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射手の統領147 殲滅、ガノラッパ一家
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射手の統領
Zu-Y
№147 殲滅、ガノラッパ一家
翌朝、二日酔もなく、いい塩梅で目覚めた。ぐっすり眠れたのは濁り酒のお陰かな?
朝餉は、この辺りが蕎麦の産地なので当然蕎麦。この辺りの蕎麦は、挽きぐるみと言う蕎麦粉を使う。挽きぐるみとはいわゆる全粒粉で、蕎麦の香りと旨味が強く出る。
それと昨日の夕餉でも出たが、漬物はノシャワ菜である。
途中の軽食用に、蕎麦粉と小麦粉でこねた生地に、あんとして中にノシャワ菜や、野菜のみじん切りを入れて焼いたおやきを購入した。
蕎麦もノシャワ菜もおやきも、この辺り一帯のナノシ地方の郷土料理である。
モロッコを出発し、弓手側前方にアシャマの山を見ながら、アシャマの山の山裾を東へと進む。今日の行程は、アシャマの山の南西の裾野のモロッコから、南、南東の山裾を回り込んで、東の山峡を北に向かって越える。そしてアシャマの山を左後ろに背負いながら、北へと進んでガノラッパの町だ。
道端の樹々は新緑、初夏の装いを纏っている。枝葉の間を緩やかに抜けて来る風は、清々しく心地よい。日差しはすっかり初夏のもので、夏のじりじりした日差しとは一線を画する、ポカポカした心地よいものだ。
「あー、長閑だなー。」メイン車両屋上の見張所で、ついつい気が緩んで、伸びをくれてしまった。
「アタル兄、油断したらあかんえ。」「せや、いつ敵が来るか分からへんよ。」
「さーせん。」素直に謝る俺。でもなー、道中、ずーっと警戒を続けているキョウちゃんズには悪いとは思うが、正直、気が緩むわ。なんか獲物でも出て来ないかな?ま、こう言うときに限って出ないのだけれどもね。
モロッコの東、アシャマの山の南東の裾野のサワイルカの村で、進路を北に変え、アシャマの山の東側の山峡に向かった。
峠を越え、峠を下り切ったところで昼休憩。アシャマの山は弓手側の真横から後方になっていた。
「なぁ、午後は俺に御者をやらしてくれよ。もう、暇でさー。」
「それでもよいが、戦闘指揮所が暇なのはいいことではないか。」
「そうなんだけどさー。」
「じゃぁ、たまには私がぁ、上に行くわぁ。」
馬の扱いに長けている騎士のタヅナは、難路では御者、それ以外は御者の横でサポートをしているので、御者台にほぼ固定だ。
「もう、アタルったら。キョウちゃんズやアキナは、警戒で息を抜けないって言うのに。ね、サジ。」
こくり。「アタル…、弛んでる…。」
「さーせん。」
謝りつつも、午後は御者をさせてもらったのだった。
昼休憩の場所から、ひたすら北に進むと、夕方にはガノラッパの町に到着した。
ギルドの前で移動店舗を開かせてもらい、売れ行きもそこそこだったが、そんな中で性質の悪いふたり組の客が絡んで来た。いわゆる冷やかしである。
「いらっしゃいませー。」とアキナが愛想よく声を掛けると、
「おお、この行商の店員は、女ばっかりじゃねぇか。」
「そうだな。しかも別嬪揃いだぜ。」
ちなみに俺は、売り子としての才がないので、品出し専門である。このときも、北斗号のサブ車両と店舗裏を往復していて、店舗前にはいなかった。しかし、トラブルの一部始終は、店舗裏から見ていたのだ。
「よう、姉ちゃん。女物の下着はあるかい?」
「申し訳ありません。あいにく取り扱いはございません。」
「あんたが今、穿いてるのでいいぜ。」
「ご冗談を。」
「冗談じゃねぇよ。銀貨3枚でどうだ?」
「うわー、おっちゃん、まじでキモいやん。」
「ホンマや。頭、湧いとんのとちゃう?」
