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精霊の加護014 ジュヌさんのスピリタス加入
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精霊の加護
Zu-Y
№14 ジュヌさんのスピリタス加入
~~現在・ゲオルク19歳~~
王都の冒険者ギルドに入った。2年ぶりか。ジュヌさんはいるかな。受付に向かうと目的のその女性はそこにいた。相変わらず美人だ。
「ジュヌさん、お久しぶり。」
「まぁ、ゲオルクさん。お久しぶりですわね。」
「相変わらずきれいだね。」
「もう、いきなりなんですの。」
「ほんのご挨拶かな。」
「で、そのお子たちは?」ジュヌさんは、俺の両肩に乗っているツリとクレを見て問いかけて来た。
俺は声を潜めて、
「ここではちょっと。あとで時間貰える?」
「よろしいですわよ。勤務終了後でよろしければ。それに、他にもゲオルクさんには聞きたいことがございますし。」
「では後程。」
俺はギルドを出て近くの宿屋を取って部屋に落ち着いた。
勤務を終えたジュヌさんと合流して、個室のある店に行く。飲み物と料理を注文すると、飲み物はすぐに出て来た。乾杯。
「ゲオルクさん、ゲオルギウスを探しに行くって言ってませんでしたっけ?」
「うん、そのつもりだったんだけどね、最初に行った西府の居心地がよくて、2ヶ月前まで居着いてたんだ。」
「素敵な出会いでもございましたかしら?」知ってるくせに。笑
「うん。カルメンさんと言う受付嬢のお姉さんによくしてもらったよ。」
「あら。正直に白状なさいましたわね。」
「うん。何も隠すことはないからね。」
「まぁ、どの口が仰るのかしら。カルメンのことも私と同様、お騙しになりましたのに。」
「はて、騙す?心当たりがないな。ジュヌさんにもカルメンさんにも、俺は童貞じゃないと言ったよね。信じてもらえなかったようだけど。」
「まぁ。あれは演技でしたのね。」
「そのように期待されたみたいなんで、そのように振舞っただけだよ。」
「まったく。」ジュヌさんが溜息をつく。
注文した料理がすべて出て来たので本題に入ることにした。
「これから話すことは、しばらくの間は他言無用でお願い。実はこの子たちなんだけど、俺と契約した精霊なんだ。質問されると思うから予め言っておくけど、契約した精霊は誰でも見られるようになるんだよね。」
「…嘘?」眼を見開いて驚くジュヌさん。
俺はその後、西部でクレと出会って契約し、東部の郷里へツリを迎えに行って契約し、東府魔法学院で精霊魔法の研究に携わっていたことを告げた。
もちろんその過程で分かった、潜在能力や魔力量の上限値の上げ方もだ。それと魔力の補給方法と潜在能力を引き出す方法も。
「もしそれが本当なら私の魔力量も上がってますの?」
「恐らくは。
ツリ、クレ、ジュヌさんの魔力量と潜在能力を教えてくれ。」
ふたりがふわふわと浮いてジュヌさんのまわりを飛びながら回った。しばらくして、
『魔力量は、1900~。』
「えっ、えー!私の魔力、800だったんですのよ。1100も上がってるだなんて知りませんでしたわ。」驚くジュヌさん。
『ゲオルクの、魔力が、補給、されてるー。』やっぱりか。笑
『潜在、能力は、8000~。』リーゼさんよりは少し少ないけど、神官としては十分だな。
「ジュヌさん、冒険者が夢だったよね?俺のパーティに入らない?」
「え?でも、そんなことが…。」
「これから冒険者登録すればいいんだよ。スタートは遅いけど、受付としての知識もあるし、成長はそこらの新米冒険者よりずっと早いはずだよ。今から夢を叶えない?俺にそのサポートをさせてよ。」
