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射手の統領148 マザ入り
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射手の統領
Zu-Y
№148 マザ入り
翌朝、朝餉を摂っていると、宿の主人が来て来客だと言う。ガノラッパ一家の親分と若頭に、護衛らしき子分が数名だそうだ。朝餉が終わるまで待たせておき、宿屋のロビーで面会した。全員、きれいさっぱり、頭を丸めている。笑
俺の正面に親分と若頭は俺の正面に座り、残りはその後ろに立ったままだ。うちふたりの顔はボコボコに腫れ上がっている。あ、こいつら、昨日、移動店舗で絡んで来た連中だ。
「昨日はご迷惑をお掛けしました。」親分が顔面蒼白で頭を下げた。若頭もそれに合わせて頭を下げた。
親分は、懐から紫色の袱紗を取り出し、俺の前で広げた。大金貨10枚だ。つまり白金貨1枚分である。ふむ、本当に一晩で揃えやがったな。なかなかの財力だ。もう少し吹っ掛けてもよかったか?それに、ほぼ全壊させた屋敷の再建には、この何倍かは掛かるだろう。今回のいざこざで、ちょっこら白金貨数枚分の出費か。まぁ、子分どもをきちんと躾けてなかったのだから、当然の報いだな。
「親分さん、あんたの誠意は受け取ったぜ。これでチャラだ。今後は、子分どもをちゃんと躾けろよ。どうせ、昨日のような無体な因縁の付け方を、町中でやってんだろ。」
「はい。申し訳ありませんでした。今後このようなことがない様に、しっかりと躾けます。ところで、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「俺か?俺はアタル、パーティはセプト。」
この後、ギルドで俺たちのことを調べた親分と若頭は、『濃紺の規格外』と言う通り名と、セプトの実績を聞いて、腰を抜かしたと言うことだ。笑
ガノラッパを発った俺たちは、馬手側に山を見ながら川に沿って北西に進んだ。そして山と山の間の山峡の道になり、進路は徐々に北へと変わって行く。
山峡の道を抜けると、ちょっと開けた盆地になり、ここが有名な温泉街のクッサーだ。俺たちは、昼過ぎにはクッサーに着いた。
俺の大好きな硫黄の匂いがぷんぷんする。
クッサーの中心には、硫黄泉の湯畑があり、もうもうと湯気が立ち上っていた。そして、その湯畑を取り囲むように、大小いくつもの温泉宿がひしめき合っていた。
今日は素通りするけど、せっかくクッサーの温泉街に来たのだから、和の国屈指の名湯と言われるクッサーの湯には、取り敢えず入って行きたい。クッサーには湯宿も多いが、公衆浴場の銭湯も多い。宿泊客相手に、銭湯の湯巡りスタンプカードを発行しているくらいだからな。
山髙屋クッサー支店に北斗号を預け、俺たちは湯畑前の銭湯へと行った。
入口で嫁たちと別れ、番台に入浴料を置いて、脱衣所で装備一式を脱いだ。客はそこそこいて、地元の客の他に、湯治客や冒険者も来ていた。
浴室に入り、もうもうと湯気が立ち込める中、掛け湯をしたら結構熱い。そう言えばクッサーの湯は、熱くてそのままでは入れないので、湯もみと言う作業をして温度を下げるんだそうだ。
湯もみは、何人もの女性スタッフが、長い板で湯をかき混ぜることで、熱い湯を空気で冷やすのだが、それでもまだ湯は熱い。熱い湯に入るコツは、掛け湯のときに、湯を頭から10回以上被るといいと、居合わせた地元の小父さんが教えてくれた。
その小父さんも頭からガンガン湯を被っているので、見様見真似でガンガン被っていると、湯の熱さに段々慣れて来た。
「ふぅ。」湯に浸かってると体の疲れが抜けて行く。硫黄の匂いが心地よい。
ただ、これだけ硫黄の匂いがするのに、クッサーの湯は、若干は薄濁りっぽくも見えるが、ほぼ無色透明なのだ。これだけの硫黄臭なら、白く濁っててもよさそうだけど。白濁の硫黄臭プンプンが大好きな俺としては、今ひとつ物足りない気もする。でもいい湯である。
あーもう、今日はここまででいいんじゃね?マザへはもう半日も掛らない距離だし、このままクッサーで宿を取って1泊しちまうか?