「「なんだと?」」キョウちゃんズの反撃に凄むふたり組。しかし次の瞬間…、
「それまでよ。」居合抜きをしたサヤ姉の雷神の太刀の切っ先が、ひとりの男の鼻の頭の先にピタリ止まった。
同時にホサキが、如意の槍の穂先をもうひとりの男の喉元に突き付けた。
ふたりはそのまま後退って尻もちをついた。
「情けない…。」蔑むような眼を向けつつ、サジ姉から放たれたひと言は、確実にふたりの心を抉ったな。苦笑
「客に向かって何しやがる。」
「そうだ。お客様は神様だろうがっ!」
「買いもせずに冷やかすだけでしたら、営業の邪魔です。そんなあなたたちはお客様ではありません。」
「あなたたちにぃ、売る商品はぁ、置いてないわぁ。お引き取りぃ、下さいねぇ。」
「「覚えてるよっ」」そう言って、この場から逃げるように立ち去るふたり組。
「うわ、捨て台詞まで三下やん。」「下っ端なの、モロ分かりやん。」
「なぁ、店員さんたち。あいつら、この辺りを仕切ってるガノラッパ一家と言うやくざの若いもんだよ。一番下っ端のチンピラだけどな。仕返しに来るかもしれないから気を付けなよ。」
「ご心配、ありがとうございます。もし来ても返討ちにするので大丈夫です。」アキナがにこやかに言い切った。うーん、男前じゃん!
この調子なものだから、俺の出番はと言うと、まったくないのであった。
日が暮れたので移動店舗を終い、山髙屋ガノラッパ支店に北斗号を預けて、近くの宿屋に入った。
大浴場にゆっくり浸かりつつ、女湯から聞こえて来る嫁たちの楽しそうな声が羨ましく、混じりたいと切に願う俺なのだった。
風呂から上がり、さっぱりして嫁たちと夕餉の卓を囲んだ。俺は、モロッコですっかりはまったどぶろくを注文しようとしたのだが、サジ姉に止められた。
「アタル…、今日は…、ダメ…。」
「えー?」
するとサジ姉が耳元でこそっと、
「夜に…、響く…。」ですねー、ですよねー。今夜はサジ姉でした。単純な俺は、どぶろくを我慢して夜に備えたのだった。むふふのふ。
さて、いよいよ夜である。サジ姉と床入りなのだ。むふふ。今宵はどうやって攻めてやろうか?
肩を抱いて、しな垂れて来るサジ姉のおとがいを指でくいっと上げ、かわいい唇を吸い、もう一方の手を小振りな双丘に這わせた正にそのとき…。
コンコン、コンコン。え?誰か来た?
「アタル…、誰か来た…。」だな。
「誰?」外に声を掛けてみる。
「主様、緊急事態でござりまする。」
「あ、シノブどのか?どうした?」シノブどのは、ユノベが雇っている忍者集団シノベ衆において、ユノベ専属部隊のまとめ役をしている。先頃、先代のまとめ役からユノベ専属部隊のまとめ役を引き継いだ。俺と同い年なのに、すでに上忍で、ユノベ専属部隊の指揮を任されるのだから、非常に優秀なくノ一だ。
ちなみに、頭巾を被っているので素顔は見たことがないが、頭巾から唯一見える眼は涼やかで、可憐な印象だ。相当な美少女ではないかとひそかに期待している。
話は逸れたが、各地に散在する忍者集団は、東のシノベ衆と西のエノベ衆に分かれている。この旅の目的地である秘境温泉街マザは、シノベ衆の本拠地である。
シノベ衆は、影の護衛やら、諜報活動やら工作活動やらを担ってくれている。西では、盟友シエンがオミョシ分家を相続後、実権を掌握するのに、西のエノベ衆とともに、裏で大活躍してくれた。
「やくざ者が夕方のことを根に持って、仕掛けて来る様でござりまする。総勢15人。10分後には到着すると思われるまする。」おお、ありがたい情報だ。遠巻きに警護しててくれたんだな。
「シノブどの、注進大儀。引き続き警戒を頼む。」
「はっ。」ススーっと、シノブどのの気配が消えた。
ちくちょう!やくざ者め!サジ姉とのむふふタイムを邪魔しやがって。ぶちのめしてやるっ!