しばらく無言で考え込むジュヌさん。
「すごく魅力的なお誘いですわ。でも、試してみないと。」
「じゃぁ、今ここで俺に何か回復魔法を掛けてみて。」
ジュヌさんは続け様に様々な初級回復魔法を発動した。ステータス異常の回復魔法では、俺のほろ酔いが取れてしまった。こら!笑
「魔力切れになりませんわ。まだまだ平気ですわ。何てことですの?信じられませんわ。」ジュヌさんは感動している。テンションマックスだ。笑
さらにしばらく発動し続けて、魔力切れの兆候が見えて来た。よし、魔力を補給しよう。
俺はジュヌさんの横に行き、抱きすくめてそのままキスをした。もちろん濃厚なやつを。
「どう?魔力は回復したよね?」
「ええ、ゲオルクさんと一緒なら魔力切れはないですわね。」ジュヌの眼が輝く。
『ゲオルクー、ツリもー。』ぶっちゅーと来て、すぐに舌が入って来た。笑
ツリが輝き出して離れた。満タンである。
『次は、クレの番ー。』キスと同時にちゅーちゅー吸い出した。
クレもすぐに輝き出した。こちらも満タンである。
「ジュヌさん、これは魔力補給なんだ。ロリコン認定は勘弁してよね。」
「…。」え、ジュヌさん、なぜ黙るの?ここは突っ込むところでしょ?汗
それから楽しい夕餉が続いた。回復魔法で酔いを醒まされた俺は呑み直さねばならなかったが…。苦笑
夕餉を堪能し、ジュヌさんの家まで送る。
「ゲオルクさん、今日はありがとうございました。遅れ馳せながら、夢が叶いそうですわ。」
「俺は明日、王都を発つ予定なんだ。だから、スピリタスへ加入するかの決断は明日までにお願い。」
「あ、それでしたらもう。不束者ですがよろしくお願いします。」
「では明日、冒険者登録とパーティ加入申請をしてしまおうよ。」
「はい。」
それから俺たちは唇を求め合った。
「俺、今はDランクだけど、Aランクに駆け上がったら本気で口説くからね。返事を考えといてよ。」
「まぁ。」両手で口元を隠すしぐさが何とも言えねぇ。
「では明日。」今夜は我慢して帰る。ここでがっついたらだめなのだ。
俺は宿屋でリーゼさん宛の手紙を書いた。『王都でジュヌさんをスピリタスに誘い、加わってもらったので、王都でジュヌさんと合流して北府に来て欲しい。』と言う内容だ。これを明日、王都ギルドから東府ギルドへと送る。
翌日、ギルドの内輪ではひと悶着あった。冒険者からの絶大な人気を誇る受付嬢のジュヌさんが冒険者登録して、受付を辞めると言い出したからだ。ジュヌさんが加わるパーティのリーダーとして、俺はギルマスから呼び出しを受けた。
「おい、どういうことだ?」ギルマスはハナから喧嘩腰だ。
「ジュヌさんから冒険者になりたかったという話は以前から聞いていた。今回そのメドが立ったから夢を叶えないかと誘った。それだけだ。ギルドの規定には抵触していないはずだぞ。」俺は一歩も引く気はない。
「ジュヌは冒険者たちから絶大な人気なのだ。抜けるなどありえん。ジュヌの代わりはいないのだ。」
「おい、それは後継となる受付嬢を育ててなかったお前の責任だよな。何でジュヌさんが自分の夢を諦めてまで、お前の尻拭いをせにゃならんのだ?」
「しかしだな。」
「しかしも減ったくれもねぇよ。ジュヌさんが抜けたら、ジュヌさんに依存していた他の受付嬢も奮起するだろうよ。そうなるように導くのがお前の仕事だろ?」
「ジュヌほど有能な者は他におらんのだ。」
「だからそれを育てるのがギルマスであるお前の役割だろーが?できねぇなら辞表を書いてとっとと失せろ。」
「ジュヌが辞めるのに俺まで辞める訳にはいかんだろ。」
