射手の統領

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射手の統領127 クジラ騒動と南の島の金剛鏑

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射手の統領
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№127 クジラ騒動と南の島の金剛鏑

 翌朝、朝餉を摂って、キノベ陸運チーコ営業所で北斗号を受け取りに行くつもりだったんだが、いよいよ出発と言うときになって、なんだか外が妙に騒がしくなっている。
「おい、亭主。何の騒ぎだ?」
「お客人、浜にこじゃんとでっけぇクジラが上ったち、大騒ぎじゃき。」
「え?そんなことあるのか?」
「ないぜよ。じゃから大騒ぎなんじゃき。」
「行ってみる?」俺の問い掛けに、嫁たち全員が頷いた。

 チーコの名勝、カッツラ浜に出向いてみると、確かにでっかいクジラが打ち上げられていた。人集りも凄い。
 チーコの衛兵が多数集まっており、人集りを整理しつつ、カッツラ浜に打ち上げられたクジラを検分している。まわりの野次馬に聞くと、何でもついさっきまでクジラは弱々しくも動いてたそうだが、今は動いていない。

「アタルぅ、あれ見てぇ。」タヅナが最初に気付いたのだが…、あれって俺が放った矢じゃね?他の嫁たちも驚いている。
「アタル、あそこにも刺さってるぞ。あ、あっちにも。これはいったいどう言うことなのだ?」ホサキも別の矢を2本見付けて尋ねて来たのだが…、
「ひょっとしてあれかな?昨日、雷撃矢で追い払ったクジラ…なのかな?」確かに昨日遭遇したクジラには5倍雷撃矢を3本射込んだ。
「瀕死の重傷を負ってて、ここまで辿り着いたんでしょうか?」と、アキナに聞かれてもなぁ。俺にも何とも分からんよ。まぁでも俺の矢なら印は刻んであるけどな。
 武門の常識として、手柄を示すために、矢に己の印を刻んでいる。誰が仕留めたか、一目瞭然とするためだ。己が射た矢で権利を主張するのだから、もちろん責任も伴う。誤射をしたり、みっともないヘロヘロ矢を射たならば、権利を主張するどころか、自ら恥を晒すことにもなるのだ。

 矢に気付いた衛兵が、矢を抜こうとしているが、矢尻には返しもあるし、深々と刺さっているのでなかなか抜けない。
 数人掛りでしばらく奮闘して、ようやく矢を抜いた。どれ、俺の矢か確認に行ってみよう。
「おーい、俺はセプトのアタルだ。その矢を確認させてくれ。」俺の印は、「中」のひと文字だ。ユノベ・アタルは、弓部中と書くのでな。ちなみに、嫁たちの名の漢字表記は、刀部鞘、薬師匙、盾部穂先、陰陽師佐京、陰陽師佑京、山髙屋商、騎部手綱、である。
 訝しげな顔をする衛兵たちに割って入って確認すると、正しく俺の矢だった。戻りの箙から1本、俺の矢を抜き出して衛兵に見せると、訝しげな表情は、一瞬にして驚愕と尊敬の眼差しに変わった。

「おまん、いつこいつを仕留めたぜよ?」
「和南西航路の廻船でチーコに入港する前にな、こいつが廻船に近付いて来たんで追っ払うのに使った。逃げられたから仕留めた訳ではない。」
「そげん言うても、こうしてクジラば打ち上げられちょるきに、仕留めたようなもんぜよ。」
「うーん、仕留めたってより、ダメージが大きくて力尽きたってのがほんとのところだろうな。」
「じゃけん、他には何も外傷がないきに。刺さっとったんは、おまんのたった3本の矢だけぜよ。そんでもよ、たった3本でクジラば仕留めちょるんが、解せんちや。」
「それなら矢に雷を纏わせてたからだな。」
「「「「「へ?」」」」」衛兵たちが一斉に素頓狂な声を上げた。

 乗り掛かった舟だし、成り行きで、衛兵隊と大勢の野次馬の前で、俺は雷撃矢を披露する羽目になってしまった。
 3倍雷撃矢を、カッツラ浜からチーコ湾の沖に向かって放った。海面への着弾と同時にバリバリバリと落雷音が鳴り響いく。おお~、と言う歓声があちこちから上がった。
 野次馬たちの拍手喝采に、すっかり気をよくした俺は、調子に乗って他の属性矢も披露しようとしたのだが、嫁たちに止められた。曰く「あまり目立つなと。」まぁ、そうだわな。…反省。

