射手の統領

Zu-Y

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射手の統領123 反省と対策

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№123 反省と対策

「あたたたた。」「酷い目に遭うてしもた。」

 流邏石でズシミの温泉宿に戻ると、サキョウとウキョウがすでに戻っていた。
「無事だったのか?」
「「うん。」」ケロッとしている。よかった。全身の力が抜けて、その場にへたり込む俺。
 サジ姉が、すかさずふたりに回復の術を掛けた。ふたりとも気持ちよさそうにしている。
「「おおきに。」」

「心配したわ。」「無事でぇ、よかったぁ。」「もうどこも痛くありませんか?」
「身代わりのペンダントのおかげだな。」こくり。

「ごめんなぁ。うちら、先に撤退してしもた。」
「無理せんと撤退する言う打ち合わせ通りにしたんやけど、先に去ぬるって伝える暇がなかってん。堪忍え。」

 攻略の下準備として、ズリの断崖岬に流邏矢を登録に行くはずが、紫嵐龍と遭遇して戦闘になってしまった。今日は戦闘がないものと思い込んでいたし、そもそも俺ひとりで行くはずが、準備が不十分であるにも関わらず、安易に皆を連れて行ってしまった。
 いざ戦闘になって、一旦は紫嵐龍に痛打を浴びせたものの、逆襲されてキョウちゃんズがやられてしまった。戦況不利と判断して、各々が流邏石でここズシミまで撤退したが、そもそもあの不利な位置取りで戦端を開くべきではなかった。すぐに撤退すべきだったのだ。

 初めての攻略失敗だ。身代わりのペンダントのおかげでキョウちゃんズは無事だったのの、身代わりのペンダントがなかったらと思うとぞっとする。

 キョウちゃんズがあの暴風のブレスを食らったとき、いやその前に俺が「やったか?」と口走ってしまったときに悟った。俺にはフラグが立っていたのだ。あんな物、何としても即座にへし折らなければならならなかったのだ。
 この遠征の直後に計画しているオミョシ分家との婚姻同盟の披露目。キョウちゃんズが儚くなってしまえば、婚姻同盟ではなくなるし、そもそも同盟が瓦解しかねない。その披露目の直前にキョウちゃんズを抉じ開けて、陰陽士にしようと企んでいたこともそうだ。キョウちゃんズが逝ってしまえば抉じ開けられない。
 それに、チフユから、遠征から帰ったら真っ先にふたりに会わせろと言われたのもそうだし、サンキがやたらと好事魔多し、油断大敵と念を押して来たのもそうだ。
 そもそものこの遠征の目的であるエンの攻略のときは、フラグを意識して慎重になっていたが、エンを攻略し終えて凱旋気分での帰途に、急遽降って湧いた今回の紫嵐龍攻略では、フラグのフの字さえ意識から飛んでいた。やはり油断したとしか言いようがない。

「アタル兄、大丈夫?思い詰めたらあかんよ。」
「せやで、うちらこの通り元気ピンピンや。アタル兄からもろてた身代わりのペンダントのおかげやわ。おおきに。」
 俺は思わずふたりを抱き締めたのだが、その温もりにふたりが生きていると言う実感をしみじみと味わい、安堵のあまり、涙が止まらなくなっていた。
 嗚咽する俺の頭を、ふたりがよしよしと撫でてくれている。なんともみっともない光景か。ちなみに大人嫁たちは、女々しい俺にさぞ呆れたことだろうと思ったら、なんともらい泣きをしていた。
 俺は気持ちが落ち着いたところで、予備の身代わりのペンダントを、サキョウとウキョウの首に掛けてやった。

 よし、反省会だ。そして対策を練ろう。しかし俺の頭の中では、今日の敗因は明白であり、その対策ももう出来上がっていた。
「皆、今日の失敗の原因だが、すべて俺だ。皆を危険な目に遭わせてしまって、本当にすまなかった。」俺は深々と頭を下げた。
「アタルだけのせいじゃないわ。ね、サジ。」
 こくり。
「いや、俺だよ。
 今までの七神龍との戦いではなかったことだが、今日の戦いでは、紫嵐龍が飛翔していて、上から俺たちを見下ろす形で、空中でホバリングしていた。奴は俺たちに対して、位置上の絶対的優位性を確保するとともに、ブレス攻撃を広域に放てるようにしてたんだ。」