「サジ姉、皆に伝えろ。戦闘準備。迎え撃つ。」
「りょ。」サジ姉が、皆の泊まる女子部屋に行った。
俺は装備を着込んだ。鏑シャツ、射手の軽鎧、疾風の靴、鎖鉢金、正射の弽の順に装着し、濃紺の外套を羽織る。各種の矢が入った戻りの箙を背負って、最後に操龍弓を手に取った。
宿屋の主人に事情を話し、宿屋に被害が及ばないように玄関先に陣取ると、装備を付けた嫁たちも次々と出て来た。迎撃態勢が整った。
しばらくすると肩を怒らせながら、チンピラ歩きをして来る集団が宿屋の前にやって来た。どうしてここの宿屋って分かったのかな?夕方、馬鹿ふたりを追っ払った後に、後をつけて来てたんだろうか?
「剣術の姉ちゃんはいるかい?」
「私かしら?」サヤ姉が余裕で対応した。
「おう、おめえだ。さっきはよくも舐めた真似してくれたな。こっちも剣術の腕前が飛び切りの先生を連れて来たぜ。
先生、お願いしやす。」
「ああ。」と言って出て来た用心棒のような男。着流しのみで袴をつけず、いかにも用心棒って出で立ちだが、サヤ姉を見ると、目を見開いてぶるぶると震え出した。
「先生?どうしたんで?」やくざ者が訝し気に用心棒の様子を見るが…。
「まさか…、姫様で?」
「?」サヤ姉が首を傾げている。
「サヤ姉、このリアクション、ひょっとしてトコザの元門弟とかじゃねぇの?
なぁ、あんた。トコザにいたのか?」
「い、いかにも。」
「悪いけど、見覚えがないわ。ってことは大した腕じゃないのよね?免許はどこまで取ったのよ。」
「初目録です。」
「はぁ?初目録って、部屋住みじゃないの。それで用心棒とかってないわ。まさかトノベを名乗ってないでしょうね?」
「…。」あ、眼を逸らした。名乗ってやがったな。
「トノベを名乗っていいのは中目録以上よ。知ってるわよね?」明らかにイラついてるサヤ姉。
「…。」用心棒は冷や汗を掻いている。こいつ、やっちまったな。
「ふざけるな。先生はお強いんだぞ。俺たちにも剣術指南をして下さってるんだ。」
「初目録が剣術指南ですって?あなたたち、程度が知れるわね。」サヤ姉が殺気を放つと、やくざ者たちが、後退った。あー、すでに勝負ありだわ。やくざども、サヤ姉に飲まれてやがる。
残像を残す程の速さで、サヤ姉が用心棒との間合いを一気に詰め、眼にも止まらぬ早業で用心棒にひと太刀浴びせた。そのまま無言で崩れ落ちる用心棒。
「峰打ちよ。」うわーこの台詞、サヤ姉、まじカッケー!惚れ直すわ。笑
15人のやくざ者が完全にサヤ姉の威圧に飲まれ、声も出ない。ってか、こいつら、弱過ぎねぇか?身の程を知れと。
あ、そうだ。こいつらのせいでサジ姉とのむふふタイムが邪魔されたんだっけ。マジ許せんな。ケジメをつけさせよう。
「おい、お前。食客の用心棒を連れて、仲間と一緒に来たってことは、お前の組の上の者も承知してるってことだよな。」
「え?あ、いや。」
「どっちなんだよ?」
「…。」
「だんまりか?組の事務所に案内せいや。上の者と話を付けるからよ。」
結局、全員の身ぐるみ剥いで、下帯一枚にして、親分宅兼組事務所の屋敷に押し掛けた。随分立派な屋敷だ。正門には「任侠ガノラッパ一家」と看板が出ている。
正門で用件を告げたら門番が突っ掛かって来たのだが、ホサキが槍をぶん回して門番のひとりを打ち据えると、残りの門番どもは押し黙った。
「5分で親分を連れて来い。5分で来なけりゃ、きっちり催促するからな。」
ひとりが屋敷内に走って行ったが…。
5分経った。でも誰も来ない。