いやいや、マザは俺の大好きな白濁で硫黄臭プンプンの温泉だと聞く。やはり一刻も早くマザへ行くべきだな。
クッサーの湯の誘惑を振り切って、俺はマザの湯へと思いを馳せるのであった。
銭湯の外で嫁たちと合流。嫁たちも皆、クッサーの湯にご満悦であった。
「ほんま、ええ湯やったわぁ。」「せやねー、お肌もつるつるやん。」お前らはあそこもな。
「む、アタル兄、今、失礼なこと考えたやろ?」「せやな、一瞬、ニマっと悪い顔しよった。」
「いやいや、なに言ってんの?」ここで視線を逸らせたら負けなのだ。
「うーん、なんや、イマイチ怪しいなぁ。」「せやなぁ。いつもなら視線逸らすんやけど…。」キョウちゃんズの追及がそこまででやんだ。セーフ、セーフっ!
クッサーで名物の温泉饅頭を買い込み、昼餉代わりに食べながら、北斗号でマザへと向かった。
クッサーからマザへは、西北西に山道を行く。山道だけあってくねくね進むが、道中は非常に順調だった。そして夕方になる前にマザの温泉街へと到着した。
ここ、マザはシノベの本拠でもある。
俺たちは、山髙屋マザ支店に北斗号を預けた。今日は、移動店舗は開かない。しばらくマザに逗留するので、移動店舗はゆるりと開けばいい。
しばらく滞在すると言うことで、マザの大きな湯治宿を取り敢えず10連泊で確保した。部屋は皆で過ごす大部屋と、むふふ部屋である。夜は大部屋が女子部屋となり、俺はむふふ部屋に泊まるが、昼間は俺も大部屋で過ごす。
俺たちは8人だから、そこそこ大口の客である。それが取り敢えず10連泊だと言うので、女将が挨拶に出て来た。
俺たちに挨拶した後、女将が俺だけを呼んだ。なんだろ?
「お客様、お連れ様は皆、別嬪揃いですね。」分かってるじゃないの!
「まぁな。」
「奥方はどのお方ですか?」
「皆だ。」
「まぁまぁ、お客様は艶福家でいらっしゃいますのね。」
「それ程でもないがな。」
「当宿屋には、ご家族風呂もありますのよ。大浴場ではお客様だけ男湯ですものね。でも家族風呂なら…。」女将ぃー、よくぞ声を掛けてくれた。
「そこんとこ詳しく。この人数でゆったり入れるか?それから源泉掛け流しか?」
「もちろんですとも。」
「いいな。1時間いくらだ?」ごにょごにょと女将が耳打ちで値段を言うが、リーズナブル!
「それなら連泊の間、一番広い家族風呂をひとつ、ずっと貸切で頼む。」
「えっ?」まぁ驚くよな。でもな、俺にはガノラッパ一家から巻き上げた大金貨10枚があるのだよ。もっともそのうち3枚は情報をくれたシノブどのに渡すけどな。
「それでしたらお客様、いっそのこと特別室はいかがです?本館とは別棟で源泉掛け流しの、内湯と露天風呂付きです。」
「なんだと?なぜそれを早く言わぬ?」
「でも特別室ですからお値段もそれなりに致します。連泊向きではないかと…。」
「いくらだ?」再び女将がごにょごにょと女将が耳打ちで値段を言った。
正直に言おう。普段ならご褒美で1泊はしても、連泊は絶対にしないな。でもな、繰り返すが、今はガノラッパ一家からせしめた大金貨10枚があるのだよ。
「女将、早くそれを言え。特別室とやら、見せてもらおうか。」
「はいっ。」満面の笑みで女将自らが俺たちを特別室に案内してくれた。
離れの別棟で、広い居間の他に、寝室がいくつもある。これなら、むふふ部屋も確保できる。
特別室付きの内湯と露天もそこそこ広いので、どちらも俺たち8人でもゆったりと入れる。これなら混浴も、し放題ではないか。
特別室は素泊まりで1泊金貨3枚。豪勢な部屋食付きは、ひとり大銀貨3枚なので8人で金貨2枚と大銀貨4枚。つまり1泊金貨5枚と大銀貨4枚だ。
「お客様、8名様の10連泊なので、端数は切って、1泊金貨5枚でよろしゅうございますよ。」なんと、気風の言い女将ではないか。