 ここで一旦話を切って見回すと、皆は頷いていた。
 俺は続けた。
「さらに、ホバリングすることで、サヤ姉、ホサキ、タヅナの近距離攻撃を封じた。上空に居座られては、近距離攻撃は届かないからな。」
「そうなのよぉ。あれではぁ、届かないわぁ。」
「結局、遠距離攻撃しか届かないから、俺とアキナの矢か、サジ姉の状態異常の術しか攻撃手段がなくなった。」
「状態異常は…ジワジワ…効く…。一気に…大きな…ダメージは…無理…。」
「私の未熟な弓の技では、残念ですが届きませんでした。」
「せやねー、うちらが陽の術を使えればよかったんやけど。」
「そしたら、ババババーっと派手に陽の術をぶっ放したんやけどな。」
 ここで皆が、ハッとする。

 そう、分かったよね。俺の責任だと言った理由。
「その通り。今日の敗因は、変なこだわりを持って、ふたりを抉じ開けるのを先延ばしにして来たことにある。だからすべて俺の責任だ。」
 皆がシーンとなった。

「サキョウ、ウキョウ、今宵、お前たちふたりを抱く。すまんが抉じ開けさせてくれ。そして陽の術を身に付けて欲しい。本当に身勝手な言い分ですまない。それでも…いいか?」
「「ええよ。」」ふたりは赤くなって俯いた。

「いや、しかしアタル。ふたりはまだ子供…いや、未成年で、その、夜の営みはどうなんだろうか?」
「サキ姉、大丈夫や。まかせとき。」サキョウが答え、
「せやで。うちらもそれなりに育って来てんねん。一緒にお風呂入っとるから知っとるやろ?」ウキョウが補足する。
「しかし、攻略のためにと言うのも…どうなんですか?」
「アキ姉、別にそれでええやん。」ウキョウが答え、
「せやで。うちらは陽の術も身に付けて陰陽士になりたいし、アタル兄は紫嵐龍攻略に陽の術が欲しいんやから、一石二鳥や。」サキョウが補足する。
 いいコンビネーションだ。笑

「俺が踏ん切りがつかなかったのもその辺でな。ただそのこだわりが今回の敗因の大元だ。」
「そうかもしれないけどぉ。でもぉ…。」
「タヅ姉、心配、おおきに。」「でもな、うちら、覚悟はとうにできてんねん。」
「ふたりは…いずれ…アタルに…嫁ぐ…。なら…今でも…いい…。サヤ…?」
「そうね。
 ふたりとも、今夜の初陣、頑張ってね。」
「「はーい。」」
 最終的に大人嫁たちは皆頷いた。

 宿屋の温泉で今日の汚れと疲れを落とし、夕餉を摂って英気を養う。
 そして夕餉の後、追加で取ったひと部屋に、キョウちゃんズと3人連れ立って入った。するとふたりはすぐに衣擦れの音を立てた。ふむ、ふたりはすでに覚悟を決めているな。
『アタルよ、いよいよ腹を括ったな。余をサキョウに持たせよ。』
『アタル、余はウキョウじゃ。』
 ウズとシンの指示に従って、ウズ鏑をサキョウに、シン鏑をウキョウに持たせた。すると、サキョウの裸体が青色に、ウキョウの裸体が橙色に輝き出した。

 そのまま輝くふたりをベッドにふたりを誘い、こだわりを吹っ切った俺は思うままにふたりを攻め立てた。
 いつもはロリコンへの抵抗感から、俺が遠慮がちなので、ふたりが調子に乗ってグイグイ来るのだが、今日の俺は本気だ。いよいよ初陣と言う気負いと緊張感もあってか、初回のふたりは珍しく俺のなすがままだった。
 すっかりご機嫌なマイドラゴンが、まだ半分未熟なふたりを抉じ開け、ふたりの返り血を浴びつつ、ふたりの中へホワイトブレスを吐き散らす。するとふたりは、それぞれの色の輝きを増した。
「あああ、ウズはんの気力が流れ込んで来よった。」
「うちは、シンはんのや。あああ、何や凄いなぁ。」
 いや、流し込んでるのは俺なんだが…。

 初陣を終えてしばらくの間、ふたりともひくひくしていたが、ひと息ついた後、おもむろにベッドから出ると、部屋の窓を開け放ち、眼前の大海原に向かって、それぞれ両手で握ったウズ鏑とシン鏑を真っ直ぐかざした。
「「たぁー。」」裂ぱくの気合とともに、サキョウから水弾が、ウキョウから石弾が、沖に向かって放たれる。凄ぇ。月明かりのもと、かなりの沖合で着弾したのが分かった。
「めっちゃ凄いやん!」「ほんまや、自分でもびっくりキンドーや。」え?ここで親父ギャグかますか?
 てか、この娘たちには、初陣の余韻に浸るとか、そう言うのはないのだろうか。なんともまぁ、現金な。苦笑