「ライ、3倍。」
『応。』
屋敷に向かって催促の3倍雷撃矢を射込むと、落雷の直撃を受けたの如く、屋敷の一画が崩れ落ちた。
横にいた門番のもうひとりが、血相を変えて屋敷内に走って行った。
5分経った。
「ウズ、3倍。」
『応。』
屋敷に二の矢を射込む。3倍水撃矢だ。着弾と同時に激流を起こして屋敷のさらに一部を押し流し、屋敷はさらに崩れた。もはや半壊である。
何人かがぞろぞろ出て来て、その中心にいた男が吠えた。
「てめぇ、なにしやがった?」こいつが親分?多分違うだろ。貫禄が足りない。でも一応聞いてみる。
「お前が親分か?」
「若頭だ。」なるほど、やっぱり親分じゃないって訳か。
「下っ端に用はない。親分を呼んで来い。」まぁ若頭って言ったら下っ端じゃなくて幹部だけど、言葉の勢いってやつだ。笑
俺がそう言うと取り巻きがいきり立ったが、サジ姉が麻痺の術を放って取り巻き全員を昏倒させた。
唖然として立ち尽くす若頭。
5分経った。
「シン、3倍。」
『応。』
「おい、お前、早く親分を呼んで来い。呼んで来るまで催促を続けるぞ。」と言って射放った3倍震撃矢は、着弾とともに地震を起こし、まだ残っていた部分を揺り崩し、これで屋敷の大半が倒壊した。
血相を変えて転びながら、無様な姿になった屋敷に駆け戻って行く組頭。組頭があれじゃあな、この組もたかが知れてるな。
5分経った。
「レイ、3倍。」
『応。』
「待ってくれー。」さっきの組頭が、また何人か連れて来たが、待たねぇよ。
屋敷の残っていた最後の一画が、3倍氷撃矢で真っ白に凍り付いた。中に人がいたら凍ってるかもな。
30分後…。
親分宅兼組事務所の屋敷の玄関先に、親分以下、50人近い男たちが、全員土下座している。
今回のごたごたの経緯を確認しているところだ。
「この度は子分どもが飛んだ不始末をしでかしまして、誠に申し訳ございませんでした。」親分が詫びを入れた。
「カチコミを掛けて来たのはそっちだ。子分どもの暴走ではなく、組が認めて用心棒も付けたのだから、今回は俺たちセプトとガノラッパ一家の出入りだ。そしてお前らガノラッパ一家は逆襲されて降伏した。この認識で間違いないな?」
「間違いございません。」
「この落とし前はどう付けてくれるんだ?」
「申し訳ありませんでした。何なりとお申し付けください。」
「ほう、潔いな。よし。手打ちの条件だ。全員頭を丸めろ。それと白金貨1枚だ。」
「白金貨1枚…。」真っ青になる親分。
「親分さんよ、あんたの命の代金だ。白金貨1枚じゃ安いか?」
「め、滅相もございません。」
「明日の朝までに、宿屋へ耳を揃えて持って来い。用意できなきゃ、親分さんよ、あんた、どうなるか分かってるよな。それと、こちらはシノベを雇っているからな、逃げても無駄だぞ。」
あ、親分の口から白いもやもやが…。魂か?魂なのか?
宿に戻った俺たちは大浴場に浸かって、抗争の汚れを落とした。
風呂から上がるとすでに深夜の日が変わる直前。流石にサジ姉とのむふふタイムを再開という訳には行かず、そのままゆっくりと床に就いたのだった。ちくしょう、あいつらめ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/27
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№147 殲滅、ガノラッパ一家
翌朝、二日酔もなく、いい塩梅で目覚めた。ぐっすり眠れたのは濁り酒のお陰かな?
