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精霊の加護021 スピリタス勢揃い
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精霊の加護
Zu-Y
№21 スピリタス勢揃い
冒険者ギルドへ向かうとき、ツリとクレは俺の両肩に座ろうとしたが、少女の大きさになったのでずり落ちてしまう。
ふわふわ浮いて移動しようとしたが、絶対人目について騒動の種になるので、歩いてもらうことにした。最初はぶー垂れたが、なぜか手をつなぐのを大層喜んだので、手をつないで歩くことになった。
たまに地面すれすれに浮いて移動しているが、そのくらいは見逃してやることにする。足元まで隠すロングスカートを穿けばいいのだが、衣服嫌いのふたりがロングスカートを穿く訳がない。
ギルドに着くと、またまわりがコソコソ話をしている。
「おい、今日は別の子を連れてるぞ。」いや、同じ子だから。
「ほんとだ。昨日までの幼女はどうしたんだ?」だから、一緒にいるっての!
ベスさんと合流すると、ベスさんは目を瞠った。
「おお、第二形態に進化したのか?」
「え?ベスさん、精霊の形態進化のことを知ってるの?」
「ああ、魔法学院の書庫の文献で見たことがあるのだ。」
「なるほど。そう言えば、ふたりが精霊であることにも最初から気付いてたよね。それに、魔法学院や教会の書庫に入れるツテがあるって言ってなかったっけ?」
「うむ。庶子とはいえ、伯爵家の出だからな。」
「書庫では何を調べてたの?」
「魔力量を増やす方法を探していたのだ。当時の私は魔力量が少なくてスキルを満足に発動できないことを何とか克服したかったのでな。結局は分からず仕舞いだったが、ゲオルクどののおかげで克服できた。しかしまさかあんな方法とはなぁ。」確かにあんな方法…だわな。笑
「ベスさんは、まだ潜在能力の1/2も魔力量を獲得してないからね。」
「ゲオルクどの、何を期待しておる。当面は今の魔力量で十分だぞ。」
「そうだね、俺が一刻も早くAランクに駆け上がるように応援してね。」
「私を口説き落とすのを応援せよとか。よくもまぁ…。まったくゲオルクどのには恐れ入る。」
「そうだ、ベスさん。今日はクエストはやめて北府魔法学院の書庫に行かない?過去の精霊魔術師の契約精霊がいた場所が特定できれば、その場所は天然の魔力が高いはずなので、特大精霊が出会いやすいんだよ。」
「うーん、しかしなぁ。伯爵家の優遇は私までしか及ばんのだ。」
「あ、俺もそれなりにツテがあるんで大丈夫。東府魔法学院で教授の手伝いをしてたんでね。」
そう言うことなら鎧は脱いで来ると言うことで、一旦ベスさん宅に行った。玄関先で少し待つと、普段着のベスさんが出て来た。何とたわわな!
