、部屋の中は凄い状態で、プイと横を向いた精霊婆さんが真ん中にちょこんと座っていた。
「こんにちは。俺はゲオルクです。今日はお時間を頂いて、ありがとうございます。」
「…。」精霊婆さんは横を向いたまま返事もしない。
「これ、返事をせんか。」村長さ~ん。ほんと、頼むよー。俺は村長さんを手で制して、続けた。
「俺は、精霊魔術師です。この度は、火の…。」
「なんじゃと?」精霊婆さんが反応してこっちを向いた。村長さんも湯治宿の若い衆も驚いて俺の方を見ている。
すると次の瞬間、精霊婆さんが俺を見て目を見開き、あわわわわと震え出した。厳密に言うと俺が手を繋いでいる俺の両横のふたり、つまりツリとクレを交互に見ているのだ。
精霊婆さんは、いきなり這い蹲って、
「精霊様ー。大変失礼しましたー。何卒お許しを。」と平謝りだ。
するとツリとクレが精霊婆さんに寄って行って、精霊婆さんの頭をぽんぽんと撫でた。
『よしよし。』『怒っちゃダメ。』あ、ふたりが人見知りしない。
「ありがたや、ありがたや。」
精霊婆さんは頭を床に擦り付けたまま両手で拝んでいる。ベスさんが予想した通りになった。笑
村長さんは、精霊婆さんが無茶苦茶にした精霊婆さん宅の部屋の掃除を湯治宿の若い衆に命じた。若い衆を置いて、ひと足先に、精霊婆さんと俺たちと村長さんは、村長さんの湯治宿に戻り、一室を借りて、改めて面会している。
「村長、ほんにすまなんだの。」
「まったく、これに懲りてすぐへそを曲げる悪い癖は直してくれよ。」
「なんじゃと?村長も人が悪いではないか。精霊様がいらしてるならそう言わんか。」
「わしだって精霊様とは知らなかったのだ。そもそもわしは今まで精霊様を見たことがないんだぞ。精霊様って分かる訳がないだろ。それに精霊様は丸いと聞いとったからな。
ん?そう言えば、どうしてわしに精霊様が見えるんだ?わしには精霊様を見る力はなかったはずなんだが。」
村長さんのこの疑問に俺が答えた。
「ああ、それはふたりとも俺の契約精霊だからだよ。契約した精霊は誰でも見ることができるようになるんだ。」
「なんじゃと?ふたりの精霊様と契約とな。そんなことができる訳なかろうが?」精霊婆さんが食い付いて来た。笑
「それは、マルチの精霊魔術師が文献に残ってないだけだよ。精霊との契約維持には魔力を与え続けることが必要だからね。俺は魔力量が桁違いに多いんで複数の精霊と契約できるんだ。」
「ゲオルクどのとやら、その知識はどこで得たのじゃ?」
「ツリとクレからだよ。」
『ツリが教えたー。』『クレも教えたー。』
ふたりが精霊婆さんに気さくに答えるのを見て、
「ゲオルク君、ふたりが珍しく人見知りしないわね。精霊婆さんの問いに直接答えてるわ。」
「ああ、精霊は自分と話せる相手には人見知りしないよ。見えるだけの人には半々だね。そのときの気分次第で反応もするし、距離をとることもあるんだ。」
「あたしたちより、初対面の精霊婆さんの方に懐いてるのはちょっと妬けるねぇ。」
「ところで精霊婆さん、この辺りに火の特大精霊はいないかな?」
「特大精霊?」精霊婆さんが首を傾げる。
「ツリやクレのように人型に変身できる精霊のことだよ。珠状のときはひと抱くらいの大きさだね。」俺は両腕でハグするときように輪っかを作って見せた。
「火の精山の山頂付近におられるよ。わしも若い頃から何度もお目に掛かったことがあるがの、昔からずっと幼子のままじゃ。」
「その火の精山と言うのはどの山のこと?」
「このリバプがあるお山じゃよ。ここら辺では一番高いんじゃ。リバプは火の精山の中腹なのじゃよ。じゃから火の精霊様の加護があって、古には火の精霊魔術師も出ておるのじゃ。」よっしゃー!重要な手掛かりゲット!