朝餉は、この辺りが蕎麦の産地なので当然蕎麦。この辺りの蕎麦は、挽きぐるみと言う蕎麦粉を使う。挽きぐるみとはいわゆる全粒粉で、蕎麦の香りと旨味が強く出る。
それと昨日の夕餉でも出たが、漬物はノシャワ菜である。
途中の軽食用に、蕎麦粉と小麦粉でこねた生地に、あんとして中にノシャワ菜や、野菜のみじん切りを入れて焼いたおやきを購入した。
蕎麦もノシャワ菜もおやきも、この辺り一帯のナノシ地方の郷土料理である。
モロッコを出発し、弓手側前方にアシャマの山を見ながら、アシャマの山の山裾を東へと進む。今日の行程は、アシャマの山の南西の裾野のモロッコから、南、南東の山裾を回り込んで、東の山峡を北に向かって越える。そしてアシャマの山を左後ろに背負いながら、北へと進んでガノラッパの町だ。
道端の樹々は新緑、初夏の装いを纏っている。枝葉の間を緩やかに抜けて来る風は、清々しく心地よい。日差しはすっかり初夏のもので、夏のじりじりした日差しとは一線を画する、ポカポカした心地よいものだ。
「あー、長閑だなー。」メイン車両屋上の見張所で、ついつい気が緩んで、伸びをくれてしまった。
「アタル兄、油断したらあかんえ。」「せや、いつ敵が来るか分からへんよ。」
「さーせん。」素直に謝る俺。でもなー、道中、ずーっと警戒を続けているキョウちゃんズには悪いとは思うが、正直、気が緩むわ。なんか獲物でも出て来ないかな?ま、こう言うときに限って出ないのだけれどもね。
モロッコの東、アシャマの山の南東の裾野のサワイルカの村で、進路を北に変え、アシャマの山の東側の山峡に向かった。
峠を越え、峠を下り切ったところで昼休憩。アシャマの山は弓手側の真横から後方になっていた。
「なぁ、午後は俺に御者をやらしてくれよ。もう、暇でさー。」
「それでもよいが、戦闘指揮所が暇なのはいいことではないか。」
「そうなんだけどさー。」
「じゃぁ、たまには私がぁ、上に行くわぁ。」
馬の扱いに長けている騎士のタヅナは、難路では御者、それ以外は御者の横でサポートをしているので、御者台にほぼ固定だ。
「もう、アタルったら。キョウちゃんズやアキナは、警戒で息を抜けないって言うのに。ね、サジ。」
こくり。「アタル…、弛んでる…。」
「さーせん。」
謝りつつも、午後は御者をさせてもらったのだった。
昼休憩の場所から、ひたすら北に進むと、夕方にはガノラッパの町に到着した。
ギルドの前で移動店舗を開かせてもらい、売れ行きもそこそこだったが、そんな中で性質の悪いふたり組の客が絡んで来た。いわゆる冷やかしである。
「いらっしゃいませー。」とアキナが愛想よく声を掛けると、
「おお、この行商の店員は、女ばっかりじゃねぇか。」
「そうだな。しかも別嬪揃いだぜ。」
ちなみに俺は、売り子としての才がないので、品出し専門である。このときも、北斗号のサブ車両と店舗裏を往復していて、店舗前にはいなかった。しかし、トラブルの一部始終は、店舗裏から見ていたのだ。
「よう、姉ちゃん。女物の下着はあるかい?」
「申し訳ありません。あいにく取り扱いはございません。」
「あんたが今、穿いてるのでいいぜ。」
「ご冗談を。」
「冗談じゃねぇよ。銀貨3枚でどうだ?」
「うわー、おっちゃん、まじでキモいやん。」
「ホンマや。頭、湧いとんのとちゃう?」
「「なんだと?」」キョウちゃんズの反撃に凄むふたり組。しかし次の瞬間…、
「それまでよ。」居合抜きをしたサヤ姉の雷神の太刀の切っ先が、ひとりの男の鼻の頭の先にピタリ止まった。