「ゲオルクどの、視線に遠慮がないぞ。」
「いや、いつ見ても凄いねぇ。よくこれがあの鎧に収まってるよなぁ。」
「実は少々窮屈でな。調整で目一杯拡げてるのでこれ以上は拡がらんのだ。」
「防具屋に行って改造したらどう?」
「ふむ。それもありか。」
北府魔法学院に行く前に防具屋に寄ると、そんなに難しい改造ではないので今日中にできると言うことだった。
防具屋を出た俺たちは、北府魔法学院に来ていた。門番詰所で、俺とベスさんが身分証明証を提示して書庫の利用を申し出ると、門番詰所内が慌ただしくなった。
「おい、VIPだ。すぐ主任教授に連絡しろ。それから丁重に書庫へご案内するんだ。」
「なんかVIPって言ってるよ。バース伯爵家は流石だねー。」
「ふむ。おかしいな。以前はこのようなことはなかったのだが。ひょっとしてVIPはゲオルクどのではないのか?」
「そんな訳ないよ。俺の身分証明書は研究員だからね。まぁ、冠に特別が付いてるんで並の研究員よりはましかもしれないけどさ。」
詰所の職員が書庫まで案内してくれて、書庫の受付に再び身分証明書を提示した。すると書庫の受付も慌ただしくなって、書庫の館長が対応に出て来た。
「何をお調べになりたいんでしょうか?私どもでお手伝いさせて頂きます。」
「はぁ。北部出身の過去の精霊魔術師について調べに来ました。北部で契約精霊がいた場所を知りたいんです。」
「こちらです。」館長自ら案内か。流石にバース伯爵家だ。でもベスさんは横で首を傾げている。
ふたりで調べものをしたが、すでに東府魔法学院で調べていたものがほとんどで、収穫はあまりなかった。
ただ、村々には精霊魔術師に関する民間伝説があり、その中には有力な情報もあるとのことだった。また、精霊を見る能力がある者が、出やすい村がいくつかあると言う。そう言う村の情報を得られたのが収穫と言えば収穫だな。
帰り際に、館長から呼び止められた。
「ゲオルク様、主任教授より伝言を頂いております。『本日は急なお越しゆえ、時間を取れず申し訳ない。時間があるときはぜひ研究のお話を伺いたい。』とのことです。」
「はぁ。」いきなり面識のない北府魔法学院の主任教授にそんなことを言われてもなぁ。
「それ見ろ。VIPはやはりゲオルクどのではないか。」横ではベスさんが、やはりなと言う顔をしている。
「あのー、何で主任教授は俺なんぞと研究のお話を?」
「へ?ゲオルク様は東府魔法学院の主任教授直属でいらっしゃいますよね?」
「はい。ルードビッヒ教授直属です。」
「主任教授の研究に関わっていて、しかも特別研究員ですから、どこの魔法学院に行ってもVIP待遇ですよ。もちろん極秘書庫にも入れます。」
「そうだったんですか。」知らなかった。
北府魔法学院を辞して冒険者ギルドに寄ると、懐かしい3人が待っていた。
「あ、ゲオルク君。」「ゲオルクさん。」「ゲオルク!」
「あ、リーゼさん、ジュヌさん、カルメンさん。」
あっと言う間に3人に囲まれた。
「え?この子たちってツリとクレ?」リーゼさんの質問に、ふたりは俺の陰に隠れた。
「うん。昨日、第二形態に進化したんだよ。」
「かわいいじゃないか。」「お人形さんみたいですわ。」
カルメンさんとジュヌさんが覗き込むと、さらに俺の後ろに隠れるふたり。相変わらず人見知りである。つーか、パーティメンバーくらいには慣れて欲しいものだ。
「ゲオルクどの、紹介してくれないか?」
「あ、ベスさん。ごめん。」
「皆さん、こちらはエリザベスさん。重騎士なんだ。元北府騎士団の副長なんだけど、今は冒険者をやってて、騎士団副長の実績によりDランクだね。スピリタスにタンクとして迎えたんだ。
ベスさん、こちらは順に魔術師のリーゼロッテさん、神官のジュヌヴィエーヴさん、支援術士のカルメンシータさん。皆さん、前職はそれぞれ、東府、王都、西府で優秀な受付嬢で受付主席だったんだ。その実績で皆さんEランクデビューなんだよね。」
「タンクか。それはありがたいな。あたしたちは皆、後衛だからな。それにワンランク上ならなお頼もしい。あたしゃカルメンだ。よろしくな。」
「うむ、こちらこそよろしく。ベスと呼んでくれ。」
カルメンさんが手を差し出して、ベスさんと握手した。
「リーゼよ。よろしくね。」「ジュヌですわ。よろしくお願いしますわ。」
続いてリーゼさんと、ジュヌさんも握手した。
「それにしてもさぁ。3人とも、冒険者装備が似合ってるねぇ。」
「でしょ?」「ふふふ。」「まぁこんなもんさね。」3人とも嬉しそうだ。回り道はしたけれども、受付から念願の冒険者に転職だものな。
