射手の統領

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射手の統領
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№141 売り切れ

 キョウちゃんズは夕方まで実家のアーカに留まるにことなって、俺は単身西都に飛んだ。
 ギルマスのサンキに挨拶をするためだ。

 受付のチフユに取り次いでもらって、ギルマスルームでサンキとサシで対面している。
 いろいろ話してるうちに、話題がシエンのことになった。
「で、じっくり話してシエンはどんな印象だったんだ?」
「以前とそう変わりないで。なかなか尻尾を出さへんのや。」
「ふうん。でもな、その裏ではまた大きな絵を描いてるぜ。」
「ほう、何しよるつもりなんや?」
「まあ、見てのお楽しみだな。」
「なんや、随分勿体付けるやないか。」
「そりゃ言えねぇよ。まだ仕掛ける前だからな。」
「ヒントぐらい寄越さんかい。」
「シエンは西には収まらない器量の持ち主だと言うことだな。」

「ちゅーことは東かいな?東、言うんやったら、本家を相手にする気やな。
 …!そうか、オミョシ本家勢の大将は分家の隠居やったが、忽然と姿を消しよった。あれはシエンの仕業やな。」
「その話ならその通りだが、すでに終わったことだぜ。」
「せやな。それにしても見事な手際やった。あれにはエノベが絡んどるやろ?シエンは、隠居から引き抜いたエノベを、もう完全に掌握しよったようやな。」
「掌握した程度の話じゃねぇぜ。」
「なんや、エノベとこっそり同盟でも結ぶんかいな。」
 扇子を半開きにして、口元に当て、ホホホと笑う。出た。サンキお得意のお公家笑い。てか、シエンとエノベの同盟を信じてないな。
「ま、そんなとこかもな。」

「で、話は戻すがな、隠居の拉致は『すでに終わったことや。』言うたな。せやったら、まだ別のことを本家に仕掛けるんかい?」
「どうだろうな?」
「ちっ、口の堅い男やな。まあええわ。そのうち分かるやろ。」
「すまんな。盟友は裏切れんのでな。」
「さよか。シエンがどれだけ大きな絵を描くか、楽しみにしといたるわ。」

 このとき余裕で構えていたサンキは、後にオミョシ分家とエノベの電撃的な婚姻同盟発表で度肝を抜かれ、さらにシエンによるオミョシ本家への謀略の内容と、本家を屈服させて臣従させた手腕を知って、大いに驚嘆することになる。それは後日譚。

 サンキとの話を終え、俺はガハマに戻った。
 まだ誰も戻って来ていないので、俺は碧湯でゆったり羽を伸ばした。

 そう言えば、殿下に『働き過ぎだからゆっくり休め。』と言われたな。翠樹龍の攻略もあるが、今、翠樹龍は暴れていないし、確かに慌てなくていいかもしれん。
 うー、温泉が滲みる。やっぱ休暇と言えば温泉だな。しばらくどっかで湯治でもするか。そう言えば、七神龍の攻略がてら、これまでいろいろな温泉に寄ったなぁ。
 コネハ、キサキ、トリト、アワク、ビヒロ、ヨトミ、テッショ、タッテーノ、グナッピ、ビュドヤ、キリシ、ズシミ、イーヤ、ワキャマ。
 三の島では、ブッペ温泉には行けなかったんだっけ。ブッペに行く?いや、遠いし、わざわざ北斗号を運ぶのもな。笑

 ヌーマで北斗号を受け取るんだから、近場のコネハの湯にでも行くか?山髙屋の商隊護衛のときに宿泊したコネハの温泉宿の白濁硫黄泉はとってもよかったからな。
 うん、そうしよう。

「やっぱここやわ。」「せやね。」
 キョウちゃんズが入って来た。って…、
 はっ!すらっと伸びた肢体がとても眩しい。まるでモデル?俺はふたりに見惚れてしまった。
 最近ぐんぐん背が伸びて、いつのまにか大人嫁たちにほとんど追い付いてるし、出会った頃の幼女体型は、今では俺にドストライクのスレンダーな体型に変身を遂げた。まるで芋虫が蝶になるように…。胸もペッタンコから、俺好みの小振りになっている。
 もはや子供ではなく大人…でも、あそこはツルツルで子供か。笑

「アタル兄、今なんか失礼なこと考えたやろ?」
「せや、見惚れてるかと思とったら、悪い顔になりよった。」
と言いながら、ふたりがドボンと湯船に飛び込んで来やがった。もう少し、優雅に入れんものかね。
「ふたりとも、もっと優雅に振舞えよ。美人が台無しじゃん。」
「「え?美人て…。」」赤くなるふたり。かわいい。

 しばらくして、
「やっぱここであったな。」「そうですわね。」「予想通りぃ。」
 ホサキ、アキナ、タヅナも入って来た。やはりスレンダーな体型に見惚れてしまう俺。
 ちゃぽん。3人は優雅な身のこなしで、大きな音を立てずに湯船に入って来た。
「「「ふぅ。」」」色っぺぇー!