同時にホサキが、如意の槍の穂先をもうひとりの男の喉元に突き付けた。
ふたりはそのまま後退って尻もちをついた。
「情けない…。」蔑むような眼を向けつつ、サジ姉から放たれたひと言は、確実にふたりの心を抉ったな。苦笑
「客に向かって何しやがる。」
「そうだ。お客様は神様だろうがっ!」
「買いもせずに冷やかすだけでしたら、営業の邪魔です。そんなあなたたちはお客様ではありません。」
「あなたたちにぃ、売る商品はぁ、置いてないわぁ。お引き取りぃ、下さいねぇ。」
「「覚えてるよっ」」そう言って、この場から逃げるように立ち去るふたり組。
「うわ、捨て台詞まで三下やん。」「下っ端なの、モロ分かりやん。」
「なぁ、店員さんたち。あいつら、この辺りを仕切ってるガノラッパ一家と言うやくざの若いもんだよ。一番下っ端のチンピラだけどな。仕返しに来るかもしれないから気を付けなよ。」
「ご心配、ありがとうございます。もし来ても返討ちにするので大丈夫です。」アキナがにこやかに言い切った。うーん、男前じゃん!
この調子なものだから、俺の出番はと言うと、まったくないのであった。
日が暮れたので移動店舗を終い、山髙屋ガノラッパ支店に北斗号を預けて、近くの宿屋に入った。
大浴場にゆっくり浸かりつつ、女湯から聞こえて来る嫁たちの楽しそうな声が羨ましく、混じりたいと切に願う俺なのだった。
風呂から上がり、さっぱりして嫁たちと夕餉の卓を囲んだ。俺は、モロッコですっかりはまったどぶろくを注文しようとしたのだが、サジ姉に止められた。
「アタル…、今日は…、ダメ…。」
「えー?」
するとサジ姉が耳元でこそっと、
「夜に…、響く…。」ですねー、ですよねー。今夜はサジ姉でした。単純な俺は、どぶろくを我慢して夜に備えたのだった。むふふのふ。
さて、いよいよ夜である。サジ姉と床入りなのだ。むふふ。今宵はどうやって攻めてやろうか?
肩を抱いて、しな垂れて来るサジ姉のおとがいを指でくいっと上げ、かわいい唇を吸い、もう一方の手を小振りな双丘に這わせた正にそのとき…。
コンコン、コンコン。え?誰か来た?
「アタル…、誰か来た…。」だな。
「誰?」外に声を掛けてみる。
「主様、緊急事態でござりまする。」
「あ、シノブどのか?どうした?」シノブどのは、ユノベが雇っている忍者集団シノベ衆において、ユノベ専属部隊のまとめ役をしている。先頃、先代のまとめ役からユノベ専属部隊のまとめ役を引き継いだ。俺と同い年なのに、すでに上忍で、ユノベ専属部隊の指揮を任されるのだから、非常に優秀なくノ一だ。
ちなみに、頭巾を被っているので素顔は見たことがないが、頭巾から唯一見える眼は涼やかで、可憐な印象だ。相当な美少女ではないかとひそかに期待している。
話は逸れたが、各地に散在する忍者集団は、東のシノベ衆と西のエノベ衆に分かれている。この旅の目的地である秘境温泉街マザは、シノベ衆の本拠地である。
シノベ衆は、影の護衛やら、諜報活動やら工作活動やらを担ってくれている。西では、盟友シエンがオミョシ分家を相続後、実権を掌握するのに、西のエノベ衆とともに、裏で大活躍してくれた。
「やくざ者が夕方のことを根に持って、仕掛けて来る様でござりまする。総勢15人。10分後には到着すると思われるまする。」おお、ありがたい情報だ。遠巻きに警護しててくれたんだな。
「シノブどの、注進大儀。引き続き警戒を頼む。」
「はっ。」ススーっと、シノブどのの気配が消えた。
ちくちょう!やくざ者め!サジ姉とのむふふタイムを邪魔しやがって。ぶちのめしてやるっ!