「じゃぁ、泣き言を言わずにとっととやれよ。引継ぎに3週間だけ待ってやる。その間に何とかしろ。いいな?」俺は席を立った。
「ジュヌさん、ギルマスと話を付けて来たよ。ギルマスの言うこと聞く必要はないからね。引継ぎに3週間だけやるって言って来たんで、3週間経っても引継ぎが終わってなかったら、それは単にギルドの引き伸ばしだから、もうほっといて北府に来てね。」
「はい。いろいろとありがとうございました。」
ジュヌさんはギルド職員としての知識と実績が買われてEランクスタート。
「それとそのうちリーゼさんが来るから、王都で合流して来てね。」
「え?リーゼも来ますの?」
「スピリタスはリーゼさんと結成したんだよ。そこにジュヌさんに加わってもらったんだ。そしてあともうひとり、加えたいメンバーがいるんだよね。」
「カルメンですわね。」
「うん。これから西府に行って誘って来るよ。」
横からいきなり声を掛けられた。
「ゲオルクじゃねぇか?」
「あ、アンドレ。」
「久しぶりだな。元気でやってるか?」
「ああ。久しぶり。」正直、気まずい。
「ゲオルギウスとは合流できたのか?」
「いや、まだだ。」
「そうか、あのな、マイクらしいのを北府で見かけたと言う奴がいるぜ。」
「え?本当か?」
「ああ。ただよ、実際に話した訳じゃねぇんだ。かなりあやふやな情報だな。まったく手掛かりがないよりはましという程度だけどよ。」
「すまん。それでも助かる。」
「おい、アンドレ。何やってんだ…っておい、ゲオルクじゃねぇか!久しぶりだな。元気でやってるか?」シモンだ。
「え?ゲオルクだって?おお、ほんとだ。おい、元気か?」セドリックだ。
「ああ、シモン、セドリック、久しぶり。」
「紹介するよ。こいつがお前の代わりに入ったロランだ。」
「やあ、始めまして。皆から噂は聞いてるよ。随分優秀な射手なんだってな。」
「え?どうも。ゲオルクだ。よろしく。」俺が優秀?お払い箱にしたくせにか?
「しばらく王都にいるのか?」アンドレが聞いて来た。
「いや、ちょっと寄っただけなんだ。すぐに発つ。」
「そうか、俺たちゃもう出掛けるけどよ、まぁ、頑張れよ。ゲオルギウスが早く見付かるといいな。じゃぁな。今度ゆっくり呑もうぜ。」
アンドレがそう言って、エトワールはギルドを出て行った。
「なんだったんだろ?」と呟く俺。
「昔の仲間に会えて懐かしかったのだと思いますわ。」
「え?仲間?でも俺、除名されたんだよ。」
「彼らはそう思ってませんわよ。繋ぎでの臨時加入契約が終わっただけだと言ってましたわね。それとゲオルクさんは優秀な射手だとも言ってましたわ。」
「え?なんで?」
「その通りだからですわ。ゲオルクさんがお辞めになる1ヶ月くらい前でしょうか。アンドレさんが言ってましたもの。『ゲオルクはエトワールに正式加入する気はないみたいだ。余程ゲオルギウスがよかったんだな。』ってね。
それからアンドレさんは、魔術師を探すのを再開したんですのよ。」
「そうだったんだ。」
「ゲオルクさんが王都を出た後も、ゲオルクさんが優秀な射手だとあちこちで吹聴してたんですのよ。ロランさんの加入でゲオルクさんには抜けてもらったけど、ゲオルクさんが次のパーティに入りやすいように気遣ってたんだと思いますわ。」
「それは知らなかったな。教えてくれてありがとう。」俺、あいつらのことを誤解してたかもしれんな。カルメンさんの言う通りだったか…。
俺は、王都ギルドから東府のリーゼさん宛の手紙を出し、ジュヌさんと別れて西府に向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/1/23