魔術師のリーゼさんは、攻撃魔法用の木の大杖と攻撃用に短剣。神官のジュヌさんは、回復魔法用の木の小杖と攻撃用に短槍。支援術士のカルメンさんは、支援魔法用に木の小杖と攻撃用に棘の鞭。
後は3人とも術士の典型的な装備で、木の小盾、革のローブ、鉄の鉢巻、革のフード、革のグローブ、革のシューズ。
ベスさんは、騎士団の長槍、騎士団の大盾、騎士団の重鎧、騎士団のヘルメット、騎士団のガントレット、騎士団のブーツ、と言う古巣の騎士団装備だ。なおベスさんは、たわわな胸が収まらないために、鎧を改造に出している。
俺は、父さん譲りの異国のカーボン弓に、ジュラ矢、籐の箙、木の小盾、革の軽鎧、鉄の鉢巻、革の弽、革のグローブ、革のシューズ。弓だけ珍しいが、他は至って一般的な射手の装備だ。
互いの装備の確認って、いかにもパーティ仲間っぽい。笑
「さぁ、これでスピリタスが勢揃いだね。夕餉で今後の活動計画について意見交換しようか。」
ジュヌさんがそっと耳打ちして来た。
「ゲオルクさん、ベスさんも騙して頂きましたでしょう?」
「え?なんで分かったの?」
「うふふ。女の勘ですわ。」女の勘って鋭いんすね。苦笑
ベスさんは改造した鎧を受け取りに防具屋へ行き、俺は残り3人を俺が泊まってる宿屋に案内した。3人がそれぞれ個室を取ると、宿の親父さんが嬉しそうにしていた。
「親父さん、仲間と合流できたんで、明日、バースに発つことになった。今夜が最後だ。世話になったな。」
「そいつはよかったですね。北府に来たらまた使って下さいよ。」
「ああ、そのときは頼むよ。」
そして夕餉を摂る店でベスさんと合流した。
スピリタスの今後の活動方針について意見交換をするはずの夕餉は、女性陣の互いの自己紹介を兼ねた宴となって大いに盛り上がり、ベスさんはすっかり3人と打ち解けた。そう言えば女性は初対面でもすぐ打ち解けると言う話を聞いたことがある。
結局、活動方針は俺に一任と言うことになった。
その後、4人は杯を交わしながら互いの身の上話を語り合い、共通部分を見出して結束を固めて行った。
つまり4人とも、魔力量が少なかったが、俺によって解決されたこと。
初物食いが好きであること。
リーゼさん以外は俺に騙されたこと。ちなみにこの騙されたと言う表現については、俺は異議を申し立てたい。笑
「そう言えばゲオルク君、昨日誕生日よね。おめでとう。」
「え?昨日…、あ、そうか。」
「いやですわ、忘れてたんですの?」
「20歳だな。おめでとう。」「そうだったのか、おめでとう。」
「ありがとう。」
「誕生日のお祝いに何か欲しいもんはあるかしら?」え?欲しいものと言われりゃあ…、4人の巨乳、8個のメロンボールに目が行ってしまう。我慢せねば。
「特にない…かな。」
「どこを見ながら言ってるんですの…。説得力の欠片もないですわよ。」
「ごめんなさい。」
「相変わらずねぇ。ここで謝ったら認めてるようなものでしょうに。」
「あたしゃ、ゲオルクのこの正直なところが気に入ってるんだ。よし、誕生日のお祝いにぱふぱふをしてやろう。」
「ぱふぱふ?」カルメンさんが必殺技ぱふぱふを皆に説明すると、巨乳な他の3人もそれなら自分たちもできると言うことになって4連ぱふぱふだった。極楽、極楽。
大盛り上がりの宴が終わり、明日、湯の町バースに向けて出発と言うことで解散となった。ベスさんは自宅へ帰って行き、俺たちは、宿に戻って部屋に分かれた。
俺はツリとクレに魔力を補給して眠った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/2/6
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№21 スピリタス勢揃い
冒険者ギルドへ向かうとき、ツリとクレは俺の両肩に座ろうとしたが、少女の大きさになったのでずり落ちてしまう。
ふわふわ浮いて移動しようとしたが、絶対人目について騒動の種になるので、歩いてもらうことにした。最初はぶー垂れたが、なぜか手をつなぐのを大層喜んだので、手をつないで歩くことになった。
たまに地面すれすれに浮いて移動しているが、そのくらいは見逃してやることにする。足元まで隠すロングスカートを穿けばいいのだが、衣服嫌いのふたりがロングスカートを穿く訳がない。
ギルドに着くと、またまわりがコソコソ話をしている。
「おい、今日は別の子を連れてるぞ。」いや、同じ子だから。
「ほんとだ。昨日までの幼女はどうしたんだ?」だから、一緒にいるっての!