どうせ、ガノラッパ一家から巻き上げた臨時収入だから、パーッと使っちまおう。
「女将、決めた。ここがいい。」と言って、10泊分の大金貨5枚を女将に渡した。
「え?前金でよろしいんですか?」
「もちろん。どうせ支払うんだし、随分負けてもらったからな。」値引きは、1泊当たり大銀貨4枚だから、10連泊で金貨4枚だ。
「ありがとうございますっ!」
早速特別室に入り、嫁たちと混浴を堪能したのは言うまでもない。
マザの湯の源泉掛け流しだけあって、白濁の硫黄臭プンプンであった。しかーし、白濁湯は肩まで浸かると、嫁たち7人分の頂、14花が見えなくなってしまうのだ。大泣
俺が嘆き悲しむと、心優しい嫁たちは、肩までは浸からず、頂のお花がスレスレで見えるようにしてくれた。素晴らしい心遣いだ。それに、女性の入浴姿は、湯から肩を出している方が断然色っぽい。
その後、順に頂マッサージしたのは言うまでもなかろう。
風呂から上がった俺は、特別室の居間で嫁たちとゆったり寛ぐ。居間から見える庭も、正面の山を見事に借景として取り入れており、実に素晴らしい。
その山では、あちこちから白い湯気が吹き出している。硫黄泉が自噴しているのだ。そのせいで、山には植物が育たないのだろう。山肌はむき出してある。
嫁たちとイチャイチャしながら、贅沢な夕方を過ごしたのであった。
徐々に日は暮れて行き、辺りには夜の帳が降りて来た。
「さて、それじゃあ、シノベどのの都合を聞いてもらうかな。」
俺は特別室の縁側に出て忍笛を吹いた。すると間もなく、すすーっとくノ一が現れた。黒装束で頭巾を被っているが、背格好と身のこなし、そして体のラインからシノブどのと分かる。
「シノブどのか?」
「はい。」
「シノベどのに会いたい。シノベどののご都合を聞いて来て欲しい。」
「はっ。」
「それとこれを。」俺は大金貨3枚を差し出した。ガノラッパ一家から巻き上げた10枚のうちの3枚だ。
「これはどういうことでござりまするか?」
「シノブどのが急ぎ知らせてくれた情報で、ガノラッパ一家の機先を制することができ、ガノラッパ一家から詫び金をせしめることができた。これはその一部。シノベ衆の取り分として遣わす。」
「かように過分なご褒美を頂いてもよろしいのでござりましょうか?」
「もちろんだとも。この臨時収入はな、影の警護に励み、いち早く貴重な情報を入れてくれたシノベ衆のお陰で手に入ったのだ。シノベ衆の働きに対する、正当な分け前だよ。今後も、重要な情報にはこまめに知らせてくれ。」
「承知しました。なんとも、過分なご褒美を頂戴し、誠にありがとうござりまする。お頭様にお伝え致しまする。」
「ああ、頼む。」すすーっと気配が消えた。
それから夕餉になった。特別室の部屋食だけあって、非常に豪勢だ。しかしこれが10日も続くと飽きるかもしれんな。などと贅沢なことを考えつつ、皆と夕餉を楽しんだ。
夕餉の後は再び嫁たちと混浴タイムである。部屋付きの風呂と言うのは、実に便利でいい。夜の露天風呂で14花を愛で、湯を満喫したのであった。
そして、ガノラッパ一家との諍いで、昨日のむふふタイムが中止になってしまったので、今宵はサジ姉とのリベンジである。特別室内のむふふ部屋にサジ姉を連れ込んで昨日の続きだ。
昨日、お預けを食った分、サジ姉も大いに乗り気で、その夜はサジ姉とたっぷり楽しんだのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/27
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№148 マザ入り