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№14 ジュヌさんのスピリタス加入
~~現在・ゲオルク19歳~~
王都の冒険者ギルドに入った。2年ぶりか。ジュヌさんはいるかな。受付に向かうと目的のその女性はそこにいた。相変わらず美人だ。
「ジュヌさん、お久しぶり。」
「まぁ、ゲオルクさん。お久しぶりですわね。」
「相変わらずきれいだね。」
「もう、いきなりなんですの。」
「ほんのご挨拶かな。」
「で、そのお子たちは?」ジュヌさんは、俺の両肩に乗っているツリとクレを見て問いかけて来た。
俺は声を潜めて、
「ここではちょっと。あとで時間貰える?」
「よろしいですわよ。勤務終了後でよろしければ。それに、他にもゲオルクさんには聞きたいことがございますし。」
「では後程。」
俺はギルドを出て近くの宿屋を取って部屋に落ち着いた。
勤務を終えたジュヌさんと合流して、個室のある店に行く。飲み物と料理を注文すると、飲み物はすぐに出て来た。乾杯。
「ゲオルクさん、ゲオルギウスを探しに行くって言ってませんでしたっけ?」
「うん、そのつもりだったんだけどね、最初に行った西府の居心地がよくて、2ヶ月前まで居着いてたんだ。」
「素敵な出会いでもございましたかしら?」知ってるくせに。笑
「うん。カルメンさんと言う受付嬢のお姉さんによくしてもらったよ。」
「あら。正直に白状なさいましたわね。」
「うん。何も隠すことはないからね。」
「まぁ、どの口が仰るのかしら。カルメンのことも私と同様、お騙しになりましたのに。」
「はて、騙す?心当たりがないな。ジュヌさんにもカルメンさんにも、俺は童貞じゃないと言ったよね。信じてもらえなかったようだけど。」
「まぁ。あれは演技でしたのね。」
「そのように期待されたみたいなんで、そのように振舞っただけだよ。」
「まったく。」ジュヌさんが溜息をつく。
注文した料理がすべて出て来たので本題に入ることにした。
「これから話すことは、しばらくの間は他言無用でお願い。実はこの子たちなんだけど、俺と契約した精霊なんだ。質問されると思うから予め言っておくけど、契約した精霊は誰でも見られるようになるんだよね。」
「…嘘?」眼を見開いて驚くジュヌさん。
俺はその後、西部でクレと出会って契約し、東部の郷里へツリを迎えに行って契約し、東府魔法学院で精霊魔法の研究に携わっていたことを告げた。
もちろんその過程で分かった、潜在能力や魔力量の上限値の上げ方もだ。それと魔力の補給方法と潜在能力を引き出す方法も。
「もしそれが本当なら私の魔力量も上がってますの?」
「恐らくは。
ツリ、クレ、ジュヌさんの魔力量と潜在能力を教えてくれ。」
ふたりがふわふわと浮いてジュヌさんのまわりを飛びながら回った。しばらくして、
『魔力量は、1900~。』
「えっ、えー!私の魔力、800だったんですのよ。1100も上がってるだなんて知りませんでしたわ。」驚くジュヌさん。
『ゲオルクの、魔力が、補給、されてるー。』やっぱりか。笑
『潜在、能力は、8000~。』リーゼさんよりは少し少ないけど、神官としては十分だな。
「ジュヌさん、冒険者が夢だったよね?俺のパーティに入らない?」
「え?でも、そんなことが…。」
「これから冒険者登録すればいいんだよ。スタートは遅いけど、受付としての知識もあるし、成長はそこらの新米冒険者よりずっと早いはずだよ。今から夢を叶えない?俺にそのサポートをさせてよ。」
しばらく無言で考え込むジュヌさん。
「すごく魅力的なお誘いですわ。でも、試してみないと。」
「じゃぁ、今ここで俺に何か回復魔法を掛けてみて。」