ベスさんと合流すると、ベスさんは目を瞠った。
「おお、第二形態に進化したのか?」
「え?ベスさん、精霊の形態進化のことを知ってるの?」
「ああ、魔法学院の書庫の文献で見たことがあるのだ。」
「なるほど。そう言えば、ふたりが精霊であることにも最初から気付いてたよね。それに、魔法学院や教会の書庫に入れるツテがあるって言ってなかったっけ?」
「うむ。庶子とはいえ、伯爵家の出だからな。」
「書庫では何を調べてたの?」
「魔力量を増やす方法を探していたのだ。当時の私は魔力量が少なくてスキルを満足に発動できないことを何とか克服したかったのでな。結局は分からず仕舞いだったが、ゲオルクどののおかげで克服できた。しかしまさかあんな方法とはなぁ。」確かにあんな方法…だわな。笑
「ベスさんは、まだ潜在能力の1/2も魔力量を獲得してないからね。」
「ゲオルクどの、何を期待しておる。当面は今の魔力量で十分だぞ。」
「そうだね、俺が一刻も早くAランクに駆け上がるように応援してね。」
「私を口説き落とすのを応援せよとか。よくもまぁ…。まったくゲオルクどのには恐れ入る。」
「そうだ、ベスさん。今日はクエストはやめて北府魔法学院の書庫に行かない?過去の精霊魔術師の契約精霊がいた場所が特定できれば、その場所は天然の魔力が高いはずなので、特大精霊が出会いやすいんだよ。」
「うーん、しかしなぁ。伯爵家の優遇は私までしか及ばんのだ。」
「あ、俺もそれなりにツテがあるんで大丈夫。東府魔法学院で教授の手伝いをしてたんでね。」
そう言うことなら鎧は脱いで来ると言うことで、一旦ベスさん宅に行った。玄関先で少し待つと、普段着のベスさんが出て来た。何とたわわな!