『次は余だな。』『余も次だ。』レイとエンから念話が来た。
「え?」
『何をボーっとしておる。余とシンを交代させるのだ。』とレイ。
『今抉じ開けた放出口は、こ奴らの凄まじい気力放出で一気に使われたわ。次は余の術の放出口を抉じ開けるのだ。ウズと入れ替えよ。』とエン。
 俺は言われるまま、サキョウからウズ鏑を回収してエン鏑を、ウキョウからシン鏑を回収してレイ鏑を渡した。すると、サキョウの裸体は赤色に、ウキョウの裸体は藍色に輝き出した。
「2回戦目、行くぞ。」
「「おうっ!」」こいつら、男前だ。笑

 2回戦目はふたりとも、初陣の緊張から解放され、マイドラゴンを構う余裕が出て来た。俺もすっかり吹っ切れて、ふたりを大いに堪能した。
 2度目の抉じ開けとそれに伴うホワイトブレスの放出で、ふたりは再び輝きを増した。
「今度はエンはんが流れ込んで来よった。あああ~。」
「うちの中にはレイはんや。あああ~。」
「なんかさっきからその言い方、NTRれっぽくて微妙に嫌なんだが…。」おい、聞いてるか?おーい!あれ?ひくひくしてる…。

 しばらく後に、ようやく正気に戻ったふたりは、結局のところ、俺の文句をスルーして再び窓際に向かい、眼前の大海原に向かって、それぞれ両手で握ったエン鏑とレイ鏑をかざした。
「「たぁー。」」裂ぱくの気合とともに、サキョウから火弾が、ウキョウから氷弾が放たれ、大海原のかなりの沖合まで飛んで行った。
「ま、こんなもんや。」「せやね。」
 俺は、腰に両手を当てて全裸のままふんぞり返って、真っ暗な沖合を見つめているドヤ顔のふたりから、レイ鏑とエン鏑を回収したのだった。

「いきなりぶっ放したら、紫嵐龍の奴、驚くやろね。」
「ああ、これで今日のリベンジができそうだ。」
「なぁ、アタル兄。紫嵐龍の分の放出口も抉じ開けてぇな。」ふたりが妖艶な笑みを浮かべた上目遣いで誘って来る。すっかり大人びたな。もちろん望むところだ。
 俺の両手を掴んだふたりに誘われるままベッドへ。それから3回戦目が始まり、とことんふたりを堪能した。最後はふたりを、この晩3度目のひくひくに導いてやった。俺、グッジョブ。

「ふぅ。」ふたりとの3回戦目を終えて、ぐったり倒れ込む俺。消耗甚だしい。
 ふたりは俺の両腕を腕枕にして、両横に添い寝して来た。弓手側がサキョウ、馬手側がウキョウ。いつものポジションだ。
 ふたりは俺越しに会話を始めた。
「今回はドラちゃんやったね。」「せやね。ドラちゃんが中でやんちゃしはったねぇ。」俺じゃないんかい!
「なぁ、俺じゃねえの?」
「え?ドラちゃん言うたらアタル兄やん。」「せやで。行動パターンがまんまやん。」え?そうなのか?
「…。」言い返せない俺。
 あっと言う間に、ふたりは俺の両横で寝息を立て始めた。ま。いっか。

 翌朝、俺は快感に起こされた。なんと、朝の生理現象で変身しているマイドラゴンをキョウちゃんズが嫐っているではないか!
 なぶると言う字は、ふつうは男女男だが、このシチュエーションは、女男女である。
「おい、ふたりとも何やって…、」
「ん?見たら分かるやん。」「ドラコミュやで。」
「何、それ?」
「そんなん決まっとるやん。」「ドラちゃんとコミュニケーションの略やがな。」
「…。」まぁいいか。今更だよな。

 観念してキョウちゃんズのなすがままにしておくと、間もなくマイドラゴンが歓喜の咆哮を上げてホワイトブレスを撒き散らしたのだった。

 それから3人でシャワーを浴びた。当然イチャイチャ展開になった訳だが、寝起きのときのキョウちゃんズのドラコミュのおかげで、ふたりを襲わなくて済んだのだった。苦笑

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設定を更新しました。R4/10/2

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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