「じゃぁ、早速明日にでも会いに行くか?」皆が頷く。
「まさか、精霊様と契約する気じゃなかろうの?」精霊婆さんが聞いて来た。
「俺は契約したいけどね、まぁ、精霊次第だな。」
「いかん!リバプに精霊様の加護がなくなってしまうではないか。」
「なくなんないよ。現に俺がツリを連れ出した後も、俺の故郷の森は豊かだよ。クレを連れ出した西部の大地も実りをもたらしてるしね。このリバプだって精霊だらけだから心配ないって。」リバプの精霊はほとんど赤い珠だ。
「それはそうじゃが…。しかし精霊様はわしとも契約して下さらなんだ。余所者のそなたと契約するとは思えん。」
『それは違うよ。』『契約しないのは、婆の魔力が少ないせい。』
「精霊様、今、何と?」
『魔力は1100しかないし、潜在能力も1200。』『潜在能力はアルより低い。』
「アルって、弟のアルか?」
『うん、アルの潜在能力は5000。』『アルも、契約は無理ー。』
「そうじゃったのか…。
ところで、ゲオルクどのの魔力はどれくらいあるのじゃ?」
「俺は今現在12万かな。」
「12万…、じゃと?」絶句する精霊婆さん。
『えー違うよー。』『ゲオルクは15万だよー。』
「え?マジ?いつ増えたの?」
『進化のときー。』『それと進化したせいでー。』
「なんか、ずるいわね。」
「やってられませんわね。」
『でもねー、たくさんと契約できるのは潜在能力のせいー。』
『だねー。ゲオルクはミリオネアだしー。』
「少しは分けて欲しいもんだね。」
「カルメンさん、いつでも分けるよ!」俺は思わず意気込む。
「そう言う意味じゃないよ!」
「のう、ゲオルクどの。わしにも分けてくれんかの?」精霊婆さんが知らないとはいえ爆弾発言をした。
「無理です!」絶対に守備範囲の外ですから。
精霊婆さんがきょとんとする中、4人のお姉様方が皆笑っている。確かに俺は年上好きではあるが、俺の守備範囲はせいぜい30代までだ。
その後、精霊婆さんから古の火の精霊魔術師の話や、火の精霊のさまざまな伝承を聞いた。精霊についての話が一段落したところで、マイクの話を振ってみる。
「ところで俺が駆け出しの頃に加入していたパーティなんだけど、そのうちのメンバーのひとりが北部の出身でね、故郷の村には精霊婆さんがいたそうなんだよ。そいつはマイクと言うんだけど、マイクの故郷はひょっとしてこの村だったりするかな?」
俺の問いに、村長さんがズイっと身を乗り出して反応した。
「そのマイクと言うのは、重歩兵ですか?」
「そうだよ。」おや、脈ありか?
「パーティはゲオルギウスですね?」
「その通り!」これはビンゴと見た!
「マイクはうちの放蕩息子ですよ。末っ子で甘やかしたせいで家業も手伝わんで、好き放題やっとります。」村長さんが溜息をついた。
「マイクは今、どこにいるの?知ってたら教えて。」
「お仲間の治療にために、薬草探しに行ってますよ。」
「え?誰か、病気なの?」
「病気ではありませんが、リーダーのジョルジュくんが、ルナちゃんを庇って魔物の呪いを受けてしまい、麻痺状態に陥ったんですよ。」
村長さんの話によると、マイクは4年前、ルナと、魔物との戦闘で麻痺状態を起こしたジョルジュとを連れて、ゲオルギウス3人で湯治に帰省して来たそうだ。
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リバプ湯の効能のひとつに麻痺からの回復があるため、マイクが、実家である村長さんの湯治宿に、ジョルジュとルナを連れて来て、2年ほど湯治で滞在した。ジョルジュの麻痺症状はかなり深刻だったが、2年間の湯治と、その間にマイクとルナが献身的に介護したお陰で、ジョルジュの麻痺症状は8割方回復した。
通常の生活には支障がないまでには回復したものの、冒険者としては完全回復しないと命取りになり兼ねない。たまに北府に情報収集に行っていたマイクが、北部の雪山エリアに麻痺に非常によく効く薬草=特解痺草があると言う情報を掴んで来て、2年前にゲオルギウスは、その薬草を探しに氷山エリアへ向かったと言う。
よし、ここ火山エリアの次は氷山エリアに行こう。そのためにも早く、火の特大精霊とコンタクトを取らねばな。
午後はゆっくりリバプの温泉に浸かりながら英気を養って、明日は朝イチからの火の精山頂上へアタックだ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/2/20
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
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カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
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