「ゲオルクどの、視線に遠慮がないぞ。」
「いや、いつ見ても凄いねぇ。よくこれがあの鎧に収まってるよなぁ。」
「実は少々窮屈でな。調整で目一杯拡げてるのでこれ以上は拡がらんのだ。」
「防具屋に行って改造したらどう?」
「ふむ。それもありか。」
北府魔法学院に行く前に防具屋に寄ると、そんなに難しい改造ではないので今日中にできると言うことだった。
防具屋を出た俺たちは、北府魔法学院に来ていた。門番詰所で、俺とベスさんが身分証明証を提示して書庫の利用を申し出ると、門番詰所内が慌ただしくなった。
「おい、VIPだ。すぐ主任教授に連絡しろ。それから丁重に書庫へご案内するんだ。」
「なんかVIPって言ってるよ。バース伯爵家は流石だねー。」
「ふむ。おかしいな。以前はこのようなことはなかったのだが。ひょっとしてVIPはゲオルクどのではないのか?」
「そんな訳ないよ。俺の身分証明書は研究員だからね。まぁ、冠に特別が付いてるんで並の研究員よりはましかもしれないけどさ。」
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「はぁ。北部出身の過去の精霊魔術師について調べに来ました。北部で契約精霊がいた場所を知りたいんです。」
「こちらです。」館長自ら案内か。流石にバース伯爵家だ。でもベスさんは横で首を傾げている。
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ただ、村々には精霊魔術師に関する民間伝説があり、その中には有力な情報もあるとのことだった。また、精霊を見る能力がある者が、出やすい村がいくつかあると言う。そう言う村の情報を得られたのが収穫と言えば収穫だな。
帰り際に、館長から呼び止められた。
「ゲオルク様、主任教授より伝言を頂いております。『本日は急なお越しゆえ、時間を取れず申し訳ない。時間があるときはぜひ研究のお話を伺いたい。』とのことです。」
「はぁ。」いきなり面識のない北府魔法学院の主任教授にそんなことを言われてもなぁ。
「それ見ろ。VIPはやはりゲオルクどのではないか。」横ではベスさんが、やはりなと言う顔をしている。
「あのー、何で主任教授は俺なんぞと研究のお話を?」
「へ?ゲオルク様は東府魔法学院の主任教授直属でいらっしゃいますよね?」
「はい。ルードビッヒ教授直属です。」
「主任教授の研究に関わっていて、しかも特別研究員ですから、どこの魔法学院に行ってもVIP待遇ですよ。もちろん極秘書庫にも入れます。」
「そうだったんですか。」知らなかった。
北府魔法学院を辞して冒険者ギルドに寄ると、懐かしい3人が待っていた。
「あ、ゲオルク君。」「ゲオルクさん。」「ゲオルク!」
「あ、リーゼさん、ジュヌさん、カルメンさん。」
あっと言う間に3人に囲まれた。
「え?この子たちってツリとクレ?」リーゼさんの質問に、ふたりは俺の陰に隠れた。
「うん。昨日、第二形態に進化したんだよ。」
「かわいいじゃないか。」「お人形さんみたいですわ。」
カルメンさんとジュヌさんが覗き込むと、さらに俺の後ろに隠れるふたり。相変わらず人見知りである。つーか、パーティメンバーくらいには慣れて欲しいものだ。
「ゲオルクどの、紹介してくれないか?」
「あ、ベスさん。ごめん。」
「皆さん、こちらはエリザベスさん。重騎士なんだ。元北府騎士団の副長なんだけど、今は冒険者をやってて、騎士団副長の実績によりDランクだね。スピリタスにタンクとして迎えたんだ。
ベスさん、こちらは順に魔術師のリーゼロッテさん、神官のジュヌヴィエーヴさん、支援術士のカルメンシータさん。皆さん、前職はそれぞれ、東府、王都、西府で優秀な受付嬢で受付主席だったんだ。その実績で皆さんEランクデビューなんだよね。」
「タンクか。それはありがたいな。あたしたちは皆、後衛だからな。それにワンランク上ならなお頼もしい。あたしゃカルメンだ。よろしくな。」
「うむ、こちらこそよろしく。ベスと呼んでくれ。」
カルメンさんが手を差し出して、ベスさんと握手した。
「リーゼよ。よろしくね。」「ジュヌですわ。よろしくお願いしますわ。」