ジュヌさんは続け様に様々な初級回復魔法を発動した。ステータス異常の回復魔法では、俺のほろ酔いが取れてしまった。こら!笑
「魔力切れになりませんわ。まだまだ平気ですわ。何てことですの?信じられませんわ。」ジュヌさんは感動している。テンションマックスだ。笑
さらにしばらく発動し続けて、魔力切れの兆候が見えて来た。よし、魔力を補給しよう。
俺はジュヌさんの横に行き、抱きすくめてそのままキスをした。もちろん濃厚なやつを。
「どう?魔力は回復したよね?」
「ええ、ゲオルクさんと一緒なら魔力切れはないですわね。」ジュヌの眼が輝く。
『ゲオルクー、ツリもー。』ぶっちゅーと来て、すぐに舌が入って来た。笑
ツリが輝き出して離れた。満タンである。
『次は、クレの番ー。』キスと同時にちゅーちゅー吸い出した。
クレもすぐに輝き出した。こちらも満タンである。
「ジュヌさん、これは魔力補給なんだ。ロリコン認定は勘弁してよね。」
「…。」え、ジュヌさん、なぜ黙るの?ここは突っ込むところでしょ?汗
それから楽しい夕餉が続いた。回復魔法で酔いを醒まされた俺は呑み直さねばならなかったが…。苦笑
夕餉を堪能し、ジュヌさんの家まで送る。
「ゲオルクさん、今日はありがとうございました。遅れ馳せながら、夢が叶いそうですわ。」
「俺は明日、王都を発つ予定なんだ。だから、スピリタスへ加入するかの決断は明日までにお願い。」
「あ、それでしたらもう。不束者ですがよろしくお願いします。」
「では明日、冒険者登録とパーティ加入申請をしてしまおうよ。」
「はい。」
それから俺たちは唇を求め合った。
「俺、今はDランクだけど、Aランクに駆け上がったら本気で口説くからね。返事を考えといてよ。」
「まぁ。」両手で口元を隠すしぐさが何とも言えねぇ。
「では明日。」今夜は我慢して帰る。ここでがっついたらだめなのだ。
俺は宿屋でリーゼさん宛の手紙を書いた。『王都でジュヌさんをスピリタスに誘い、加わってもらったので、王都でジュヌさんと合流して北府に来て欲しい。』と言う内容だ。これを明日、王都ギルドから東府ギルドへと送る。
翌日、ギルドの内輪ではひと悶着あった。冒険者からの絶大な人気を誇る受付嬢のジュヌさんが冒険者登録して、受付を辞めると言い出したからだ。ジュヌさんが加わるパーティのリーダーとして、俺はギルマスから呼び出しを受けた。
「おい、どういうことだ?」ギルマスはハナから喧嘩腰だ。
「ジュヌさんから冒険者になりたかったという話は以前から聞いていた。今回そのメドが立ったから夢を叶えないかと誘った。それだけだ。ギルドの規定には抵触していないはずだぞ。」俺は一歩も引く気はない。
「ジュヌは冒険者たちから絶大な人気なのだ。抜けるなどありえん。ジュヌの代わりはいないのだ。」
「おい、それは後継となる受付嬢を育ててなかったお前の責任だよな。何でジュヌさんが自分の夢を諦めてまで、お前の尻拭いをせにゃならんのだ?」
「しかしだな。」
「しかしも減ったくれもねぇよ。ジュヌさんが抜けたら、ジュヌさんに依存していた他の受付嬢も奮起するだろうよ。そうなるように導くのがお前の仕事だろ?」
「ジュヌほど有能な者は他におらんのだ。」
「だからそれを育てるのがギルマスであるお前の役割だろーが?できねぇなら辞表を書いてとっとと失せろ。」
「ジュヌが辞めるのに俺まで辞める訳にはいかんだろ。」
「じゃぁ、泣き言を言わずにとっととやれよ。引継ぎに3週間だけ待ってやる。その間に何とかしろ。いいな?」俺は席を立った。