翌朝、朝餉を摂っていると、宿の主人が来て来客だと言う。ガノラッパ一家の親分と若頭に、護衛らしき子分が数名だそうだ。朝餉が終わるまで待たせておき、宿屋のロビーで面会した。全員、きれいさっぱり、頭を丸めている。笑
俺の正面に親分と若頭は俺の正面に座り、残りはその後ろに立ったままだ。うちふたりの顔はボコボコに腫れ上がっている。あ、こいつら、昨日、移動店舗で絡んで来た連中だ。
「昨日はご迷惑をお掛けしました。」親分が顔面蒼白で頭を下げた。若頭もそれに合わせて頭を下げた。
親分は、懐から紫色の袱紗を取り出し、俺の前で広げた。大金貨10枚だ。つまり白金貨1枚分である。ふむ、本当に一晩で揃えやがったな。なかなかの財力だ。もう少し吹っ掛けてもよかったか?それに、ほぼ全壊させた屋敷の再建には、この何倍かは掛かるだろう。今回のいざこざで、ちょっこら白金貨数枚分の出費か。まぁ、子分どもをきちんと躾けてなかったのだから、当然の報いだな。
「親分さん、あんたの誠意は受け取ったぜ。これでチャラだ。今後は、子分どもをちゃんと躾けろよ。どうせ、昨日のような無体な因縁の付け方を、町中でやってんだろ。」
「はい。申し訳ありませんでした。今後このようなことがない様に、しっかりと躾けます。ところで、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「俺か?俺はアタル、パーティはセプト。」
この後、ギルドで俺たちのことを調べた親分と若頭は、『濃紺の規格外』と言う通り名と、セプトの実績を聞いて、腰を抜かしたと言うことだ。笑
ガノラッパを発った俺たちは、馬手側に山を見ながら川に沿って北西に進んだ。そして山と山の間の山峡の道になり、進路は徐々に北へと変わって行く。
山峡の道を抜けると、ちょっと開けた盆地になり、ここが有名な温泉街のクッサーだ。俺たちは、昼過ぎにはクッサーに着いた。
俺の大好きな硫黄の匂いがぷんぷんする。
クッサーの中心には、硫黄泉の湯畑があり、もうもうと湯気が立ち上っていた。そして、その湯畑を取り囲むように、大小いくつもの温泉宿がひしめき合っていた。
今日は素通りするけど、せっかくクッサーの温泉街に来たのだから、和の国屈指の名湯と言われるクッサーの湯には、取り敢えず入って行きたい。クッサーには湯宿も多いが、公衆浴場の銭湯も多い。宿泊客相手に、銭湯の湯巡りスタンプカードを発行しているくらいだからな。
山髙屋クッサー支店に北斗号を預け、俺たちは湯畑前の銭湯へと行った。
入口で嫁たちと別れ、番台に入浴料を置いて、脱衣所で装備一式を脱いだ。客はそこそこいて、地元の客の他に、湯治客や冒険者も来ていた。
浴室に入り、もうもうと湯気が立ち込める中、掛け湯をしたら結構熱い。そう言えばクッサーの湯は、熱くてそのままでは入れないので、湯もみと言う作業をして温度を下げるんだそうだ。
湯もみは、何人もの女性スタッフが、長い板で湯をかき混ぜることで、熱い湯を空気で冷やすのだが、それでもまだ湯は熱い。熱い湯に入るコツは、掛け湯のときに、湯を頭から10回以上被るといいと、居合わせた地元の小父さんが教えてくれた。
その小父さんも頭からガンガン湯を被っているので、見様見真似でガンガン被っていると、湯の熱さに段々慣れて来た。
「ふぅ。」湯に浸かってると体の疲れが抜けて行く。硫黄の匂いが心地よい。
ただ、これだけ硫黄の匂いがするのに、クッサーの湯は、若干は薄濁りっぽくも見えるが、ほぼ無色透明なのだ。これだけの硫黄臭なら、白く濁っててもよさそうだけど。白濁の硫黄臭プンプンが大好きな俺としては、今ひとつ物足りない気もする。でもいい湯である。
あーもう、今日はここまででいいんじゃね?マザへはもう半日も掛らない距離だし、このままクッサーで宿を取って1泊しちまうか?