「サジ姉、皆に伝えろ。戦闘準備。迎え撃つ。」
「りょ。」サジ姉が、皆の泊まる女子部屋に行った。
俺は装備を着込んだ。鏑シャツ、射手の軽鎧、疾風の靴、鎖鉢金、正射の弽の順に装着し、濃紺の外套を羽織る。各種の矢が入った戻りの箙を背負って、最後に操龍弓を手に取った。
宿屋の主人に事情を話し、宿屋に被害が及ばないように玄関先に陣取ると、装備を付けた嫁たちも次々と出て来た。迎撃態勢が整った。
しばらくすると肩を怒らせながら、チンピラ歩きをして来る集団が宿屋の前にやって来た。どうしてここの宿屋って分かったのかな?夕方、馬鹿ふたりを追っ払った後に、後をつけて来てたんだろうか?
「剣術の姉ちゃんはいるかい?」
「私かしら?」サヤ姉が余裕で対応した。
「おう、おめえだ。さっきはよくも舐めた真似してくれたな。こっちも剣術の腕前が飛び切りの先生を連れて来たぜ。
先生、お願いしやす。」
「ああ。」と言って出て来た用心棒のような男。着流しのみで袴をつけず、いかにも用心棒って出で立ちだが、サヤ姉を見ると、目を見開いてぶるぶると震え出した。
「先生?どうしたんで?」やくざ者が訝し気に用心棒の様子を見るが…。
「まさか…、姫様で?」
「?」サヤ姉が首を傾げている。
「サヤ姉、このリアクション、ひょっとしてトコザの元門弟とかじゃねぇの?
なぁ、あんた。トコザにいたのか?」
「い、いかにも。」
「悪いけど、見覚えがないわ。ってことは大した腕じゃないのよね?免許はどこまで取ったのよ。」
「初目録です。」
「はぁ?初目録って、部屋住みじゃないの。それで用心棒とかってないわ。まさかトノベを名乗ってないでしょうね?」
「…。」あ、眼を逸らした。名乗ってやがったな。
「トノベを名乗っていいのは中目録以上よ。知ってるわよね?」明らかにイラついてるサヤ姉。
「…。」用心棒は冷や汗を掻いている。こいつ、やっちまったな。
「ふざけるな。先生はお強いんだぞ。俺たちにも剣術指南をして下さってるんだ。」
「初目録が剣術指南ですって?あなたたち、程度が知れるわね。」サヤ姉が殺気を放つと、やくざ者たちが、後退った。あー、すでに勝負ありだわ。やくざども、サヤ姉に飲まれてやがる。
残像を残す程の速さで、サヤ姉が用心棒との間合いを一気に詰め、眼にも止まらぬ早業で用心棒にひと太刀浴びせた。そのまま無言で崩れ落ちる用心棒。
「峰打ちよ。」うわーこの台詞、サヤ姉、まじカッケー!惚れ直すわ。笑
15人のやくざ者が完全にサヤ姉の威圧に飲まれ、声も出ない。ってか、こいつら、弱過ぎねぇか?身の程を知れと。
あ、そうだ。こいつらのせいでサジ姉とのむふふタイムが邪魔されたんだっけ。マジ許せんな。ケジメをつけさせよう。
「おい、お前。食客の用心棒を連れて、仲間と一緒に来たってことは、お前の組の上の者も承知してるってことだよな。」
「え?あ、いや。」
「どっちなんだよ?」
「…。」
「だんまりか?組の事務所に案内せいや。上の者と話を付けるからよ。」
結局、全員の身ぐるみ剥いで、下帯一枚にして、親分宅兼組事務所の屋敷に押し掛けた。随分立派な屋敷だ。正門には「任侠ガノラッパ一家」と看板が出ている。
正門で用件を告げたら門番が突っ掛かって来たのだが、ホサキが槍をぶん回して門番のひとりを打ち据えると、残りの門番どもは押し黙った。
「5分で親分を連れて来い。5分で来なけりゃ、きっちり催促するからな。」
ひとりが屋敷内に走って行ったが…。
5分経った。でも誰も来ない。