続いてリーゼさんと、ジュヌさんも握手した。
「それにしてもさぁ。3人とも、冒険者装備が似合ってるねぇ。」
「でしょ?」「ふふふ。」「まぁこんなもんさね。」3人とも嬉しそうだ。回り道はしたけれども、受付から念願の冒険者に転職だものな。
魔術師のリーゼさんは、攻撃魔法用の木の大杖と攻撃用に短剣。神官のジュヌさんは、回復魔法用の木の小杖と攻撃用に短槍。支援術士のカルメンさんは、支援魔法用に木の小杖と攻撃用に棘の鞭。
後は3人とも術士の典型的な装備で、木の小盾、革のローブ、鉄の鉢巻、革のフード、革のグローブ、革のシューズ。
ベスさんは、騎士団の長槍、騎士団の大盾、騎士団の重鎧、騎士団のヘルメット、騎士団のガントレット、騎士団のブーツ、と言う古巣の騎士団装備だ。なおベスさんは、たわわな胸が収まらないために、鎧を改造に出している。
俺は、父さん譲りの異国のカーボン弓に、ジュラ矢、籐の箙、木の小盾、革の軽鎧、鉄の鉢巻、革の弽、革のグローブ、革のシューズ。弓だけ珍しいが、他は至って一般的な射手の装備だ。
互いの装備の確認って、いかにもパーティ仲間っぽい。笑
「さぁ、これでスピリタスが勢揃いだね。夕餉で今後の活動計画について意見交換しようか。」
ジュヌさんがそっと耳打ちして来た。
「ゲオルクさん、ベスさんも騙して頂きましたでしょう?」
「え?なんで分かったの?」
「うふふ。女の勘ですわ。」女の勘って鋭いんすね。苦笑
ベスさんは改造した鎧を受け取りに防具屋へ行き、俺は残り3人を俺が泊まってる宿屋に案内した。3人がそれぞれ個室を取ると、宿の親父さんが嬉しそうにしていた。
「親父さん、仲間と合流できたんで、明日、バースに発つことになった。今夜が最後だ。世話になったな。」
「そいつはよかったですね。北府に来たらまた使って下さいよ。」
「ああ、そのときは頼むよ。」
そして夕餉を摂る店でベスさんと合流した。
スピリタスの今後の活動方針について意見交換をするはずの夕餉は、女性陣の互いの自己紹介を兼ねた宴となって大いに盛り上がり、ベスさんはすっかり3人と打ち解けた。そう言えば女性は初対面でもすぐ打ち解けると言う話を聞いたことがある。
結局、活動方針は俺に一任と言うことになった。
その後、4人は杯を交わしながら互いの身の上話を語り合い、共通部分を見出して結束を固めて行った。
つまり4人とも、魔力量が少なかったが、俺によって解決されたこと。
初物食いが好きであること。
リーゼさん以外は俺に騙されたこと。ちなみにこの騙されたと言う表現については、俺は異議を申し立てたい。笑
「そう言えばゲオルク君、昨日誕生日よね。おめでとう。」
「え?昨日…、あ、そうか。」
「いやですわ、忘れてたんですの?」
「20歳だな。おめでとう。」「そうだったのか、おめでとう。」
「ありがとう。」
「誕生日のお祝いに何か欲しいもんはあるかしら?」え?欲しいものと言われりゃあ…、4人の巨乳、8個のメロンボールに目が行ってしまう。我慢せねば。
「特にない…かな。」
「どこを見ながら言ってるんですの…。説得力の欠片もないですわよ。」
「ごめんなさい。」
「相変わらずねぇ。ここで謝ったら認めてるようなものでしょうに。」
「あたしゃ、ゲオルクのこの正直なところが気に入ってるんだ。よし、誕生日のお祝いにぱふぱふをしてやろう。」
「ぱふぱふ?」カルメンさんが必殺技ぱふぱふを皆に説明すると、巨乳な他の3人もそれなら自分たちもできると言うことになって4連ぱふぱふだった。極楽、極楽。
大盛り上がりの宴が終わり、明日、湯の町バースに向けて出発と言うことで解散となった。ベスさんは自宅へ帰って行き、俺たちは、宿に戻って部屋に分かれた。
俺はツリとクレに魔力を補給して眠った。
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設定を更新しました。R4/2/6
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
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