いやいや、マザは俺の大好きな白濁で硫黄臭プンプンの温泉だと聞く。やはり一刻も早くマザへ行くべきだな。
クッサーの湯の誘惑を振り切って、俺はマザの湯へと思いを馳せるのであった。
銭湯の外で嫁たちと合流。嫁たちも皆、クッサーの湯にご満悦であった。
「ほんま、ええ湯やったわぁ。」「せやねー、お肌もつるつるやん。」お前らはあそこもな。
「む、アタル兄、今、失礼なこと考えたやろ?」「せやな、一瞬、ニマっと悪い顔しよった。」
「いやいや、なに言ってんの?」ここで視線を逸らせたら負けなのだ。
「うーん、なんや、イマイチ怪しいなぁ。」「せやなぁ。いつもなら視線逸らすんやけど…。」キョウちゃんズの追及がそこまででやんだ。セーフ、セーフっ!
クッサーで名物の温泉饅頭を買い込み、昼餉代わりに食べながら、北斗号でマザへと向かった。
クッサーからマザへは、西北西に山道を行く。山道だけあってくねくね進むが、道中は非常に順調だった。そして夕方になる前にマザの温泉街へと到着した。
ここ、マザはシノベの本拠でもある。
俺たちは、山髙屋マザ支店に北斗号を預けた。今日は、移動店舗は開かない。しばらくマザに逗留するので、移動店舗はゆるりと開けばいい。
しばらく滞在すると言うことで、マザの大きな湯治宿を取り敢えず10連泊で確保した。部屋は皆で過ごす大部屋と、むふふ部屋である。夜は大部屋が女子部屋となり、俺はむふふ部屋に泊まるが、昼間は俺も大部屋で過ごす。
俺たちは8人だから、そこそこ大口の客である。それが取り敢えず10連泊だと言うので、女将が挨拶に出て来た。
俺たちに挨拶した後、女将が俺だけを呼んだ。なんだろ?
「お客様、お連れ様は皆、別嬪揃いですね。」分かってるじゃないの!
「まぁな。」
「奥方はどのお方ですか?」
「皆だ。」
「まぁまぁ、お客様は艶福家でいらっしゃいますのね。」
「それ程でもないがな。」
「当宿屋には、ご家族風呂もありますのよ。大浴場ではお客様だけ男湯ですものね。でも家族風呂なら…。」女将ぃー、よくぞ声を掛けてくれた。
「そこんとこ詳しく。この人数でゆったり入れるか?それから源泉掛け流しか?」
「もちろんですとも。」
「いいな。1時間いくらだ?」ごにょごにょと女将が耳打ちで値段を言うが、リーズナブル!
「それなら連泊の間、一番広い家族風呂をひとつ、ずっと貸切で頼む。」
「えっ?」まぁ驚くよな。でもな、俺にはガノラッパ一家から巻き上げた大金貨10枚があるのだよ。もっともそのうち3枚は情報をくれたシノブどのに渡すけどな。
「それでしたらお客様、いっそのこと特別室はいかがです?本館とは別棟で源泉掛け流しの、内湯と露天風呂付きです。」
「なんだと?なぜそれを早く言わぬ?」
「でも特別室ですからお値段もそれなりに致します。連泊向きではないかと…。」
「いくらだ?」再び女将がごにょごにょと女将が耳打ちで値段を言った。
正直に言おう。普段ならご褒美で1泊はしても、連泊は絶対にしないな。でもな、繰り返すが、今はガノラッパ一家からせしめた大金貨10枚があるのだよ。
「女将、早くそれを言え。特別室とやら、見せてもらおうか。」
「はいっ。」満面の笑みで女将自らが俺たちを特別室に案内してくれた。
離れの別棟で、広い居間の他に、寝室がいくつもある。これなら、むふふ部屋も確保できる。
特別室付きの内湯と露天もそこそこ広いので、どちらも俺たち8人でもゆったりと入れる。これなら混浴も、し放題ではないか。
特別室は素泊まりで1泊金貨3枚。豪勢な部屋食付きは、ひとり大銀貨3枚なので8人で金貨2枚と大銀貨4枚。つまり1泊金貨5枚と大銀貨4枚だ。
「お客様、8名様の10連泊なので、端数は切って、1泊金貨5枚でよろしゅうございますよ。」なんと、気風の言い女将ではないか。
どうせ、ガノラッパ一家から巻き上げた臨時収入だから、パーッと使っちまおう。