 で、結局、この日はチーコに足止めになった。
 衛兵詰所でクジラと戦ったときの状況をいろいろ聞かれたのだ。ギルドの職員も動員され、和南西航路の廻船の船長や船員も対象の大掛かりな聞き取り調査となったのだが、船長以下、多くの船員が証人になってくれた。
 ところで、なんで和南西航路の廻船が、昨日のうちに出航せずに、ひと晩チーコに留まっていたかと言うと、このクジラの動向を警戒してのことだった。俺が下船したから、再び遭遇したら危険だと判断して様子見をしたそうだ。

 クジラは肉から骨から髭から油から、すべて何かしらに使える。これだけ大きいととれる量は半端ない。
 そして腸内から龍涎香も取れた。龍涎香はマッコウクジラの腸からしか取れない天然の香料で、非常に貴重品なのだそうだ。そもそもマッコウクジラの名の由来は、龍涎香の香りが抹香の香りに似ていることから来ている。
 解体で龍涎香が出たと聞いたときのアキナの興奮ぶりが半端なかった。笑
 普段、冷静なアキナにこれだけスイッチが入るのだから、相当貴重なものなのだろう。
 龍涎香の生成の過程は実のところよく分かってないのだが、餌であるイカやタコのクチバシなど、消化できないものを排出するために、腸内で結石化させたものと考えられている。

 結局、このクジラについては、チーコの港町と俺とで折半の山分けと言うことになった。俺の取り分からは、食料として鯨肉のブロックをいくつかと龍涎香を残して、あとは全部チーコギルドに買い取ってもらったのだが、大金貨8枚と言う莫大な金になった。
 凄ぇな。でもまぁあれだけ大物だったからなー。と思っていたのだが、商都に帰ると、龍涎香がとんでもないことになる。それは後日譚。

 結局、チーコにもう一泊することになり、夕餉はチーコの鯨肉専門店に出掛けた。クジラ繋がりだ。笑
 クジラのいろんな部位の刺身は、赤肉、鹿の子、尾肉、さえずり、畝須のベーコン、本皮、おばいけ、百尋、それぞれ個性があって堪能した。クジラユッケも絶品である。
 その他にも、クジラカツ、クジラのステーキ、クジラの竜田揚げ、クジラのはりはり鍋と、こんなにバリエーションがあったのかと驚いた。クジラ料理に合わせた、チーコの和酒も絶品だ。

 クジラ料理を堪能した後、宿屋に戻って、大部屋で軽い呑みとなった。嫁たちとのたわいもない会話が俺の心を癒す。いいなぁ、こう言うの。

 大部屋呑みがお開きとなり、俺はサジ姉とデラックスダブルに引き上げた。むふふタイムだー!サジ姉はいきなりマイドラゴンの世話を始めた。俺はサジ姉に身を委ねる。それから俺はサジ姉の頂と蜜壺を丹念に攻め、交互に互いを癒す俺たちの営みは、夜遅くまで続いたのだった。あー、専務、例のアレ、早く開発してくれ!

 翌朝、朝餉を摂ったらすぐにキノベ陸運チーコ営業所で北斗号を受け取り、早々にチーコを出発。一旦東に行ってから、しばらくして道は北北東へ。そして時期に山峡に入る。適当な時間に昼餉を摂って、河沿いを北北西へ。

 夕方になる前に、南の島山脈のチーコ側の入口の、オットーヨの農村に着いた。
 オットーヨの農村は、林業が盛んだ。村長の許可を貰って村外れに北斗号を停め、野営の準備に入った。
 北斗号のまわりに警戒の鈴を張り巡らせて、交代の見張りを立てつつ、交互に睡眠を取った。

 翌日、オットーヨを出発。川沿いに、東北東、東北、北、北北西と進むと、オボッケ峡谷に差し掛かった。ここは峡谷の名勝地で、宿屋が点在している。オボッケを東に行くと山峡の峠を越えてイーヤの大峡谷に出た。金剛鏑のあるかずら橋はここから南へ数kmだが、今宵泊まるイーヤの秘境温泉宿へはここから北へ数kmだ。
 一旦南下して、かずら橋で流邏矢の乙矢を登録した。
 そのまま馬車を反転させ、北上してイーヤの秘境温泉宿へ到着。ここで流邏矢の甲矢を登録した。これでかずら橋と秘境温泉宿を行き来できる。