「な。」俺がキョウちゃんズに振り返って同意を求めると、
「「うー!」」ふたりは何も言い返せなかった。
 あれ?俺、ふたりをやり込めた?やりぃ。笑

「なあ、殿下から言われたんだけどさ、俺たち働き詰めだから、少し休めって。湯治でもどうかな?」
「「さんせー♪」」温泉好きのキョウちゃんズがハモる。
「ふむ、いいな。明後日にはヌーマで北斗号を受け取るのだろう?ならば、近場のコネハはどうだ?」すかさずホサキが提案した。俺と同じ意見じゃん。
「え、コネハ?」「行ってみたーい。」キョウちゃんズが、ホサキの提案に乗った。
「あそこのぉ、湯の花はぁ、凄かったわねぇ。」
「ですね。コネハに行きましょう。」
 後は別行動のサヤ姉とサジ姉に確認するだけだが、反対はしないだろう。じゃあコネハで決定ってことで。

 今日は順当なら嫁会議の日だが、サヤ姉とサジ姉がいないから、嫁会議は中止だろう。それならば順番を詰めてホサキだな、と思っていたが、なんか嫁会議をやるらしい。ちぇっ。
 まあいい。ひとりでゆっくり寝ようっと。

 翌朝、朝餉を皆で摂りながら、今日の予定の確認だ。
 昨日商都を出航した廻船は、今日はシグに寄港し、明日の昼にヌーマに入港する。
 だから、今日はテンバに飛んで、今日中にヌーマに移動し、ヌーマで流邏石を登録しよう。そのままヌーマに泊まってもいいし、テンバに帰ってもいい。
 出発前に商都に飛んで、専務に挨拶とお礼をし、外国船が入港して来ないのでゴムが調達できず、品薄になりそうだと言っていた避妊具を買い込もう。大体、発売後すぐに品薄って何なんだよ。

 ガハマの衆に見送られて、俺たちは流邏石で商都に飛んだ。
 山髙屋商都西本店では、すぐに店長室に通され、俺たちと一緒に、専務と面会している。
「アタルくん、オミョシ本家勢の大将様のこと、昨日アキナから聞いたわ。ちょっと信じられないんだけど、全部ほんとのことなのよね?」
「ああ。すべてシエンが絵に描いて、シエン付のエノベの精鋭が実行に移した。だから分家勢には完全なアリバイがあるし、疑われてすらいない。」
「ちょっと意外だわ。まだあどけなさすら残っていたと言うのに。正直、権座主様がたまに見せる可愛さには、母性本能をくすぐられてたのよね。」

「ったくショタかよ。専務は。
 でもな、シエンの奴は、近々またやらかすだろうぜ。」
「失礼ね。ショタとは何よ!アタルくんなんかロリコンじゃないの。」
「待て!どこがロリコンだ?」
「サキョウちゃんとウキョウちゃん。ようやく膨らみ掛けた蕾を早々にもぎ取っちゃてさ。」
「いや、蕾じゃないぞ。もう立派な満開の大人だ。出るとこだって、ちゃんと出るしな。」
「年の問題よ。ふたりともまだ未成年じゃない。」
「専務のいけずー。」「うちら、もう大人やでー。」
「はいはい。」おっと専務はキョウちゃんズをさらっと躱した。大人の女性…、と言うか熟女の余裕か。俺はパスだがな。

「ところで権座主様は、何をする気なの?」
「シエンが仕掛ける前には言えないさ。」
「何よ。言えないのなら勿体ぶったことを言わないでよね。」
「まあまあ。ところで、しばらく東に帰るんだが、品薄の避妊具がなくなる前に買って行こうと思ってな。」
「ないわよ。」
「え?」
「思いの外、色街から注文が殺到したのよね。在庫は1ヶ月ぐらいは持つかと思ったんだけど、もう売り切れよ。」
「まじか!じゃあ次はいつできるんだよ。」
「分からないわよ。外国船がいつ着くかよね。」
「嘘だろ?」