「女将、決めた。ここがいい。」と言って、10泊分の大金貨5枚を女将に渡した。
「え?前金でよろしいんですか?」
「もちろん。どうせ支払うんだし、随分負けてもらったからな。」値引きは、1泊当たり大銀貨4枚だから、10連泊で金貨4枚だ。
「ありがとうございますっ!」
早速特別室に入り、嫁たちと混浴を堪能したのは言うまでもない。
マザの湯の源泉掛け流しだけあって、白濁の硫黄臭プンプンであった。しかーし、白濁湯は肩まで浸かると、嫁たち7人分の頂、14花が見えなくなってしまうのだ。大泣
俺が嘆き悲しむと、心優しい嫁たちは、肩までは浸からず、頂のお花がスレスレで見えるようにしてくれた。素晴らしい心遣いだ。それに、女性の入浴姿は、湯から肩を出している方が断然色っぽい。
その後、順に頂マッサージしたのは言うまでもなかろう。
風呂から上がった俺は、特別室の居間で嫁たちとゆったり寛ぐ。居間から見える庭も、正面の山を見事に借景として取り入れており、実に素晴らしい。
その山では、あちこちから白い湯気が吹き出している。硫黄泉が自噴しているのだ。そのせいで、山には植物が育たないのだろう。山肌はむき出してある。
嫁たちとイチャイチャしながら、贅沢な夕方を過ごしたのであった。
徐々に日は暮れて行き、辺りには夜の帳が降りて来た。
「さて、それじゃあ、シノベどのの都合を聞いてもらうかな。」
俺は特別室の縁側に出て忍笛を吹いた。すると間もなく、すすーっとくノ一が現れた。黒装束で頭巾を被っているが、背格好と身のこなし、そして体のラインからシノブどのと分かる。
「シノブどのか?」
「はい。」
「シノベどのに会いたい。シノベどののご都合を聞いて来て欲しい。」
「はっ。」
「それとこれを。」俺は大金貨3枚を差し出した。ガノラッパ一家から巻き上げた10枚のうちの3枚だ。
「これはどういうことでござりまするか?」
「シノブどのが急ぎ知らせてくれた情報で、ガノラッパ一家の機先を制することができ、ガノラッパ一家から詫び金をせしめることができた。これはその一部。シノベ衆の取り分として遣わす。」
「かように過分なご褒美を頂いてもよろしいのでござりましょうか?」
「もちろんだとも。この臨時収入はな、影の警護に励み、いち早く貴重な情報を入れてくれたシノベ衆のお陰で手に入ったのだ。シノベ衆の働きに対する、正当な分け前だよ。今後も、重要な情報にはこまめに知らせてくれ。」
「承知しました。なんとも、過分なご褒美を頂戴し、誠にありがとうござりまする。お頭様にお伝え致しまする。」
「ああ、頼む。」すすーっと気配が消えた。
それから夕餉になった。特別室の部屋食だけあって、非常に豪勢だ。しかしこれが10日も続くと飽きるかもしれんな。などと贅沢なことを考えつつ、皆と夕餉を楽しんだ。
夕餉の後は再び嫁たちと混浴タイムである。部屋付きの風呂と言うのは、実に便利でいい。夜の露天風呂で14花を愛で、湯を満喫したのであった。
そして、ガノラッパ一家との諍いで、昨日のむふふタイムが中止になってしまったので、今宵はサジ姉とのリベンジである。特別室内のむふふ部屋にサジ姉を連れ込んで昨日の続きだ。
昨日、お預けを食った分、サジ姉も大いに乗り気で、その夜はサジ姉とたっぷり楽しんだのであった。
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設定を更新しました。R4/11/27
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
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カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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