「ジュヌさん、ギルマスと話を付けて来たよ。ギルマスの言うこと聞く必要はないからね。引継ぎに3週間だけやるって言って来たんで、3週間経っても引継ぎが終わってなかったら、それは単にギルドの引き伸ばしだから、もうほっといて北府に来てね。」
「はい。いろいろとありがとうございました。」
ジュヌさんはギルド職員としての知識と実績が買われてEランクスタート。
「それとそのうちリーゼさんが来るから、王都で合流して来てね。」
「え?リーゼも来ますの?」
「スピリタスはリーゼさんと結成したんだよ。そこにジュヌさんに加わってもらったんだ。そしてあともうひとり、加えたいメンバーがいるんだよね。」
「カルメンですわね。」
「うん。これから西府に行って誘って来るよ。」
横からいきなり声を掛けられた。
「ゲオルクじゃねぇか?」
「あ、アンドレ。」
「久しぶりだな。元気でやってるか?」
「ああ。久しぶり。」正直、気まずい。
「ゲオルギウスとは合流できたのか?」
「いや、まだだ。」
「そうか、あのな、マイクらしいのを北府で見かけたと言う奴がいるぜ。」
「え?本当か?」
「ああ。ただよ、実際に話した訳じゃねぇんだ。かなりあやふやな情報だな。まったく手掛かりがないよりはましという程度だけどよ。」
「すまん。それでも助かる。」
「おい、アンドレ。何やってんだ…っておい、ゲオルクじゃねぇか!久しぶりだな。元気でやってるか?」シモンだ。
「え?ゲオルクだって?おお、ほんとだ。おい、元気か?」セドリックだ。
「ああ、シモン、セドリック、久しぶり。」
「紹介するよ。こいつがお前の代わりに入ったロランだ。」
「やあ、始めまして。皆から噂は聞いてるよ。随分優秀な射手なんだってな。」
「え?どうも。ゲオルクだ。よろしく。」俺が優秀?お払い箱にしたくせにか?
「しばらく王都にいるのか?」アンドレが聞いて来た。
「いや、ちょっと寄っただけなんだ。すぐに発つ。」
「そうか、俺たちゃもう出掛けるけどよ、まぁ、頑張れよ。ゲオルギウスが早く見付かるといいな。じゃぁな。今度ゆっくり呑もうぜ。」
アンドレがそう言って、エトワールはギルドを出て行った。
「なんだったんだろ?」と呟く俺。
「昔の仲間に会えて懐かしかったのだと思いますわ。」
「え?仲間?でも俺、除名されたんだよ。」
「彼らはそう思ってませんわよ。繋ぎでの臨時加入契約が終わっただけだと言ってましたわね。それとゲオルクさんは優秀な射手だとも言ってましたわ。」
「え?なんで?」
「その通りだからですわ。ゲオルクさんがお辞めになる1ヶ月くらい前でしょうか。アンドレさんが言ってましたもの。『ゲオルクはエトワールに正式加入する気はないみたいだ。余程ゲオルギウスがよかったんだな。』ってね。
それからアンドレさんは、魔術師を探すのを再開したんですのよ。」
「そうだったんだ。」
「ゲオルクさんが王都を出た後も、ゲオルクさんが優秀な射手だとあちこちで吹聴してたんですのよ。ロランさんの加入でゲオルクさんには抜けてもらったけど、ゲオルクさんが次のパーティに入りやすいように気遣ってたんだと思いますわ。」
「それは知らなかったな。教えてくれてありがとう。」俺、あいつらのことを誤解してたかもしれんな。カルメンさんの言う通りだったか…。
俺は、王都ギルドから東府のリーゼさん宛の手紙を出し、ジュヌさんと別れて西府に向かった。
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更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
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