「ゴムが入って製品ができても、アタルくんには回さないわよ。」
「なんでだよ!」
「意地悪するからよ。」
「おいおい、俺がいつ意地悪したんだよ。専務には披露目で大手柄を立てさせてやったじゃないか。」
「何よ。たった今、したじゃない。言えないことを勿体ぶってほのめかしたでしょ。ああ言うの、気になるのよね。言えないのなら最初から言わないで。」
「ええ、あんなの別に大したことないだろ?」
「商人はね、情報が命なのよ。情報をちらつかせといて、結局教えてくれないのが一番イライラするわ。覚えときなさい。」ピシャリと言われた。
 アキナの方を見ると頷いている。ちょっとやり過ぎたか?

「それはすまなかったな。詫びにひとついいこと教えてやるよ。殿下が披露目に来たのはついでだ。」
「え?どう言うこと?」
「後は自分で考えろ。じゃあな。」
「アタルくん、ちょっと待ってよ。」待たねーよ。
「避妊具が手に入らないならもう用はない。挨拶はすでに済ませてるしな。次はいつこっちに来るか分からんが、それまで達者でな。」

 俺はさっさと店長室を出た。避妊具が手に入らないなら、へそを曲げた専務のお相手など御免被る。

 商都西本店を出て、そのまま流邏石でテンバに飛んだ。
「じゃあ、俺、ヌーマまで行って来るわ。」
「うちも行くー。」「うちもー。」キョウちゃんズが同行を申し出、ホサキ、アキナ、タヅナもそれに続いた。

 フジの霊峰の東麓のテンバから港町のヌーマまでは、なだらかな下りなので、徒歩ではあるが、すいすい進む。
 道中、大猪3頭と、大鳶2羽を狩った。大猪は、1頭をアキナが遠矢で仕留め、残り2頭が突進して来たところをアキナの正鵠突きとタヅナの旋回切りで屠った。大鳶は余裕こいて輪を描きながら飛んでたところを、キョウちゃんズが陽の術の2系統同時発動で袋叩きにした。
 ヌーマへの行程はとても順調で、昼下がりにはヌーマに着いた。そのまま港に行って、ヌーマの港で流邏石をひとつと、流邏矢の甲矢も登録した。そのまま流邏石でテンバに戻った。

 テンバに戻ると、俺は大広間で三の叔父貴と末の伯父貴にこれまでの経緯を報告した。ふたりの叔父貴が一番食い付いたのは、伯母御ふたりの強制送還だった。
「アタル、お前、何と言うことを…。」
「怒り狂った姉貴たちが乗り込んで来るのではないかの?」
 え?叔父貴たち怯えてるのか?
「別に乗り込んで来たら締め上げるだけだろ。そもそもあのふたりにそんな度胸はないって。てか、トノベどのとヤクシどのが、今度ばかりは流石にお叱りになるんじゃないかな?」
「そうだろうか?姉上たちはトノベでもヤクシでもわが物顔であろ?こう言っては何だが、トノベどのもヤクシどのも尻に敷かれておるゆえな。」
 いやいやいや、叔父貴たちとは違うって。と思ったが、こんなこと口が裂けても言えないな。苦笑

「それにしても二の兄貴は、船旅の最中、姉貴たちに散々やられたんだろうの。可哀想に。」
「ほんにのう。胃に穴が開いてなきゃいいが。」
「だったらさ、二の叔父貴が帰って来たら、三の叔父貴と末の叔父貴で、二の叔父貴の愚痴を聞いてやってくれよ。」
「「お安い御用だ。」」ハモるふたり。せいぜい何時間も愚痴を聞いてろよな!

 叔父貴ふたりとの話を切り上げて俺は白湯に向かった。俺の大好きな白濁硫黄泉だ。フジの霊峰にある源泉からわざわざ引いている。
 嫁たちは誰もいない。きっと今日は赤湯に行っているのだろう。赤湯は含鉄食塩泉で、やはりフジの霊峰にある、別の源泉から引いている。

 夕餉を終え、今夜の輪番は、サヤ姉とサジ姉がいないからホサキ。避妊具が手に入らないので、残り少ない避妊具は温存して、しばらく最後まではなしの、昔スタイル。ホサキと互いに攻め合って、組み合って、イかせ合って…。これはこれでいいではないか。

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設定を更新しました。R4/11/13

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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