 秘境温泉宿で大部屋とデラックスダブルを取った。ここの温泉は炭酸薄濁り硫黄泉である。宿屋は谷の中腹、温泉は谷の下にあり、宿屋と温泉を、峡谷の川の水車を動力源としたケーブルカーで繋いでいる。
 ケーブルカーは、ワイヤーで繋がれたふたつの車両が、鶴瓶のように上下するのだが、その上下の動力源が流水の力を取り入れた水車である。なお、温泉に下る場合は、自身の体重で降りられるので、水車の動力は使わなくてよい。
 まず俺から降りた。そして次々と嫁たちも降りて来た。ここで閃いたのだが、帰りは水車の動力じゃなくて流邏矢でよくね?笑

 男湯、女湯、貸切湯とあったので、迷わず貸切湯で混浴を選択。てか、貸切湯一択でしょ。峡谷の川を一望できる半露天の湯殿に皆で入った。
 薄濁りのため、桃色、桜色、ベージュ、紅色、栗色、薄赤紫×2の双丘の頂がばっちり見える。百花繚乱、いや、14花繚乱、眼福、眼福。
 湯はほんのり硫黄臭があり、温度はぬる湯なので長湯ができる。長く浸かっていると、炭酸による気泡が全身を覆う。非常に気持ちいい。そして眼下を流れる川のせせらぎが、耳に心地よい。嫁たちも湯船に浸かってすっかりリラックスしている。この秘境温泉は大当たりだ。

 この後、大部屋で夕餉から部屋呑みと言ういつもの流れ。そして宴がお開きとなる。さて、今宵はデラックスダブルでサヤ姉と同室だ。
 俺の頂&蜜壺攻めに対し、サヤ姉はマイドラゴンの世話。最初は交互にやっていたのだが、ふたりで興が乗って、後半は、俺の蜜吸いとサヤ姉のドラゴンケアが同時進行になっていた。いわゆる「ロクキュウ(英語)」と言う奴だ。俺たちは夜遅くまで互いを堪能した。あー、専務、例のアレ、早く開発してくれ!

 翌日、朝餉を摂ってから、流邏石で順に嫁たち全員をかずら橋へ運んだ。第一陣はサヤ姉、サジ姉、ホサキ。第二陣はキョウちゃんズ。第三陣はアキナとタヅナである。
 峡谷に掛かるかずら橋は、踏板が隙間だらけなので、渡ってる最中に下を見るとかなり怖い。渡り切って、奥の神社の社務所で、対応に出て来た巫女に、チーコのギルマスのツチスケに書いてもらった金剛鏑の譲り状を渡すと、慌ただしく中へ入って行った。
 しばらくして神主が出て来て、ふた言三言質問された。
「あんたが神龍鏑を集めてる言うんは、ほんまかや?」
「ああ。」
「そん証を見してつかい。」
「これでいいか?」
 俺は、今までに集めた神龍鏑をすべて見せた。すると、
「十分やけん。疑うてすまんで。金剛鏑は持って行き。」
 神主は一旦奥に引っ込んだ後、金剛鏑を三方に入れて恭しく持って来た。
「すまんな。」
「何、言いよるが。わしらはホンマの持ち主が来るまで、預かっとっただけやけん。」

 流邏矢で順番に嫁たちをイーヤの秘境温泉宿に運んだ。まだ昼にもなってない。しかし今日は、金剛鏑ゲットと言うひと仕事を終えた。あの、ぬる湯の炭酸硫黄泉が俺を誘う。出発したら次に来られるのは、いったいいつになることやら。もう1泊、いいよね。

 貸切湯で家族団欒である。あー、まじで今日の疲れも吹っ飛ぶ。ってか、疲れてないけどな。笑
 この日の午後は、部屋でゴロゴロ、温泉でゴロゴロ。非常に贅沢で怠惰な1日を過ごしたのであった。

 夕餉からそのまま部屋呑みとなり、ひと通り盛り上がった後、今宵同室のホサキとデラックスダブルへ。
 今日はなんだか無性に押し倒したい気分だったので、入室と同時にホサキに襲い掛かり、ひん剥いて頂と蜜壺を蹂躙した。ホサキは、「くっ、殺せ。」とか、「私の身体を自由にできても、心まで自由にできるとは思うなよ。」とか、テンプレな台詞で俺を盛り上げてくれた。ホサキ~、グッジョ~ブ。笑
 夜遅くまでホサキと楽しんだのだった。あー、専務、例のアレ、早く開発してくれ!

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設定を更新しました。R4/10/9

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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