「ライ、3倍。」
『応。』
屋敷に向かって催促の3倍雷撃矢を射込むと、落雷の直撃を受けたの如く、屋敷の一画が崩れ落ちた。
横にいた門番のもうひとりが、血相を変えて屋敷内に走って行った。
5分経った。
「ウズ、3倍。」
『応。』
屋敷に二の矢を射込む。3倍水撃矢だ。着弾と同時に激流を起こして屋敷のさらに一部を押し流し、屋敷はさらに崩れた。もはや半壊である。
何人かがぞろぞろ出て来て、その中心にいた男が吠えた。
「てめぇ、なにしやがった?」こいつが親分?多分違うだろ。貫禄が足りない。でも一応聞いてみる。
「お前が親分か?」
「若頭だ。」なるほど、やっぱり親分じゃないって訳か。
「下っ端に用はない。親分を呼んで来い。」まぁ若頭って言ったら下っ端じゃなくて幹部だけど、言葉の勢いってやつだ。笑
俺がそう言うと取り巻きがいきり立ったが、サジ姉が麻痺の術を放って取り巻き全員を昏倒させた。
唖然として立ち尽くす若頭。
5分経った。
「シン、3倍。」
『応。』
「おい、お前、早く親分を呼んで来い。呼んで来るまで催促を続けるぞ。」と言って射放った3倍震撃矢は、着弾とともに地震を起こし、まだ残っていた部分を揺り崩し、これで屋敷の大半が倒壊した。
血相を変えて転びながら、無様な姿になった屋敷に駆け戻って行く組頭。組頭があれじゃあな、この組もたかが知れてるな。
5分経った。
「レイ、3倍。」
『応。』
「待ってくれー。」さっきの組頭が、また何人か連れて来たが、待たねぇよ。
屋敷の残っていた最後の一画が、3倍氷撃矢で真っ白に凍り付いた。中に人がいたら凍ってるかもな。
30分後…。
親分宅兼組事務所の屋敷の玄関先に、親分以下、50人近い男たちが、全員土下座している。
今回のごたごたの経緯を確認しているところだ。
「この度は子分どもが飛んだ不始末をしでかしまして、誠に申し訳ございませんでした。」親分が詫びを入れた。
「カチコミを掛けて来たのはそっちだ。子分どもの暴走ではなく、組が認めて用心棒も付けたのだから、今回は俺たちセプトとガノラッパ一家の出入りだ。そしてお前らガノラッパ一家は逆襲されて降伏した。この認識で間違いないな?」
「間違いございません。」
「この落とし前はどう付けてくれるんだ?」
「申し訳ありませんでした。何なりとお申し付けください。」
「ほう、潔いな。よし。手打ちの条件だ。全員頭を丸めろ。それと白金貨1枚だ。」
「白金貨1枚…。」真っ青になる親分。
「親分さんよ、あんたの命の代金だ。白金貨1枚じゃ安いか?」
「め、滅相もございません。」
「明日の朝までに、宿屋へ耳を揃えて持って来い。用意できなきゃ、親分さんよ、あんた、どうなるか分かってるよな。それと、こちらはシノベを雇っているからな、逃げても無駄だぞ。」
あ、親分の口から白いもやもやが…。魂か?魂なのか?
宿に戻った俺たちは大浴場に浸かって、抗争の汚れを落とした。
風呂から上がるとすでに深夜の日が変わる直前。流石にサジ姉とのむふふタイムを再開という訳には行かず、そのままゆっくりと床に就いたのだった。ちくしょう、あいつらめ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/27
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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